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国境を越えた役務の提供に係る消費税課税の見直し ~関連基本通達およびQ&Aの公表

Japan Inbound Tax Alert:2015年6月号

2015年10月1日より、内外判定基準の変更により、国外事業者が日本の顧客に対して行う電気通信利用役務に対しては消費税が課されることになる。5月末から6月初めにかけて、国税庁により関連基本通達および「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」が公表された。(Japan Inbound Tax Alert:2015年6月号)

はじめに

Inbound Tax Alert 2015年1月号で既報のように、2015年10月1日より、内外判定基準の変更により、国外事業者が日本の顧客に対して行う電気通信利用役務に対しては消費税が課されることになる。この変更を盛り込んだ改正消費税法は3月31日に成立したが、新制度の詳細については不明な点が多く残されていた。5月末から6月初めにかけて、国税庁により関連基本通達および「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」が公表され、これまでの不明点につき明確化が図られた。当該通達およびQ&Aの主な内容は以下のとおりである。

電気通信利用役務の範囲

改正消費税法では、電気通信利用役務を「電気通信回線を介して行われる役務の提供」と定義している。Q&Aにより、電気通信利用役務に該当する取引および該当しない取引につき、それぞれ以下のような例が示された。

電気通信利用役務に該当する取引

電気通信利用役務に該当しない取引

  • インターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含む)の配信
  • クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
  • オンライン広告配信
  • オンラインショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス
  • オンライン英会話
  • 電話、電子メールによる継続的なコンサルティング*
  • 通信サービス( 電話、FAX等)
  • ソフトウエアの制作
  • 国外に所在する資産の管理・運用等(ネットバンキングを含む)
  • 国外事業者に依頼する情報の収集・分析等
  • 国外の法務専門家等が行う国外での訴訟遂行等


*「電話・電子メールによる継続的なコンサルティング」の具体例としては、eラーニングサービス等が想定されていると思われる。この文言を広義に解釈すれば、ヘルプデスクサービスやコールセンターサービス、および電子メールによる法務助言サービスなども電気通信利用役務に該当する可能性がある。一方で、電子メールによる報告書の送付を伴うコンサルティングサービス(国外のコンサルティングファームによる事業戦略レポートの提供など)は、当該定義に含まれないものと考えられる。この点についてはさらなる指針の公表が待たれる。

(369KB, PDF)

事業者向け電気通信利用役務と消費者向け電気通信利用役務の区分

新制度においては、電気通信利用役務が事業者向けまたは消費者向けのいずれに該当するかにより、異なる課税関係が生じることになる。この判定は、実際に役務の提供を受ける者の属性(事業者か消費者か)ではなく、役務の性質または取引条件等に従って行われることに注意が必要である。すなわち、事業者向け電気通信利用役務とは、国外事業者が行う電気通信利用役務のうち、その役務の性質または当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいい、それ以外の電気通信利用役務はすべて消費者向け電気通信利用役務に該当することになる。(添付PDF P2の図参照)

登録国外事業者制度

新制度の導入に伴い登録国外事業者制度が創設される。国内事業者は、原則として、国外事業者からの消費者向け電気通信利用役務の仕入については仕入税額控除の対象とすることができないが、登録国外事業者から係る仕入を行った場合に限り、仕入税額控除が認められることになる。

登録申請の受付は2015年7月1日に開始される。登録申請書は国税庁ホームページからダウンロード可能である(現時点では日本語版のみの提供となっている)。登録国外事業者に対しては事業者免税点制度が適用されず、登録を受けている課税期間については消費税の課税事業者として申告・納税を行わなければならない (原則として、基準期間(その事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円超である事業者は課税事業者に該当する)。

その他

その他、国外事業者に関連すると思われる主な論点は以下のとおりである。

  • 電気通信利用役務の提供を受ける者の住所等が国内にあるかどうかの判定は、顧客がインターネットを通じて申し出た住所と、決済で利用されるクレジットカードの発行国情報や顧客のIPアドレスとを照合するなど、各取引の性質に応じて合理的かつ客観的な方法により行うべきことが明らかにされた
  • 事業者については、その本店または主たる事務所が国内にあるかどうかで内外判定が行われるため、外国法人の日本支店に対する電気通信利用役務の提供は国外取引に該当し消費税は課されないことになる

Deloitte’s view

今回公表された通達およびQ&Aにより、事業者向け電気通信利用役務と消費者向け電気通信利用役務の区分について、一定の判断基準が示された。一方で、「電話、電子メールによる継続的なコンサルティング」に該当するサービスの範囲等、新たな疑問も生じている。新制度の施行前にさらなるガイドラインが公表されるかは不明であるため、「電話、電子メールによる継続的なコンサルティング」に含まれる可能性のある取引を行っている国外事業者は、早期に税務アドバイザーに相談することが望ましいと思われる。

また、事業者向け電気通信利用役務と消費者向け電気通信利用役務の区分においては、実際に役務の提供を受けた者の属性ではなく、役務の性質および取引条件に着目しなければならない(事業者向け電気通信利用役務の範囲が狭く設定されている)ことにも注意が必要である。主な利用者が事業者であっても、消費者向け電気通信利用役務とみなされるケースも多く生じるものと思われる。

消費者向け電気通信利用役務を提供する国外事業者は、税務面のみならず、価格戦略を含むビジネス面およびシステム面における影響についても検討し対応策を講じる必要がある。施行日が約3カ月後に迫る中、国外事業者においては、日本顧客に対しオンラインで提供しているサービスを洗い出すとともに、税務アドバイザーと協働し、新制度による事業への影響について早期に検討を始める必要があるだろう。

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