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外国法人の日本支店に対して電気通信利用役務の提供を行った場合の内外判定

『国税速報』平成27年12月7日号

平成27年度税制改正により、国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直しが行われました。この見直しの主なポイントは、電気通信利用役務の提供に係る消費税の内外判定基準の見直しです。消費税の課税対象とされる資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供」と定義した上で、電気通信利用役務の提供に係る内外判定は、その役務の提供を受ける者の住所地等により判定されることになりました。(『国税速報』平成27年12月7日号)

【疑問相談】消費税

「外国法人の日本支店に対して電気通信利用役務の提供を行った場合の内外判定」

Question:  
当社は、主に事業者向けにクラウドサービスを提供している日本法人です。
当社が行うクラウドサービスは、インターネットを通じてクラウド上のソフトウェアを利用させるサービスですので、平成27年度税制改正により、電気通信利用役務に該当することになったと認識しています。当社の顧客には日本法人だけでなく、外国法人の日本支店もありますが、外国法人の日本支店に対して提供したクラウドサービスは消費税の課税対象となるのでしょうか?
また、外国法人の日本支店とは平成27年3月中に契約し、平成27年4月分~平成28年3月分の1年間の利用料金を契約時に受け取っていますが、今回の改正により何か影響はあるでしょうか?

Answer:
日本法人である貴社が、外国法人の日本支店に対して行う電気通信利用役務の提供は、平成27年10月1日以後は国外取引に該当しますので、消費税の課税対象外となります。
また、貴社と外国法人の日本支店との契約によっては、既に支払を受けた料金のうち、平成27年10月1日以後の役務提供に対応する部分に係る消費税相当額を返還しなければならないケースも想定されます。

【解説】

1. 改正の概要(内外判定の見直し)

平成27年度税制改正により、国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直しが行われました。この見直しの主なポイントは、電気通信利用役務の提供に係る消費税の内外判定基準の見直しです。消費税の課税対象とされる資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供」と定義した上で、電気通信利用役務の提供に係る内外判定は、その役務の提供を受ける者の住所地等により判定されることになりました。

電気通信利用役務の提供とは、インターネット等を通じて行われる電子書籍や音楽・ゲームの配信や、クラウド上でソフトウェア等を利用させるサービスなどの電子商取引が該当するものとされています。今回の改正の目的のひとつとして、これらの電子商取引について、役務の提供者によって最終的な税負担に差異が生じることによって最終的な税負担に差異が生じることにより、国内外の事業者間で競争条件に不均衡が生じている現状を是正することが挙げられています。

従来、電気通信利用役務に該当するような電子商取引については、実務上、著作権等の貸付け、情報の提供、その他役務提供地が明らかでないもののいずれかに該当するものとして取り扱われており、いずれの場合であっても、その役務の提供等を行った事業者の住所地又は事務所等の所在地により内外判定を行うものとされていました。

すなわち、国外の事業者が行っていた電気通信利用役務に該当するような取引は、従来は国外取引として課税の対象とはなっていませんでしたが、今回の改正により国内取引に該当することになりましたので、国内で利用されるこれらの電子商取引に関して提供する事業者間の不均衡は是正されるものとされています。

その一方で、国外の利用者に対して電子商取引を行っていた国内の事業者にとっては、従来は国内取引とされていたものが、今回の改正後は国外取引に該当することになりましたので、国内の一定の事業者にも対応が求められることになります。 

2. 国外の利用者に電気通信利用役務の提供を行う国内事業者の取扱い
(1)取引の相手方が非居住者の場合

国内の事業者が国外の利用者に対して行う電気通信利用役務の提供は、従来は役務の提供を行う者のその役務の提供に係る事務所等の所在地等により内外判定を行うこととされていましたので、国内取引として消費税の課税対象とされていました。

ただし、その相手方の利用者が非居住者である場合には、非居住者に対する役務の提供で国内において直接便益を享受するもの以外のものに該当し、輸出類似取引として免税取引として取り扱われていたものと考えられます(消法7、消令17②七、消基通7―2―16)。

今回の改正により、住所地等が国外である利用者に対する取引は国外取引に該当することになりましたが、具体的な影響としては、従来は輸出類似取引として区分していた金額を、課税売上割合の計算に含めないことになります。

(2)取引の相手方が外国法人の日本支店の場合

他方、貴社のケースのように、その取引の相手方が外国法人の日本支店である場合には注意が必要となります。

従来は、国内の事業者が外国法人の日本支店に対して行う電子商取引は、上記⑴と同様に、国内取引とされていました。ただし、外国法人の日本支店に対する取引については輸出類似取引の規定は適用されず、消費税の課税の対象とされていました。これは、消費税法上の居住者・非居住者の区分は、外国為替及び外国貿易法に規定する区分に準ずるものとされており、外国法人の日本支店は居住者として取り扱われていることによります(消令1②二、消基通7―2―15)。一方で、今回の改正における内外判定の見直しにおいて、役務の提供を受ける者の住所地等により内外判定を行うこととされましたが、役務の提供を受ける者が法人である場合の内外判定は、その法人の本店または主たる事務所の所在地により行うことになります。すなわち、外国法人の日本支店に対して行われた電気通信利用役務の提供は、その外国法人の本店所在地が国外にあるため、国外取引に該当することになります。

 3. 前受けにより収受した利用料の取扱い

上述のとおり、外国法人の日本支店に対する電気通信利用役務の提供は、今回の改正前後で消費税の取扱いが異なることになります。

貴社は、外国法人の日本支店から、平成27年10月1日をまたぐ1年分の利用料を前受けで収受しています。資産の譲渡等の時期はその約した役務の全部を完了した日となりますが、前受金に係る資産の譲渡等の時期は、現実に資産の譲渡等を行った時とされています(消基通9―1―27)。すなわち、料金が月額で定められている取引で、その役務提供が月々完了するものについては、契約に基づいて計上した前受金に係る資産の譲渡等の時期は毎月の役務提供が完了する時となり、その時点が平成27年10月1日前であれば消費税は課税対象となりますが、同日以後であれば課税対象外になるものと考えられます。

その収受した利用料が消費税込みであり、契約書等において消費税相当額が区分されている場合には、前受けで収受した金額のうち、10月分以降の利用料に含まれる消費税相当額は、利用者に返還することを検討する必要があるかと思われます。

なお、契約又は慣行により、1年分の対価を一括して受け取ることしており、貴社が継続してその対価を収受したときに収益に計上しているときは、平成27年9月30日までに収益に計上したものについては従前どおり、課税取引として取り扱うことも認められるものとえられますが、受け取った消費税相当額を相手方に返還するか否かは、相手方との交渉次第になるかと思われます。

なお、今回の改正においては、平成27年10月1日をまたぐ一定の取引について経過措置(改正令附則2、国税庁Q&A問38)が設けられているものの、その対象取引は国外事業者が行った取引に限定されているため、貴社のケースには適用されません。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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