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現金対価の株式交換によるスクイーズアウトを実施した場合の取扱い

『国税速報』平成29年8月21日号

本件株式交換は平成29年10月1日を効力発生日として実施予定であり、かつ、A社は株式交換の直前にX社の発行済株式(自己株式を除きます。)の総数の3分の2以上を有していることから、本件株式交換の対価として現金が用いられた場合においても、株式交換に係る税制適格要件を充足する限り、本件株式交換は、適格株式交換として取り扱われるものと考えられます。(『国税速報』平成 29年8月21日号)

【疑問相談】法人税

「現金対価の株式交換によるスクイーズアウトを実施した場合の取扱い」

Question:
内国法人A社(連結納税制度を選択している家電製品の製造販売業を営む3月決算法人)は、意思決定の迅速化およびグループ経営資源を最大限に活用した事業戦略の推進を目論み、その発行済株式(自己株式を除きます。)の総数の3分の2以上を有する内国法人X社(連結納税制度を選択していない通信機器の製造販売業を営む3月決算法人。資本金等の額は20億円)との間で、平成29年10月1日を効力発生日とする現金対価の株式交換(以下「本件株式交換」)の手法によるスクイーズアウト(少数株主の排除)を予定しています。

A社連結納税グループでは本件株式交換後の組織再編行為の実施は見込まれておらず、A社は本件株式交換後においても継続してX社の発行済株式等の全部を保有することを予定しています。また、X社の主要事業である通信機器の製造販売業は引き続きX社で行われ、X社の従業者のおおむね80%以上の者がX社の業務に引き続き従事することが見込まれています。

なお、X社およびX社の完全子法人Y社(通信機器の製造業を営む3月決算法人)は平成29年3月期末時点において繰越欠損金を有しているものの、Y社はX社に3年前に買収された後、ヒット商品の開発に成功して急激な業績回復を見せており、当期も業績好調のため課税所得が生じる予定です。また、Y社は工場用地として含み益1,000万円以上と鑑定される土地を有しています。

現金対価の本件株式交換が税制適格要件を充足する可能性はあるのでしょうか。また、本件株式交換の実施にあたって、その他の課税上の留意点を教えてください。(資本関係図はPDFを参照)

Answer:
本件株式交換は平成29年10月1日を効力発生日として実施予定であり、かつ、A社は株式交換の直前にX社の発行済株式(自己株式を除きます。)の総数の3分の2以上を有していることから、本件株式交換の対価として現金が用いられた場合においても、株式交換に係る税制適格要件を充足する限り、本件株式交換は、適格株式交換として取り扱われるものと考えられます。

なお、株式交換完全親法人A社は連結納税制度を選択しているため、X社およびX社の完全子法人Y社はA社連結納税グループ加入に際し、本件株式交換の効力発生日の前日までの期間に係るみなし事業年度の申告納付を求められることとなりますが、本件株式交換が適格株式交換として取り扱われる場合には、株式交換完全子法人X社は時価評価課税および繰越欠損金の切捨て等の規定の適用を受けないものと考えられます。

その一方で、X社の長期保有子法人に該当しないY社は当該みなし事業年度において含み益1,000万円以上の工場用地(土地)に係る時価評価課税および繰越欠損金の切捨て等の規定の適用を受けるものと考えられます。その他、仮にY社の本件株式交換時点の企業価値がY社の有する個々の資産・負債の時価評価額の合計として算出した時価純資産価額よりも1,000万円以上上回るような場合等には、Y社は自己創設のれんに係る時価評価課税を求められる可能性がある点にご留意ください。

【解説】

1 本件株式交換に係る適格判定

適格株式交換とは、株式交換に係る株式交換完全親法人と株式交換完全子法人との間にいずれか一方の法人による支配関係等があり、かつ、次に掲げる要件のすべてを充足するもので、当該株式交換の直前に株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人の株式以外の資産((i)当該株主等に対する剰余金の配当として交付される金銭その他の資産、(ii)株式交換等に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産、(iii)株式交換の直前において株式交換完全親法人が株式交換完全子法人の発行済株式(自己株式を除きます。)の総数の3分の2以上に相当する数の株式を有する場合における当該株式交換完全親法人以外の株主に交付される金銭その他の資産等を除きます。)が交付されないもの等をいいます(法法2十二の十七ロ、法令4の3⑲一)。

① 支配関係継続要件
② 対価要件(金銭等不交付要件)
③ 従業者継続従事要件
④ 事業継続要件

これを本件株式交換に当てはめると、株式交換の直前に株式交換完全親法人A社が株式交換完全子法人X社の発行済株式(自己株式を除きます)の総数の3分の2以上を直接保有する関係があるため、対価を現金とした場合においても、上記②対価要件(金銭等不交付要件)を満たすことから、①支配関係継続要件、③従業者継続従事要件および④事業継続要件のすべての要件を充足する限り、適格株式交換として取り扱われるものと考えられます。

なお、上記の下線部分の規定は、平成29年度税制改正項目であり、平成29年10月1日以後に実施される株式交換について適用され、平成29年9月30日以前に実施される株式交換については従前の例によることとされています(改正法附則2②)。

2 改正の趣旨

平成29年度税制改正では、組織再編成(注1)の前後において支配の継続があるとえられる場面について対価要件が緩和されました。

これは、組織再編成前に特定の株主が対象会社を支配している場合において、組織再編成後もその特定の株主の対象会社に対する持株割合が減少しないときは、少数株主に株式以外の対価が交付されたとしても、その特定の株主が株式の所有を通じて対象会社の資産を支配している状態に変わりがないと整理されたことによります。

具体的には、株式交換完全親法人の株式交換完全子法人に対する持株割合が3分の2以上の場合には、金銭等の交付がある場合にも適格株式交換の要件のうち対価要件(金銭等不交付要件)を満たすこととされ、保有資産に対する評価損益を計上する必要はないものとされます。

3 A社(株式交換完全親法人)の課税関係

本件株式交換が適格株式交換に該当する場合には、株式交換完全親法人A社は、以下に掲げる株式交換完全子法人X社の株主の数の区分に応じた金額にX社株式の取得をするために要した費用の額を加算した金額をもって、X社株式を取得したものとして取り扱います(法令119①十)。

① 株主の数が50人未満のとき

当該株式交換完全子法人の株主が有していた当該株式交換完全子法人の株式の当該適格株式交換の直前の帳簿価額に相当する金額の合計額

② 株主の数が50人以上のとき

当該株式交換完全子法人の前期期末時の資産の帳簿価額から負債の帳簿価額を減算した金額(注2)に相当する金額(注3)

なお、A社の資本金等の額は、上記のX社株式の取得価額(株式取得のために要した費用の額を控除した金額)から当該株式交換により株式交換完全子法人の株主に交付した金銭等の価額等を減算した金額相当額が増加します(法令8①十)。

(注1) 合併と株式交換のみ

(注2) 当該前期期末時から当該適格株式交換の直前の時までの間に一定の資本金等の額または利益積立金額が増加し、または減少した場合には、その増加した金額を加算し、またはその減少した金額を減算した金額

(注3) 当該適格株式交換の直前に当該株式交換完全子法人の株式を有していた場合には、当該相当する金額に当該株式交換完全子法人の当該適格株式交換の直前の発行済株式の総数のうちに、当該適格株式交換により取得をした当該株式交換完全子法人の株式の数の占める割合を乗ずる方法等により計算した金額

4 X社(株式交換完全子法人)

(1) 本件株式交換に係る取扱い

本件株式交換が適格株式交換に該当する場合には、株式交換完全子法人X社は、何ら処理を要しません。

(2)A社連結納税グループ加入に係る取扱い

株式交換完全子法人X社は、本件株式交換により連結納税制度を選択している株式交換完全親法人A社との間に完全支配関係を有することとなり、原則として、本件株式交換の効力発生日にA社連結納税グループに加入することになります(法法4の3⑩、連基通1―2―2)。

(ア)みなし事業年度

本件株式交換の効力発生日が平成29年10月1日である場合には、株式交換完全子法人X社は、連結親法人A社の事業年度の中途においてA社との間に完全支配関係を有することとなるため、本件株式交換の効力発生日の属する事業年度の期首日(平成29年4月1日)から本件株式交換の効力発生日の前日(平成29年9月30日)までの期間に係るみなし事業年度の申告納付を求められることになります(法法14①六)。

(イ)資産の時価評価損益

本件株式交換が適格株式交換に該当する場合には、株式交換完全子法人X社が連結加入直前事業年度(連結親法人A社との間に完全支配関係を有することとなった日の前日の属する事業年度)終了の時である平成29年9月30日に有する時価評価資産の時価評価は不要とされています(法法61の12①二)。

(3)反対株主に対する買取請求対価

株式交換等に反対する株主に対し買取請求に基づく対価として金銭等を交付した場合であっても、上記1②の対価要件(金銭等不交付要件)に抵触しないこととされますが、仮に金銭等を交付した場合には、X社において自己株式の取得となり、資本金等の額と利益積立金額の減少となり(法令8①二十、9①十四)、利益積立金額は株主において受取配当と取り扱われることから、原則として20.42%の源泉所得税額の徴収が必要となります(所法181①等)。

5 Y社(株式交換完全子法人の完全子法人)

(1)A社連結納税グループ加入に係る取扱い

株式交換完全子法人X社の完全子法人Y社は、X社と同様、本件株式交換により連結納税制度を選択している株式交換完全親法人A社との間に完全支配関係を有することとなり、原則として、本件株式交換の効力発生日にA社連結納税グループに加入することになります(法法4の3⑩、連基通1―2―2)。

(ア)みなし事業年度

株式交換完全子法人X社と同様、Y社は、連結親法人A社の事業年度の中途においてA社との間に完全支配関係を有することとなるため、本件株式交換の効力発生日の属する事業年度の期首日(平成29年4月1日)から本件株式交換の効力発生日の前日(平成29年9月30日)までの期間に係るみなし事業年度の申告納付を求められることになります(法法14①六)。

(イ)資産の時価評価損益

本件株式交換が適格株式交換に該当する場合においても、Y社は株式交換完全子法人X社との間に5年超の完全支配関係がないことから、時価評価法人に該当し、連結加入直前事業年度(連結親法人A社との間に完全支配関係を有することとなった日の前日の属する事業年度)終了の時である平成29年9月30日に有する時価評価資産(注4)の評価益または評価損が益金の額または損金の額に算入されます(法法61の12①三)。

本件株式交換の場合、Y社の時価評価損益を認識すべきみなし事業年度の終了日は平成29年9月30日であり、平成29年度税制改正の適用開始前となることから、Y社においてA社連結納税グループ加入に際し、含み益が1,000万円以上である土地(工場用地)の他、自己創設のれんがある場合には、当該自己創設のれんに係る時価評価益の計上を求められる可能性がある点、留意が必要となります。

(注4) 時価評価の対象となる資産は、固定資産、棚卸資産である土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権および繰延資産で一定のものとされています。この場合において、含み損益が資本金等の額の2分の1または1,000万円のいずれか少ない金額に満たない資産等は時価評価対象外とされていますが、平成29年度税制改正により、平成29年10月1日以後に終了する事業年度については、税務上の帳簿価額が1,000万円未満の資産は時価評価の対象から除外されたため、自己創設のれん(税務上の帳簿価額は通常零とえられる)に係る時価評価損益の計上は不要となりました(法令122の12①四)。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

 

 

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