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軽課税国に所在する統括会社を買収した場合の課税上の留意点

『国税速報』平成27年11月30日号

特定外国子会社等の行う主たる事業が株式等の保有である場合には、外国子会社合算税制における適用除外基準の一つである事業基準を原則として満たすことができず、同税制の適用除外を受けることができませんが、税務上、例外的に設けられた「事業持株会社」に該当する場合には、事業基準を満たすものとされています(措法66の6③)。(『国税速報』平成27年11月30日号)

【疑問相談】国際課税

「軽課税国に所在する統括会社を買収した場合の課税上の留意点」 

Question:  
内国法人である当社は、アジア域内にある複数の事業会社を保有し統括するシンガポール法人X社の100%株式を取得しました。X社はシンガポールにおける統括会社に係る優遇税制の適用により、同国の法定の法人税率17%を下回る実効税率を享受しています。
X社の保有する事業会社を調査したところ、中国において製造業を営む中国法人1社(X社の100%保有)、マレーシア及び日本において当該各国の顧客に製品の卸売を行うマレーシア法人1社及び日本法人1社(共にX社の100%保有)並びに投資目的で保有する外国法人1社(X社の15%保有)が存在することが判明しています。
外国子会社合算税制における特定外国子会社等に該当するX社の買収後、当社において同税制の適用除外基準の検討を行うにあたり、どのような点に留意すべきでしょうか。

Answer:
平成27年度税制改正により、外国子会社合算税制の適用除外基準の一つである事業基準(事業持株会社に係る特例)について、被統括会社の範囲、統括会社の要件及び事業持株会社の要件が見直されました。
被統括会社の範囲に、外国法人だけではなく、内国法人も含まれることになりますが、事業持株会社の要件においては、統括会社が保有する株式等の帳簿価額要件(すべての被統括会社の株式簿価のうち外国法人である被統括会社の株式簿価の占める割合が50%超であること)又は統括会社が受領する統括業務対価要件(すべての被統括会社に係る統括業務対価のうちに外国法人である被統括会社に係る統括業務対価の占める割合が50%超であること)が新たに設けられています。
なお、非関連者基準の判定上、卸売業を主たる事業として営む統括会社が内国法人である被統括会社との間で行う取引については、従来どおり、関連者取引に該当するものとされています。
この改正は、特定外国子会社等の平成27年4月1日以後に開始する事業年度に係る適用除外基準の判定において適用されます。

【解説】

1. 外国子会社合算税制における事業持株会社に関する特例

特定外国子会社等の行う主たる事業が株式等の保有である場合には、外国子会社合算税制における適用除外基準の一つである事業基準を原則として満たすことができず、同税制の適用除外を受けることができませんが、税務上、例外的に設けられた「事業持株会社」に該当する場合には、事業基準を満たすものとされています(注1) (措法66の6③)。

特定外国子会社等が事業持株会社に該当するためには、その特定外国子会社等が一定の被統括会社に対して統括業務を行う統括会社に該当し、株式保有等に関して一定の割合を満たす必要があり、詳細は次のとおりとなります。

被統括会社
被統括会社とは、次の要件を満たす法人をいいます(措令39の17②)。

① 統括業務を行う特定外国子会社等にその法人の発行済株式等(発行済株式又は出資(自己株式を除きます)の総数又は総額をいいます。)及び議決権のいずれについても、次の法人の区分に応じ、それぞれに定める割合を保有されていること
外国法人… 25%以上
内国法人… 50%以上

② 以下のいずれかに該当すること

イ    特定外国子会社等、その特定外国子会社等の発行済株式等の10%以上を直接及び間接に保有する  内国法人及びその内国法人とその特定外国子会社等との間に株式等の所有を通じて介在する外国法人(以下、「判定株主等」といいます。)に支配(発行済株式等の50%超を保有されている場合等をいいます。)されている法人(以下、「子会社」といいます。)
ロ 判定株主等及び子会社に支配されている法人(以下、「孫会社」といいます。)
ハ 判定株主等並びに子会社及び孫会社に支配されている法人

③ その法人の本店所在地国においてその事業を行うに必要と認められるその事業に従事する者を有すること

統括会社
統括会社とは、次の要件を満たす特定外国子会社等をいいます(措令39の17④)。

① 一の内国法人によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されていること
② 2以上の外国法人である被統括会社に対して統括業務を行っていること
③ 本店所在地国において統括業務に係る固定施設等及びその統括業務に従事する者(役員等を除きます。)を有していること

事業持株会社
事業持株会社とは、統括会社のうち株式等の保有を主たる事業とするもので、次の要件を満たすもの(①及び②、又は①及び③)をいいます(措令39の17④)。


統括会社の事業年度終了の時に有する被統括会社の株式等の貸借対照表上の帳簿価額の合計額 ÷ 統括会社の事業年度終了の時に有する株式等の貸借対照表上の帳簿価額の合計額 > 50%


統括会社の事業年度終了の時に有する外国法人である被統括会社の株式等の貸借対照表上の帳簿価額の合計額 ÷ 統括会社の事業年度終了の時に有するすべての被統括会社の株式等の貸借対照表上の帳簿価額の合計額 > 50%


統括会社の事業年度において外国法人である被統括会社に対して行う統括業務に係る対価の額の合計額 ÷ 統括会社の事業年度においてすべての被統括会社に対して行う統括業務に係る対価の額の合計額 > 50%

なお、このような事業持株会社に係る特例は、平成27年度税制改正において見直されたものであり、特定外国子会社等の平成27年4月1日以後に開始する事業年度に係る適用除外基準の判定において適用されます(改正法附則83①)。
 

2. 本件へのあてはめ

X社が外国子会社合算税制の適用除外基準を満たすかどうかの検討においては、X社の行う主たる事業が何であるか検討する必要があります(注2)

仮にX社の主たる事業が持株業であるとされる場合において、事業持株会社に係る特例を満たさないときには、適用除外基準の一つである事業基準を満たせず、結果として適用除外基準を満たせないことになります。

X社のある事業年度末における資本関係並びにX社の有する法人の株式等の帳簿価額及び統括業務に係る対価の額は次ページ図表のとおりであるとします。

なお、X社は統括業務の実施等の統括会社となる要件を満たし、その傘下の法人はその事業に係る従事者を有している等の被統括会
社となる要件を満たしていることを前提とします。

事業持株会社に係る特例の充足状況は次のとおりとなります。

①の要件については、X社の保有する株式等の帳簿価額の合計額550のうちに、被統括会社に該当する法人(中国法人、マレーシア法人及び日本法人)の株式等の帳簿価額の合計額500の占める割合が91%で50%超となるため、満たすことになります。

②の要件については、X社の保有する被統括会社の株式等の帳簿価額の合計額500のうちに、外国法人である被統括会社の株式等の帳簿価額の合計額220の占める割合が44%で50%以下となるため、満たせないことになります。

ここで、③の要件ついては、X社が被統括会社から受領する統括業務に係る対価の額の合計額25のうちに、外国法人である被統括会社から受領する統括業務に係る対価の額の合計額16の占める割合が64%で50%超となるため、満たすことになります。

結果として①と③の要件を満たすために、X社は事業持株会社に該当することになります。

3. その他の留意事項

特定外国子会社等が卸売業を主たる事業とする統括会社に該当する場合には、非関連者基準の判定において、その特定外国子会社等に係る被統括会社を関連者の範囲から除外して判定する特例が従前より設けられていますが、平成27年度税制改正による見直し(内国法人も被統括会社に該当しうる措置)にも関わらず、内国法人である被統括会社は関連者の範囲から除外されていないことに留意する必要があります(措令39の17⑩)。
 

(注1)外国子会社合算税制における適用除外基準の充足のためには、他に実体基準、管理支配基準および所在地国基準を満たす必要があります。

(注2)特定外国子会社等が2以上の事業を営んでいる場合において、そのいずれの事業が主たる事業であるのかという判定については、それぞれの事業に属する収入金額又は所得金額の状況、使用人の数、固定施設の状況等を総合的に勘案して判定するとされています(措通66の6―8、措通66の6―17注書)。
 

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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