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10月1日以後の役務の提供から適用「国境を越えた役務の提供に係る消費税改正の実務Q&A」

『旬刊経理情報』 2015年8月1日号

平成27年度税制改正により、国境を越えた役務の提供に係る消費税課税の見直しが行われている。本稿では、改正の経緯・概要、「電気通信利用役務の提供」の定義・範囲等、および「電気通信利用役務の提供」に係る申告実務の3章に分けて、今回の改正に係る国内事業者への影響についてQ&A形式で解説する。(中央経済社『旬刊 経理情報』 2015年8月1日号)

はじめに

平成27年度税制改正により、国境を越えた役務の提供に係る消費税課税の見直しが行われている。本稿では、改正の経緯・概要、「電気通信利用役務の提供」の定義・範囲等、および「電気通信利用役務の提供」に係る申告実務の3章に分けて、今回の改正に係る国内事業者への影響についてQ&A形式で解説する。

第1章 改正の経緯・趣旨から押さえる 国境を越えた役務の提供に係る消費税課税の見直しの概要

1. 経緯

Q1:
改正までの経緯はどのようなものであったか。

A1:
(1) 国際社会の動向

インターネットをはじめとする情報通信技術の急速な発展に伴い、電子商取引に対する課税は近年、国際的な課題として浮上してきた。平成25年7月にOECDの発表した「税源浸食と利益移転(BEPS)」行動計画では、電子商取引の課税強化が、検討すべき課題の1つとして挙げられている。平成26年4月、OECDは国際VAT/GSTガイドラインを承認し、国境を越えた事業者間でのサービスおよび無形資産の国際取引について、仕向地原則の適用およびリバースチャージ方式による課税という方針を示した。

サービスの提供について仕向地主義の徹底を図っているEUは、電子的に提供されるサービスの内外判定基準について、諸外国に先駆けて平成22年に改正を行った。これにより、EU域外の事業者がEU域内の事業者・消費者に対して電子的に提供するサービスの内外判定基準は、受益者の所在地とされている1。また、韓国、マレーシア、オーストラリアなど多くの国が電子商取引に対する課税を実施または予定しており、電子商取引の受益地国課税が今後のトレンドになっていくことが予想される。

(2) 日本での動向

日本では、平成24年7月に有識者により構成される「国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の在り方に関する研究会」が設置され、デジタルコンテンツの提供に対する消費税課税について検討が進められてきた。さらに平成25年秋には政府税制調査会に国際課税ディスカッショングループが発足し、研究会での議論に基づき具体的な制度設計が開始された。一方、大手国外事業者が日本での電子書籍販売を開始するなか、国内の出版業界においては、国内事業者と国外事業者との消費税適用の違いをめぐり不満の声が高まっていた。平成25年8月、出版業界9団体から構成される「海外事業者に公平な課税適用を求める対策会議」は、政府に対し、国外事業者への消費税課税を求める要望書を提出した。

このような動きを受け、国際課税ディスカッショングループは、制度導入に向けて平成26年4月より本格的な検討を開始した。6月には、事業者向け取引についてはリバースチャージ方式を適用し、消費者向け取引については国外事業者に申告納税義務を課すという制度の枠組みが固まり、12月の税制改正大綱に盛り込まれることになった。


2.  趣旨
Q2:
改正の趣旨は何か。

A2: 
従来、インターネット等を通じたデジタルコンテンツの提供(電子書籍や音楽の配信等)は、消費税法上、著作権等の貸付けまたは役務の提供のいずれに該当するかが不明確であった。なお、それぞれの場合の内外判定基準は次のとおりである。

(1) 著作権の貸付けの場合:著作権の貸付けを行う者の住所地(消令6①七)
(2) 役務の提供の場合:役務の提供を行う者の事務所等の所在地(役務の提供が行われた場所が明らかでない取引)(消令6②七)


したがって、いずれの立場を取っても国内事業者が行う取引については消費税が課税される一方、国外事業者が国境を越えて行う取引については消費税が課税されず、課税の不公平が生じる結果となっていた。これを解消するため、デジタルコンテンツの提供を消費税法上「役務の提供」と定義するとともに、その内外判定基準を役務を受ける者の所在地に転換する改正が平成27年度税制改正に盛り込まれることとなった。

3. 概要

Q3:
改正の概要はどのようなものか。

A3:

平成27年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等および課税仕入れにつき、以下の改正が適用される。

(1) 電気通信利用役務の内外判定基準の見直し

インターネット等の電気通信回線を通じて行われる電子書籍・音楽・広告の配信等の役務の提供を「電気通信利用役務の提供」と位置づけ、このような役務の提供に係る内外判定基準を、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地から、役務の提供を受ける者の住所等に改正する。

(2) 課税方式の見直し

電気通信利用役務の提供を事業者向けとそれ以外のもの(消費者向け)に区分し、前者については、申告納税義務を役務の提供を受ける国内事業者に転換する(リバースチャージ方式)。

(3) 国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供に係る仕入税額控除の制限

消費者向け電気通信利用役務については役務の提供を行った事業者が申告納税義務を負うことになるが、国内事業者は、国外事業者からの消費者向け電気通信利用役務の仕入れについては、当分の間、仕入税額控除の対象とすることができない。ただし、登録国外事業者制度に基づき国税庁長官の登録を受けた国外事業者からの消費者向け電気通信利用役務の仕入れについては、登録番号等が記載された請求書等の保存を要件に仕入税額控除が認められる。

1. 本年1月1日より、EU域内事業者による電子サービスの提供についても、サービス受領者の所在地により内外判定が行われている。

第2章 該当する取引、しない取引の具体例は? 「電気通信利用役務の提供」の定義・範囲等

1. 対象となる「電気通信利用役務の提供」の範囲

Q4:
今回の税制改正において、「電気通信利用役務の提供」に係る内外判定基準が見直されるということだが、この場合の「電気通信利用役務の提供」とは、具体的にどのような取引が該当するのか。

A4:
平成27年度税制改正において、「電気通信利用役務の提供」に係る内外判定基準が見直され、従来役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地で内外判定を行っていたが、平成27年10月1日以後に行われる取引から、役務の提供を受ける者の住所または本店所在地等により内外判定を行うこととされた。この場合の「電気通信利用役務の提供」とは、次のような役務の提供をいう。

(1) 「電気通信利用役務の提供」の定義

「電気通信利用役務の提供」とは、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供であって、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものとされている(消法2①八の三、消基通5-8-3)。

(2) 「電気通信利用役務の提供」に該当する取引の具体例

 「電気通信利用役務の提供」に該当する取引の具体例としては、対価を得て行われる次のような取引が挙げられる(消基通5-8-3、「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」(以下、「国税庁Q&A」という)問2)。

① インターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどのさまざまなアプリケーションを含む)の配信
② 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
③ 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
④ インターネット等を通じた広告の配信・掲載
⑤ インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
⑥ インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
⑦ インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
⑧ インターネットを介して行う英会話教室


「電気通信利用役務の提供」に該当する場合には、従来は、役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地で内外判定を行っていたが、平成27年10月1日以後に行われる取引からは役務の提供を受ける者の住所等(住所もしくは居所または本店もしくは主たる事務所の所在地)により内外判定が行われる(消法4③三)。

「電気通信利用役務の提供」を受ける者の住所等が国内にあるか否かの判定は、「電気通信利用役務の提供」を行う事業者が、たとえば、インターネットを通じて申し出た住所地と顧客が決済で利用するクレジットカードの発行国情報とを照合して確認する等、各取引の性質等に応じて、客観的かつ合理的な基準に基づいて行うこととされている(消基通5-7-15の2、国税庁Q&A問9)。

(3) 「電気通信利用役務の提供」に該当しない取引の具体例

「電気通信利用役務の提供」に該当しないものとしては、通信そのもの、または、その電気通信回線を介する行為が他の資産の譲渡等に付随して行われるもので、たとえば次のようなものとされている(消基通5-8-3、国税庁Q&A問2)。

① 電話、FAX、電報、データ伝送、インターネット回線の利用など、他者間の情報の伝達を単に媒介するもの(いわゆる通信)
② 国外に所在する資産の管理・運用等で、依頼を受けた事業者が、その管理等の状況をインターネットや電子メール等を利用して依頼者に報告するもの(資産の管理・運用等という他の資産の譲渡等に付随してインターネット等が利用されるもの)
③ 国外におけるソフトウエアの開発で、ソフトウエア開発の依頼を受けた事業者が、完成したソフトウエアを、インターネット等を利用して依頼者に送信するもの(著作物の制作という他の資産の譲渡等に付随してインターネット等が利用されるもの)
④ 国外事業者に依頼する情報の収集・分析等で、その結果報告等についてインターネット等を介して連絡が行われるもの(情報の収集・分析等という他の資産の譲渡等に付随してインターネット等が利用されるもの)
⑤ 国外の法務専門家等が行う国外での訴訟遂行等で、訴訟の状況報告、それに伴う指示等について、インターネットを介して行われるもの(国外における訴訟遂行という他の資産の譲渡等に付随してインターネット等が利用されるもの)
⑥ 著作物に係る著作権の所有者が、著作物の複製、上映、放送等を行う事業者に対して、その著作物の著作権等の譲渡・貸付けを行う場合に、その著作物の受渡しがインターネット等を介して行われるもの(著作権等の譲渡・貸付けという他の資産の譲渡等に付随してインターネット等が利用されるもの)


「電気通信利用役務の提供」に該当しない場合には、従来どおり、原則として役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地で内外判定を行うことになる。

2. 「電気通信利用役務の提供」に係る内外判定基準見直しの国内事業者への影響

Q5:
「電気通信利用役務の提供」に係る内外判定基準が見直されたことにより、平成27年10月1日以後、国内事業者はどのような影響を受けるか。

A5:
「電気通信利用役務の提供」に該当する場合には、前述のとおり役務の提供を受ける者の住所等(住所もしくは居所または本店もしくは主たる事務所の所在地)により内外判定が行われる。当該内外判定基準の見直しに係る国内事業者への影響は、次のとおりである。

(1) 「電気通信利用役務の提供」を受ける国内事業者への影響

平成27年10月1日以後に「電気通信利用役務の提供」を受ける国内事業者への影響としては、従来国外取引として消費税の課税対象外だった国外事業者から受ける「電気通信利用役務の提供」が国内取引として課税対象となることが挙げられる。この場合、その「電気通信利用役務の提供」が、「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「消費者向け電気通信利用役務の提供」のいずれに該当するかで、次のように取扱いが異なる(「電気通信利用役務の提供」に係る申告実務については、第3章参照のこと)。

① 「事業者向け電気通信利用役務の提供」である場合
「電気通信利用役務の提供」を受ける国内事業者にリバースチャージ方式での申告義務が課される。
② 「消費者向け電気通信利用役務の提供」である場合
「電気通信利用役務の提供」を行った国外事業者に申告義務が課される。「電気通信利用役務の提供」を受ける国内事業者は、その国外事業者が登録事業者である場合に限り、仕入税額控除を行うことができる。


なお、国内事業者から受ける「電気通信利用役務の提供」は従来どおり国内取引として消費税の課税対象となる。

(2) 「電気通信利用役務の提供」を行う国内事業者への影響

平成27年10月1日以後に「電気通信利用役務の提供」を行う国内事業者への影響としては、非居住者に対する「電気通信利用役務の提供」が国外取引(課税対象外)となることが挙げられる。従来は、非居住者に対する「電気通信利用役務の提供」は国内取引とされたうえで、所定の書類の保存等の要件を満たすことにより輸出免税として取り扱っていたものと考えられる。しかし、平成27年10月1日以後に非居住者に対して「電気通信利用役務の提供」を行った場合には、国外取引(課税対象外)となるため、課税売上割合計算上、分母・分子に算入できなくなる点につき注意を要する。

なお、国内事業者に対する「電気通信利用役務の提供」は従来どおり国内取引として消費税の課税対象となる。

3. 「事業者向け電気通信利用役務の提供」の範囲

Q6:
「電気通信利用役務の提供」のうち、「事業者向け電気通信利用役務の提供」とは、具体的にどのような取引が該当するか。

A6:

(1) 「事業者向け電気通信利用役務の提供」に係る課税方式

「電気通信利用役務の提供」について、その役務の提供を行った者が国外事業者である場合、「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「消費者向け電気通信利用役務の提供」のいずれに該当するかによって、課税方式および申告納税義務者が異なる。「事業者向け電気通信利用役務の提供」に係る課税方式はいわゆるリバースチャージ方式であり、その役務の提供を受けた国内事業者が申告納税義務を負う方式である(「事業者向け電気通信利用役務の提供」に係る申告実務については、第3章参照のこと)。

(2) 「事業者向け電気通信利用役務の提供」の内容

「事業者向け電気通信利用役務の提供」とは、国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」のうち、その「電気通信利用役務の提供」に係る役務の性質またはその役務の提供に係る取引条件等から、その役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいう(消法2①八の四)。いい換えると、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当する「その役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるもの」か否かは、1)役務の性質、または2)取引条件等のいずれかで判定することになり、たとえば次のようなものがある(消基通5-8-4、国税庁Q&A問3)。

1) 「役務の性質」からの判定

「役務の性質」から「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものとは、次のように、その役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなものをいう。

● インターネットのウェブサイト上への広告の掲載
● インターネット上でのゲームやソフトウエアの販売場所を提供するサービス

 

2) 「取引条件等」からの判定

「取引条件等」から「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものとは、役務の提供を受ける事業者に応じて、各事業者との間で個別に取引内容を取り決めて締結した契約に基づき行われる「電気通信利用役務の提供」で、その契約で役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかなものをいう。

なお、インターネットのウェブサイト上に掲載した規約等で事業者のみを対象とする旨を明示していても、消費者からの申込みを事実上制限できないものは、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当せず、「消費者向け電気通信利用役務の提供」となる。

4. 「消費者向け電気通信利用役務の提供」の範囲

Q7:
「電気通信利用役務の提供」のうち、「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは、具体的にどのような取引が該当するか。

(1) 「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る課税方式

「電気通信利用役務の提供」について、その役務の提供を行った者が国外事業者である場合、「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「消費者向け電気通信利用役務の提供」のいずれに該当するかによって、課税方式および申告納税義務者が異なる。「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る課税方式は、その役務の提供を行った国外事業者に申告納税義務を課す方式である。

(2) 「消費者向け電気通信利用役務の提供」の内容

「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは、「電気通信利用役務の提供」のうち、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当しないものをいう。

具体的には、対価を得て行われるもので、消費者を含め広く提供される次のような取引が該当する(国税庁Q&A問4)。 

① インターネット等を介して行われる電子書籍・電気子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々さまざまなアプリケーションを含む)の配信
② 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
③ 顧客に、クラウド上での顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
④ インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)


ただし、このような役務の提供であっても、インターネット上のデータベース等を企業内で広く活用するために、その役務の提供を受けている事業者と個別に交渉を行い、一般の取引条件とは別に、事業者間で固有の契約を締結しているような場合で、その取引条件等から事業者間取引であることが明らかなときには、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものとされる。

第3章 リバースチャージ方式の導入 「電気通信利用役務の提供」を受けた場合の申告実務

1. はじめに

本改正により、消費税法上、国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」とそれ以外のもの(「消費者向け電気通信利用役務の提供」)に区分され、役務の提供を受けた側においては、それぞれ異なる税務の取扱いをすることとなった。本章では、国内事業者が、国外事業者から「電気通信利用役務の提供」を受けた場合の、消費税の申告実務について解説を行う。
 

2. 税務処理の概要

Q8: 
国内事業者が国外事業者から「電気通信利用役務の提供」を受けた場合の消費税法上の税務処理方法はどのようなものか。

A8: 
その「電気通信利用役務の提供」が「事業者向け電気通信利用役務の提供」であるか、「消費者向け電気通信利用役務の提供」であるかの区分に従い、およそ図表1(添付PDF ページ7)のように取り扱われることになる。

3. 「事業者向け電気通信利用役務の提供」

Q9:
国内事業者が、国外事業者から「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合、提供を受けた側の課税売上割合により、消費税の取扱いが異なると聞いた。具体的にはどのような取扱いとなるのか?

A9:
(1) 課税売上割合95%未満(一般課税方式)の場合


平成27年度税制改正により、事業者が平成27年10月1日以後に行った課税仕入れのうち、国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、その役務の提供を受けた事業者が、消費税等の申告納税義務を負うこととされた(消法5①、28②、45①一)。

消費税法上、役務の提供については、その提供を行った側が申告納税義務を負うのが原則である。しかしながら、国外事業者による「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、役務の提供を受けた側である国内事業者が消費税の申告納税義務を負うこととしたのである(リバースチャージ方式)。これは、国外事業者に対して日本の消費税の申告納税義務を課すことの、適正申告・徴税面での困難さを考慮した取扱いであると思われる。その意味では、この「リバースチャージ」とは一種の源泉徴収のようなものして捉えると理解しやすいだろう2 3

同時に、役務の提供を受けた事業者においては、当該役務の提供に係る消費税につき、仕入税額控除を行うこととなる。このため、1つの取引に係る消費税額が、納税と控除の両面で登場することとなるのである(添付PDFページ8 図表2参照)

1) 課税売上割合の計算

図表2(添付PDFページ8)のように、「特定課税仕入れに係る支払対価の額」は課税標準額に含められるが、課税売上割合の計算上、分母に含められることはない(消法30⑥)。

2) 帳簿記載要件

消費税法上、仕入税額控除に際しては、一般に、請求書保存および帳簿記載が必要とされているが、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に係るものについては、帳簿記載のみで足りることとされた。ただし、帳簿記載事項として、他の課税仕入れと同様の記載事項のほかに、「特定課税仕入れに係るものである旨の記載」が加えられた。この「特定課税仕入れに係るものである旨の記載」とは、事後にその課税仕入れが特定課税仕入れに該当することが確認できる表示であればよく、たとえば帳簿に「特定」と付記するといった方法も認められる(国税庁Q&A問28)。

(2)  課税売上割合95%以上の場合または簡易課税制度を適用する場合

前述のように、平成27年度税制改正により、「事業者向け電気通信利用役務提供」については、原則として、役務の提供を受けた側に消費税の申告納税義務を課すこととされた。

しかしながら、事務処理上の煩雑さを考慮して、(a)当該役務の提供を受けた国内事業者の課税売上割合が95%以上である場合、(b)当該国内事業者が簡易課税制度の適用を受けている場合については、当分の間、当該「特定課税仕入れ」は「なかったもの」として取り扱うこととされた。つまり、当該課税期間の課税売上が95%以上である場合、あるいは簡易課税方式を採用している場合には、当該国内事業者は、その提供を受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」に係る消費税につき、リバースチャージ方式による申告納税義務を負わないとともに、課税仕入れも認識しないということになる(平成27年改正法附則42、44②)。(添付PDF ページ10:図表7)

4. 「消費者向け電気通信利用役務の提供」

Q10:
国内事業者が、国外事業者から「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合、仕入税額控除の対象とできないケースがあると聞いたが本当か。また、仕入税額控除の対象とするための要件とは何か。

A10:
平成27年度税制改正では、国外事業者から受けた「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る消費税については、当分の間、「登録国外事業者」に該当する者から受けたもののみを仕入税額控除の対象とし、これ以外については仕入税額控除の対象とはしないこととされた(平成27年改正法附則38①)。(添付PDFページ10:図表8)

また、「登録国外事業者」からの課税仕入れに係る仕入税額控除に際しては、帳簿・請求書に、他の課税仕入れと同様の記載事項に加えて、図表9の事項の記載が必要とされた(消法30⑧・⑨、平成27年改正附則38②)。

実務上は、「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合、請求書における「登録番号」、「課税資産の譲渡等を行った者が消費税を納める義務がある旨」の記載の有無を確認し、記載がある場合に限って、帳簿に登録番号を含めた法定記載事項を記載したうえで、仕入税額控除の対象とするという処理が必要となろう 。

2. 「リバースチャージ方式」の対象である旨の表示
国外事業者が国内事業者に対して「事業者向け電気通信利用役務」の提供を行う場合、あらかじめ当該取引が「リバースチャージ方式」の対象である旨を表示しなければならないとされている(消法62)。ただし、国外事業者が当該表示義務を履行しなかったとしても、国内事業者側では当該「事業者電気通信利用役務の提供」に係る消費税の納税義務を負う(消基通5-8-2)。

3. 国税庁Q&Aでは、輸入消費税につき輸入者(仕入を行った者等)が納税を行うことを示し、これを確定申告の際に行っていると考えるとわかりやすいのではないか、という説明を加えている(国税庁Q&A問17(参考))

4. 登録国外事業者が、請求書に登録番号を含めた法定記載事項を記載していなかった場合には、請求書の修正・再交付を受けることにより、仕入税額控除の対象とすることが可能となる(平成27年改正法附則38④・⑤)。

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