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事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務の改正

『国税速報』平成28年10月24日号

平成28年度税制改正により、事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務(国税徴収法28条)の規定の改正点は、①第二次納税義務者となる納税者の特殊関係者の範囲の縮減、②譲受事業の同一場所要件の廃止、③責任の限度、の3点です。(『国税速報』平成28年10月24日号)

【疑問相談】国税徴収法

「事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務の改正」

Question:
平成28年度税制改正により、事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務(国税徴収法38条)の規定について改正がされたと聞きました。具体的にはどのような改正が行われたのでしょうか?

私(乙)は株式会社B(3月決算)の株式を100%保有し、兄(甲)は株式会社A(12月決算)の株式を100%保有して、それぞれ類似の事業を同一ビル内で経営しています。今後、A社の当期(平成28年12月)中またはB社の当期(平成29年3月)中に兄が経営するA社の事業を私が経営するB社に適正価額で事業譲受する予定ですが、A社に後々税務調査等で納税債務が生じ、A社の国税について徴収不足が生じたときに、私の経営するB社は第二次納税義務を負うのか思慮しています。

Answer:
今回の改正点は3つです。
① 事業を譲り受けた特殊関係者の範囲が狭められました。
② 譲り受けた事業の行われる場所が同一である要件が削除されました。
③ 責任の限度が「譲受財産」から「譲受財産の価額」とされました。
ご質問のケースは、事業譲渡が平成28年12月中に行われた場合、B社はA社の第二次納税義務を負い、事業譲渡が平成29年3月中に行われた場合、甲と乙とが生計を一にしていない限り、B社はA社の第二次納税義務は負わないものと考えます。

【解説】

1. 制度の概要と改正内容

(1) 制度の概要

改正前の国税徴収法38条は、納税者が①親族その他納税者と特殊関係のある個人または同族会社など一定の者に事業を譲渡し、かつ、譲受人が②同一とみられる場所において同一または類似の事業を営んでいる場合において、その納税者が国税を滞納し、徴収不足が生じたときは、③譲受財産(取得財産を含む)を限度として、譲受人がその滞納に係る国税の第二次納税義務を負う、とされています。ただし、その譲渡が滞納に係る国税の法定納期限より1年以上前にされている場合は、対象となりません。

(2) 改正内容

① 第二次納税義務者となる納税者の特殊関係者の範囲の縮減

第二次納税義務を負う事業譲渡の譲受人となる納税者の特殊関係者について、これまで納税者の直系血族と兄弟姉妹については生計を一にするか否かにかかわらず、対象とされていましたが、改正後は納税者と生計を一にし、または納税者から受ける金銭その他の財産により生計を維持しているものに限定されました(徴収令13①一)。

また、これまで納税者が同族会社(法法2十)である場合について規定されていました(旧徴収令13①五~七)が、改正後は、納税者が被支配会社(法法67②に該当する会社)である場合とされ、被支配会社の判定の基礎となる株主と生計を一にする親族等の一定の個人、納税者を判定の基礎として被支配会社に該当する会社(子会社等)、判定の基礎となった株主等の全部または一部を判定の基礎として被支配会社に該当する他の会社(いわゆる兄弟会社等)とされました(徴収令13四~六)。

② 譲受事業の同一場所要件の廃止

納税者の譲受人は、同一とみられる場所(例えば、同一の建物内など)において、同一または類似の事業を営む場合に、当該規定の適用対象となっていました。しかし、ビルを違えれば対象外になったり、現在ではネット環境があればできる事業もあり、場所が重要な要素でなくなってきていることから、当該同一場所要件が廃止されました(「平成28年版改正税法のすべて」大蔵財務協会)。

③ 責任の限度

第二次納税義務を負う場合、改正前は譲受財産(取得財産を含む)を限度とされていました。これは、譲受けに係る事業に属する滞納処分の対象となる積極財産そのものをいい、これに含まれる取得財産とは、譲り受けた財産の交換によって取得した財産、売却によって取得した代金、滅失によって取得した保険金等をいいます(徴基通38条関係17)。

これまで譲り受けた売掛金等は回収されて費消された場合に、第二次納税義務を課すことができないという現象が起きていました。

今回の改正は、「譲受財産の価額を限度とする」とされたため、事業譲受時点の譲り受けた積極財産の価値相当の金額について第二次納税義務を負うものと考えられます。

(3) 適用時期

この改正は平成29年1月1日以後に滞納となった国税(同日前に事業を譲渡した場合における当該事業に係るもの(「特定国税」という。)を除きます。)について適用し、同日前に滞納となっている国税(特定国税を含む。)については、なお従前のとおりとされています(改正法附則55②)。すなわち、国税の滞納もしくは事業譲渡のいずれかが平成28年12月31日以前に行われている場合は旧法によることになります。

2. ご質問のケース

A社とB社の株主である甲と乙は兄弟ということです。改正前の規定ですと、納税者A社の株主である甲と兄弟である乙はA社の特殊関係者に該当することになります。しかし、改正後は兄弟であっても、乙が甲と生計を一にすること、または甲から収受する金銭等で生計を維持していることがない限り、乙は納税者A社の特殊関係者になりません。

次に納税者が法人の場合、改正前は同族会社が対象とされ、その同族関係者が特殊関係者となりましたが、改正後は納税者が被支配会社、すなわち判定の基礎となる株主の1人で50%超である会社が制度の対象となり、その株主と生計を一にする親族等およびこれらを株主とした場合の被支配会社が特殊関係者とされることとなりました。

したがって、納税者A社の株主である甲と乙が生計を一にする親族に該当しなければ、乙の被支配会社であるB社はA社の特殊関係者に該当しないことになり、B社は第二次納税義務を負わないことになります。

ここで、事業譲渡が滞納に係る国税の法定納期限より1年以上前にされている場合は、そもそもこの規定の対象外とされています。A社は申告期限の延長申請をしていることを前提とすれば、当期(平成28年12月期)の法定納期限は平成29年3月31日です(徴収法2十、徴基通2条関係14(2))。したがって、法定納期限の1年前の応当日である平成28年3月31日以前(応当日含む。徴基通38条関係15)に事業譲渡が行われている場合はB社は第二次納税義務を負わないことになります。しかし、平成28年4月1日から平成28年12月31日までに事業譲渡が行われた場合には、「適用時期」の項で記載したように改正法の規定ではなく旧法の規定が適用されることになります。旧法では、B社は納税者A社の同族株主である甲の兄弟の同族会社であるため、事業を譲り受けた特殊関係者に該当し、A社の平成28年12月期に係る国税について第二次納税義務を負うことになります。なお、平成29年12月期に係る国税については、事業譲渡が法定納期限(平成30年3月31日)の1 年以上前(平成28年4月1日から12月31日まで)に行われたことになるため、旧法であっても当該規定の対象外となります。

事業譲渡が平成29年1月1日以降であれば、新法が適用になり、甲と乙が生計を一にしない限りB社が第二次納税義務を負うことはありません。

したがって、ご質問のケースは平成28年12月中に事業譲渡が行われた場合はB社はA社の第二次納税義務を負い、平成29年3月中に行われた場合はB社はA社の第二次納税義務を負わない(甲と乙が生計を一にしないことが前提)ことになります。

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