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内国法人の海外支店が国外事業者から電気通信利用役務を受けた場合の平成28年度改正をふまえた取扱い

『国税速報』平成28年7月18日号

平成28年度税制改正により、平成29年1月1日以後に内国法人の海外支店が受ける事業者向け電気通信利用役務のうち、国外業務にのみ要するものについては、消費税の課税対象外(不課税取引)とされました。(『国税速報』平成28年7月18日号)

【疑問相談】消費税

「内国法人の海外支店が国外事業者から電気通信利用役務を受けた場合の平成28年度改正をふまえた取扱い」

Question:  
当社の海外支店は、国外事業者と取引条件等を定めた直接契約により、クラウド上のデータベースを利用するサービスの提供を受けており、当該サービスは海外支店が国外で行う事業のためにのみ利用しています。平成27年度税制改正により、平成27年10月1日以後に国外事業者から受ける事業者向け電気通信利用役務については、リバースチャージ方式による申告が必要となり、当社は、課税売上割合が95%未満であることから、現在当該取引に係る消費税の申告を行っているところです。

平成28年度税制改正により、内国法人の海外支店が受ける事業者向け電気通信利用役務の内外判定基準が改正されたと聞きましたが、改正の内容と適用時期を教えてください。

Answer:
平成28年度税制改正により、平成29年1月1日以後に内国法人の海外支店が受ける事業者向け電気通信利用役務のうち、国外業務にのみ要するものについては、消費税の課税対象外(不課税取引)とされました。

したがって、ご質問の貴社の海外支店が国外事業者から受けているクラウド上のデータベースを利用するサービスの提供は、当該海外支店が国外で行う事業のためにのみ利用しているとのことですので、平成28年12月31日まではリバースチャージ方式による申告の対象となる一方、改正後の平成29年1月1日以降は消費税の課税対象外となり、リバースチャージの処理をする必要がなくなります。

【解説】

1. 平成27年度税制改正

平成27年度税制改正により、国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直しが行われました。この見直しの主なポイントは、電気通信利用役務の提供に係る消費税の内外判定基準の見直しです。消費税の課税対象とされる資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務」と定義した上で、電気通信利用役務の提供に係る内外判定は、役務の提供を受ける者の住所地または本店所在地により判定されることになりました。これにより、役務提供者の所在地の違いによる税負担の差異を解消し、国内外の事業者間で競争条件の不均衡を是正することとされました。

また、平成27年度税制改正では、課税方式(課税対象および納税義務者)の見直しも行われました。これは、電気通信利用役務の提供を「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「それ以外」に分けた上で、「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、当該役務の提供を受けた事業者(課税仕入れを行った事業者)に納税義務を課す、いわゆるリバースチャージ方式の対象とする改正です。なお、課税売上割合が95%以上、または簡易課税制度が適用される課税期間については、当分の間リバースチャージ方式による申告を行う必要はありません(改正法附則42、44②)。

2. 平成28年度税制改正前の取扱い

貴社の海外支店は、国外事業者と取引条件等を定めた直接契約により、クラウド上のデータベースを利用するサービスの提供を受けているということですので、事業者向け電気通信利用役務を受けているものと解されます。

平成28年度税制改正前は、国内事業者の海外支店が受けた事業者向け電気通信利用役務については、それが国外事業にのみ要するものか否かにかかわらず、当該国内事業者にリバースチャージによる納税義務が発生していました(消法5①)。また、貴社は課税売上割合が95%未満ということですので、リバースチャージの経過措置の適用を受けられず、申告納税が必要でした。

3. 平成28年度税制改正による取扱い

上記の平成27年度税制改正では、内国法人の海外支店が国外事業者から受ける電気通信利用役務の提供は、「役務提供を受ける者の所在地」が本店等の所在地で判定されるため、実質的に国外で役務提供を受けているにもかかわらず、消費税の課税対象になってしまうという問題点が生じました。そこで、事業者向け電気通信利用役務の提供に係る特定仕入れ(以下「特定仕入れ」)について内外判定基準の見直しを行うことになりした。この平成28年度税制改正は、平成29年1月1日以後に行われる特定仕入れについて適用されます(改正法附則33)。

この改正では、国外事業者のケースと国内事業者のケースの2つの特定仕入れについて内外判定基準を次のように見直しています(消法4④)。

① 国外事業者のケース

国外事業者が日本国内に有する恒久的施設で行う特定仕入れのうち、国内において行う資産の譲渡等に要するものは、国内で行われたものとする。なお、その一部が本店等国外拠点で使用されているものであっても、役務の提供のすべてが課税対象となる(消基通5-7-15の3)。

② 国内事業者のケース

国内事業者が国外事務所等で行う特定仕入れのうち、国内以外の地域において行う資産の譲渡等にのみ要するものは、国内以外の地域で行われたものとする(消基通5-7-15の4)。なお、一部でも本店等の国内で使用されている場合は、これまでどおり、内外判定基準を本店の所在地により行う。

したがって、貴社の海外支店が国外事業者から受ける事業者向け電気通信利用役務の提供が、国内以外の地域において行う資産の譲渡等にのみ要するものであることが明らかな場合には、平成29年1月1日以降は消費税の課税対象外となり、リバースチャージの処理をする必要がなくなります。

貴社がその特定仕入れに係る仕入税額控除の計算につき個別対応方式を適用する場合、「(海外支店が行う資産の譲渡等のみに要するため)課税資産の譲渡等にのみ要するもの」としてその仕入税額の全額に仕入税額控除を適用していると推察します(消法30②一、消基通11-2-13)。このような場合には、平成28年度税制改正によって、その特定課税仕入れの取引が課税対象外取引になるため、結果的に納税額に影響はないと考えます。

また、この税制改正が期中から適用される場合には、その課税期間の中途において同じ国外事業者との取引に係る課税関係が変更されることになるため、税務処理上の注意が必要になります。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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