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日本法人が「電気通信利用役務の提供」を受けた場合の課税関係について

『国税速報』平成29年6月12日号

本稿では、内外判定および「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「消費者向け電気通信利用役務の提供」の判断を含む、4つのトピックに分けて解説します。(『国税速報』平成 29年6月12日号)

【疑問相談】消費税

「日本法人が「電気通信利用役務の提供」を受けた場合の課税関係について」

Question:
当社は、サービス業を営む日本法人です。当社では市場調査のために、外国法人A社およびB社よりデータベースサービスの提供を受けています。当該サービスは、インターネットを介し、クラウド上のデータベースを利用するサービスであることから、電気通信利用役務の提供に該当すると認識しています。A社とは、事前に取引内容等を合意し、契約書を締結しています。一方、B社との取引では、B社のインターネットのウェブサイト上で、会社名等必要な情報を入力し、規約に同意した上でサービスの提供を受けています。当社がA社およびB社に支払うデータベース利用料は、どのような課税関係になりますか。

なお、当社は消費税の課税事業者に該当し、各課税期間(事業年度)の課税売上割合は95%未満であり、簡易課税制度の適用は受けていません。また、当社は国外に支店等の恒久的施設を有していません。

Answer:
貴社は、各課税期間に係る消費税の確定申告に当たり、国外事業者から受ける電気通信利用役務の提供について、「事業者向け電気通信利用役務の提供」、または「消費者向け電気通信利用役務の提供」のどちらに該当するかを確認する必要があります。

A社との取引は、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するとえられますので、貴社がリバースチャージ方式により、当該取引に係る消費税の納税義務者となります。

一方、B社との取引は、「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当し、B社が登録国外事業者の場合にのみ、仕入税額控除が認められます。

【解説】

1 背景

平成27年度税制改正では、国外事業者から提供される電子書籍等について、役務提供者の所在地の違いによる税負担の差異を解消し、国内外の事業者間での競争条件の不均衡を是正することを目的に、課税の見直しが行われました。見直しの主なポイントは、電気通信回線を介して行われる一定の著作物の提供、その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供を、「電気通信利用役務の提供」として定義した上で、当該役務の提供に係る内外判定を、その役務の提供を受ける者の住所地等により判定することとしました。これにより、日本の消費者等が受ける電気通信利用役務の提供は国内取引に該当し、課税取引とされました。

また、国外事業者から受ける電気通信利用役務の提供については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」とそれ以外の電気通信利用役務の提供(「消費者向け電気通信利用役務の提供」)とに区別した上で、「消費者向け電気通信利用役務の提供」については、当該役務の提供を行う国外事業者に申告納税義務を課すこととされました。さらに、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものの範囲が限定的に規定されました。これは、購入者の大半が消費者でありながら、一部に事業者が含まれる可能性のある電子書籍等の提供を、「事業者向け電気通信利用役務の提供」とした場合には、国外事業者が消費者に提供した電子書籍等に課税することができず、国内外の事業者間での競争条件に歪みが生ずるという問題の解決につながらないことからです。

なお、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当する場合には、リバースチャージ方式が適用され、役務の提供を受けた者が納税義務者となります。

2 内外判定および「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「消費者向け電気通信利用役務の提供」の判断

国税庁が公表している「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A(平成28年12月改訂版)」によると、クラウド上のデータベースを利用させるサービスは、電気通信利用役務の提供とされています。したがって、貴社がインターネットを介して受けるクラウド上のデータベースの利用は電気通信利用役務の提供に該当するものと考えられます。

法人が受ける電気通信利用役務の提供に係る内外判定は、当該役務の提供を受ける者の本店もしくは主たる事務所の所在地となりますので、国内に本店を有する貴社が受ける当該役務の提供は、国内取引として、課税取引に該当します。

貴社は、国外事業者に該当する外国法人から電気通信利用役務の提供を受けていることから(消法2四の二、消基通1―6―1)、当該取引が「事業者向け電気通信利用役務の提供」または「消費者向け電気通信利用役務の提供」のどちらに該当するかを判断した上で、適用される課税関係を考える必要があります。

諸外国では、付加価値税の納税義務者に登録を義務付けていることから、役務の提供を受ける者の属性(事業者または消費者)で、「事業者向け電気通信利用役務の提供」かどうかを判断できるのですが、我が国の消費税法ではそのような登録制度が今のところ設けられていません。そこで、「事業者向け電気通信利用役務の提供」を役務の性質または当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものとし、役務の提供を受ける事業者が事業として利用することが明らかであるものと定義しています(消法2①八の四、消基通5―8―4)。

そうすると、貴社とA社との取引は、事前に取引内容等が合意され、契約書が締結されていることから、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものと考えます。

税法上は、国外事業者が「事業者向け電気通信利用役務の提供」を行う際には、あらかじめ、「事業者向け電気通信利用役務の提供」取引であることについて表示する義務があります(消法62、消基通5―8―2)。しかしながら、貴社が、A社から「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当する取引であることについて、事前に通知等を受けていない場合においても、貴社の納税義務には何ら影響を及ぼしません。こういった場合には、A社に対し、当該取引が「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するかどうかを問い合わせることもえられますが、日本の税制に詳しくないであろう国外事業者から適切な回答を得られないことも想定されます。したがって、貴社自ら、当該取引が「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するかどうかの判断を行うことが、潜在的な税務リスクの軽減につながると考えます。

一方、B社との取引では、B社のウェブサイトに貴社の会社名を入力し規約に同意しているものの、B社においては、役務の提供を受ける者が事業者であるか、また事業者であったとしても事業で利用することが明らかではないことから、「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものと考えます(消基通5―8―4注書)。

3 課税関係

貴社における、A社およびB社との取引の課税関係は以下のとおりです。

(1)「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するA社との取引

「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当する取引については、リバースチャージ方式が適用され、当該役務の提供を受けた事業者が、納税義務者となります。しかしながら、経過措置により、課税売上割合が95%以上または簡易課税制度が適用される課税期間については、当分の間、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に係る仕入れはなかったものとされ、リバースチャージ課税は適用されません(平成27年改正消法附則42、44)。

貴社の各課税期間の課税売上割合は95%未満であり、簡易課税制度の適用を受けていないことから、同経過措置が適用されないため、リバースチャージ方式により申告・納税を行う必要があります。具体的には、A社へ支払った支払対価の額を課税標準額(課税売上額)に含めた上で、同支払対価の額を仕入税額控除の対象として申告・納税を行うこととなります。

(2)「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当するB社との取引

「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当する場合には、当分の間、仕入税額控除の適用はないものとされています(平成27年改正法附則38①、消基通11―1―3 (注)2)。しかしながら、B社が登録国外事業者である場合には、当該役務の提供に係る消費税について、仕入税額控除が認められます(平成27年改正法附則38①ただし書)。国税庁のホームページに「登録国外事業者名簿」が掲載されていますので、会社名等により、B社が登録国外事業者として登録されているかどうか確認することができます。B社が登録国外事業者である場合には、仕入税額控除の対象となる取引は、同名簿に記載された登録年月日以後の取引となりますので、B社との取引日が登録日以後であるかどうかの確認も必要となります。

4 仕入税額控除の適用要件

「事業者向け電気通信利用役務の提供」に係る課税仕入れについて、仕入税額控除の適用を受ける場合には、一定の事項を記載した帳簿の保存要件を満たす必要がありますので留意が必要です(消法30⑦⑧二)。

また、「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る課税仕入れについては、帳簿および請求書等の保存要件を満たす必要があります(消法30⑧⑨、平成27年改正消法附則38②)。B社との取引について仕入税額控除を適用する場合には、B社から受領する請求書等には、通常の課税仕入れに係る記載事項に加え、B社の登録番号と「課税資産の譲渡等を行ったB社が消費税を納める義務がある旨」の記載が必要となります。B社から受領した請求書等が法令に定める記載事項を満たしていない場合には、記載要件を満たす請求書等の発行を依頼し、それを保存する必要があります。

なお、「登録国外事業者」から電子的な請求書等を受領した場合には、紙に出力したものに代えて、法令に定める記載事項を満たした電子的な請求書等の保存によることも認められています(平成27年改正法附則38③、改正省令附則2①)。

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