ナレッジ

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)における物流統括会社に関する特例

『国税速報』平成28年5月9日号

特定外国子会社等のうち主たる事業が卸売業である場合には、その事業年度における卸資産の販売に係る収入金額又は仕入金額の合計額のうちに非関連者との間の取 引が50%超である場合には、適用除外の要件のうち非関連者基準の要件を満たすこととされています(措法66の6③一、措令39の17⑧一)。(『国税速報』平成28年5月9日号)

【疑問相談】国際課税

「外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)における物流統括会社に関する特例」 

Question:

内国法人である弊社は、現在シンガポールに所在する子会社A社を含め多くの国に複数の関係会社を有しております。シンガポールの法人税率は17%と軽課税国に該当するため、A社は外国子会社合算税制の適用対象である「特定外国子会社等」に該当しますが、現状は同税制における適用除外基準を充足するため、合算課税の適用は受けておりません。なお、A社の主たる事業は卸売業となります。

弊社は、現在マレーシア(法人税率24%)に所在するB社の株式の100%を取得することを検討しております。B社買収にあたり、外国子会社合算税制において留意すべき点がありましたら教えていただけますでしょうか。
なお、A社とBは売上及び仕入双方において多くの取引を行っております。また、弊社はA社の株式を100%保有しており、A社は傘下に複数の子会社を有しております。

Answer:
A社は現状は外国子会社合算税制における適用除外要件を充足しているとのことですが、貴社がB社を買収することにより、B社との取引が関連者取引となり、同制度における非関連者基準の充足性について影響を及ぼす可能性があります。

B社買収後、非関連者基準の充足性に困難が生じる場合には、A社の機能を物流統括会社とすることで非関連者基準を充足できるか否かを確認し、当該物流統括会社の要件を充足できる体制を整える検討をすることが有用と考えます。

【解説】

1. 外国子会社合算税制における物流統括会社に関する特例

特定外国子会社等のうち主たる事業が卸売業である場合には、その事業年度における卸資産の販売に係る収入金額又は仕入金額の合計額のうちに非関連者との間の取引が50%超である場合には、適用除外の要件のうち非関連者基準の要件を満たすこととされています(措法66の6③一、措令39の17⑧一)。

ただし、特定外国子会社等が統括会社に該当する場合には、当該特定外国子会社等に係る外国法人である被統括会社は関連者に含まれないこととされています(措令39の17⑩)。

関連者
ここにいう関連者とは、特定外国子会社等の発行済株式等の10%以上を直接又は間接に保有する内国法人と特殊な関係のある者(当該内国法人が発行済株式等の50%超の株式を直接又間接に保有している当該他の法人)を含むこととされています(措法66の6③一、措令39の17⑦五ロ)。

統括会社
統括会社とは、特定外国子会社等のうち以下の全てを満たす特定外国会社等とされています(措令39の17④)。
① 一の内国法人によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されていること。
② 外国法人である二以上の被統括会社に対して統括業務を行っていること。
③ 本店所在地に統括業務に係る固定施設及び統括業務を行うに必要と認められる当該統括業務に従事する者(専ら統括業務に従事する者に限り、役員を除く)を有していること。

被統括会社
被統括会社とは、以下の全ての要件を満たす法人とされています(措令39の17②)。
① 統括会社が発行済株式等の数又は金額及び議決権の総数の25%以上(内国法人の場合は、50%以上)を直接に保有すること。
② 本店所在地にその事業を行うに必要と認められる当該事業に従事する者を有すること。
③ その統括会社の一定の関連者であること(内国法人が直接又は間接に被統括会社の株式等の50%超を保有すること)。

統括業務
統括業務とは、統括会社が被統括会社との間における契約に基づき行う業務のうち当該被統括会社の事業の方針の決定又は調整に係るもの(当該事業の遂行上欠くことのできないものに限る。)であって、当該統括会社が2以上の被統括会社に係る当該業務を一括して行うことによりこれらの被統括会社の収益性の向上に資することとなると認められるものとされています(措令39の17①)。

別表添付要件
物流統括会社に該当することにより、適用除外要件を充足する場合には、確定申告書に別表17(3)付表二の添付があり、かつ、関連書類(統括会社と被統括会社との間で交わされた契約書等)を保存する必要があります(措法66の6⑦⑨、措通66の6―19の3、66の6―19の4)。

2. 本件へのあてはめ

A社は現状におきましては、外国子会社合算税制における適用除外要件を充足しているとのことから、現状は適用除外要件である事業基準、実体基準、管理支配基準、及び、非関連者基準を充足しているものと理解します。
貴社はB社の株式の100%を取得することを検討しているとのことですが、当該取得後は貴社とB社には上述の関連者としての特殊な関係に該当することとなりますので、A社とB社は外国子会社合算税制における関連者に該当することとなります。

A社とB社グループは仕入及び売上の双方において多くの取引を行っているとのことですので、A社は現状は非関連者基準を満たすものの、B社との取引が関連者取引となることにより、非関連者基準を満たさなくなる可能性がえられます。したがって、B社を買収した後、A社が仕入又は売上のいずれかにおいて非関連者基準を充足することとなるか否かにつき試算し検討することが重要と考えます。

仮に、非関連者基準を充足することが困難と予測される場合には、対応策の一つとして、A社の機能を物流統括会社とした上で、A社の非関連者基準の充足性について検討する必要があります。

A社が物流統括会社に該当した場合には、A社の子会社のうち被統括会社に該当する外国法人との間の取引は、関連者取引に該当しないこととなります(A社は子会社とも多くの取引を行っているとのことですので、被統括会社に該当するA社子会社との取引を除いた場合に非関連者基準を充足する可能性があるものと考えられます。)。したがって、A社を物流統括会社とすることにより非関連者基準の充足が予測される場合には、B社買収前からA社が物流統括会社の要件を充足するよう事業体制の整備を含め、検討を開始することをお勧めします。

3. その他留意点

物流統括会社に該当する場合において、適用除外要件を適用する場合には、申告書に別表の添付と関連書類の保存が必要となります。関連書類には、統括業務に関する契約書も含まれますので、統括業務に関する契約を適切に締結し、その契約書を保存する必要があります。

PDF

こちらから記事の全文をダウンロードできます。

 

 

 

※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

(658KB, PDF)

関連サービス

サービスのご案内

安定的で持続可能な成長のため海外に進出している、または、これから進出を予定している日系企業が、事業運営上の目的と整合した形でバランスをとりながら、グローバルな観点から適切な税務リスクの管理・税金コストの最適化を図れるよう、デロイト トーマツ税理士法人はデロイトのグローバルネットワークを活用し、日系企業の海外投資に関する国際税務問題についてワンストップのサービスを提供します。

お役に立ちましたか?