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合併または株式交換による買収時の株主に係る課税関係

『国税速報』平成28年6月20日号

組織再編時の再編当事者株主における課税関係は、再編対価(株式または金銭等)、税制適格要件の充足有無および株主の属性(法人または個人、さらには外国法人およ び非居住者など)等の条件により課税関係は多岐にわたります。(『国税速報』平成28年6月20日号)

【疑問相談】法人税・所得税

「合併または株式交換による買収時の株主に係る課税関係」

Question:
内国法人である当社は、非上場会社である内国法人A社(当社との間に資本関係はない)を合併もしくは株式交換により買収(以下「本件買収」)することを検討しています。本件買収時に当社株主およびA社株主において何らかの課税が生じる可能性があるのでしょうか。本件買収対価としては当社株式のみをA社株主に交付することを予定しており、A社株主には内国法人および個人(国内居住者)が複数存在します。

なお、本件買収を含む一連の取引は、第三者(A社)との間で適法かつ適正な取引条件の下に実施される予定です。

Answer:
本件買収対価として貴社株式のみがA社株主に交付されることを前提とすると、株式交換の手法による場合は原則として当社およびA社株主において課税関係は生じません。

ただし、合併の手法による場合であって、かつ、当該合併が税制適格要件を充足しない合併(非適格合併)に該当する場合には、みなし配当が認識される可能性があり、A社株主において課税関係が生じる可能性があります。具体的には内国法人であれば、認識されたみなし配当のうち、受取配当金の益金不算入制度の適用により益金不算入とされる金額を控除した後の金額が法人税の課税所得計算上益金算入されます。また、個人株主については、認識されたみなし配当が累進税率による所得税および復興特別所得税(最高税率45.945%)、住民税(10%)の課税対象となります。

【解説】

1. 概要

組織再編時の再編当事者株主における課税関係は、再編対価(株式または金銭等)、税制適格要件の充足有無および株主の属性(法人または個人、さらには外国法人および非居住者など)等の条件により課税関係は多岐にわたります。

以下では内国法人を再編当事者とする合併および株式交換(以下「合併等」)を前提に、合併法人または株式交換完全親法人(以下「合併法人等」)株主、被合併法人または株式交換完全子法人(以下「被合併法人等」)株主に係る再編時の一般的な課税関係(注1)について解説します。なお、特に断りがある場合を除き、株主は内国法人および個人(国内居住者)であることを前提とします。

(注1) 組織再編時に反対株主による株式買取請求等が行われることがありますが、本稿ではそれら再編行為に同意しない株主等が存在する場合の課税関係についての記載は省略しています。

2. 再編対価が合併法人等の株式のみの場合

(1) 合併法人等の株主

合併法人等の株主については、原則として課税は生じません。

(2) 被合併法人等の株主

合併法人等の株式のみが交付される場合の被合併法人等の株主における課税関係は、合併または株式交換のいずれの手法によるかで以下のように異なります。

① 合併

税制適格要件を充足する場合、株主において特段の課税関係は生じません(法法61の2②、所令112①)。

一方、税制適格要件を充足しない場合(非適格合併に該当する場合)、株主においてみなし配当(注2)が認識される可能性があります(法法24①一、法令23① 一、所法25① 一、所令61②一)。みなし配当が認識される場合、内国法人株主は当該みなし配当から受取配当金の益金不算入額(株式保有比率・期間によって異なります。本稿では詳述しません。)を控除した金額を法人税の課税所得計算上益金に算入することになります。また、個人株主において当該みなし配当は配当所得として累進税率による所得税および復興特別所得税(最高税率45.945%)、住民税(10%)の課税対象となります。なお、個人株主の場合の配当所得については配当控除が受けられる可能性があります(本稿では詳述しません)。

また、みなし配当は20.42%の税率で源泉徴収の対象となります(注3)が、株主において当該源泉徴収額相当は原則として所得税額控除により徴収税額相当の還付または税額控除を受けることが可能です(後述する外国法人および非居住者の場合を除きます)。

② 株式交換

株式交換の場合、税制適格要件の充足有無にかかわらずみなし配当は生じず、株主において特段の課税関係は生じません(法法61の2⑧、所法57の4①)。

(注2) 合併により交付を受けた資産の時価から被合併法人の資本金等の額のうち株主の保有株式に対応する部分の金額を控除した金額(負数となる場合はゼロ)。なお、株主の保有株式に対応する資本金等の額は、被合併法人の資本金等の額×(合併直前に株主が有する被合併法人株式の数÷被合併法人の発行済株式総数(自己株式を除きます))。
(注3) 実務上、金銭等の交付を行わない場合に発生するみなし配当については、当該みなし配当に係る源泉徴収額相当を別途株主から金銭で徴収する、または、源泉徴収額を配当を行う法人において負担するなどの選択肢が考えられますが、株主が多数存在する場合、前者については実行可能性について疑問が残ります。なお、仮に配当を行う法人が源泉徴収額を負担することとした場合、源泉徴収額相当についてグロスアップ計算(みなし配当額÷(1-源泉徴収税率))が必要になり、また株主においては金銭等の交付がある場合の課税関係が適用されると考えられます。

3. 再編対価が金銭の場合

(1) 合併法人等の株主

合併法人等の株主については、原則として課税は生じません。

(2) 被合併法人等の株主

金銭等が交付される場合(原則として税制適格要件を充足しない)の被合併法人等の株主における課税関係は、以下のとおりです。

① 合併

株主である内国法人および個人ともに、被合併法人等株式に係る株式譲渡損益を認識します。

内国法人であれば認識された株式譲渡損益は法人税の課税所得計算上益金または損金に算入されることとなります(法法61の2①)。

個人株主においては、認識された株式譲渡益は20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率で申告分離課税の対象となります(措法37の10①)。なお、仮に個人株主において株式譲渡損が生じる場合、同一課税年度において生じた他の非上場株式に係る譲渡益と相殺(注4)することが可能です。

また、みなし配当が認識される場合の取扱いは、「2再編対価が合併法人等の株式のみの場合、(2)被合併法人等の株主、①合併」の取扱いと同様です(注5)

② 株式交換

株式譲渡損益に係る取扱いは、上記「①合併」に記載の取扱いと同様です。なお、株式交換の場合は税制適格要件の充足有無にかかわらずみなし配当は認識されません。

(注4) 平成25年度税制改正により、平成28年1日1日以後は上場株式と未上場株式間の譲渡損益の通算は行えなくなっている点に留意が必要です。
(注5) ただし、金銭等の交付を行わない場合に生じるみなし配当のケースと異なる点として、金銭等の交付が行われる場合は、原則として源泉徴収をどのように行うのかという問題は生じないと考えられます。

4. 株主が外国法人または非居住者の場合

被合併法人等の株主に外国法人または非居住者(日本に恒久的施設を有しない)が存在する場合、内国法人同士の合併および株式交換時における課税関係は以下のとおりになります。

(1) 再編対価が合併法人等の株式のみの場合

合併および株式交換のいずれの場合であっても、原則として株式譲渡損益に係る課税関係(注6)は生じません(法法141二)。

合併が税制適格要件を充足しない合併(非適格合併)に該当し、かつ、みなし配当が認識される場合、当該みなし配当は20.42%の税率で源泉徴収され、原則として国内税法上の課税関係は当該源泉徴収により終了します。なお、当該源泉徴収税率20.42%は一定の手続の下、外国法人または非居住者の所在する国と日本との間で締結されている租税条約により減免される可能性があります。また、株式交換の場合、税制適格要件の充足有無にかかわらずみなし配当が生じない点については内国法人または国内居住者のケースと同様です。

(2) 再編対価が金銭の場合

合併および株式交換のいずれの場合であっても、被合併法人等株式が事業譲渡類似(注7)または不動産関連法人(注8)株式などに該当しない限り、原則として株式譲渡益に係る課税を受けません。ただし、被合併法人等株式が事業譲渡類似または不動産関連法人株式等に該当する場合には、当該株式に係る譲渡益は外国法人であれば法人税(注9)、個人である非居住者であれば所得税および復興特別所得税(15.315%)の申告分離課税の対象となります。なお、当該株式譲渡益は一定の手続の下、外国法人または非居住者の所在する国と日本との間で締結されている租税条約により免除される可能性があります。

合併が税制適格要件を充足しない場合のみなし配当に係る取扱いは上記「(1)再編対価が合併法人等の株式のみの場合」に記載の取扱いと同様です。なお、株式交換の場合、税制適格要件の充足有無にかかわらずみなし配当が生じない点については内国法人または国内居住者のケースと同様です。

(注7) 内国法人株主である外国法人または非居住者ならびにそれらの者の特殊関係株主等が当該内国法人の株式譲渡を行った日の属する事業年度(以下、譲渡事業年度)末以前3年以内のいずれかの時に、当該内国法人の発行済株式の25%以上を所有していて、かつ、譲渡事業年度において5%以上の当該内国法人株式を売却する場合のその内国法人株式(法令178①四ロ、④⑥、所令281①四ロ、④⑥)
(注8) 資産の総額のうちに国内の土地など不動産の価額が占める割合が50%以上の内国法人株式(不動産関連法人株式)を譲渡する事業年度開始の日の前日に、当該内国法人株主である外国法人または非居住者ならびにそれらの者の特殊関係株主等が当該内国法人の発行済株式等の2%超(非上場株式の場合)を有している場合のその内国法人株式(法令178①五、⑧⑨、所令281①五、⑧⑨)
(注9) 平成28年度税制改正により、法人税率(地方法人税含む)は今後以下のようになります。
■平成28年4月1日以後開始事業年度:法人税23.40%+地方法人税(法人税率×4.4%)=24.4%
■平成29年4月1日以後開始事業年度:法人税23.40%+地方法人税(法人税率×10.3%)=25.8%
■平成30年4月1日以後開始事業年度:法人税23.20%+地方法人税(法人税率×10.3%)=25.6%

5. 再編時における株主課税の留意点

再編時においてはまず再編当事者の課税関係(特に税制適格要件を充足する否か)を主眼に議論がなされるケースが多いと考えられますが、前述のように再編時における株主の課税関係は税制適格要件の充足有無とは異なる観点から課税関係を検討する必要があるので留意が必要です。

なお、本稿で解説している課税関係は再編時における再編当事者株主に係る課税関係(主に法人税および所得税の観点から)であり、再編が影響を与える再編後の株主の課税関係までをも網羅したものではない点にご留意ください。

最後に、これまで解説してきた被合併法人等株主の課税関係を一覧形式でまとめましたので、PDFの図表、「非上場会社である被合併法人等株主の課税関係」をご参照ください。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

 

 

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