ナレッジ

株式持ち合いがある場合の不動産関連法人株式の判定について

『国税速報』平成29年5月8日号

本稿では、株式を持ち合いしている場合の不動産関連法人株式の該当性に係る判定について、国内法上の考え方と日米租税条約上の考え方にわけて解説する。(『国税速報』平成 29年5月8日号)

【疑問相談】国際税務

「株式持ち合いがある場合の不動産関連法人株式の判定について」

Question:
私は、A国に住む日本非居住者(日本国内に恒久的施設を有しません)です。このたび、事業上の理由から、私が保有している日本法人B社の株式のうち1%を取引先である日本法人(第三者)へ売却することを検討しています。

A国では株式に係るキャピタルゲインは非課税なのですが、B社株式が不動産関連株式に該当した場合、B社株式の売却益に対しては日本でも課税される可能性があると聞きました。B社株式は不動産関連株式に該当し、その売却益は日本で課税されることになりますでしょうか。なお、本年中のB社株式の売買は、この取引のみです。

ちなみに日本とA国との租税条約には下記の規定があるようです。

【日本・A国租税条約(抜粋)】(以下「A国租税条約」)

第13条譲渡収益

  1. 一方の締約国の居住者が、他方の締約国の居住者である法人(その資産の価値の50パーセント以上が当該他方の締約国内に存在する不動産により直接又は間接に構成される法人に限る。)の株式その他同等の権利の譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
  2. 1に規定する財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者とされる締約国においてのみ租税を課することができる。


B社およびそのグループの資本関係およびB╱Sの状況は(PDF1ページ目の図)のとおりであり、簿価= 時価です。なお、B社、C社、D社はいずれも日本法人です。

Answer:
あなたの課税関係はB社株式の不動産割合をどのようにとらえるかによると考えられます。

現行の国内法上、株式の持ち合いがある場合は、その持ち合い株式をすべて含めて不動産関連法人として判定することとなります。

一方、租税条約上の不動産関連法人株式の判定においては、子会社を通じた間接保有の不動産の価額を持分に応じて取り込むという見解が存在し、これを準用することで持ち合いの場合にはグループ全体の連結ベースで不動産割合を判定する方法も考えられます。

ただし、ご紹介する租税条約のえ方は国税当局の公式見解ではないことから実務上は国税当局への照会等の対応が必要になるケースもあると考えられます。

【解説】

1 所得税法上の取扱い

所得税法上、国内に恒久的住居を有していない非居住者については一定の国内源泉所得のみが課税対象とされます(所法164①二)。

株式の譲渡は原則として居住地国課税とされていますが、株式が事業譲渡類似株式または不動産関連法人株式等に該当する場合は源泉地国課税(当該法人の所在地国で課税)されることから、B社株式がこれらに該当するか否かを検討する必要があります。

事業譲渡類似株式とは、所有株数要件(譲渡年終了の日以前3年のいずれかの時において内国法人の特殊関係株主等(注1)の保有割合が25%以上であること)と譲渡株数要件(譲渡年においてその非居住者を含む特殊関係株主等が5%以上の株式等を譲渡したこと)の2要件を充足する場合の株式をいいます(所法161①三、所令281①四ロ⑥)。

今回はB社株式の1%を譲渡する予定であることから、事業譲渡類似株式には該当しないと考えられます。

一方、不動産関連法人株式とは、総資産の価額に対する下記のa~dに掲げる資産の価額の合計額の占める割合(以下「不動産割合」)が50%以上となるものをいいます(所法161①三、所令281①五⑧)。

a 直接保有する土地等(注2)
b 土地等の保有割合が50%以上となる関連法人(以下「不動産関連子法人」)の株式
c bまたはdに掲げる株式を有する法人(その有する資産の価額の総額のうちにa、b、c、dに掲げる資産の価額の合計額の占める割合が50%以上であるものに限ります)の株式(bの株式を除きます)
d cに掲げる株式を有する法人(その有する資産の価額の総額のうちにa、b、c、dに掲げる資産の価額の合計額の占める割合が50%以上であるものに限ります)の株式(b、cの株式を除きます)お問い合わせの件に照らした場合、B社の保有する土地等の価額はありませんが、B社の有する資産のうちにはbに掲げる資産(C社株式(注3))とdに掲げる資産(D社株式(注4))の合計額400百万円の総資産450百万円に占める割合が50%以上のため、B社株式は不動産関連法人株式に該当すると考えられます。

注1 内国法人の株主およびその株主等の同族関係者その他これらに準ずる者をいいます(所令281④)。

注2 国内にある土地(およびその上に存する権利)、建物、建物附属設備、構築物をいいます(所令281⑧一)。

注3 C社は総資産150百万円のうちに、土地等(a)が100百万円あり、保有割合が50%以上のため不動産関連子法人株式となります。

注4 D社は総資産250百万円のうちに、土地等(a)が100百万円とB社株式(c)が100百万円があり、保有割合が50%以上のためdに掲げる資産に該当することとなります。

2 A国租税条約上の取扱い

A国租税条約によれば、譲渡収益については原則として居住地国課税としつつ、第13条1項ではB社についてその資産の価値の50%以上が日本国内に存在する不動産により直接または間接に構成される法人であれば、日本に課税権が及ぶこととなります。

この点、租税条約上の不動産関連法人株式に係る資産保有割合の考え方の参として、浅川雅嗣編著『コンメンタール改訂日米租税条約』(大蔵財務協会)147ページにおいて、次のように解説されています。

たとえば、甲が直接に不動産を所有するとともに、甲が所有する他の子会社(乙)も不動産を所有している場合(間接所有)には、「甲の不動産構成割合= (甲の直接所有不動産の価値+(乙の所有不動産の価値× 甲の乙株所有割合))÷ 甲の総資産の価値」の算式により不動産の構成割合を計算することとなる。

この考え方を慮しますと、租税条約上は子会社株式が不動産関連子法人株式に該当するか否かにかかわらず、子会社を通じて間接所有する不動産の価額を持分に応じて取り込んで不動産割合を計算するものと考えられます。

すなわち、租税条約のえ方に従えば、趣旨解釈上、基本的に持ち合いについては慮せず、B社とC社およびD社の連結ベースで不動産割合を判定する方法についても一定の合理性があると考えられます。

このえ方で判定した場合、総資産の額は連結の総資産の額としてB社50百万円(C社とD社の投資簿価控除後)、C社150百万円、D社250百万円の合計額450百万円、不動産等の額はC社(間接所有)100百万円× 100% = 100百万円、D社(間接所有)100百万円× 100% = 100百万円の合計額200百万円であるため、不動産割合は44.4%となることから、不動産関連法人株式に該当しないこととなります。

したがって第13条2項の規定により、B社株式の譲渡については日本の課税権は及ばないこととなります。

3 実務上の留意点

ここまで記載したとおり、国内法上のえ方では株式を持ち合いしている場合の不動産関連法人株式の該当性に係る判定については、間接して不動産関連子法人株式を保有している場合は株式の価額の全額を不動産割合の分子に含めなければならず、やや厳しい規定になっているものと見受けられます。一方、紹介した日米租税条約上のえ方は国内法よりも緩和された解釈となっていますが、同条約のコンメンタールに記載があるため租税条約上の考え方を理解する上では非常に有力な見解ではあるものの、一律にすべての国との租税条約に対して適用することができるとは限りません。

実務上は、必要に応じて国税当局へ照会するか、会社法上は親子間の株式持ち合いがある際には相応の時期に処分することが求められるため、いったんB社とD社の持ち合いを現物分配等の方法で解消して資本関係をシンプルにした上で、再度不動産割合の判定をすることも一案と考えられます。

PDF

こちらから記事の全文がダウンロードができます。

 

 

 

 

※本記事は、一般財団法人大蔵財務協会の許可を得て当法人のウェブサイトに掲載したものにつき、無断転載を禁じます。

 

 

(736KB, PDF)
お役に立ちましたか?