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ウェイフェアの最高裁判決で覆った 米国セールスタックスのネクサス基準の解釈変更と影響

『旬刊経理情報』 2018年8月10日号

電子商取引の経済に占める重要性が拡大するなかで、米国連邦裁判所は、セールスタックスにおけるネクサス判定において、これまでの物理的拠点を必要とする解釈を変更した。米国国外から米国に居住する消費者に対して資産の販売、役務の提供を行う外国企業にも、セールスタックス等の徴収義務を負わせる潮流が加速する可能性がある。仮想空間における重要な拠点にネクサスを認めた今回の判決は、法人税等他の税目へ与える影響も予測される。

はじめに

(1)セールスタックスのネクサス基準の変更

2018年6月21日付けウェイフェア(Wayfair)等判決により米国最高裁判所は、ベラス・ヘス(National Bellas Hess)判決で確立され、その後1992年のクイル(Quill)判決において支持された、セールスタックス、ユースタックス(以下、「セールスタックス等」という)のネクサス基準を覆した。

米国のセールスタックス等は州税であり、州が事業者に当該州でのセールスタックス等の徴収義務を課すには、「相当の関連性(substantialnexus)」が必要であることが連邦最高裁判例で確立されている。この「相当の関連性」の認定には、顧客が所在する州に直接的または代理人を通じて物理的拠点(physicalpresence)を有していることが従来必要とされてきた。

今回の判決は、この50年来確立された米国憲法の州際通商条項に関する解釈法理の変更であり、次の点がポイントとなる。

  • 相当の関連性の認定に、物理的拠点を必要とすることは電子商取引市場が普及した状況に鑑み、州際通商条項の不適切な解釈である
  • 遠隔販売を行う事業者であっても、当該州に仮想空間における重要な拠点を持ち得るのであり、サウスダコタの州法は、相当の関連性基準に反していない
  • 判例の法的拘束力(stare decisis)は州が合法的な権限を行使することを妨げることはできない
(2)日本企業への影響

米国国内事例に関する判決であるが、その日本企業に与える効果として、米国国外の企業が、米国の顧客に対して課税対象資産の譲渡または課税対象となる役務の提供を行う場合、日本企業および/またはその子会社は、今回の訴訟当事者であるサウスダコタ州の法律と同様の法律を持つ州だけでなく、「米国憲法に反しない限りにおいて」ネクサスを拡大する規定を有する州において、今後セールスタックス等の徴収および申告義務を負う可能性がある。

次に述べるように、恒久的施設(PE)等の租税条約で定められた諸概念は、一般的に、州(または地方)のセールスタックス等の目的のためのネクサスの決定においては適用されないことに留意が必要である。

⑴ South Dakota v.Wayfair,Inc.,et al.,No.17-494(June21,2018)585 U.S.
⑵ Bellas Hess(1967),National BellasHess,Inc.v.Department of Revenue,386U.S.753(1967)
⑶ Quill Corp.v.North Dakota,504 U.S.298(1992)
⑷ 連邦憲法1編8条3項

 

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