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米国税制改革の日系企業への影響

米国税務:2017年12月25日

本ニュースレターでは、最終法案の簡単なサマリーに加え、前号に引き続き日系企業が特に興味を持たれている法人税関連の改正内容につき、今回の改正で特に注意が必要な法案ごとの適用対象時期を明確にしながら、法案条文のみに基づき日系企業への影響を予想してみた。最終的な解釈については、上述のとおり今後発行される財務省規則に依るところも多い為、その点には十分ご留意いただきたい。(米国税務:2017年12月25日)

米国時間12月15日に公表された両院合同案は、若干の微調整を加え米国連邦議会上下両院を20日に通過し、22日にトランプ大統領の署名により法律が成立した。これをもって昨年から続く税制改正の動きは、当初の大方の予想に反し年内に完結したことになる。これだけ広範囲に渡る税制改正を実に短期間で最終法案化させたことから、法案条文にはあからさまな政治的駆引きの痕跡が散見される。また、当然ながら通過した条文規定のみでは取扱いが定まらないものが多々あり、今後財務省が発行する立法規則や解釈規則が重要な鍵を握ることになる。とはいえ、企業は早急に財務諸表への影響を試算する必要があり、関連部署の方々は大変慌ただしい年明けを迎えることになるのではと想像するところである。

本ニュースレターでは、最終法案の簡単なサマリーに加え、前号に引き続き日系企業が特に興味を持たれている法人税関連の改正内容につき、今回の改正で特に注意が必要な法案ごとの適用対象時期を明確にしながら、法案条文のみに基づき日系企業への影響を予想してみた。最終的な解釈については、上述のとおり今後発行される財務省規則に依るところも多い為、その点には十分ご留意いただきたい。

1. 法人所得税率の削減

現行は課税所得額に応じて最大35%の累進税率が適用されている法人所得税率が、今後は一律21%に削減される。至ってシンプルな改正内容であるが、新税率がいつから適用されるかについて、度々質問を受ける。

最終法案によれば、2018年1月1日以降に開始する事業年度について新税率が適用される。単純解釈すれば3月決算の米国子会社は2018年4月1日以降に新税率が適用されるが、ここで、期中に法定税率が変更された場合の取扱いに関する既存の税法規定が影響してくる。同規定によれば、事業年度の途中で法定税率に変更があった場合、年間課税所得から旧税率と新税率に基づく年間税額をそれぞれ計算した上で、各税率の対象期間に係る税額を日数按分して年間税額を決定する。結果として、3月決算の米国子会社であっても、実質的に2018年1月1日から新税率の恩恵が受けられることになる(今回の個人所得税率変更については同規定の適用はない)。ただし、同規定には特別損益に係る例外等は設けられていないため、3月決算の会社で事業譲渡等を予定している場合、新税率の恩恵を最大限受けるためには取引実行を4月以降に先延ばしする必要がある。なお、今回の税制改正法案では同規定が適用されるかについて明示されておらず、今後発行される財務省規則で何等かの修正が入る可能性はゼロではない。

当該改正は日系企業にとっても歓迎すべきものであるが、米国子会社の租税負担割合が30%未満となることから、日本において外国子会社合算税制の対象となるリスクが懸念される。税率以外の適用条件により、実際に本邦合算税制の適用対象となる米国子会社は限定的になると予想されるが、米国LP投資時に活用されるブロッカー法人等、一部の米国子会社については適用対象となる可能性が高い。

2. 繰越欠損金の使用制限及び無期限繰越

2018年1月1日以降に終了する事業年度で発生する繰越欠損金(以下「NOL」)について、繰戻しは認められず、繰越期限が現行の20年から無期限となる。併せて、適用開始時期が微妙に異なるが、2018年1月1日以降に開始する事業年度で発生するNOLについて、使用年度の課税所得の80%までという新たな使用制限が課される。

該改正については、一見税制改正による繰延税金への影響が大きそうではあるが、既存のNOLについては新ルールが適用されないため、間接的な影響を除き税制改正による財務諸表への影響はないものと思われる。

3. 国内生産活動控除の廃止

財政圧迫への影響を抑えるため様々な増税案も盛り込まれているが、現行は課税所得の9%まで控除可能であった国内生産活動控除が2018年1月1日以降に開始する事業年度から廃止される。同控除は米国国内において生産活動を行っている納税ポジションにある企業であれば漏れなく適用している優遇税制であるが、廃止による実効税率へのネガティブインパクトは最大で3%を超える。

4. 代替ミニマム税の廃止および繰越代替ミニマム税額控除の還付

租税回避行為防止のために1986年度税制改正で導入された代替ミニマム税(以下「AMT」)が、2018年1月1日以降に開始する事業年度から廃止され、ガス、オイル、鉱業を含む特定業種にとっては追い風となる。

現行法では通常の法人所得税と、各種調整が加えられたAMTを平行して計算し、どちらか高い額を納税する必要があり、AMTに基づき納税した場合には、繰越AMT控除として将来の通常税額を減額できたため、実質的には税金の前払い要素があった。現行は納税ポジションにない会社は繰越AMT控除を活用することができないが、本改正によりAMTの廃止に加え、既存の繰越AMT控除が段階的に還付されることになる。多額の繰越AMT控除を有する会社にとっては朗報である。

5. 国内配当免税率の変更

2018年1月1日以降に開始する事業年度について、通常の国内子会社からの配当免税率が次の通り引き下げられ、二重課税の対象が増すことになる。

保有持分20%以上(80%以上の特定関連会社を除く)

80%→65%

保有持分20%未満

70%→50%


ただし、法人税率が35%から21%へ削減されたことを考慮すれば、配当にかかる実効税率は現行の実効税率とほぼ同率になると思われる。

6. 支払利息の損金算入制限ルール変更

2018年1月1日以降に開始する事業年度について、既存の過少資本税制(アーニングス・ストリッピング・ルール)に替わり、支払利息に新たな控除制限が課される。制限額は受取利息+税務基準EBITDA(2022年以降はEBIT)の30%となり、制限対象となった支払利息は無期限で繰延べられる。オートリース事業等で発生する支払利息や小規模事業者についての適用除外は設けられているものの、原則として金融機関からの借入であっても対象となる。

なお、既存のアーニングス・ストリッピング・ルールの下で制限されていた繰延支払利息について、今後新たなルールの下で控除が可能かについては言及されておらず、財務省規則を待つことになる。

7. 外国(法)人のパススルー投資持分譲渡益への課税

2017年11月27日以降に米国で事業を行うパススルー事業体(LP、LLC等)の持分を譲渡する場合、譲渡主が外国(法)人であっても、当該売却益が米国で課税対象となる。課税対象額は、パススルー事業体が全資産を時価で譲渡した場合の仮想譲渡益のうち米国事業関連部分であり、100%米国内で事業を行っているパススルー事業体の場合には、譲渡益全額が米国で課税を受けることになる。2018年1月1日以降の譲渡に関しては、譲受主への源泉納税義務も新たに課される。

現行法上は、外国(法)人で発生するキャピタルゲインが米国で課税を受ける状況は、投資先が一定割合以上米国不動産を保有している会社等の場合に限定され、パススルー事業体への投資も同様基準を満たす場合、または米国不動産に該当する部分に限り米国で課税対象となっていた。今回の改正により大幅に課税対象が拡大することになる。

今回の改正内容は内国歳入庁(以下「IRS」)と納税者の間で長らく争われていたが、今年に入り課税対象としたいIRSの主張が法廷で退けられていた。新法の妥当性に関する今後の訴訟リスクはゼロではないが、法制化されたことによりIRSは気兼ねなく課税を行うことができるようになった。近年日本から米国LP等への投資も増加傾向にあり、日本側での外国税額控除を考慮すれば影響は限定的ではあるが、今後は売却時の課税関係に影響が出てくる可能性もある。

8. 資本参加免税制度の導入

2018年1月1日以降の外国子会社からの配当が原則免税となる。対象となる国外子会社は米国法人が直接及び間接的に10%以上保有する外国子会社(10%外国子会社)であり、配当権利落ち日前後およそ2年間のうち最低1年間継続保有することが条件となる。

過去日系企業にとっての外国持株会社はオランダが一般的であったが、同改正により、米国子会社を外国持株会社とするストラクチャーも一考の価値が出てきたといえるかもしれない。厳密に言えば、孫会社所在国との租税条約の相性や、国策と歴史に裏付けされたオランダ税制の中長期的優位制は変わらないものと思われるが、少なくとも事業管理上の観点を考慮した場合、米州孫会社の持株会社を米国子会社にするという可能性は考えられるのではないだろうか。

9. 国外未配当利益への強制合算課税

資本参加免税制度の導入にあたり、10%外国子会社(及び米国税法上の特定外国子会社(以下「CFC」)に留保される累積未配当利益が合算課税の対象となる。合算課税の対象となる未配当利益は2017年11月2日もしくは同12月31日時点のどちらか大きい額とされ、10%外国子会社の2017年12月31日以前に開始する最後の事業年度の合算対象額に含まれる。未配当利益の計算において期中の配当は足し戻す必要がある点に注意が必要である。

未配当利益は外国子会社ごとに算出するが、保有する他の10%外国子会社に累積損失がある場合には未配当利益を減額することができる。減額対象の累積損失には親会社が保有する持分に加え、親会社の米国関連者グループ各社の保有持分も含むことができる。

一方で、未配当利益への適用税率はすべての10%外国子会社持分を合計の上で決定され、10%外国子会社の棚卸資産を除く流動資産のうち買掛金を超える額までは15.5%、その後の未配当利益については8%が適用される。ただし、合算課税時に子会社が外国で納めた法人所得税等につき、一部制限付きで間接外国税額控除が認められるため、実際の負担税率は更に小さくなると思われる。同計算に含まれる流動資産は、各10%外国子会社の以下どちらか大きい額を使用することとされている。

① 10%外国子会社の2017年12月31日以前に開始する最後の事業年度期末残高
② 同社の2017年11月1日以前に終了する最後の事業年度及びその前年度の平均期末残高

例えば、10%外国子会社が3月決算の場合、①は2018年3月期の期末残高、②は2017年3月期及び2016年3月期の平均期末残高となり、意図的な流動資産圧縮行為を禁止する乱用防止規定も含まれているため、容易に適用税率を軽減させることはできないであろう。

一部米国企業は未配当利益を圧縮するために様々なアイデアを駆使しているといった話を耳にするが、課税所得認識タイミングの変更を含む意図的な未配当利益の圧縮については、今後発行される財務省規則により防止される可能性がある旨が明記されており、実現可能性については疑問が残る。また、合算課税の取扱いに関する時効は通常の3年から6年に延長されているため、M&Aの際には注意が必要である。

なお、一見あまり利用されることはないようにも思えるが、合算対象の未配当利益にNOLを適用しないといった選択肢も用意されている。今後NOLのバランスシート上の価値は法人税率の21%相当になるが、強制合算の負担税率は外国税額控除により21%を大幅に下回る可能性も考えられる。特に日系米国現法の多くはメキシコ等の近隣国にのみ子会社を持つことも多く、強制合算時の負担税率が理論上3%を下回る可能性もあることから、財務諸表への影響の観点からは一考の価値があるかもしれない。

10. 税源侵食防止税(Base Erosion and Anti-Abuse Tax)の導入

2018年1月1日以降に開始する事業年度について、国外関連者への特定支払額に対し下記の計算に基づく追加課税が導入される。税源侵食防止税(以下「BEAT」)は関連者グループ全体の米国内事業で発生した過去3事業年度の平均総収入が5億ドル以上で、かつ、対象事業年度の税源侵食率が3%以上(金融機関を除く)となっている会社が対象である(税源侵食率=特定支払額÷総所得控除額)。

① (通常課税所得+国外関連者への特定支払額)×10%(適用初年度は5%、2026年度以降は12.5%)
② 通常課税所得×法人税率-税額控除(2025年度まではR&D控除及び一定額以上のその他特定控除は含まず)

税源侵食防止税=①-②

BEATの特定支払額から配当、棚卸資産購入額や移転価格税制上マークアップが必要ない役務対価等が除外されているが、マネージメントフィー、通常のサービスフィー等も含め、対象は非常に広範囲に渡る。また、米国内製造工場で使用する機械設備を国外関連者から購入する場合には、対象年度で控除される減価償却額が特定支払額に含まれ、BEATの対象になる。下院案に含まれていた物品税が廃案となったことは朗報であるが、多くの日系企業がBEATの対象になることが予想される。

特定支払額には米国で源泉税が課される支払額は含まれない。例えば、米国から日本への支払利息については30%の源泉税率が租税条約に基づき10%に軽減されるため、対象額は支払額の2/3となる。日本へのロイヤルティーは租税条約上非課税となっているため、全額がBEATの対象になると思われる。

なお、過去より国外関連者との取引に関する報告義務は存在したが、BEAT導入に伴い報告要件が追加され、当該報告義務違反に係るペナルティーが一件10,000ドルから25,000ドルに増加される。IRSは同ペナルティーを自動管理しており、申告期日が一日でも遅れた場合には一件1万ドルのペナルティー通知が自動発行される。今後は同額が25,000ドルとなり、益々注意が必要となる。

11. 軽課税無形資産所得(Global Intangible Low-Taxed Income)の合算課税

2018年1月1日以降に開始するCFCの事業年度について、米国で合算対象となるみなし所得に新たに軽課税無形資産所得(以下「GILTI」)が追加される。GILTIはCFCの課税所得のうち、CFCが保有する減価償却資産額の10%を超える額とされ、株主である米国法人が保有する全てのCFC持分について合計の上で算出する。対象所得には現行のCFC税制上で合算対象となっている所得や、外国で18.9%を超える実効税率が課されている所得等は含まれない。

IP等、無形資産から発生する所得の低税率国への移転防止が目的であり、欧米系大企業には影響が大きいところもあるが、日系企業への影響は限定的かもしれない。GILTIの導入は政策上避けられない理由があったかもしれないが、税法の簡素化を掲げた共和党の方針とは真逆なものとなっている。

12. 合算税制の対象範囲拡大

2017年12月31日以前に開始するCFCの最後の事業年度より、米国で合算税制の対象となるCFCの範囲が拡大する。合算税制の対象となるCFCの判定にあたっては非常に複雑な持分帰属ルールを適用する必要があるが、原則として、外国親会社が保有する外国子会社の持分が米国子会社へ帰属することはなかった。今回の変更により、一定基準を満たす外国親会社が保有する外国子会社の持分についても、米国子会社が保有するとみなされる。

米国の法人税申告書では各CFCに関する報告義務があり、日系企業等の外資系企業にとって報告対象が格段に広がることが懸念されていた。事実、下院案にはその旨が明記されていたが、最終法案に関する解説では当該改正による報告義務への影響はないことが記されている。この点に関しては今後の財務省規則に明記されると思われる。

13. 財務諸表への影響及び対応

大統領署名により法律が成立したため、採用する会計基準がIFRSかUS GAAPかにかかわらず、2017年12月期の財務諸表では原則として新税制に基づき妥当な繰延税金を計上する必要がある。特に、今後は州税の相対的比重が高まるため、州税申告内容の妥当性について改めて検討が必要になるかもしれない。また、アニュアルレポートや監査報告書の注記作成にも相当時間を要することが予想される。多くの米国企業は既に作業に着手しているが、日系企業は様子見の立場を崩していなかった会社も多く、早急な対応が必要となる。

おわりに

デロイト トーマツ税理士法人では、米国にて豊富な経験を有する米国税務の専門家が多数在籍しており、日本において、米国投資や米国での事業展開についてのアドバイスや米国での連邦・州税の申告書作成サービスを行っています。今回の税制改革についても詳細な分析を行っており、米国、日本の双方で万全のサポート体制を確立しています。

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