ナレッジ

同日に複数の合併等を行う場合の適格要件(従業者引継要件)

『国税速報』平成29年7月24日号

平成29年度税制改正により、合併後に行われる適格合併により被合併法人の合併前に行う主要な事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合には、当該適格合併に係る合併法人の業務に従事すれば要件を満たすこととされました。(『国税速報』平成 29年7月24日号)

【疑問相談】法人税

「同日に複数の合併等を行う場合の適格要件(従業者引継要件)」

Question:
当社(P社)は内国法人で完全支配関係のある内国法人2社(S1社、S2社)を有しており、S1社は支配関係のある内国法人X社を有しています。このたび、下図(PDF図参照)の順序で子会社統合を同日に行うことを考えています。

同日に合併を行うこととなるため、X社の従業者はS1社の業務に従事することなく、S2社の業務に従事をすることとなります。なお、X社の合併前に行う主要事業はS2社で引き続き行われることが見込まれています。

この場合の合併①における適格要件(従業者引継要件)について、平成29年度税制改正で明確化されたと聞いていますが、詳細を教えてください。

Answer:
合併の後に適格合併を行うことが見込まれる場合は、当初合併(合併①)における適格合併の判定にあたり、その被合併法人(X社)の合併①の直前の従業者の総数のおおむね80%に相当する数の者が、(i)合併法人(S1社)の業務に従事し、(ii)適格合併②後に当該適格合併に係る合併法人(S2社)の業務に従事することが見込まれていることが要件とされていました。この場合において、合併①と同日に適格合併②を行った場合には、被合併法人(X社)の従業者が合併法人(S1社)の業務に従事することが見込まれないため、適格要件を満たさないこととなるように見えていました。

平成29年度税制改正により、合併後に行われる適格合併により被合併法人の合併前に行う主要な事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合には、当該適格合併に係る合併法人の業務に従事すれば要件を満たすこととされました。したがって、被合併法人(X社)の従業者はその後の適格合併②の合併法人(S2社)の業務に従事すれば従業者引継要件を満たすこととされました。

【解説】

1 合併の取扱い

法人間の合併では、原則としてその被合併法人の有する資産負債を合併法人へ時価譲渡することとなりますが(法法62)、適格要件を満たす場合は簿価で引き継ぐこととされています(法法62の2)。

ここで支配関係のある法人間における適格要件は下記の要件を充足することが必要となります(法法2十二の八ロ)。

  • 金銭等不交付要件
  • 従業者引継要件
  • 主要事業継続要件

このうち従業者引継要件とは、被合併法人の合併直前の従業者注1のうち、そのおおむね80%以上に相当する者が当該合併後に合併法人の業務に従事することが見込まれていることとされています。

なお、従事者が従事することが見込まれる合併法人の業務は、合併により移転した事業に限らないこととされています(法基通1―4―9)。

注1 この従業者はいわゆる従業員とは異なり、以下のものが含まれることされている点に留意が必要となります(法基通1―4―4)。

  • 役員(取締役、執行役、監査役等)
  • 使用人(他社出向除く)
  • 出向受入社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト
  •  日雇労働者(ただし含めないことも可)

2 二次再編特例の取扱い(平成29年度税制改正前)

合併の後に適格合併が見込まれる場合には、一次再編に係る被合併法人の従業者の80%以上に相当する者が、(i)一次再編に係る合併法人の業務に従事し、(ii)その後の二次再編(適格合併)に係る合併法人の業務に従事することが見込まれている場合には、一次再編に係る税制適格判定において、従業者引継要件を満たすこととされていました(旧法法2十二の八ロ(1))。この条文を文言どおりに解釈すると、本質問にあるような同日に実施される二段階の組織再編では、S1社とX社間で行われる合併①の後、同日にS2社とS1社の適格合併②が行われてしまうため、X社の従業者はS1社の業務に従事することなくS2社の業務に従事してしまうものとえられます。そのため従業者引継要件を満たさず、合併①は非適格合併として取り扱われるのではないかという議論がありました。

3 平成29年度税制改正による多段階再編の改正

平成29年度税制改正において、多段階の組織再編の取扱いが改正されました注2

従業者引継要件については、一次再編の後の二次再編(適格合併)により、一次再編の直前に行う主要な事業注3が二次再編に係る合併法人に移転する見込みがある場合には、一次再編の直前の従業者のおおむね80%以上に相当する者が従事する業務は、二次再編に係る合併法人の業務を含むものとされました(新法法2十二の八ロ(1))。

本質問では、合併①の後の適格合併②により、X社の主要な事業がS2社に移転する見込みがあるため、X社の合併直前の従業者のおおむね80%以上に相当する者がS2社の業務に従事することから、適格要件を満たすことができるものと考えられます。

平成29年度税制改正後の適格性の判定では、合併①の合併法人であるS1社の業務に従事することに関し、適格要件が触れられていないことからも、従来懸念されていた同日に多段階再編を行った場合の従業者引継要件に関する議論はなくなったものと考えられます。

本改正は平成29年10月1日以後の合併に適用されることとなるため、当該日付を効力発生日とする合併に適用され、それ以前の合併は従前の取扱いが適用されることに留意が必要です(平成29年改正法附則1三ロ)。

注2 平成29年度税制改正では三次再編対応も行われましたが、紙幅の関係上、本稿では説明を割愛することとします。

注3 被合併法人の合併前に行う事業が2以上ある場合、主要な事業はそれぞれの事業に属する収入金額又は損益の状況、従業者の数、固定資産の状況等を総合的に勘案して判定することとなります(新法基通1―4―5)。

PDF

こちらから記事の全文がダウンロードができます。

 

 

 

 

※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

 

 

(682KB, PDF)
お役に立ちましたか?