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米国子会社へ出向する者が非居住者期間に居住用不動産を売却する場合の課税関係

『国税速報』平成28年9月26日号

日本法人の海外支店などで勤務するため 1年以上の予定で出国する者は、一般的に は、出国の日の翌日から日本国内に住所を 有しない者と推定され所得税法上の非居住 者に該当します(所法3、所令15、所基 通3―3)。(『国税速報』平成28年9月26日号)

【疑問相談】所得税

「米国子会社へ出向する者が非居住者期間に居住用不動産を売却する場合の課税関係」

Question:
私は日本法人A社に勤務していましたが、本年9月に米国子会社へ3年間の予定で出向することになりました。私はこれまで15年間居住していた住宅を出国後に売却する予定ですが、その際、売却益が生じた場合どのように課税されるのでしょうか。なお、出国後私は日本国内に恒久的施設に当たるものを有することはありません。

Answer:
あなたは米国子会社へ1年以上の予定で出向することになるため、出国の日の翌日から日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者と扱われます。非居住者は、その所得のうち日本国内で発生したもの(国内源泉所得)について所得税が課税され、出国後に日本国内に有する不動産を売却したときの所得に対しても所得税が課税されることとなります。

また、その不動産の譲渡所得は居住者と同様の方法で申告を行うこととされ、あなたがその居住していた住宅を居住の用に供しなくなった日から3年目の12月31日までに売却する場合には、居住者と同様に居住用財産の譲渡に係る3,000万円の特別控除を適用することができます。さらに、不動産の所有期間が10年を超えていることから、長期譲渡所得の軽減税率の特例も居住者と同様に受けることができるとえられます。

なお、あなたは出国後に確定申告が必要となりますので、納税管理人の届出書を所轄の税務署に提出し、その納税管理人を通じて申告を行うことになります。

【解説】

1. 居住形態の判定と国内法による課税関係

日本法人の海外支店などで勤務するため1年以上の予定で出国する者は、一般的には、出国の日の翌日から日本国内に住所を有しない者と推定され所得税法上の非居住者に該当します(所法3、所令15、所基通3―3)。

非居住者は国内源泉所得のみに対し課税されますが、恒久的施設を有しない非居住者については、日本の公社債の運用・保有により生ずる所得、不動産のほか日本にある一定の資産に係る譲渡所得、日本にある不動産の賃貸に係る所得などについて居住者の課税方法が準用され(所法164①二、165)、それ以外の国内源泉所得については分離課税の方法で課税されます(所法164②二)。

したがって、あなたが出国後、非居住者となってから居住していた住宅を売却したことによる所得についても、国内にある土地・建物等の譲渡による国内源泉所得(所法161①五)として、居住者の課税方法を準用して課税が行われることになります。

2. 日米租税条約の適用

あなたが出国後、米国の居住者と扱われ、かつ、日本において非居住者として日本の源泉所得に対して課税が行われる場合には、その課税関係に日米租税条約の規定が適用されます(日米条約1①)。

日米条約では「一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産の譲渡によって取得する収益に対しては当該他方の締約国において租税を課すことができる。」(日米条約13①)とされており、米国の居住者が日本に存在する不動産の譲渡によって取得する利益に対して、日本が租税を課すことを認めています。

なお、日米条約は米国が自国の居住者に対して、米国国内法に従って課税を行うことに対し原則的に影響を与えるものではない(日米条約1④(a))ため、日本が日本に存在する不動産の譲渡による所得に対して課税を行う場合であっても、米国もその不動産の譲渡所得に対して自国の国内法に従って課税を行うことができます。この場合、米国における課税では、日本で課された所得税を米国の外国税額控除の制度によって控除することになります(日米条約23②)。

3. 非居住者の土地建物等の譲渡所得

非居住者が国内にある土地・建物等を譲渡したことによる所得については、居住者の課税方法が準用されますが、非居住者の場合にも居住者の場合と同様に、その年の1月1日において譲渡する土地・建物等の所有期間が5年を超える場合には、長期譲渡所得として他の所得と分離して、所得税の税率15%で課税されることとなります(所法33③、165①、措法31①)。

これに対して、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の土地・建物等を売却したときの所得は、短期譲渡所得に該当し、所得税の税率30%で他の所得と分離して課税されることになります(措法32①)。

なお、平成25年から平成49年までの間は、所得税の金額の2.1%が復興特別所得税として課せられます(復興財確法13)。

4. 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除

個人が居住用財産を売却(当該個人の配偶者、親子、直系血族、内縁関係にある者、生計を一にする親族へ譲渡した場合を除きます。)した場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円の特別控除を適用することができますが、この特別控除は居住者だけではなく非居住者にも適用されます(措法35①)。

また、この場合に当該個人が住んでいた家屋やその敷地等を譲渡する場合に、当該個人が居住の用に供しなくなってから空家となった場合や他の用に供した場合であっても、居住の用に供しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した場合には、この特例を受けることができます。

なお、当該個人が売却した年の前年および前々年に以下の特例等の適用を受けている場合には、この特例の適用を受けることができないことも居住者の場合と同様です。

  • 本特例
  • 特定居住用財産の買換え(交換)の特例(措法36の2、36の5)
  • 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除(措法41の5)
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除(措法41の5の2)

5. 居住用財産に係る3,000万円の特別控除と長期譲渡所得の軽減税率の併用

個人が有する居住用財産を売却した場合に、売却した年の1月1日において売却した居住用財産(建物と敷地を売却する場合は双方)の所有期間が10年を超え、売却した年の前年および前々年にこの軽減税率の特例を受けていない場合には、この軽減税率の特例を3,000万円の特別控除の特例と併用して受けることができます。

軽減税率の特例を受けた場合、所得税の金額は、課税長期譲渡所得金額(3,000万円の特別控除適用の際は控除後の金額)が6,000万円以下の場合は課税長期譲渡所得金額に10%を乗じた金額となり、課税長期譲渡所得金額が6,000万円超の場合は、課税長期譲渡所得金額から6,000万円を引いた金額に15%を乗じ、600万円を加算した金額となります(措法31の3)。

6. 譲渡対価に対する源泉徴収

国内において、非居住者に対し日本国内にある土地・建物等の譲渡の対価を支払う場合には、その支払者は土地・建物等の譲渡の対価が1億円以下、かつ、その土地・建物等を譲り受けた個人が自己またはその親族の居住の用に供するために譲り受ける場合を除き、その譲渡の対価に対し、10.21%の税率で所得税および復興特別所得税を源泉徴収することとされています(所法161①五、212①、213①、所令281条の3、復興財確法28)。

不動産の売却の対価がこの源泉徴収の対象となった場合には、あなたは確定申告においてこの源泉徴収税額を清算することになります。

7. 納税管理人の届出

非居住者が日本において申告等を行う必要がある場合には、納税管理人を選任し、この納税管理人を通じて申告・納税を行うことになり、当該個人の納税地を所轄する税務署長へ納税管理人の届出書を提出する必要があります(通法117)。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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