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合名会社の財産評価基本通達上の評価について

『国税速報』平成29年3月27日号

合名会社の出資金の評価方法は、基本的には財産評価基本通達の非上場株式の評価方法に準ずることとなります。(『国税速報』平成 29年3月27日号)

【疑問相談】資産税(財産評価)

「合名会社の財産評価基本通達上の評価について」

Question:
私は、製造業を営む株式会社A社(非上場)のオーナー(発行済株式総数の100%を保有)です。昨今の不況の波に追われ、過年度より債務超過の状態が継続している状況であり、現在の債務超過額は10百万円です。

会社再生のための策を講じなくてはならないのですが、私自身も高齢で、自身の相続を考えなくてはならず、目先の相続税の負担がどの程度になるか検討しているところです。

その折、A社の事業上の政策の一環で、合名会社化し、私が無限責任社員になるという話が持ち上がりました。仮にこの合名会社への会社変更を行った後に相続が起こった場合、A社の出資金はどのように評価すればよいでしょうか。

Answer:
合名会社の出資金の評価方法は、基本的には財産評価基本通達の非上場株式の評価方法に準ずることとなります。

ただし、A社は債務超過の状態とのことですので、A社の合名会社化後に相続が発生した場合において、会社財産をもって完済できない債務がA社に存在する場合は、当該債務を被相続人の債務として債務控除をすることができます。

【解説】

1 合名会社とは

合名会社とは、持分会社(会社法575①)のうち、無限責任社員のみで構成される会社形態です。無限責任社員とは会社の債権者に対し直接連帯して責任を負う社員のことをいいます。従来、合名会社の設立には無限責任社員2人以上が必要でしたが、会社法の施行に伴い、無限責任社員は1人でも設立が可能となりましたので、A社のように1人だけが出資者である会社であっても、会社変更に伴う合名会社化も可能です。

合名会社の特徴としては、定款の規定が比較的自由に設定できる点や決算公告の義務がないという点がメリットとしてあげられる一方、仮に事業が失敗し、会社の財産だけでは債務の弁済ができない場合、無限責任社員は各々連帯して会社の債務の弁済をする責任を負うこととされていますので、私財をもって会社の債務を弁済する必要があります(会社法580)。そのため、無限責任社員同士の信頼関係の下、運営される会社といえます。

2 合名会社の出資の評価

合名会社をはじめとする持分会社に対する出資の価額は、財産評価基本通達(以下「評基通」)の非上場株式の評価に準じて行うこととされています(評基通194)が、合名会社においては、無限責任社員の死亡により当該無限責任社員は自動的に退社(会社法607①三)することになるため、その持分については無限責任社員の死亡に係る定款の定めに応じて取扱いが異なります。

(1) 持分を承継する場合

定款上、相続人が被相続人の無限責任社員としての地位を自動的に引き継ぐことが規定されている場合は、評基通194に基づき、非上場株式の評価方法に準じます。

なお、非上場株式の評価は、相続人の取得する議決権割合に応じて「原則的評価方式」、「特例的評価方式」の判定をすることとなりますが、定款上の別段の定め(例えば議決権を出資額に比例させる定め)がある場合を除き、1人1議決権が原則です。

(2) 持分を承継しない場合

定款上、相続人が被相続人の無限責任社員としての地位を自動的に引き継ぐことが規定されていない場合は、被相続人の死亡による退社に伴い、相続人が出資金の払戻しを受ける権利を取得することとなります(会社法611①)。

この場合の評価については、払戻金額の計算が当該無限責任社員の退社の時における合名会社の財産の状況に従ってしなければならないこととされている(会社法611②)ため、持分の払戻請求権として評価します。具体的には当該合名会社の時価純資産価額により評価することとなります。

3 債務超過の場合の取扱い

非上場株式の評価上、評価対象会社が株式会社の場合において、当該会社が債務超過であるときの評価額は0円となり、マイナスの評価にはなりません。

しかし合名会社の場合、評価対象会社である合名会社の財産だけで会社の債務を完済できないときは、社員は各々連帯して会社の債務を弁済する責任を負うとされている(会社法580)ため、合名会社が債務超過である場合は、その無限責任社員が当該債務超過分の債務を弁済する義務を負うこととなります。その場合、当該弁済する義務を負う債務は、相続人の債務として相続税の課税価格計算上、債務控除をすることができます。

本件に照らした場合、A社は債務超過が10百万円とのことですので、仮にA社が現在の財務状況のまま合名会社へ会社変更を行い、債務超過状態が改善しないまま相続が発生したときには、相続税の課税価格計算上は10百万円の債務を認識し、債務控除をすることができるとえられます。

ただし、相続税の課税価格計算上、債務控除の対象となる金額は、被相続人が負担することが確実と認められる債務相当額に限る(相法13、14)こととされていますので、当該合名会社が有する資産負債に適切な時価が存在し、債務超過であることが確実であることを十分に疎明する必要がある点にご留意ください。

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