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企業グループ内の分割型分割に係る完全支配関係継続要件

『国税速報』平成29年7月31日号

平成29年度税制改正により、完全支配関係または支配関係がある法人間で行われる分割型分割に係る(完全)支配関係継続要件(株式の保有関係)に関し、適格要件が見直されました。(『国税速報』平成 29年7月31日号)

【疑問相談】法人税

「企業グループ内の分割型分割に係る完全支配関係継続要件」

Question:
弊社(P社)グループは、弊社を資本最上位の法人として主として不動産事業を行っていますが、今般、S社の有する不動産事業の買収目的で、弊社はS社を100%子会社化することを予定しています。買収後できるだけ速やかに、同事業を弊社へ無対価による分割型分割により移転した後、S社の不動産事業以外の事業は不要であるため、S社を解散・清算するか第三者へ譲渡することを想定しています。

このような場合、現行税法上本分割型分割は非適格分割になると思われますが、平成29年度税制改正により取扱いが変わったと聞きました。改正前後の税務上の取扱いを教えてください。

なお、弊社グループは連結納税を採用していません

Answer:
平成29年度税制改正前は、完全支配関係がある法人間の分割型分割における適格要件の一つである完全支配関係継続要件については、分割後に分割法人と分割承継法人との完全支配関係継続が求められていたため、S社を解散・清算あるいは第三者に譲渡することがあらかじめ見込まれている場合には貴社とS社との間の完全支配関係が継続しないことから、非適格分割として取り扱われることとされていました。

しかし、改正後は、完全支配関係継続要件は、支配法人と分割法人との間の完全支配関係継続の見込みが不要となりましたので、S社の解散・清算あるいは第三者に譲渡することが見込まれていたとしても、適格分割として取り扱われることとなりました。

【解説】

1 はじめに

企業グループ内で行う分割型分割が、法人税法上の適格分割として取り扱われるためには、以下の要件を充足する必要があります。

(1) 完全支配関係注1がある法人間の分割型分割の適格要件
  • 金銭等不交付要件
  • 完全支配関係継続要件

注1 完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する一定の関係(以下「当事者間の完全支配の関係」)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係をいいます(法法2十二の七の六)。

(2) 支配関係注2がある法人間の分割型分割の適格要件
  • 金銭等不交付要件
  • 按分型要件
  • 主要資産負債引継要件
  • 従業者引継要件
  • 事業継続要件
  • 支配関係継続要件

なお、無対価分割である場合には、完全支配関係は、分割前に分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係に限られ、支配関係は、分割前に分割承継法人および当該分割承継法人の発行済株式等の全部を保有する者が分割法人の発行済株式等の全部を保有する場合に限られています。

平成29年度税制改正により、完全支配関係または支配関係がある法人間で行われる分割型分割に係る(完全)支配関係継続要件(株式の保有関係)に関し、適格要件が見直されました。

注2 支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の50%超を直接若しくは間接に保有する一定の関係(以下「当事者間の支配の関係」)又は一の者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係をいいます(法法2十二の七の五)。

2 株式保有関係に関する適格要件改正の趣旨

組織再編税制では、資産の移転は原則時価取引として譲渡損益が計上されますが、移転資産に対する支配が組織再編成後も継続していると認められる場合には、移転資産の譲渡損益の計上を繰り延べることとされています。

グループ経営の場合には、グループ最上位の法人がグループ法人およびその資産の実質的な支配者であると考えられることから、グループ最上位の法人により移転資産に対する支配が組織再編成後も継続していると認められる場合には、株式保有関係に関する要件を充足するものとされました。

以下において、具体的に解説します。

3 平成29年度税制改正前の取扱い

改正前の(完全)支配関係継続要件については、次のいずれかの要件を充足することが求められていました。

(1) 当事者間の(完全)支配関係継続見込み

分割前に分割法人と分割承継法人との間に、いずれか一方の法人による(完全)支配関係があり、かつ、分割後に当該分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による(完全)支配関係が継続することが見込まれること(法令4の3⑥一⑦一)。

(2) 同一の者による(完全)支配継続見込み

分割前に分割法人と分割承継法人との間に、同一の者による(完全)支配関係があり、かつ、分割後に当該分割法人と分割承継法人との間に当該同一の者による(完全)支配関係が継続することが見込まれていること(法令4の3⑥二⑦二)。

このように、(完全)支配関係継続要件については、分割後においてグループ最上位の法人(以下「支配法人」または「同一の者」)・分割法人・分割承継法人の三者間における当事者間の(完全)支配関係継続見込みや同一の者による(完全)支配関係継続見込みを要求するものでした。

4 平成29年度税制改正の取扱い

平成29年度税制改正により、支配法人が移転資産負債の支配を継続している限り、支配法人と分割法人との間の(完全)支配関係継続見込みを不要とし、支配法人と分割承継法人との間の(完全)支配関係継続見込みが新たな要件の内容として整備されました。

(1) 当事者間の(完全)支配関係のある法人間の分割型分割
※クリックすると大きい画像が開きます
(2) 同一の者による(完全)支配関係のある法人間の分割型分割
※クリックすると大きい画像が開きます

5 本分割型分割の場合

平成29年度税制改正前後における、本分割に係る税務上の取扱いは、以下のとおりです。

(1) 改正前の取扱い

分割後も分割法人S社と分割承継法人P社との間にP社による完全支配関係の継続が見込まれることが適格要件の一つとされているため、S社を解散・清算あるいは第三者に譲渡することがあらかじめ見込まれている場合は、非適格分割として取り扱われることとされていました。

代替案として、不動産事業を適格現物分配によりP社へ吸い上げる等の方法がえられますが、この場合には会計上の分配可能額との兼ね合いのほか、不動産取得税や登録免許税の負担が重くなる可能性があるという留意点もあります。

(2) 改正後の取扱い

平成29年度税制改正後は、吸収分割型分割注3のうち当該分割型分割前に当該分割型分割に係る分割法人と分割承継法人との間に当該分割承継法人による完全支配関係注4があるものについては、分割法人と分割承継法人との完全支配関係継続の見込みが不要となったため(法令4の3⑥一イ)、分割法人(S社)の解散・清算あるいは第三者に譲渡することがあらかじめ見込まれていたとしても、本分割型分割は適格分割として取り扱われることとなります。

適格現物分配を用いる手法同様、不動産事業の含み益課税が繰り延べることができるだけでなく、分配可能額の制限なく事業の移転が可能となる点や、一定の要件を充足すれば不動産取得税の非課税注5を適用することができる余地があるため、事業の移転手法を選択する幅が増えたということができます。

ただし、お問い合わせの内容の場合、貴社とS社の間の支配関係は5年超継続していないとえられるため、繰越欠損金の引継ぎや特定資産譲渡等損失額の損金算入について一定の制限が課される可能性がある点にも留意が必要です。

注3 法人税法第62条の5第1項(株式等を分割法人と分割法人の株主等とに交付する分割)に規定する分割(いわゆる中間型分割)を除きます。
注4 当該分割型分割が法人税法第2条第十二号の九ロに規定する無対価分割である場合にあっては、分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有する関係に限ります(法令4の3⑥一イ)。
注5 金銭等不交付要件、按分型要件、主要資産負債引継要件、事業継続要件、従業者引継要件を充足する必要があります(地法73の7二、地令37の14)。

6 適用時期

上記分割に関する改正は平成29年10月1日以後に行われる分割について適用され、同日前に行われた分割については従前どおりとされます(改正法附則11②、改正法令附則2②)。

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