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株式移転があった場合における受取配当等の益金不算入額の計算および所得税額控除に関する留意点

『国税速報』平成28年6月13日号

受取配当金の益金不算入制度は、保有する株式等の区分により益金不算入割合が定められています。剰余金の配当(資本剰余金の減少に伴うものおよび分割型分割によるものを除きます)に対する所得税の額のうち、法人税の額から控除できる額は、その元本を所有していた期間に対応するものとして計算される所得税の額とされています (法法68①、法令140の2①一)。(『国税速報』平成28年6月13日号)

【疑問相談】法人税

「株式移転があった場合における受取配当等の益金不算入額の計算および所得税額控除に関する留意点」

Question:
当社は、平成28年5月1日に株式移転により設立された持株会社です。設立初年度である当期(平成28年5月1日~平成29年3月31日)において、株式移転完全子法人であったA社から剰余金の配当を受領しています。当期に受領した剰余金の配当の概要は以下のとおりです。なお、株式移転日から当期末まで当社がA社株式の100%を継続保有しており、所有株式数も変動はありません。

受領した配当

配当基準日

効力発生日

配当原資

A社配当

平成28年6月30日(注)

平成28年8月29日

利益剰余金

(注) A社の前回の配当基準日は平成28年3月31日である。

当社が当期に受領した上記剰余金の配当につき、益金不算入額の計算を行う場合の留意点および上記配当に係る源泉所得税につき、所得税額控除の適用を受ける場合の留意点を教えてください。なお、当社は連結納税制度の適用は受けておりません。

Answer:
本件の場合、以下の点について留意が必要となります。

1. 受取配当金の益金不算入

当期に受領した剰余金の配当の元本であるA社株式をその他株式等に区分の上、益金不算入額の計算を行う必要があります。
関連法人株式等の判定について、平成27年度税制改正前の関係法人株式等の判定において認められていた株式移転の特例が設けられていないため、A社配当については、益金不算入割合が50%となる点に留意が必要です。
A社配当について負債利子の控除は不要です。

2. 所得税額控除の計算

当期に受領したA社配当に対する源泉所得税の額については、全額法人税額からの控除が可能です。
所得税額控除における株式移転の特例については、平成27年度税制改正後も適用が可能であるため、A社配当に係る源泉所得税額についても全額控除が可能です。

【解説】

1. 受取配当金の益金不算入

(1) 株式等の区分の見直し

受取配当金の益金不算入制度は、保有する株式等の区分により益金不算入割合が定められていますが、平成27年度税制改正において、株式等の区分および益金不算入割合が次のとおりとされました。

  • 完全子法人株式等100%
  • 関連法人株式等100%
  • その他株式等50%
  • 非支配目的株式等20%

(2) 完全子法人株式等の範囲

完全子法人株式等とは、原則として配当等の額の計算期間の初日から当該計算期間の末日まで継続して内国法人とその支払を受ける配当等の額を支払う他の内国法人との間に完全支配関係があった場合の当該他の内国法人の株式等とされています(法法23⑤、法令22の2①)。

また、計算期間とは、その配当等の額の支払を受ける直前に当該配当等の額を支払う他の内国法人により支払われた配当等の額の支払に係る基準日の翌日からその支払を受ける配当等の額の支払に係る基準日までの期間とされています(法令22の2②)。

つまり、前回の配当等の基準日の翌日から今回の配当等の基準日までの期間において、継続して完全支配関係がある場合、配当等を支払うその完全支配関係がある法人の株式が完全子法人株式等に該当することとなります。

ただし、以下に該当する場合には、計算期間の起算日を調整する必要があります(法令22の2②一~三)。

調整事由

調整後の起算日

一 前回の配当等の基準日の翌日が今回の配当等の基準日から起算して1年前の日以前である場合又は今回の配当等の基準日から起算して1年前の日以前に設立された法人から設立日以後最初に支払われる配当等である場合(三の場合を除く)

今回の配当等の基準日から起算して1年前の日の翌日

二 今回の配当等の基準日以前1年以内に設立された法人から設立日以後最初に支払われる配当等である場合(三の場合を除く)

設立の日

三 今回の配当等が配当等の額の元本である株式等を発行した法人から今回の配当等の基準日以前1年以内に取得した株式等につき最初に支払われる配当等である場合

取得の日


(3) 関連法人株式等の範囲

平成27年度税制改正により、改正前の関係法人株式等から定義が変更され、名称も関連法人株式等へと変更されています。関連法人株式等とは、内国法人が、他の内国法人の発行済株式等の1/3を超える当該他の内国法人の株式等を、当該内国法人が当該他の内国法人から受ける配当等の額の計算期間の初日からその計算期間の末日まで引き続き有している場合における当該他の内国法人株式等で、完全子法人株式等以外のものとされています(法法23⑥、法令22の3①)。

つまり、前回の配当等の基準日の翌日から今回の配当等の基準日までの期間において、継続して1/3超の株式等を保有している場合、その保有されている法人の株式が関連法人株式等に該当することとなります。

計算期間の定義は、完全子法人株式等とおおむね同一ですが、計算期間の起算日の調整は以下のとおりとなります(法令22の3②一~三)

調整事由

調整後の起算日

一 前回の配当等の基準日の翌日が今回の配当等の基準日から起算して6月前の日以前である場合又は今回の配当等の基準日から起算して6月前の日以前に設立された法人から設立日以後最初に支払われる配当等である場合(三の場合を除く)

今回の配当等の基準日から起算して6月前の日の翌日

二 今回の配当等の基準日以前6月以内に設立された法人から設立日以後最初に支払われる配当等である場合(三の場合を除く)

設立の日

三 今回の配当等が配当等の額の元本である株式等を発行した法人から今回の配当等の基準日以前6月以内に取得した株式等につき最初に支払われる配当等である場合

取得の日


なお、平成27年度税制改正前においては、株式移転完全親法人であった法人が、その株式移転に係る株式移転完全子法人であった他の内国法人の発行済株式の25%以上の株式を、その株式移転によるその法人の設立の日から同日以後最初にその株式に係る剰余金の配当の額の支払に係る効力が生ずる日まで引き続き有している場合について、関係法人株式等に該当することとされていましたが、改正後の関連法人株式等の判定においては、このような特例は設けられていません。

(4) その他の株式等の範囲

完全子法人株式等、関連法人株式等および非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等とされています(法法23①)。

(5) 非支配目的株式等の範囲

内国法人が、他の内国法人の発行済株式等の5%以下の他の内国法人の株式等を、当該内国法人が当該他の内国法人から受ける配当等の額の支払に係る基準日において有する場合における当該他の内国法人の株式等で、完全子法人株式等以外のものとされています(法法23⑦、法令22の3の2①)。

(6) 本件の当てはめ

① A社株式の区分

A社配当の計算期間は、当該配当が利益剰余金からの配当のため、前回の配当基準日の翌日から今回の配当基準日までである、平成28年4月1日から平成28年6月30日となります。計算期間の末日である平成28年6月30日において、当社とA社の間に完全支配関係がありますが、完全支配関係が発生したのは平成28年5月1日であり、計算期間を通じて完全支配関係がなく、計算期間の起算日の調整事由にも当てはまる項目がないため、完全子法人株式等には該当しません。

同様に、当社がA社の株式の1/3超を保有したのは平成28年5月1日であり、計算期間を通じてA社株式の1/3超を保有しておらず、計算期間の起算日の調整事由にも当てはまる項目がないため、関連法人株式等には該当しません。この点平成27年度税制改正前であれば、株式移転の特例によりA社株式は関係法人株式等に該当していましたが、特例の廃止により関連法人株式等には該当しないことに留意が必要です。

また、今回の配当基準日におけるA社株式の保有割合が5%を超えるため、非支配目的株式等には該当しません。したがって、いずれにも該当しないことから、A社株式はその他の株式等に区分されることとなります。

② 控除負債利子の計算

関連法人株式等以外に係る配当等の益金不算入額の計算においては、負債利子の控除は不要です。A社配当は関連法人株式等に係る配当ではないため、負債利子の控除は不要となります。

2. 所得税額控除の計算

(1) 原則

剰余金の配当(資本剰余金の減少に伴うものおよび分割型分割によるものを除きます)に対する所得税の額のうち、法人税の額から控除できる額は、その元本を所有していた期間に対応するものとして計算される所得税の額とされています(法法68①、法令140の2①一)。

(2) 株式移転の特例

元本を所有していた期間に対応するものとして計算される所得税の額は、配当等に対する所得税の額に、前回の配当基準日の翌日から今回の配当基準日までの期間の月数のうち、その内国法人が元本を所有していた期間の月数の占める割合を乗ずる方法により計算するのが原則です。

しかし、株式移転により設立された株式移転完全親法人が当該株式移転に係る株式移転完全子法人からその設立の日後最初に支払われる剰余金の配当にあっては、その配当の計算の基礎となった期間の開始日から当該設立日の前日までその元本のすべてを所有していたものとみなして月数計算します。

したがって、株式移転後に株式移転完全親法人が当該株式移転完全子法人から受領する初回配当に係る所得税は、設立の日以後初回配当の基準日まで株式移転完全子法人株式を継続保有している限り、全額法人税から控除できることとなります。

(3) 本件の当てはめ

A社配当について、前回の配当基準日の翌日から今回の配当基準日までの月数は3月であり、当社が元本を所有していた月数は2月ですが、株式移転の特例により元本所有月数が3月となるため、全額所得税額控除が可能となります。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

 

 

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