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上場株式と未上場株式の株式譲渡所得の損益通算

『国税速報』平成28年2月8日号

所得税法では、所得の性質により所得を分類し、それぞれ所得金額を計算します。原則として、これらの所得を合算し課税所得を計算し、税率を乗じて税額を計算する、「総合課税」の方法で課税されることとなっていますが、株式の譲渡による所得については、他の所得と区分し、税率を適用する「申告分離課税」の方法により税額が計算されます。(『国税速報』平成28年2月8日号)

【疑問相談】資産税(譲渡所得)

「上場株式と未上場株式の株式譲渡所得の損益通算」

Question:
私は、国内の上場株式を国内の金融機関の特定口座を通じて売却しましたが、本年の株式売買に係る収支は損失となりました。このほかに、国外の証券会社を通じて国外の未上場株式の売却も行いましたが、こちらは利益が生じています。国内の特定口座を通じて株式の売買を行った場合には、特定口座内で課税が完結し申告する必要がないと聞きましたが、この国内と国外における株式売買の損益は通算することができないのでしょうか。

なお、私は日本国籍保持者で、本年1年間国内に居住しています。

Answer:
国内の特定口座を通じて行った株式の売買については、証券会社が年間の損益の計算を行い、証券会社が納税を行うことで、その利益について確定申告不要とすることができます。しかし、この場合のように、未上場株式の譲渡も行っている場合には、確定申告書を提出することで、特定口座を通じた上場株式の譲渡損失と未上場株式の譲渡益を通算することができます。

ただし、平成25年度税制改正により、平成28(2016)年1月1日以後の取引については、上場株式と未上場株式間の損益通算は、できないこととされました。

【解説】

1. 株式の譲渡益課税

所得税法では、所得の性質により所得を分類し、それぞれ所得金額を計算します。原則として、これらの所得を合算し課税所得を計算し、税率を乗じて税額を計算する、「総合課税」の方法で課税されることとなっていますが、株式の譲渡による所得については、他の所得と区分し、税率を適用する「申告分離課税」の方法により税額が計算されます(措法37の10①)。

金融商品取引業者等(国内の証券会社等)で開設した「特定口座制度」を利用し、「源泉徴収あり」を選択した場合には、その口座内の上場株式の譲渡益に対する納税は特定口座内で完結し(所得税及び復興税15.315%、住民税5%)、原則として確定申告をする必要はありません(措法37の11の5①)。ただし、口座内の上場株式等の譲渡損失と、他の取引で発生した株式譲渡益とを相殺する場合には、確定申告をする必要があります。

2. 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除(平成27年分の確定申告までの制度)

ご質問の例では、国内取引の上場株式の譲渡損失と国外取引の非上場株式の譲渡益のどちらが大きいか、明らかになっていませんが、国内取引の譲渡損失が、国外取引の譲渡益より少なければ、二つの損益を通算した後の国外取引による譲渡益を確定申告で申告することになります。この譲渡損益の通算は、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を用いて上場分、未上場(未公開)分のそれぞれの株式譲渡による収入金額、取得費用を計算し、通算後の最終的な譲渡益を求め課税所得とします。申告書上の税率は、特定口座を利用した場合の税率と同じです。

逆に、国内取引の譲渡損失が、国外取引の譲渡益より大きければ、二つの損益を通算した後の利益はなくなり、申告すべき所得はゼロとなります。この場合の控除しきれない損失の金額は、翌年以後3年間にわたり、確定申告により株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得の金額から繰越控除することが可能です(措法37の12の2①⑥)。

この繰越控除を受けるためには、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を別途記入し、申告書に添付する必要があります。

この譲渡損失の配当との通算及び繰越控除の適用は、国内の金融商品取引業者等を通じた上場株式等の譲渡損であることが必要なため、国内取引分と国外取引分の損益の通算金額が、国内取引分の損失金額である場合にのみに適用できることになります(措法37の12の2②)。

3. 税制改正に伴う平成28(2016)年以後の課税関係

平成25年度税制改正により、平成28年1月1日以後のいわゆる「金融所得課税の一体化」により、平成27年まで損益通算できなかった取引が通算可能となった一方で、従来通算が可能であった取引が通算不可となるケースも存在します。

【通算が拡大された取引】

旧租税特別措置法37条の10第2項で規定された「株式等」は、平成28年以降、上場株式とそれ以外の株式に区分され、「一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」(新措法37の10)と「上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」(新措法37の11)とそれぞれ別々の申告分離課税として計算されることになりました。そして、国債や公募公社債投資信託の譲渡損益の通算が、上場株式の譲渡損益との間で可能となりました。

また、「特定公社債等」の利子所得が上場株式等に係る損益通算の特例の対象となり、「上場株式等に係る配当所得等」として、申告分離課税の対象(注)となりました(新措法8の4)。

(注)申告分離課税に一本化され、総合課税での申告はできないことになりました。

以上のとおり、上場株式の譲渡損を、国債や公募公社債投資信託の利子と相殺することが可能となりました。

【通算が縮小された取引】

従来の「株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」の規定が、「一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」と「上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例」としてそれぞれ別の区分として規定されたことで、それまで可能であった上場株式と未上場株式(一般株式)間の譲渡損益の通算は、できないこととされました。

したがって、ご質問に対する上場株式と未上場株式の譲渡損益の通算が可能という回答も平成27年分の申告までの取扱いとなります。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

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