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繰越欠損金の単年度使用制限に係る新設法人の特例

『国税速報』平成27年6月8日号

平成27年度税制改正により資本金1億円超の法人については青色欠損金の使用限度が単年度所得の65%(平成29年4月1日以後開始事業年度は50%)に引き下げられました(改正前:80%)。同時に、設立の日から7年は上記制限を課さないとする新設法人の特例(資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある場合等を除きます)が設けられました。(『国税速報』平成27年6月8日号)

【疑問相談】法人税 : 「繰越欠損金の単年度使用制限に係る新設法人の特例」

Question:

A社(3月決算)は15年前に設立された資本金4億9千万円の非上場会社です(株主はオーナー社長)。A社は電子部品の製造販売に従事しており、X工場とY工場の2工場体制をとっていました。Y工場は低稼働状態が続いていたため、独立採算制で立て直しを図るため、3年前の平成24年4月1日に分割してB社(3月決算)を設立しました。分社化当初は苦戦が続き、B社は平成27年3月期までに2億円の欠損金が発生しました。4年目(平成28年3月期)になってようやく分社化の効果が出始め、コスト削減や独自販路開拓等により単年度利益の計上が見込める状況です。
B社は資本金3億円ですので、繰越欠損金の単年度使用制限がかかると理解していますが、平成27年度税制改正で新設法人について特例が設けられたと聞きました。B社には適用があるのでしょうか。

Answer:

平成27年度税制改正により資本金1億円超の法人については青色欠損金の使用限度が単年度所得の65%(平成29年4月1日以後開始事業年度は50%)に引き下げられました(改正前:80%)。
同時に、設立の日から7年は上記制限を課さないとする新設法人の特例(資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある場合等を除きます)が設けられました。この特例上、分割等の組織再編があった場合は当該法人と分割法人等の設立の日のうちいずれか早い日が設立の日とされます。
本件の場合、分割法人であるA社は15年前に設立された法人であるためB社は新設法人の特例を受けることはできず、原則どおり繰越欠損金の単年度使用制限が課されることになります。

【解説】

1. 繰越欠損金の単年度使用制限

青色申告法人は過年度に生じた税務上の欠損金を繰り越して将来の所得と相殺することが認められています。ただし、単年度に使用できる繰越欠損金は当該年度の欠損金控除前所得の一定割合とされています。この一定割合は平成24年4月1日以後開始事業年度は80%とされていましたが、平成27年度税制改正により引き下げられ、平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度は65%、平成29年4月1日以後に開始する事業年度は50%になります(法法57①但書、平27年改正法附則27)。欠損金の繰越期間は現状9年ですが、平成29年4月1日以後開始事業年度分から10年に延長されます。
上記の欠損金単年度使用制限は資本金1億円超の法人に適用され、中小法人には適用されません。すなわち、中小法人は当期の所得に達するまで繰越欠損金を使用することができます。ここで中小法人とは、普通法人のうち、事業年度終了時の資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるものをいいます。ただし、資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある法人や100%グループ内の複数の大法人により発行済株式のすべてを保有されている法人は中小法人の範囲から除外されます(法法57⑪一、66⑥二・三)。


2. 新設法人の特例

平成27年度税制改正により欠損金単年度使用制限が拡大したことに伴い、新設法人の適用除外規定が新たに設けられました。
青色欠損金を控除しようとする年度が内国法人の設立の日から7年を経過する日までの期間内の日の属する事業年度である場合には、単年度使用制限は課されないこととされました(法法57⑪三)。これは、事業開始後しばらくは費用等が先行することに配慮したものと思われます。なお、設立から7年以内であっても、以下の場合には適用がありません。

① 事業年度終了の時において資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がある場合や100%グループ内の複数の大法人により発行済株式のすべてを保有されている場合
② 株式移転により設立された法人である場合
③ 発行株式が上場又は店頭公開された場合

内国法人の設立の日とは一般の会社の場合は設立の登記の日と考えられますが(法基通1-2-1)、以下に掲げる場合には当該法人の設立の日と移転法人(それぞれ被合併法人、分割法人、現物出資法人、残余財産が確定した他の内国法人、被承継法人)の設立の日のいずれか早い日とされます(法令112⑱)。

(i) 自己を合併法人とする合併を行った場合
(ii) 自己を分割承継法人とする分割により分割法人が行っていた事業の移転を受け、かつ、当該事業を引き続き行う場合
(iii) 自己を被現物出資法人とする現物出資により現物出資法人が行っていた事業の移転を受け、かつ、当該事業を引き続き行う場合
(iv) 完全支配関係がある他の内国法人の残余財産が確定した場合
(v) 特別の法律に基づく承継を受けた場合

これは、事業等の移転元における設立の日も考慮して7年をカウントする趣旨であると考えられます。

3. B社の場合

B社は資本金3億円のため、原則として欠損金の単年度使用制限が課されます。しかしながら、B社は平成24年4月1日に設立された法人であるため、新設法人の特例が適用できないか以下検討します。
まず、新設法人の特例は平成27年度税制改正により創設されたため、改正法施行日以後に新設された法人が対象になるのではないかという疑問があるかもしれません。この点、特にいつ以降の設立に限るといった規定は設けられていないため、改正前に設立された法人であっても7年以内であれば新設法人の特例は適用できます。
次に資本金5億円以上の大法人による完全支配関係がないかですが、B社の完全親会社であるA社の資本金は4億9千万円ですので、該当しません。
最後に本規定におけるB社の設立の日がいつになるかです。B社はA社から分割により事業を受け入れているため、上記2の読替規定によりA社の設立の日(15年前)がB社の設立の日とみなされ、既に7年が経過していることになります。
したがって、B社は新設法人の特例の適用を受けることができず、原則どおり欠損金の単年度使用制限の適用を受けます。なお、仮に事業年度末までに資本金を1億円以下にまで減資すれば、中小法人に該当するため制限の対象外になります。

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