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取引の報告・納税には自主判断が必要「中国課税財産の間接譲渡に係る新税務規定のポイント」

『旬刊経理情報』 2015年5月10・20日号

2015年2月、中国の国家税務総局は、中国国外の非居住者企業が中国居住者企業の持分等を間接的に譲渡する取引の税務上の取扱いについて、新しい税務通達を公布した。この通達の規定は、国家税務総局が2009年に公布した税務通達における関連の規定に取って代わるものである。本稿では、この新しい税務通達の要点を整理するとともに、当該通達の規定が再編取引の実務に与える影響等について検討する。(中央経済社『旬刊 経理情報』 2015年5月10・20日号)

698号通達の規定

中国国外の非居住者企業が中国居住者企業の持分を譲渡することによって得た譲渡所得は、中国国内源泉所得として、中国の税法上、10%の源泉所得税の課税対象となる。中国の国家税務総局は「非居住者企業の持分譲渡所得に係る企業所得税管理の強化に関する通知」(国税函[2009]698号)(以下、「698号通達」という)において、非居住者企業が中国国外にある中間持株会社を通じて間接的に保有する中国居住者企業の持分を、その中間持株会社の持分を譲渡することによって間接的に譲渡する場合においても、中国の税務機関がその取引を合理的な事業目的のない、租税回避目的の取引であると認定した場合には、非居住者企業が中国居住者企業の持分を直接に譲渡したものとみなし、中国において譲渡所得に対して課税する旨を規定した。

このような中国居住者企業の持分の間接譲渡取引に対する課税は、「中華人民共和国企業所得税法」(以下、「企業所得税法」という)に規定する一般租税回避防止規則の適用によるものである。これは、「企業が合理的な事業目的のない取引を実施し、課税収入あるいは所得額を減少させた場合、税務機関は合理的な方法により調整を行う権限を有する」(企業所得税法47)というものであり、ここでいう“合理的な事業目的のない”とは、税額の減少、免除、あるいは納付の遅延を主な目的とすることを指す(企業所得税法実施条例120)。
698号通達では、中国居住者企業の持分の間接譲渡取引を行う非居住者企業(国外投資者)に対し、取引が一定の要件に該当する場合に中国の税務機関へ取引の報告を行う義務を課していた。これは税務機関が合理的な事業目的の有無を判断するために、中間持株会社の経済実態等に関わる情報の提出を求めるものであった。
698号通達の公布以降、非居住者企業による中国居住者企業の持分の間接譲渡取引に対する中国での課税事例は、すでに少なからず存在している( 1)

(1 ) 国家税務総局が公表したウォルマートによるトラストマートの持分買収事案(税総函[2013]82号)のほか、多くの課税事例が中国税務報(国家税務総局の主宰する専門紙)等で報道されている。

7号公告の公布

2015年2月に国家税務総局が公布した「非居住者企業による財産の間接譲渡に係る企業所得税の若干の問題に関する公告」(国家税務総局公告2015年7号)(以下、「7号公告」という)は、中国国外の非居住者企業が中国居住者企業の持分等を間接譲渡する取引に係る税務上の取扱いについて、あらためて詳細に規定したものである。

7号公告の1条では、租税回避目的の間接譲渡取引に対し、中国で課税する旨を定めており、この趣旨は698号通達の規定と一致する。(図表2)

(図表2) 7号公告1条1項

非居住者企業が合理的な事業目的のない取引スキームの実施を通じ、中国居住者企業の持分等の財産を間接的に譲渡し、企業所得税の納税義務を回避する場合、企業所得税法47条の規定に従い、当該間接譲渡取引の性質をあらためて定め、中国居住者企業の持分等の財産を直接譲渡するものとみなす。


一方で、「7号公告の要点」(3)においても説明するとおり、7号公告では、国外投資者に対して取引の報告を義務づける代わりに、取引の当事者等が任意で取引の報告を行うことができるとするなど、その徴税管理手法は698号通達とは異なるものとなっている。7号公告は、政策的に中国の徴税権の確保と外国からの投資促進とのバランスを図りつつ、納税者のコンプライアンスと税務機関による税務執行上の確定性を高める観点から、規定の整備を図ったものといえる。

なお、7号公告の公布に伴い、698号通達等の関連条項は廃止された。

7号公告の要点

(1) 適用範囲

7号公告の規定は“中国課税財産の間接譲渡”の取引に適用される。ここでいう“中国課税財産”とは、非居住者企業が直接保有した場合には、その譲渡によって取得した所得に対し、中国で企業所得税が課される財産を指し、(a)中国国内の機構・場所の財産、(b)中国国内の不動産、(c)中国居住者企業の権益性投資資産(持分)が含まれる。すなわち、7号公告の規定に基づいて中国で課税される可能性のある取引は、中国居住者企業の持分の間接譲渡取引に限られない。

7号公告によれば、“中国課税財産の間接譲渡”とは、非居住者企業が直接または間接に中国課税財産を保有する中国国外の中間持株会社の持分およびその他の類似の権益を譲渡することにより、中国課税財産を直接譲渡したのと同じまたは近い結果が生じる取引をいう。7号公告では、非居住者企業の再編の結果として中国国外の中間持株会社の株主が変更される場合も、ここでいう“譲渡”に含まれることを明らかにしている。

非居住者企業が中国課税財産の間接譲渡取引を行う場合であっても、図表3のいずれかの状況に該当する場合、7号公告の1条の規定は適用されない。すなわち、当該取引が中国で課税されることはない。

(図表3) 7号公告1条の適用されない取引

  1. 非居住者企業が公開市場で同一の中国国外の上場企業の持分を売買することにより、中国課税財産の間接譲渡による所得を得る場合
  2. 非居住者企業が中国課税財産を直接保有し、かつ譲渡する場合、適用される租税条約または協定の規定に基づき、当該財産の譲渡所得が中国で企業所得税を免除される場合


(2) 合理的な事業目的の判断

1.考慮すべき要素

中国課税財産の間接譲渡取引が中国で課税されるのは、当該取引に合理的な事業目的がなく、租税回避を目的にしていると認められる場合であるため、当該取引に関しては合理的な事業目的の有無の判断が重要となる。7号公告ではこの判断に関して、中国課税財産の間接譲渡取引と関連するすべてのスキームを全体として考慮し、実際の状況も踏まえ、図表4に列挙する要素を総合的に分析しなければならないとしている。

(図表4) 合理的な事業目的の判断において考慮すべき要素

  1. 中国国外の中間持株会社(“中国国外企業”)の持分の主な価値が直接または間接に中国課税財産から生じたものであるか否か
  2. 中国国外企業の資産が主に直接または間接の中国国内での投資から構成されているか否か、あるいはその取得する収入が主に直接または間接に中国国内を源泉としているか否か
  3. 中国国外企業および直接または間接に中国課税財産を保有する傘下企業が実際に履行する機能および負担するリスクが、企業の組織構成に経済実態のあることを裏づけられるか否か
  4. 中国国外企業の株主、ビジネスモデルおよび関連の組織構成の存続期間
  5. 中国課税財産の間接譲渡取引に係る中国国外での所得税の納付状況
  6. 持分の譲渡者が中国課税財産に間接的に投資し、それを間接的に譲渡する取引と、中国課税財産に直接投資し、それを直接譲渡する取引の代替可能
  7. 中国課税財産の間接譲渡に係る所得に対して中国で適用される租税条約または協定の状況等
  8. その他の関連要素


図表4の要素のうち、1と2は間接譲渡取引の主な目的物が中国課税財産であるか否か、3は持分を譲渡される中間持株会社およびその傘下企業に経済実態があるか否かの判断に関わるものであり、その他は租税回避目的の有無を判断するための要素といえる。

2. “合理的な事業目的がない”と直接認定される取引

7号公告によれば、実質的なセーフハーバールールが適用される場合(図表3、図表6を参照)を除き、中国課税財産の間接譲渡取引に関する全体のスキームが図表5に挙げる4つの要件を同時に満たす場合、取引には合理的な事業目的がないものと直接認定される。すなわち、当該取引に対しては中国で企業所得税を納付することが必要となる。

(図表5) “合理的な事業目的がない”と直接認定される取引の要件

  1. 中国国外の中間持株会社(“中国国外企業”)の持分の75%以上の価値が直接または間接に中国課税財産から生じたものであること
  2. 中国課税財産の間接譲渡取引が発生する前1年間のいずれの時点においても、中国国外企業の資産総額(現金を含まない)の90%以上が直接または間接に中国国内の投資により構成されているか、あるいは中国課税財産の間接譲渡取引が発生する前1年間において、中国国外企業が取得した収入の90%以上が直接または間接に中国国内を源泉としていること
  3. 中国国外企業および直接または間接に中国課税財産を保有する傘下企業が、所在国家(地域)で登録され、法律の要求する組織形式は満たしているが、実際に履行する機能および負担するリスクが限定的で、それに経済実態のあることを裏づけるのに十分でないこと
  4. 中国課税財産の間接譲渡取引に係る中国国外での所得税の税負担が、中国課税財産を直接譲渡した場合に中国で課される可能性のある税負担より低いこと

(注)上記の4要件を同時に満たす場合に、“合理的な事業目的がない”ものと認定される。


3. グループ内再編に係るセーフハーバールール

7号公告によれば、中国課税財産の間接譲渡取引が図表6の要件を同時に満たす場合、合理的な事業目的があるものとみなされる。すなわち、当該取引に対して中国での課税は生じない。

(図表6) グループ内再編に係るセーフハーバールールの適用要件

  1. 取引の当事者双方(持分の譲渡者および譲受者)間に、直接または間接に80%以上(*)の持分保有関係があること
    (*)中国国外企業の持分の50%超の価値が直接または間接に中国国内の不動産から生じたものである場合、当該要件は100%となる。
  2. 今回の間接譲渡取引の後に再度発生する可能性のある間接譲渡取引に係る中国での所得税負担が、今回の間接譲渡取引が発生しなかった場合の同じまたは類似の間接譲渡取引と比べて減少しないこと
  3. 持分の譲受者が持分取引の対価をすべて、自社またはこれと支配関係を有する企業の持分(上場企業の持分を含まない)をもって支払うこと

(注)上記の3要件を同時に満たす場合、“合理的な事業目的がある”ものとみなされる。


(3) 取引の報告と資料の提出要求

1. 取引の当事者等による取引の報告

698号通達では、中国居住者企業の持分の間接譲渡取引が一定の要件に該当する場合、国外投資者は中国の税務機関に取引の報告をしなければならないと規定していた。これに対して7号公告では、取引の当事者双方(譲渡者、譲受者)および持分が間接的に譲渡される中国居住者企業は、いずれも任意で中国の税務機関に取引の報告をすることができるとしている。

取引の当事者双方あるいは中国居住者企業が税務機関に報告を行う際の提出資料には、持分譲渡契約書、持分譲渡前後の企業の持分構成図、中国国外の中間持株会社および直接、間接に中国課税財産を保有する傘下企業の前2年度の財務諸表、中国課税財産の間接譲渡取引に7号公告の1条を適用しない理由が含まれる。

2. 税務機関による資料の提出要求

7号公告によれば、税務機関は中国課税財産の間接譲渡取引の当事者双方、持分を間接的に譲渡される中国居住者企業に加えて、取引のプランニングを行った者(すなわち、税務アドバイザー)に対しても、取引に関する資料の提出を求める可能性がある。

これらの者が税務機関の要求に応じて提出すべき資料には、前記1の取引の報告時に提出する資料のほかに、取引の全体のスキームに関する意思決定または実行過程の情報、国外の中間持株会社および直接、間接に中国課税財産を保有する傘下企業の生産経営、人員、財務、財産等に関する情報および内外部の監査状況、持分譲渡価格の決定根拠(資産評価報告書等)、取引に係る中国国外での納税状況等がある。

(4) 源泉徴収義務と申告納付

1. 譲受者の源泉徴収義務

7号公告では、不動産または持分の間接譲渡取引による所得が中国で課税の対象となる場合、持分の譲渡者に対して対価の支払義務を負う者が源泉徴収義務者となる旨を定めている。通常は持分の譲受者が支払義務を負い、ゆえに源泉徴収義務者になると考えられる。

7号公告によれば、この源泉徴収義務者が源泉徴収をせず、持分の譲渡者も納税額を納付しない場合、税務機関は税法の関連規定に基づき、源泉徴収義務者の責任を追及できる。すなわち、税務機関は源泉徴収義務者に対し、未納税額の50%以上3倍以下の罰金を科すことができる。ただし、源泉徴収義務者が持分譲渡契約書の締結日から30日以内に、税務機関に対して取引の報告(資料の提出)を行った場合には、源泉徴収義務者の責任が軽減または免除される可能性がある。

2. 譲渡者による申告納付と延滞利息

7号公告の規定によれば、中国で課税の対象となる間接譲渡取引について、源泉徴収義務者が源泉徴収をしないか、源泉徴収税額に不足がある場合は、持分の譲渡者が自ら納税義務の発生日から7日以内に管轄税務機関で税額を申告納付し、かつ税額計算等に関する資料を提出しなければならない。ここでいう納税義務の発生日とは、持分譲渡契約書が発効し、かつ中国国外の中間持株会社が持分の変更を完了した日を指す。

持分の譲渡者が規定の期限までに納付すべき税額を納付せず、あるいは申告納付額に不足があり、源泉徴収義務者も源泉徴収をしていない場合、すなわち、調査の結果、更正を受けた場合、譲渡者には延滞利息が課されることになる。

具体的には、「特別納税調整」(2 )に係る延滞利息の規定(企業所得税法実施条例121、122) に従い、税額の属する納税年度の翌年6月1日から税額を追加納税した日までの期間について、日ごとに利息が徴収される。7号公告によれば、持分の譲渡者が持分譲渡契約書の締結日から30日以内に、税務機関に対して取引の報告(資料の提出)を行うか、あるいは税額を申告納付した場合には、税額の帰属する納税年度に中国人民銀行が公布した、追加納税期間と同期間の人民元貸付の基準利率に基づき利息を計算する。一方、取引の報告も税額の申告納付も行っていない場合には、基準利率に5%を加えた利率で利息を計算する。すなわち、持分の譲渡者が自ら取引の報告あるいは税額の申告納付を行った場合には、追徴課税が生じた場合の延滞利息が軽減されることになる。

(5) 調査の実施

前述のとおり、中国課税財産の間接譲渡取引に対して中国で課税されるのは一般租税回避防止規則の適用によるものであることから、税務機関が当該取引に対して調査を実施する場合にも当該規則の関連規定、具体的には「一般租税回避防止管理弁法(試行)」(2015年2月1日施行)に従うことになる。当該管理弁法によれば、税務機関が一般租税回避防止調査を実施する際には、その開始と審査結果の決定にあたり、国家税務総局の承認を得なければならない。

また、企業所得税法実施条例に基づき、一般租税回避防止規則が適用される場合の時効は10年である。

(2 ) 企業所得税法の第6章「特別納税調整」には、移転価格税制、タックスヘイブン対策税制、過少資本税制および一般租税回避防止規則が含まれる。

7号公告の実務への影響と不確定事項

(1) 自主的な判断の必要性

1. 取引の報告または申告納付(源泉徴収)の要否

7号公告では、中国課税財産の間接譲渡取引に係る中国での課税の要否を取引の当事者が自ら評価し、かつ取引の報告を行うか否か、あるいは納税するか否かを自ら判断することを求めているといえる。しかし、このような判断は取引の当事者にとって必ずしも容易ではない可能性がある。

仮に取引の当事者が中国の税務機関に取引の報告を行ったとしても、7号公告では、税務機関がその報告内容に対して確認を与えることまでは求めていないため、取引の税務処理にはなお一定の不確定性が残ることになる。税務機関には調査を実施する権限も与えられているからである。

中国で納税していない中国課税財産の間接譲渡取引について、調査の結果、更正を受けることになった場合、持分の譲渡者には延滞利息の負担が生じ、譲受者も源泉徴収義務者としての責任を追及される可能性がある。規定の期限までに中国の税務機関に取引の報告を行っていれば、これらの負担は軽減される可能性があるが、取引の当事者は追徴課税の可能性という不確定性も考慮したうえで、中国で自ら納税するか否かを判断しなければならない。

2. 譲受者のリスク

7号公告に基づき、持分の譲受者は間接譲渡取引について中国で納付すべき税金の源泉徴収義務を負うが、譲受者が当該義務を履行することは実務的には困難と思われる。譲受者が譲渡代金から税額相当を源泉徴収する場合、譲渡者との間で納税の要否に関する判断が一致しなければならないが、その判断が必ずしも一致するとは限らない。また中国での納税額の計算に必要となる情報を譲受者がすべて入手することも難しいと考えられるからである。

しかし、7号公告では、中国で納税すべき取引について納税が行われていない場合、源泉徴収義務者の責任を追及する旨が規定されている。そのため、譲渡者と譲受者は、当該責任を追及された場合の罰金の負担等について、あらかじめ協議しておくことが必要になると考えられる。

なお、7号公告において、源泉徴収義務者が自ら取引の報告を行った場合の責任の減免について規定しているのは、税務機関ができる限り広く情報を収集するために取引の報告を促すことを意図したものと考えられる。

(2) 譲渡所得の計算と申告

1. 譲渡所得の計算

中国課税財産の間接譲渡取引が中国において課税される場合、その課税の対象となるのは、中間持株会社の持分の譲渡による所得のうち中国課税財産に帰属する金額である。しかし、7号公告には、この中国課税財産に帰属する金額の算定に関する具体的な規定がない。

698号通達によれば、持分譲渡所得は持分譲渡収入から持分原価を差し引いて計算される。中国居住者企業の持分を間接譲渡する場合の譲渡所得の計算もこれと同様であるとすれば、中国居住者企業に帰属する持分譲渡収入と持分原価を算定する必要があるが、企業のストラクチャーが複雑な場合や傘下企業数が多い場合、これらの金額の算定は実務上煩雑なものとなる可能性がある。

2. 申告地

7号公告によれば、持分を譲渡される中間持株会社の傘下にある中国居住者企業が複数の地域に所在する場合、持分の譲渡者は各所在地において企業所得税を申告納付しなければならない。その場合、中国課税財産に帰属する所得をさらに各企業に配賦し、あるいは各企業に帰属する所得をそれぞれ計算することが必要となるが、その方法に関する各管轄税務機関の意見は異なる可能性がある。7号公告では、税額の計算方法に関する各管轄税務機関の意見を一致させるべき旨を規定しているが、実務上、このプロセスは非常に時間を有する可能性がある。

(3) 合理的な事業目的の判断

698号通達のもとでの間接譲渡取引に対する課税事例からみれば、これまでは主として中間持株会社の経済実態の有無により課税の要否、すなわち合理的な事業目的の有無の判断が行われてきたといえる。これに対して、7号公告では合理的な事業目的の有無を判断する際に考慮すべき要素を具体的に列挙し、“形式よりも実質を重視する”という原則に基づき、取引の全体のスキームとすべての要素に対して総合的な分析を行わなければならないとしているが、実際の判断はある程度主観的にならざるを得ないものと考えられる。たとえば、図表4の1・2の“主な(に)”については明確な基準があるわけではなく、図表5の3についても、機能とリスクが “限定的”であるか否を客観的に判断することは難しい可能性がある。

合理的な事業目的の有無の判断はあくまでも事実認定の問題であり、多くのケースにおいては、取引の当事者による判断が最終的に税務機関に受け入れられるか否かについて不確定性を伴うことになると考えられる。

(4) グループ内再編への影響

7号公告においてグループ内再編に係るセーフハーバールールが導入されたことは、歓迎すべきことといえる。しかしながら、当該ルールを適用するためには図表6に列挙する3要件をすべて満たすことが必要であり、取引対価の支払に関する3の要件は当該ルールを適用するうえで一定の制約となる可能性がある。

また、グループ内再編に係るセーフハーバールールを適用する場合も中国の税務機関への報告が義務づけられているわけではなく、取引の当事者が自ら報告を行ったとしても、前述のとおり、税務機関がその報告内容に対して確認を与えることは求められていないため、当該ルールの適用がどのように最終的に確定されるのかが明らかではない。

まとめ

7号公告は、非居住者企業が中国国外の中間持株会社の持分を譲渡することにより、中国居住者企業の持分等を間接的に譲渡することとなる取引を行う場合の税務上の取扱いについて、698号通達よりも詳細かつ包括的に規定したものであるが、実務において運用するうえでは、なお多くの不確定事項があるといわざるを得ない。また、中国において納税するか否か、取引の報告を行うか否かを取引の当事者が自ら判断しなければならないという点で、取引の当事者にとっては従来よりも重い責任を負うことになったともいえる。この判断は当然、合理的な事業目的の有無の判断を前提とするものであるが、多くのケースにおいて、その判断は容易なものでないと考えられる。

7号公告で規定されるように、合理的な事業目的の有無は、考慮すべき要素のうちのいずれか1つまたは一部の要素のみに基づいて判断すべきものではなく、あくまでも全体の状況に基づいて判断すべきものである。その判断は往々にして主観的にならざるを得ない面があるものの、取引の当事者は合理的な事業目的の存在、あるいは取引に租税回避の意図がないことを立証するうえで有利と考えられる要素に関する証拠資料をできる限りそろえること、加えて考慮すべき各要素に対する技術的な分析を行うことが必要になると考える。そして、実際の証拠資料の収集状況、潜在的な税務上の影響額等も勘案したうえで、自ら納税するか否か、あるいは取引の報告を行うか否かについても検討する必要がある。

なお、7号公告によれば、当該公告の公布前に発生したが、まだ税務処理が行われていない事項には当該公告が適用される。ここでいう“まだ税務処理が行われていない事項”に、698号通達に基づく届出をすでに行った取引も含まれるのか否かが明らかではないが、いずれにしても将来の取引だけでなく、過去の取引に対しても当該公告が適用される可能性がある点に留意する必要がある。

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