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インド税制-2-
インド法人における資金調達方法 ― 検討すべき税法と規制

税務研究会『国際税務』2017年Vol.37 No.7

インドにおける日系企業は多くのケースでインドでビジネスを運営する上で法人形態を利用する。日系企業のインド子会社においては不動産の購入/賃貸、工場・事務所の建設、運転資金、株式の取得、新規投資、新規事業への投資、研究開発活動等のような様々な場面で資本が必要となる。(『国際税務』2017年Vol.37 No.7)

はじめに

インドにおける日系企業は多くのケースでインドでビジネスを運営する上で法人形態を利用する。日系企業のインド子会社においては不動産の購入/賃貸、工場・事務所の建設、運転資金、株式の取得、新規投資、新規事業への投資、研究開発活動等のような様々な場面で資本が必要となる。

インドにおける日系企業は、インドで認められる資金調達方法につき理解を深めておく必要がある。以下に主な留意事項を記載する。

(ア) 資本の性質
(イ) 規制の仕組み・事前承認の有無・価値評価
(ウ) 資金の還流
(エ) 返済期間
(オ) 上限
(カ) 資金の使用目的にかかる制限
(キ) 課税関係

(ア)~(キ)は日本の投資家がインドに出資する際に生じる疑問点である。日本の投資家は様々な方法でインドの子会社へ資金提供できるが、ここでは主な資金調達方法と上記疑問点についてまとめている。資金調達方法としては、ベストな方法はないが、どのような方法を採用するかは、インド子会社の資金の必要性、資本の回収率の予測、資金の使用目的、ビジネスの収益性、課税関係、合弁会社の株主契約、資本の撤退、その他の株主との調整等による。最近、クロースボーダー取引も増え、投資家は資金調達方法を組み合わせることで税効率化を図ることも可能である。インドにおいて規制の仕組みの変化が近年著しいため、日系企業がインドにおいて資金調達・投資する際に専門家のアドバイスを求めることを推薦する。

法人の資金調達方法として主に以下の二つがある。

 

大項目

小項目

1

株式→返済義務のない資本

1‐1 普通株式

1‐2 全額強制転換条項付優先株式(CCPs)

1‐3 全額強制転換条項付社債(CCDs)

2

借入→返済義務のある負債

2‐1 親子ローン/対外商業借入(ECB)

2‐2 インドルピー建て普通社債('RDBs');

2‐3 上場非転換普通社債(NCDs)


以下では1‐1、2‐1、2‐2に絞って資金調達方法を概観する。

1. 株式

1‐1 普通株式

(ア) 資本の性質

普通株式は会社の株式であり、「議決権付普通株式」が含まれる。法人が清算される場合、債務者および優先株主が支払われた後に普通株主は法人の資産等を請求できる権利がある。

(イ) 規制の仕組み・事前承認の有無・価値評価

インドの子会社が外国の会社に対して株式を発行される際に事業分野別の外国直接投資(Foreign Direct Investment:以下「FDI」)スキームに基づく必要がある。自動承認ルートでは、主な事業分野は株式による投資の場合事前承認が不要で自由に投資できるようになっている。自動承認ルートが認められない事業分野の場合、事前承認が必要である。

また、株式を発行される際にインド中央銀行であるReserve Bank of India(以下「RBI」)が規定する評価ルールに準ずる必要がある。非公開会社の場合、株式の評価価格が、インド証券取引所(Securities and Exchange Board of India:以下「SEBI」)にて登録されたMerchant Bankerまたはインド公認会計士が、国際的に容認されている価格算定方法に従って算定した株式の公正価格より下回ってはいけない。公開会社の場合、SEBIの規定に従って市場価格に基づくことになる。インド法人の株式が日本投資家に対し発行される場合(会社設立等時)、その発行が額面価格で行うことになる。FDIスキームでは、売付選択権、買付選択権等のようなオプションも以下の条件を満たす場合、承認されている。

  • ロックイン期間が最低一年であること
  • ロックイン期間が株式の発行日から適用されること
  • FDIスキームの規定またはRBIが規定する価格と評価ガイドラインに基づいた価格で、非居住者がオプションまたは権利を行使することによりあらかじめ定められたリターンを保証せずに撤退することができること

インド法人は、インドへの送金受領日から180日以内に株式を発行しなければならない。180日以内に株式が発行されない場合、当該送金額は返金されなければならない。また、180日を超えても返金がなされない場合、RBIに対して申請がなされる。かつその申請に十分な理由がある場合、RBIは当該金額に関する株式の割り当てを許可できる。

インド法人が、部分的払込済み株式をFDIスキームおよびそれ以外の法律に基づき、外国法人に対し発行できる。払込済み株式の価格を事前に設定し、かつ、その25%を事前に受領する必要がある。残りの金額は12カ月以内に受領することになっている。残金の受領期限は特別な理由がある場合、RBIが免除することができる。

(ウ) 資金の還流

株主は、配当または資本の評価増等により資金を還流する。自社株買い、減資の際にも会社の利益/資本を還流することができる。

(エ) 返済期間

株式への投資は、清算、自社株買い、減資または株式の移転の際のみ、返還することになる。したがって、株式出資は長期資本投資ともいえる。

(オ) 上限

株式出資の場合、上限金額がない。FDIスキームに一定の分野における出資金額の最低限度額の記載がある。

(カ) 資金の使用目的にかかる制限

株式資本は、資金使途に制限がないため、どの使途にも使える。

(キ) 課税関係

株式への投資は課税対象とならない。株式の移転により発生するキャピタルゲインは、租税条約にて免税される場合を除き、課税対象となる。非公開企業か公開企業か、また株式の保留期間等により税率が異なる。税率は10%~40%(サーチャージと教育目的税は別途)である。公開企業の株式で保有期間が12カ月以上の場合、一定の条件を満たせば、免税になる。インド国内法では、再編およびグループ間取引の場合における免税要件もある。また、別途租税条約における恩恵も受けられるが、日印租税条約においては日本法人がインド子会社の株式を移転した場合の免税規定は存在しない。

株主に対し自社株買いまたは減資を行うことにより資本および利益の返還が可能である。自社株買いの場合、株主は課税されないが、インド企業に対し23.072%の税金がかかる。この時のキャピタルゲインは、自社株買いの金額より株式を発行した際の金額を差し引くことにより決定する。減資の場合、インド法人の累積利益の上限まではみなし配当に該当し、インド企業に対し配当分配税20.36%が課税される。

インドの場合、配当は他の国と異なった課税扱いを採用している。配当の受取りは株主に課税されないが、配当の分配はインド企業に対し20.36%で課税される。インド企業が払った配当分配税は、多くの国で外国税額控除として認められない。また、株式の発行に費やした配当、印紙税等の費用は損金不算入である。

2. 借入

2‐1 親子ローン/対外商業借入(ECB)

(ア) 資本の性質

対外商業借入(External Commercial Borrowing:以下「ECB」)とは、非居住者が提供する銀行借入、バイヤーズ・クレジット、サプライヤーズ・クレジット、証券化スキーム(例えば、変動利付き債、固定利付き社債、部分的・任意的転換権のある優先株・普通社債、転換権のない優先株・普通社債)による商業借入をいう。親会社からのローンもECBに該当し、FDIスキームの規定が適用される。

(イ) 規制の仕組み・事前承認の有無・価値評価

ECBはFDIスキームにより規制されている。このスキームによると、ECBとは承認されたインド国外企業から適格インド国内企業によって調達される商業ローンであり、最低弁済期間、利用目的、上限コスト等の制限を遵守しなければならない。なお、これらの制限は、単独ではなくすべて満たす必要がある。

RBIは借入をする際のECBフレームワークを広く以下の三つに分けられている。

  • TrackⅠ:平均最低弁済期間を3年以上とする米ドル5,000万以下の中期外貨建て対外商業借入れ、また、平均最 低弁済期間を5年以上とする米ドル5,000万以上の中期外貨建て対外商業借入れ
  • TrackⅡ:ECBの額にもかかわらず、平均最低弁済期間を10年とする長期外貨建て対外商業借り入れ
  • TrackⅢ:平均最低弁済期間を3年以上とするインドルピー5,000万以下建て対外商業借り入れ、また、平均最低弁済期間を5年以上とするインドルピー5,000万以上建て対外商業借り入れ

FDIスキームにおいては、ECB資金調達は自動承認ルート(銀行による審査のみ)または承認ルート(RBIの事前承認必要)のどちらかで行うことができる。日系企業がインド企業に対しECBを行う場合(借入の条件をすべて満たしている前提)、ECBが自動承認ルートに該当する。したがって、銀行により審査されることとなり、RBIへの手続は不要になる。

適格借主

三つのTrackに基づいて対外商業借り入れを利用する適格法人のリストは、以下の表のとおりである。

Track Ⅰ

Track Ⅱ

Track Ⅲ

製造業、ソフトウェア開発業、海運業、航空事業、経済特区(SEZ)における企業等

Track Ⅰ記載のすべての法人体、インフラ事業、親会社、CIC(Core Investment Companies)、SEBIの規定枠組みに該当する不動産投資信託(REITs)およびインフラ投資信託(INVITs)

Track Ⅱ記載のすべての法人体、研究開発(R&D)、教育機関を除く育成事業、インフラ支援事業、運送サービスを提供する会社、経済特区(SEZs)の開発業者

(注)詳細は専門家に確認が必要である。

適格貸主

三つのTrackに関する適格貸主は以下のとおりである。

Track Ⅰ

Track Ⅱ

Track Ⅲ

国際銀行、国際資本市場、国際金融機関、地域金融機関、政府系金融機関、輸出信用機関、設備サプライヤー

以下のような海外長期投資家

  • 健全性規制当局(Prudential Regulation Authority)の管理下にある金融機関
  • 年金基金
  • 保険会社
  • 政府系ファンド
  • インドの国際金融サービスセンターにある金融機関

また、インドの銀行の海外支店・海外子会社

Track Ⅰ記載のすべての法人体(インドの銀行の海外支店・海外子会社を除く)

Track Ⅰ記載のすべての法人体(インドの銀行の海外支店・海外子会社を除く)

(注)詳細は専門家に確認が必要である。

(ウ) 資金還流

貸主は借主より利子を受領する権利がある。しかし、利子の支払に上限があり、それぞれの上限は次のとおりである。

Track Ⅰ

Track Ⅱ

Track Ⅲ

平均借入期間が3~5年:6カ月LIBORまたは各通貨の適用金利プラス300ベーシスポイント

平均借入期間が5年超:6カ月LIBORまたは各通貨の適用金利プラス450ベーシスポイント

最大で6カ月LIBORまたは各通貨の適用金利プラス500ベーシスポイント

市場に基づく

 

(エ)   返済期間

Trackごとの返済期間は上述のとおりである。

(オ)   上限

適格貸主が一会計年度につき貸出できるECBの上限は以下のとおりである。

  • インフラ事業および製造業に従事している企業については750百万ドル
(カ)   資金の使用目的にかかる制限

Track Ⅰ

Track Ⅱ

Track Ⅲ

ECBは、以下の形式で設備投資のために利用することができる。

  • 資本財の輸入と現地調達
  • 新規プロジェクト
  • 既存のユニットの近代化・拡張
  • 合弁会社/完全子会社に対する海外直接投資

ECBは、一般企業目的(運転資金を含む)のために利用可能であるが、この場合、当該ECBは、直接的・間接的な株主またはグループ会社から調達しなければならず、かつその最低平均弁済期間は5年でなければならない。

ECBは、以下を除く すべての目的のために利用することができる。

  • 不動産事業
  • 資本市場への投資
  • インド国内での株式投資への利用
  • 上記のいずれかの目的を有するほかの法人体への転貸
  • 土地の購入

持ち株会社は、そのインフラの特別目的事業体(SPVs:Special Purpose Vehicles)に対するローン提供のためにもECBを利用することができる。

本Trackにおけるその他の適格借主たる法人体については、以下を除くすべての目的のためにECBを利用することができる。

  • 不動産事業
  • 資本市場への投資
  • インド国内での株式投資への利用
  • 上記のいずれかの目的を有するほかの法人体への転貸
  • 土地の購入

(注)詳細は専門家に確認が必要である。

  • ソフトウェア事業に従事している企業は200百万ドル
  • 小規模金融(マイクロファイナンス)に従事している企業は100百万ドル
  • 上記以外のすべての企業は500百万ドル

上限を超えたECBは、承認ルートにてRBIの事前承認の対象となる。

(オ)   課税関係

日系企業

受取利子は日系企業に対し課税され、借入が外貨建てで2020年7月1日より以前に提供されている場合、利子の金額にもよるが5.253%/5.41%で課税される。条件を満たさない場合、10%で課税される。条件を満たした場合、日系企業はインドにおいて法人税申告書の提出等のようなコンプライアンス義務がなく、そのため利子がArm's length(独立企業間価格)であることとPAN番号(インド納税者番号)の取得が必要である。

インド子会社

支払利子は全額損金算入可能である。損金算入可能にするための条件は以下である。

  • 日系企業が関連企業である場合、利子は移転価格税制における独立企業間価格により決定される
  • 利子は適正に源泉税が徴収されている
  • 利子は、新規導入された過少資本税制にて設けられた上限を超えないものとする必要がある。利子が1,000万ルピーを超える場合に適用され、かつ、貸し手は非居住者で借り手の関連企業である場合に適用される。利子について利子・税金・減価償却・償却控除前利益(EBITDA)の30%までに控除(損金算入)を制限されている。30%を超える利子は損金不算入となり、否認された支払利子は8年繰越し可能である。ここで注意すべき点としては、第三者からの借入が関連企業からの借入とみなされる「推定の規定」も存在する。その例として、関連企業が第三者からの借入金に対して黙示的なもしくは明示的な保証を与えるケースと、関連企業が第三者が行う借入金に対応する資金を預入するケースがある

2‐2 インドルピー建て社債(RDBs)

(ア)   資本の性質

RBIが2015年9月にECB規定を緩和し、インド居住者である法人は、インドルピー建て普通社債(Masala Bondとも呼ぶ)を発行することにより海外市場から資金調達が可能となる。これは社債の性質を有する。これらの社債はインドルピー建てあるが、決済は外貨でなされる。為替リスクは貸出元にあるため、借主側には為替リスクがない。当該社債は、該当国にて私募債、あるいは、証券取引所に上場することにて発行することができる。

(イ)   規制の仕組み・事前承認の有無・価値評価

◆ 最低償還期間は5年間である。なお、当該インドルピー建て社債に売買オプションがある場合には、当初5年は行使不可

◆ 借入れできる企業:あらゆる法人または企業体

◆ 適格投資者:インドルピー建て社債の発行は、次の国において、その国の居住者に対して可能

● 当該国は金融活動作業部会(Financial Action Task Force:以下「FATF」)の加盟国、またはFATF類似の地域機関の加盟国である

● 証券取引所の規制当局が証券監督者国際機構(IOSCO)の多国間の情報交換枠組みの署名国、またはSEBIとの二国間情報交換枠組みの署名国である

● 当該国はFATFの声明において、次のいずれかに該当する国・地域として識別されていないこと

・ 戦略的なマネーロンダリング・テロ資金供与対策に欠陥があり、対抗措置を講じる必要がある

・ マネーロンダリング・テロ資金供与対策に重大な欠陥があり、それら欠陥に対応するため顕著な進展をみせていない、または金融活動作業部会が策定したアクションプランにコミットしていない

(ウ)   資金還流

RDB投資家は、発行日から決済日まで利子を受け取る権利がある。インドルピー建て借入れ費用は、当該企業が国内で借入れする場合の費用と相当レベルである必要がある。

(エ)   返済期間

通常、5、7または10年で決済可能である。つまり、5、7または10年後にこれらを返済する義務が生じる。返済期間は、社債が発行される際に明記される。

(オ)   上限

自動認可ルートでは、借入金額が年間750百万ドルまで認められる。750百万ドルを超える場合、RBIの事前認可が必要である。

(カ)   資金の使用目的にかかる制限

借り入れた資金は、次の用途には適用不可。それ以外のあらゆる用途に適用可能。

  • 統合タウンシップ、手頃な住宅プロジェクト以外の不動産関連業務
  • 資本市場への投資あるいは国内の普通株式投資のため
  • FDIにより禁止されている活動
  • 上記のいずれかを目的とする他企業への転貸
  • 土地購入
(キ)   課税関係

利子の受取は、ECBと同様な課税扱いになる。インド国内法では、インドルピー建て普通社債に関する以下の所得項目が免税を受けることになっている。

  • 外貨に比べてインドルピーの評価増により発生するゲイン
  • 非居住者よりほかの非居住者へインドルピー建て社債の移転により発生するゲイン

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