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連結納税を採用している企業のスクイーズアウト~連結子法人が買収する場合~

『国税速報』平成29年7月3日号

本稿では、平成29年度税制改正により創設された、スクイーズアウト(ある会社の支配株主が対象会社の少数株主の有する株式の全部を、その少数株主の個別の承諾を得ることなく、金銭その他の財産を対価として取得すること)に関する税制の概要について解説する。(『国税速報』平成 29年7月3日号)

【疑問相談】法人税

「連結納税を採用している企業のスクイーズアウト~連結子法人が買収する場合~」

Question:
当社は当社を連結親法人とする連結納税を採用していますが、上場している競合企業の買収を企図しており、買収対象法人を、社内管理上、連結子法人の子会社とすることを考えています。買収は、買収対象法人の発行済株式の2/3を取得することを目的としてTOB(株式公開買付け)を行った上で、90%以上の議決権を取得できた場合には株式売渡請求、90%未満であった場合には株式併合によるスクイーズアウトを実施することを想定していますが、現金対価の株式交換も選択肢として検討すべきと考えています。

平成29年度税制改正に伴い、平成29年10月1日以降に行われたスクイーズアウトに関する税制の創設・整備がされたと聞いていますが、その概要と当社のM&A手法への影響があれば教えてください。

Answer:
平成29年度税制改正により、株式併合や株式売渡請求により買収法人と買収対象法人との間に完全支配関係が生じる場合は、税務上、組織再編成として取り扱われることとされました。また、発行済株式総数の2/3以上を保有する場合の現金対価の株式交換は、適格要件の判定における対価要件が緩和されました。

これらの改正は、貴社の連結子法人が買収法人となるM&A 手法にも影響を及ぼすものと考えられます。株式併合や株式売渡請求による場合、適格要件を満たす場合には、買収対象法人の時価評価資産の評価損益が不要となり、現金対価の株式交換による場合、適格要件を満たす場合には、買収対象法人および買収対象法人の株主において課税繰延べとされます。

また、適格要件を満たす場合にはいずれも、連結納税の加入に際し、時価評価や欠損金の持込み制限が課されないこととされます。

ただし、全部取得条項付種類株式や株式併合の場合と異なり、現金対価の株式交換による場合においては、反対株主の買取請求対価につきみなし配当が生じるため、手法の選択に際してはこの点を慮する必要があります。

【解説】

1 スクイーズアウト税制の概要

(1)スクイーズアウト税制の創設

平成29年度税制改正により、スクイーズアウト(ある会社の支配株主が対象会社の少数株主の有する株式の全部を、その少数株主の個別の承諾を得ることなく、金銭その他の財産を対価として取得すること)に関する税制が創設されました。

スクイーズアウトの手法として全部取得条項付種類株式、株式併合、株式売渡請求(以下「全部取得条項付種類株式等」)により買収法人と買収対象法人との間に完全支配関係が生じた場合は、株式交換と類似する経済的効果であることから、株式交換と全部取得条項付種類株式等を「株式交換等」と称することとされ、組織再編税制が適用されることとなりました。

また、発行済株式等の2/3を支配している株主がいる場合の現金対価の合併や株式交換によるスクイーズアウトについては、適格要件のうち対価要件は金銭等不交付要件が課せられていますが、少数株主に対して交付した金銭等を対価から除外して適格要件の判定をすることとされました。

(2)全部取得条項付種類株式等によるスクイーズアウト税制

平成29年度税制改正により、全部取得条項付種類株式等によるスクイーズアウト税制が適用される場合は、原則として買収対象法人の保有する資産について時価評価を行いますが、以下の適格要件を満たした場合にはその時価評価は不要となります。なお、スクイーズアウト税制の適格要件は、その創設趣旨に鑑み、支配関係がある場合の株式交換と同様のものとなります。

【適格要件】

① 対価要件

金銭等不交付であること(剰余金の配当等として交付される金銭等、買取請求に基づく対価として交付される金銭等、全部取得条項付種類株式による場合において、取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭及び株式売渡請求において取得の対価として交付される金銭等は対価から除外して判定)(法法2十二の十七)。

なお、全部取得条項付種類株式において、少数株主に1株未満の端数が生じたためにその1株未満の株式の合計数に相当する数の株式を譲渡し、または買い取った代金として交付されたものであるときは、原則として当該株主等に対してその1株未満の株式に相当する株式を交付したこととされます(法基通2-3-1)。また、株式併合は対価を交付するものではなく、少数株主の手元にある株式が形を変えて端数になると考えられるだけであり、金銭等不交付要件に抵触しないと解されます。

② 支配関係継続見込要件

スクイーズアウト実施前に、買収法人と買収対象法人の間に支配関係があり、かつ支配関係が継続すること(法法2十二の十七ロ本文、法令4の3⑲)。


③ 従業者継続従事要件

スクイーズアウト実施直前の買収対象法人の従業者のうち、おおむね80%以上に相当する数の者が買収対象法人の業務に引き続き従事することが見込まれること(法法2十二の十七ロ(1))。

④ 事業継続要件

スクイーズアウト実施直前に行う買収対象法人の主要な事業が当該法人にて引き続き行われることが見込まれること(法法2十二の十七ロ(2))。

なお、全部取得条項付種類株式及び株式併合によるスクイーズアウトを行う際の定款変更等に対し、反対株主の買取請求に基づき対価として交付される金銭等は、平成29年度税制改正により、みなし配当が生じる事由から除外されています(法法24①五、法令23③九・十)(注)

(注)全部取得条項付種類株式の取得対価の決定の申立てを行った株主が交付を受ける金銭等については、その申立てをしないとしたならば取得の対価として交付されることとなる株式の数が1に満たない端数となる場合は、従前よりみなし配当の対象外とされています(法令23③十一)。また、株式売渡請求について取得対価の決定の申立ての場合、特別支配株主が支払うこととされています。

(3)現金対価の合併および株式交換によるスクイーズアウト税制

平成29年度税制改正により、合併および株式交換の適格要件である金銭等不交付要件が緩和されました。買収法人が買収対象法人の発行済株式総数の2/3以上を有する場合、その他の株主へ支払う対価が金銭等不交付要件の判定上、対価から除外され、従来適格要件にある金銭等不交付要件に抵触することから選択されにくかった現金対価の交付型の合併や株式交換が可能となりました(法法2十二の八、十二の十七)。

なお、株式交換によるスクイーズアウトを行う際に反対株主に対して交付する金銭等は、みなし配当を認識する必要があります。そのため、全部取得条項付種類株式等を用いたスクイーズアウト税制と取扱いが異なるので、留意が必要となります。

(4)連結加入による時価評価および繰越欠損金

スクイーズアウトを行った結果、連結親法人と買収対象法人の間に完全支配関係が生じると、その買収対象法人は連結納税に加入することとなります。連結子法人は原則として連結納税加入直前事業年度末において有している一定の資産に係る時価評価損益を認識し、かつ、連結子法人が有していた法人税法上の繰越欠損金は連結納税グループへは持ち込めないこととされています(法法61の11、61の12、81の9②③)。

しかし、連結子法人が特定連結子法人に該当する場合、連結子法人における一定の資産に係る時価評価は行われず、また、法人税法上の繰越欠損金は特定連結欠損金(その連結子法人の個別所得を限度として使用可能、他の連結法人の所得とは相殺不可)として連結納税グループへ持ち込むことが可能となります(法法61の11、61の12、81の9②③)。

特定連結子法人とは、適格株式交換等により連結納税へ加入した子法人、連結納税開始日の5年前の日から継続して完全支配関係がある子法人、適格株式交換等により加入した連結子法人の子法人(連れ子)であって当該連結子法人との間の完全支配関係が当該適格株式交換等の日の5年前の日から継続している場合のその子法人などとされています(法法61の11、61の12)。

一定の資産とは、固定資産、棚卸資産である土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権、繰延資産、含み損益が資本金等の額の1/2または1,000万円のいずれか少ない金額に満たない資産等は時価評価対象外とされます。なお、平成29年度税制改正により帳簿価額が1,000万円未満の資産も対象外とされた結果、自己創設のれんの評価は不要となります。

改正の適用時期については、株式交換等については平成29年10月1日以後に完全子法人化の効力発生日が生じるもの、連結納税加入については平成29年10月1日以後に終了する事業年度末時点で有する資産について適用されます。

2 貴社のM&A手法への影響

従来、連結子法人が買収法人となる場合、連結子法人の株式を用いた再編では連結親法人との間に完全支配関係が生ずることから、連結加入による時価評価が課されていました。

しかし、平成29年度税制改正によりスクイーズアウト税制が創設されたことで、株式公開買付等で連結子法人と買収対象法人との間に支配関係が生じた後に、全部取得条項付種類株式等を用いたスクイーズアウトによる適格再編を行う、もしくは発行済株式総数の2/3を保有した後に、現金対価の適格合併および適格株式交換を行うことで、従来、連結加入に係る時価評価を課されることなくスクイーズアウトを行うことが可能となると考えられます。

ただし、株式交換等によるスクイーズアウトは、反対株主の買取請求対価の取扱いにつき株式交換と全部取得条項付種類株式等との間で差異が生じるため、手法の選択にあたりこの点を慮する必要があると考えられます。

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※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

 

 

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