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タックスヘイブン対策税制の平成29年度改正と企業への影響

『国税速報』平成29年1月30日号

平成28年12月に与党から公表された平成29年度税制改正大綱(大綱)では、タックスヘイブン対策税制(CFC 税制)に係る重要な改正が盛り込まれています。当該改正は、経済実体に即した課税を行うべきとするBEPS プロジェクト最終報告書の趣旨を踏まえたものであり、現行制度からの重要な改正点として3点に焦点を当てたいと思います。(『国税速報』平成29年1月30日号)

【疑問相談】国際課税

「タックスヘイブン対策税制の平成29年度改正と企業への影響」 

Question:
内国法人である当社は、オランダとシンガポールに地域統括会社を設立してEUおよびアジア地域に製造・販売拠点を展開しています。オランダ子会社はいわゆるペーパーカンパニーですがトリガー税率テスト(20%以上)を充足し、また、シンガポール子会社は適用除外基準を充足するため、両社ともに合算課税を受けておりません。しかし、平成29年度税制改正によるタックスヘイブン対策税制の改正により、当社のような法人に影響を与える可能性があると聞きました。現在は与党税制改正大綱が公表された段階で法案も成立していないため、今後変更が生じる可能性は承知しておりますが、主な改正の内容や想定される影響に関する概略について、ご教示いただけますでしょうか。

Answer:
平成29年度税制改正によるタックスヘイブン対策税制の改正では、ペーパーカンパニー等への課税導入、受動的所得の範囲拡大が予定されており、従来は課税を受けていなかった外国関係会社が会社単位または受動的所得に関する合算課税の対象になる可能性があることに注意が必要です。

【解説】

1. 概要

平成28年12月に与党から公表された平成29年度税制改正大綱(以下「大綱」)では、タックスヘイブン対策税制(以下「CFC 税制」)に係る重要な改正が盛り込まれています。当該改正は、経済実体に即した課税を行うべきとするBEPSプロジェクト最終報告書の趣旨を踏まえたものであり、現行制度からの重要な改正点として以下3点に焦点を当てたいと思います。
なお、CFC 税制に係る下記の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用される予定です。

(1)ペーパーカンパニー等への課税導入

現行のCFC 税制では、トリガー税率テストにより会社単位での合算課税の有無を判定するため、外国子会社の租税負担割合がトリガー税率(20%)以上であれば、たとえ経済実体を伴わない所得であっても合算されない問題が指摘されていました。

この点、トリガー税率を上回る法人を一律CFC 税制の対象外とするのではなく、①ペーパーカンパニー、②事実上のキャッシュボックス、③ブラックリスト国所在法人については、租税負担割合が30%未満である場合に会社単位の合算課税の対象とする制度が導入される予定です。それぞれの定義は以下のとおりです。

① ペーパーカンパニー

次に掲げる要件のいずれも満たさない外国関係会社。

  • 実体基準:その主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有していること
  • 管理支配基準:その本店所在地国においてその事業の管理、支配および運営を自ら行っていること

② 事実上のキャッシュボックス

事実上のキャッシュボックスに該当するか否かの判定は、外国子会社が「金融子会社等(注)」に該当するか否かで異なりますが、製造子会社のように金融子会社等に該当しない会社については、次の(a)および(b)のいずれも満たす外国関係会社が事実上のキャッシュボックスと定義されています。

(a)

下記(2)改正後の受動的所得(比較表)のうち、k以外の所得の合計額

> 30%

総資産の額


(b)

有価証券、貸付金、無形固定資産等の合計額

> 50%

総資産の額

(注)金融子会社等とは、本店所在地国の法令に準拠して銀行業等を営む外国関係会社で、本店所在地国においてその役員または使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務のすべてに従事していること等の要件を満たすものをいいます。

③ ブラックリスト国所在法人

租税に関する情報の交換に非協力的な国または域として財務大臣が指定する国または地域に本店等を有する外国関係会社。

(2) 受動的所得への範囲拡大

① 改正の内容

受動的所得に係る部分合算課税は、資産運用的な所得を軽課税国に付け替える租税回避行為を防止する観点から現行税制にも設けられていますが、平
成29年度税制改正後も当該え方は踏襲されています。

大綱における受動的所得(改正前は資産性所得)の範囲は31ページ比較表のとおりであり、課税対象が大幅に拡大される見込みですので注意が必要です。

なお、受動的所得として列挙されている各所得について、一定の除外規定が設けられています。例えば、利子については、外国関係会社が行う事業に
係る業務の通常の過程で得る預金利子等、一定のものが合算対象から除外される予定です。

② 部分合算課税の範囲

受動的所得に係る部分合算課税の範囲は、CFC税制の対象となる外国関係会社が金融子会社等に該当するか否かで異なりますが、金融子会社等に該当しない外国関係会社については、基本的に31ページの比較表にあるa~ kの合計金額が部分合算課税の対象となる予定です。なお、dからg、およびjの所得について欠損が生じる場合、当該事業年度の部分合算金額からの控除は認められず、繰越控除の対象になる予定です。

(3)書類の整備

大綱では、経済活動基準(おおむね現行税制の適用除外基準に相当)の充足やペーパーカンパニー等の適用除外に関する書類等の提出要件が明記されており、期限までに提出等がないときは、外国関係会社は経済活動基準等を満たさないものと推定される予定です。

2内国法人への主な影響

貴社のオランダ子会社は、オランダの法人税率が25%であるため現行税制上はトリガー税率テストにより基本的にCFC税制が発動することはありません。しかし、平成29年度税制改正後は、租税負担割合30%未満のペーパーカンパニー等は会社単位で合算課税の対象になるため、オランダ子会社がペーパーカンパニー等に該当するか否かを検討する必要があります。また、シンガポール子会社については、現行税制上の適用除外基準を充足しており合算課税の対象になっていないとのことですが、受動的所得の範囲拡大により部分的に合算課税が生じる可能性に注意が必要です。例えば、出資割合10%以上25%未満の投資先からの配当は、改正後は原則として受動的所得に該当すると思われ、また、グループファイナンスに係る利子についても、その内容によっては受動的所得に該当するものとして合算課税の対象になる可能性があります。

【受動的所得の範囲に係る比較表】

現行制度の資産性所得の範囲

 

改正後の受動的所得の範囲

債券の利子

a. 利子

債券の償還差益

持株割合10%未満の株式等に係る配当

b. 配当等(25%以上の配当等の一定のものを除く)

  c. 有価証券の貸付けの対価

持株割合10%未満の株式等の譲渡益

d. 有価証券の譲渡損益

債券の譲渡益

 

e. デリバティブ取引損益

 

f. 外国為替差損益

 

g. 上記a.からf.までに掲げる所得を生ずべき資産から生ずるこれらの所得に類する所得

船舶・航空機の貸付の対価

 

h. 有形固定資産の貸付けの対価
(主として本店所在地国で資料される等一定のものに係る対価を除く)

 

特許権等の使用料(自己開発等一定のものに係る使用料を除く)

 

i. 無形資産等の使用料
(自己開発等一定のものに係る使用料を除く)

 

 

j. 無形資産等の譲渡損益
(自己開発等一定のものに係る譲渡損益を除く)

 

 

k. 総資産等に比して根拠性の希薄な異常所得

 


上記※の所得については、事業(株式保有業等の特定事業を除く)の性質上重要で欠くことのできない事業から生じたものは合算対象から除外。
上記◎の所得については、一定の要件を満たす金融子会社等については合算対象から除外。

3最後に

CFC 税制に係る上記改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用される予定です。改正税法に係る法案は今後の国会で審議され、当該審議等により大綱で示された改正方針について変更の可能性がありますので、今後の動向について注視が必要です。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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