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非居住者に教育資金の一括贈与および結婚・子育て資金の一括贈与を行った場合の特例適用可否とその手続

『国税速報』平成29年2月6日号

我が国において、家計金融資産の6割を高齢者層が有している状況にある中、高齢者層が有する家計金融資産を若年世代に移転することにより経済活性化を図るとともに、我が国の成長力・競争力の強化の観点から教育機会の充実・人材育成は極めて重要であること、また将来の経済的不安が若年層に結婚・出産を躊躇させる大きな要因の一つとなっていることを踏まえ、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置が講じられています。 他方、このような贈与税の非課税措置を創設することは、格差の固定化につながる可能性もあるため、経済活性化のための時限措置とされています。(『国税速報』平成 29年2月6日号)

【疑問相談】資産税(贈与税)

「非居住者に教育資金の一括贈与および結婚・子育て資金の一括贈与を行った場合の特例適用可否とその手続」

Question:
私(日本居住者)にはA国で生活をしている息子と娘(共に日本国籍を有するが、A国居住者)がいます。このたび、息子の大学入学および娘の結婚に伴い、それぞれに資金の贈与を検討しています。なお、息子は21歳、娘は25歳です。
かねてより教育資金の一括贈与╱結婚・子育て資金の一括贈与の特例があることを聞いていますが、海外居住者である息子と娘に対する贈与も適用可能なのでしょうか。また、必要な手続や留意点があれば教えてください。

Answer:
教育資金の一括贈与╱結婚・子育て資金の一括贈与の特例は非居住者に対する贈与であっても適用が可能です。
なお、上記特例を受けるためには日本の金融機関に口座を開設する必要があります。
この制度の終了事由が生じた時点で残額がある場合には、贈与税が課されます。また、結婚・子育て資金については、贈与者が死亡した場合、相続税の課税対象となります。

【解説】

1 制度の趣旨

我が国において、家計金融資産の6割を高齢者層が有している状況にある中、高齢者層が有する家計金融資産を若年世代に移転することにより経済活性化を図るとともに、我が国の成長力・競争力の強化の観点から教育機会の充実・人材育成は極めて重要であること、また将来の経済的不安が若年層に結婚・出産を躊躇させる大きな要因の一つとなっていることを踏まえ、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置が講じられています。

他方、このような贈与税の非課税措置を創設することは、格差の固定化につながる可能性もあるため、経済活性化のための時限措置とされています。

2 制度の概要

日本の居住者であるあなたから、日本の非居住者であるお子様への贈与については、贈与者であるあなたが国内に住所を有していることから、原則として受贈者であるお子様は非居住無制限納税義務者として国内および国外財産の取得が贈与税の課税対象となります(相法1の4①二イ、2の2①)。

しかし、お尋ねの贈与税の特例制度を受けることができる場合、それぞれに定める一定額までの贈与を非課税とすることができます。それぞれの制度概要は下記のとおりです。

(1)  教育資金の一括贈与の特例

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に個人がその直系尊属から教育資金(注1)の一括贈与を受けた場合、当該贈与のうち1,500万円(学校等以外に支払う金銭については500万円)に達するまでの金額は、贈与税が非課税となります(措法70の2の2①)。

その後、受贈者が30歳に達する場合等により教育資金口座に係る契約が終了した場合に、当該口座に残額がある場合は、残額に対し贈与税が課されます(措法70の2の2⑪)。

なお、贈与者の死亡による課税関係は生じません。

(2) 結婚・子育て資金の一括贈与の特例

平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に個人がその直系尊属から結婚・子育て資金(注2)の一括贈与を受けた場合、当該贈与のうち1,000万円(結婚に際して支出する資金については300万円)に達するまでの金額は、贈与税が非課税となります(措法70の2の3①)。

その後、受贈者が50歳に達する場合等により結婚・子育て資金口座に係る契約が終了した場合に、当該口座に残額がある場合は、残額に対し贈与税が課されます(注3)(措法70の2の3⑫)。

なお、贈与者が死亡した場合には、残額について相続税の課税対象とすることとされています。

注1 学校教育法に定める学校等に対して直接支払う入学金や授業料のほか、学習塾の費用やスポーツ教室に支払う学費・通学定期代等の学校等以外に対して直接支払うものも含みます。
注2 結婚に際して支払う挙式費用、結婚披露費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)や家賃、敷金等の新居・転居費用、および妊娠、出産、育児に要する不妊治療の費用や子供の幼稚園入学金等をいいます。
注3 教育資金の一括贈与の特例、結婚・子育て資金の一括贈与の特例については、基本的に贈与税の課税事由は同じですが、贈与者が死亡した場合の課税関係(残額に対して相続税課税)については、結婚・子育て資金の一括贈与の特例のみに存置されています。

3 贈与者/受贈者の要件について

これらの制度について、贈与者と受贈者の要件はそれぞれ下記のとおりとなっています。

⑴ 教育資金の一括贈与の特例

贈与者は受贈者の直系尊属であることとされているため、両親や祖父母ということになります。

一方受贈者は、30歳未満の個人と定められており、国籍や居住地に関する定めはありません。

⑵ 結婚・子育て資金の一括贈与の特例

贈与者は受贈者の直系尊属であることとされているため、両親や祖父母ということになります。

一方受贈者は、20歳以上50歳未満の個人と定められており、国籍や居住地に関する定めはありません。

以上より、受贈者に係る国籍や居住地に関する定めがないため、A国居住者であるお子様に対する教育資金の一括贈与╱結婚・子育て資金の一括贈与の特例は適用可能とえられます。

4 終了事由

⑴ 教育資金一括贈与の特例

  • 受贈者が30歳に達した場合
  • 受贈者が死亡した場合
  • 残高が零になった場合において、契約終了の合意があった場合

⑵ 結婚・子育て資金一括贈与の特例

  • 受贈者が50歳に達した場合
  • 受贈者が死亡した場合
  • 残高が零になった場合において、契約終了の合意があった場合

5 贈与の方法と手続について

教育資金の一括贈与╱結婚・子育て資金の一括贈与の特例の適用を受けるためには、A国に居住するお子様に対して直接送金しても適用できるものではありません。これらの規定の適用を受けるにあたっては、原則として以下のとおり日本の金融機関等においてお子様名義の口座を開設し、教育資金╱結婚・子育て資金管理契約を締結する必要があります。

信託会社

贈与者と信託会社(一定のものに限ります)の間で締結した教育資金等管理契約に基づき取得した信託受益権の贈与(受益者はお子様)

銀行等

贈与者からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金等管理契約に基づき銀行等の国内の営業所等に預入(口座名義はお子様)

証券会社

教育資金等管理契約に基づき、贈与者からの書面による贈与により取得した金銭で証券会社が有価証券を購入(証券保管口座名義はお子様)

さらに金融機関等の営業所等を経由して、「教育資金等非課税申告書」を受贈者であるお子様の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。提出期限はそれぞれ「信託がされる日」「預金をする日」「有価証券を購入する日」と定められており、通常の贈与税の申告期限とは異なるため、提出漏れがないように留意が必要です(措法70の2の2③)。

なお非居住無制限納税義務者の納税地については、自身が納税地を定め、その納税地の所轄税務署長に申告をしなくてはなりません(相法62②)。

実務上は事前に納税管理人を定め、所要の手続を委託することが通常とえられます(通法117①)。

6 海外の学校の入学金について

教育資金の一括贈与の特例では学校の入学金や授業料、結婚・子育て資金の一括贈与の特例では子供の保育園の入園料や授業料が非課税の対象となりますが、日本の学校に限らず、海外の学校(保育園)や現地の日本人学校であっても対象となります。

ただし、外貨で支払った金額は支払日の為替レート(TTS)で円換算されるため、実際支払額との間で差異が生じる可能性があることに留意を要します。

7 (参考)CRS 制度

富裕層の国際的租税回避を防止するため、各国の税務当局間で非居住者にかかる金融口座情報の自動的交換のための報告制度(Common Reporting Standard╱ CRS 制度)が導入されました。

具体的には、自動的情報交換の対象地域である国と日本の間でそれぞれ自国に存在する金融機関から報告を受けた非居住者にかかる金融口座情報(銀行口座、証券保管口座、信託受益権等の投資持分等)を、両国間で情報交換を行う制度であり、施行日は平成29年1月1日(平成28年12月31日以降時点で契約があるものおよび以後の新規口座開設契約等が報告対象)、平成30年9月末に両国間で初回の自動情報交換が実施されることとなります(実特法10の5、10の6)。

本件の場合、A国居住者が国外である日本に金融口座を有することとなるため、A国が自動的情報交換の対象地域である場合には、当該金融口座の情報は日本の金融機関から日本の税務当局へ報告され、A国税務当局へ報告される可能性があります。

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