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国境を超えた役務の提供に係る消費税課税の見直し~国内事業者への影響は?

Japan Tax Newsletter:2015年8月1日号

平成27年度税制改正により、国境を越えた役務の提供に係る消費税課税の見直しが行われた。本稿では、新制度の概要と国内事業者への影響を解説する。(Japan Tax Newsletter:2015年8月1日号)

1 はじめに

平成27年度税制改正により、国境を越えた役務の提供に係る消費税課税の見直しが行われた。これにより、2015年10月1日以降、電気通信回線を通じて実施される一定の取引(電気通信利用役務の提供)については、役務の提供を受ける者の住所等により内外判定が行われることになる。本ニュースレターでは、新制度の概要と国内事業者への影響を解説する。

2 制度概要

国税庁は2015年5月26日に改正消費税法基本通達(以下「改正通達」)、および6月3日に「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に係るQ&A」(以下「Q&A」)を公表した。

(1) 改正の趣旨

従来、インターネット等の電気通信回線を通じて行われる役務の提供については、著作権等の貸付け又は役務の提供の場所が明らかでない取引として、役務の提供者の所在地等で内外判定が行われてきた。そのため、デジタルコンテンツ等の提供(電子書籍や音楽の配信、オンライン広告サービス等)については、国内事業者が行う場合は消費税の対象となる一方で、国外事業者が行う場合は国外取引として消費税が課税されず、国内外の事業者間で競争条件に歪みが生じる結果となっていた。これを解消するため、電気通信回線を介して行う取引を役務の提供と位置付けるとともに、その内外判定基準を役務の提供を行う者の所在地から役務の提供を受ける者の住所等(住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地)に変更する改正が行われた。本改正は、同年10月1日以降に行われる取引から適用される。

(2) 対象となる取引

「電気通信利用役務の提供」に該当する取引は、以下のような内容となっている(消基通5-8-3、Q&A問2)。

● インターネット等を介して行われる電子書籍、音楽、映像、ソフトウエア、アプリ等の配信
● クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
● オンライン広告配信
● オンラインショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス
● オンライン英会話
● 電話・電子メールによる継続的なコンサルティング

さらに電気通信利用役務の提供に該当しない取引として、以下が例示されている(消基通5-8-3、Q&A問2)。

●  電話、Fax、電報等の通信サービス
●  ソフトウエアの制作等
●  国外に所在する資産の管理・運用等(ネットバンキングを含む)
●  国外事業者に依頼する情報の収集・分析等
●  著作権の譲渡・貸付け

なお、上記の取引に関して、成果物もしくは報告書の受領または関連する指示がメールやインターネットにより行われたとしても、そのような行為は他の資産の譲渡等に付随する行為にすぎず、電気通信利用役務の提供には該当しない。

(3) 事業者向け電気通信利用役務と消費者向け電気通信利用役務の区分

国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該役務の性質または当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものは「事業者向け電気通信利用役務」に区分され、それ以外はすべて「消費者向け電気通信利用役務」とみなされる(消法2①八の四)。各役務の例は下記に示すとおりである(消基通5-8-4、国税庁Q&A問3、問4)。

事業者向け電気通信利用役務

消費者向け電気通信利用役務

役務の性質から判断

  • オンライン広告配信
  • アプリ販売のためのオンラインプラットフォーム提供
  • 広く消費者を対象に提供される電子書籍・音楽・映像の配信等
  • ホームページ上で事業者向けであることを掲載しているが、消費者から申込みが行われた場合に、その申込みを事実上制限できないもの

取引条件等から判断

取引当事者間において役務の内容を個別に交渉し当事者間固有の契約を結ぶもので、契約において役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかな電気通信利用役務

 

(4) 課税方式の見直し

事業者向け電気通信利用役務の提供については、当該取引に係る消費税の申告納税義務が役務の提供を受ける者に転換される(リバースチャージ方式)。すなわち、国外事業者は消費税を上乗せしない金額で請求を行い、役務の提供を受けた国内事業者が、当該取引につき仮受消費税と仮払消費税の両方を認識する。ただし、事務処理の煩雑さを考慮し、事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた国内事業者の課税売上割合が95%以上である場合、当分の間の措置として、当該取引はなかったものとみなすことができる(附則42,44②)。すなわち、提供を受けた事業者向け電気通信利用役務につき、リバースチャージ方式による申告納税義務を負わないとともに課税仕入れも認識しないことになる。

(5) 国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供に係る仕入税額控除の制限

国外事業者による消費者向け電気通信利用役務の提供については、当該国外事業者が申告納税義務を負う。この点、国外事業者に対し税務執行を通じて適正な申告納税の履行を促すことは限界があることにかんがみ、国内事業者が国外事業者から提供を受ける消費者向け電気通信利用役務については仕入税額控除を認めないこととされている。ただし、登録国外事業者制度に基づき国税庁長官の登録を受けた国外事業者(登録国外事業者)からの消費者向け電気通信利用役務の仕入れについては、登録番号等が記載された請求書等の保存を要件に仕入税額控除が認められる(附則38)。

国内事業者が国外事業者から電気通信利用役務の提供を受けた場合の課税関係を図に示すと添付PDF P3のようになる。

3 国内事業者への影響

上述の新制度が、すべての国内事業者に影響を与えるものではない。その国内事業者がどの程度の規模で国外事業者から電気通信役務の提供を受けているかにもよるし、次のような消費税法上の立ち位置によって影響度が異なる。新制度が施行されるまでに、国内事業者は、自社にどのような影響があるのかを事前に把握の上、会計・税務処理に関する社内統一のオペレーションを決定しておくことが望ましい。

(1) 一般的な影響

国外事業者から電気通信役務の提供を受けている企業は、10月1日以降、次の3種類の請求書を受け取ることが想定される。

1) リバースチャージの告知がある事業者向け電気通信役務に関する請求書(税抜価格)
2) 税額表記のある消費者向け電気通信役務に関する請求書(税込価格)
3) 上記のいずれに該当するか不明の請求書(税抜価格)

このうち事務処理に困るのが3)の請求書であり、国内事業者は本取引が事業者向け電気通信役務なのか、消費者向け電気通信役務なのか、またはそもそも消費税の税制改正を知っているのかを国外事業者へ問い合わせる必要がある。国税庁では、下記ホームページにて改正の概要を解説した英語版のパンフレットを公表している。国外事業者への問い合わせの際に本ホームページを紹介することが望ましい。

Revision of Consumption Taxation on Cross-border Supplies of Services (国税庁ホームページ(英語、PDF))

また、国外事業者から電子書籍等を購入している国内事業者においては、当該国外事業者が登録国外事業者として登録を受けていない限り、当該取引に係る消費税額について仕入税額控除を行うことができなくなる。必要に応じ、個別の契約を締結して事業者向け電気通信利用役務としての扱いを可能とする等の対策を講じることも一案である。

(2) 課税売上割合の低い国内事業者

リバースチャージ方式の導入により、課税売上割合が95%未満の事業者は、事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、当該取引に係る仮受消費税と仮払消費税の両方を認識しなければならない。課税売上割合の低い金融機関等においては、会計仕訳において工夫を強いられたり、税務申告業務における事務負担が増えるだけではなく、営業利益にインパクトを与える控除対象外消費税額が増加するという影響が出てくることになる。

(3) 海外マーケット向けにアプリ等を販売する国内事業者

非居住者に対するアプリ販売等の電気通信利用役務の提供が、これから国外取引として課税対象外となることにも注意が必要である。現在は非居住者に対する電気通信利用役務の提供は国内取引とされた上で、所定の書類の保存等の要件を満たすことにより輸出免税として取り扱っているものと思われるが、10月1日以降は国外取引となるため、当該役務に係る売上を課税売上割合計算上、分母・分子に算入できなくなる。その結果、課税売上割合が減少し、費用負担となる控除対象外消費税が増加する可能性がある。

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