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共同で事業を営むための無対価分割型分割に係る税制適格要件のうち「株式継続保有要件」の充足可能性について

『国税速報』平成29年2月27日号

平成29年度税制改正において、平成29年10月1日以後に実施される分割型分割に係る株式継続保有要件につい て、改正が予定されています。詳細については、下記解説をご参照ください。(『国税速報』平成 29年2月27日号)

【疑問相談】法人税

「共同で事業を営むための無対価分割型分割に係る税制適格要件のうち「株式継続保有要件」の充足可能性について」

Question:
内国法人P社は、平成29年4月1日に、100%子会社である内国法人S社を分割法人、P社を分割承継法人とする無対価吸収分割を実施することを予定しています(PDF図①)。

また、本件分割後に、S社を被合併法人、内国法人A社(P社およびS社と資本関係なし)を合併法人とする吸収合併を実施することを予定しています(PDF図②)。

当該合併により、P社とS社との間の資本関係が消滅するため、本件分割が適格分割に該当するためには、共同で事業を営むための分割の要件を充足する必要があると理解していますが、当該要件のうち「株式継続保有要件」については、無対価分割の場合には充足することができないのでしょうか。

Answer:
本件分割は、分割対価資産がない分割(以下「無対価分割」)で、分割の直前において、分割承継法人P社が分割法人S社の発行済株式等の全部を保有しているため、分割型分割に該当するものと考えられます。

本件分割後に、S社を被合併法人とする吸収合併が予定されており、分割承継法人P社と分割法人S社との間の完全支配関係および支配関係のいずれも継続することが見込まれていないため、本件分割が適格分割に該当するためには、共同で事業を営むための分割の要件を充足する必要があると考えられます。

当該要件のうち分割型分割に係る株式継続保有要件の判定上、分割承継法人P社が保有している分割法人S社の議決権株式については、判定式の分子に含めることとされており、株式継続保有割合が80%以上(100%)となるため、本件分割は株式継続保有要件を充足するものと考えられます。

なお、平成29年度税制改正において、平成29年10月1日以後に実施される分割型分割に係る株式継続保有要件について、改正が予定されています。詳細については、下記解説をご参照ください。

【解説】

1 本件分割の法人税法上の分類

無対価分割で、その分割の直前において、分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場合または分割法人が分割承継法人の株式を保有していない場合の当該無対価分割については、法人税法上、分割型分割に分類されます(法法2十二の九ロ)。

本件分割は、無対価で実施されており、分割の直前において、分割承継法人P社が分割法人S社の発行済株式等の全部を保有しているため、分割型分割に該当するものと考えられます。

2 税制適格性の判定

(1) 100%グループ内の分割

無対価分割で、当該分割前に分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係等があり、かつ、当該分割後に当該完全支配関係が継続することが見込まれているものは、適格分割として取り扱われます(法法2十二の十一イ、法令4の3⑥一)。

本件分割は無対価で実施されており、当該分割前に分割承継法人P社が分割法人S社の発行済株式等の全部を保有していますが、分割後にS社を被合併法人とする吸収合併が予定されており、分割承継法人P社と分割法人S社との間の当該完全支配関係が継続することが見込まれていないため、100%グループ内の適格分割には該当しないものとえられます。

(2) 50%超100%未満グループ内の分割

以下の①から③のすべての要件に該当する無対価分割で、当該分割前に分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係等があり、かつ、当該分割後に当該支配関係が継続することが見込まれているものは、適格分割として取り扱われます(法法2十二の十一ロ、法令4の3⑦一)。

① 主要資産等引継要件

当該分割により、分割法人の分割前に営む事業のうち当該分割により分割承継法人において営まれることとなるもの(以下「分割事業」)に係る主要な資産および負債が当該分割承継法人に移転していること。

② 従業者引継要件

当該分割の直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね80%以上に相当する数の者が当該分割後に当該分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること。

③ 事業継続要件

当該分割に係る分割事業が当該分割後に当該分割承継法人において引き続き営まれることが見込まれていること。

本件分割は無対価で実施されており、当該分割前に分割承継法人P社が分割法人S社の発行済株式等の全部を保有していますが、分割後にS社を被合併法人とする吸収合併が予定されており、分割承継法人P社と分割法人S社との間の支配関係が継続することが見込まれていないため、50%超100%未満グループ内の適格分割には該当しないものと考えられます。

(3) 共同で事業を営むための分割

以下の①から⑥のすべての要件に該当する無対価分割で、当該分割前に分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係等があるものは、適格分割として取り扱われます(法法2十二の十一ハ、法令4の3⑧)。

① 主要資産等引継要件

上記2(2)①と同様。

② 従業者引継要件

上記2(2)②と同様。

③ 事業継続要件

上記2(2)③と同様。

④ 事業関連性要件

当該分割に係る分割法人の分割事業と当該分割に係る分割承継法人の当該分割前に営む事業のうちのいずれかの事業(以下「分割承継事業」)とが相互に関連するものであること。

⑤ 事業規模要件または経営参画要件

当該分割に係る分割法人の分割事業と当該分割に係る分割承継法人の分割承継事業(当該分割事業と関連する事業に限ります。)のそれぞれの売上金額、従業者の数もしくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと、または、当該分割前の当該分割法人の役員等のいずれかと当該分割承継法人の特定役員のいずれかとが当該分割後に当該分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること。

⑥ 分割型分割に係る株式継続保有要件

以下の者が保有する分割法人の議決権株式の合計数が分割法人の発行済議決権株式総数の80%以上であること(分割法人の株主等の数が50人未満である場合に限ります。)

a) 当該分割型分割の直前の当該分割型分割に係る分割法人の株主等で当該分割型分割により交付を受ける分割承継法人の議決権株式または分割承継親法人の議決権株式のいずれか一方の株式の全部を継続して保有することが見込まれる者。

b) 当該分割型分割に係る分割承継法人。

c) 当該分割型分割に係る他の分割法人。

本件分割については、100%グループ内の分割および50%超100%未満グループ内の分割のいずれにも該当しないため、本件分割が適格分割に該当するためには、上述の共同で事業を営むための分割の要件を充足する必要があると考えられます。

当該要件のうち、ご質問の株式継続保有要件について、以下解説致します。

3 分割型分割に係る株式継続保有要件の判定

上述の2(3)⑥分割型分割に係る株式継続保有要件の規定を本件分割に当てはめると、以下のとおりになると考えられます。

a) 本件分割は無対価で実施されるため、当該分割型分割の直前の当該分割型分割に係る分割法人S社の株主等で当該分割型分割により交付を受ける分割承継法人P社の議決権株式または分割承継親法人の議決権株式のいずれか一方の株式の全部を継続して保有することが見込まれる者は存在しません。

b) 当該分割型分割に係る分割承継法人P社が保有する分割法人S社の議決権株式は、分割法人S社の発行済議決権株式総数の100%を占めます。

c) 当該分割型分割に係る他の分割法人は存在しません。

したがって、b)によって株式継続保有割合が80%以上(100%)となるため、本件分割は株式継続保有要件を充足するものと考えられます。

なお、株式継続保有要件の判定において、継続保有の見込みを要求されているのは、a)の分割法人の株主等が交付を受ける分割承継法人の議決権株式または分割承継親法人の議決権株式のいずれか一方の株式であり、分割法人の株主等が分割前に有していた分割法人の株式については、継続保有の見込みを要求されていない点にご留意ください。

4 分割型分割に係る株式継続保有要件の改正

平成29年度税制改正において、上述の2(3)⑥分割型分割に係る株式継続保有要件の規定は、以下のとおり改正される予定です。

分割法人の発行済株式の50%超を保有する企業グループ内の株主がその交付を受けた分割承継法人の株式の全部を継続して保有することが見込まれていること(平成29年10月1日以後に実施される組織再編成について適用)


現状、平成29年10月1日以後に無対価分割が実施された場合の株式継続保有要件については、明確化されていない点にご留意ください。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

 

 

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