ナレッジ

複数新設分割の直後に適格合併が見込まれる場合の取扱い

『国税速報』平成28年3月21日号

適格分割とは、分割前に分割法人と分割承継法人(当該分割が複数新設分割である場合にあっては、当該分割法人と他の分割法人)との間に同一の者による完全支配関係等があり、かつ、当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること(当該分割後に当該分割法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分割の時から当該適格合併の直前の時まで当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること)等が見込まれている場合の当該分割法人と分割承継法人との間の分割で、分割対価資産として分割承継法人株式以外の資産が交付されないものをいいます(法法2十二の十一、法令4の3⑥二)。(『国税速報』平成28年3月21日号)

【疑問相談】法人税

「複数新設分割の直後に適格合併が見込まれる場合の取扱い」

Question:
内国法人A社(家電製品の製造販売業)は、10年前に設立した内国法人B社(通信機器の製造販売業)及び6年前に買収した内国法人C社(放送機器の製造販売業)のそれぞれの会社の発行済株式の100%を保有しています。

このほどA社は、製造業への業務拡大を企図する内国法人Z社(C社と同規模の資本金を有する放送機器の販売業)から、B社の製造部門をC社の製造部門と共に分社化(以下において「本件複数新設分社型分割」といいます。)して内国法人D社(通信機器及び放送機器の製造業)を設立することを条件としたC社との経営統合をもちかけられています。

(ケース1)
Z社との経営統合にあたり、分社化直後のC社を被合併法人とする吸収合併(共同事業要件を充足する税制上の適格合併)が見込まれる場合において、B社とC社がD社を新設分割した際のB社(分割法人)、C社(分割法人)及びD社(分割承継法人)の法人税の取扱いについて教えてください。

(ケース2)
ケース1の場合において、Z社が、C社との経営統合直後にB社が有するD社株式を購入して100%子会社化することが見込まれているときには、上記取扱いとの差異はあるのでしょうか。

Answer:
本件複数新設分社型分割は、分割前に分割法人B社と他の分割法人C社との間に同一の者A社による完全支配関係があり、かつ、分割の直後においてC社がZ社による吸収合併(適格合併)により消滅(本件複数新設分社型分割の時から本件適格合併の直前の時まで当該分割法人B社と他の分割法人C社との間に同一の者A社による完全支配関係が継続)することが見込まれていることから、適格分割に該当するものと考えられます。

なお、複数新設分割が行われる場合の完全支配関係の継続要件については、分割の前後において分割法人と他の分割法人との間に同一の者による完全支配関係が継続することとされており、分割後における分割法人と分割承継法人、または他の分割法人と分割承継法人との間に、同一の者による完全支配関係の継続は求められていないことから、本件複数新設分社型分割後にB社によるD社株式の売却が見込まれているケース2の場合においても適格分割に該当するものと考えられます。

上述のとおり本件複数分社型分割が適格分割に該当するものと取り扱われた場合には、分割承継法人D社は資産調整勘定等(対価と時価純資産価額の差額)の発生について留意する必要がないものと考えられます。

また、D社は新設法人であることから、いずれのケースにおいても本件複数新設分社型分割は無対価分割にはなり得ません。

【解説】

1. 適格判定

適格分割とは、分割前に分割法人と分割承継法人(当該分割が複数新設分割である場合にあっては、当該分割法人と他の分割法人)との間に同一の者による完全支配関係等があり、かつ、当該分割後に当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること(当該分割後に当該分割法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分割の時から当該適格合併の直前の時まで当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること)等が見込まれている場合の当該分割法人と分割承継法人との間の分割で、分割対価資産として分割承継法人株式以外の資産が交付されないものをいいます(法法2十二の十一、法令4の3⑥二)。

同法令の規定の冒頭の括弧書において、「分割法人と分割承継法人」は複数新設分割にあっては、「当該分割法人と他の分割法人」と読み替えることとされています。つまり、複数新設分割である場合の適格分割とは、分割前に分割法人と他の分割法人との間に同一の者による完全支配関係等があり、かつ、当該分割後に当該分割法人と他の分割法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること(当該分割後に当該分割法人または他の分割法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該分割の時から当該適格合併の直前の時まで当該分割法人と他の分割法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること)等が見込まれている場合の当該分割法人と他の分割法人との間の分割で、分割対価資産として分割承継法人株式以外の資産が交付されないものをいい、分割後における当該分割法人と分割承継法人や、他の分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による完全支配関係の継続が見込まれることについては求められていないものと考えられます。

本件複数新設分社型分割の適格判定は、分割前にB社(分割法人)とC社(他の分割法人)との間にA社(同一の者)による完全支配関係があり、かつ、当該分割後にB社(当該分割法人)とC社(他の分割法人)との間にA社(同一の者)による完全支配関係が継続することが見込まれているか否かによることとなりますが、当該分割後にB社(当該分割法人)またはC社(他の分割法人)を被合併法人とする適格合併が見込まれている場合には、当該分割の時から当該適格合併の直前の時までB社(当該分割法人)とC社(他の分割法人)との間にA社(同一の者)による完全支配関係等が継続することが見込まれているか否かによることとなります。

これを当てはめると、分割前にB社とC社との間にA社による完全支配関係があり、かつ、当該分割後にC社を被合併法人とする適格合併が見込まれていることから、当該分割の時から当該適格合併の直前の時までB社とC社との間にA社による完全支配関係が継続することが見込まれているため、本件複数新設分社型分割は適格分割に該当します。

なお、D社は新設法人であることから、いずれのケースにおいても本件複数新設分社型分割は無対価分割にはなり得ません。

2. B社(分割法人)及びC社(分割法人)の課税関係

適格分社型分割の場合には、分割法人は分割承継法人に対し資産及び負債(以下において「分割承継資産等」といいます。)を分割直前の時の税務上の帳簿価額で譲渡し、対価として分割承継法人株式等を分割の時の税務上の帳簿価額相当額(株式の交付を受けるために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)で取得したものとして取り扱います(法法62の3①、法令119①七)。

3. D社(分割承継法人)の課税関係

適格分割の場合には、分割承継法人は分割法人から分割承継資産等を分割の時の税務上の帳簿価額で譲渡されたものとして取り扱われることから、分割承継法人は分割承継資産等を分割の時の分割法人の税務上の帳簿価額相当額(その取得のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)で取得したものとして取り扱います(法法62の3②、法令123の4)。

なお、非適格分割の場合には、分割承継法人は分割法人から分割承継資産等を分割の時の時価で譲渡されたものとして取り扱われることから、分割承継法人は分割承継資産等を分割の時の価額で取得したものとして取り扱い、分割の時に交付すべきであった適正な対価相当額と移転を受けた分割承継資産等の個別の資産及び負債の時価純資産価額との差額を「資産調整勘定」または「差額負債調整勘定」として認識し、5年間で損金または益金に算入することになりますが、本件複数分社型分割が適格分割に該当する場合、D社がC社から移転を受けた分割承継資産等について資産調整勘定等を認識することはありません。

PDF

こちらから記事の全文がダウンロードができます。

 

 

 

 

※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

 

 

(602KB, PDF)

関連サービス

サービスのご案内

複数のグループ会社から成る企業集団が、グループとしてのメリットを最大化させるための経営戦略を立案し、実行する中で、その手段の一つとして、効率的な事業運営や事業部門拡大等を目的として組織再編を行う場面が数多く見受けられます。本来であれば負担する必要のない税務コストを回避するため、税務の専門家が税務の取扱いを検討するサポートをします。

お役に立ちましたか?