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最近の税務判例の傾向と対策 ~CFC税制の経済活動基準(適用除外基準)~

Tax Controversy Newsletter:2017年9月号

本ニュースレターでは、CFC税制に関する多くの判例で主な争点となっている、外国の関係会社が経済活動基準(適用除外基準)を満たしているか否かに関する判例の傾向と実務上の対策について、取り上げることとする。(Tax Controversy Newsletter:2017年9月号)

1. 最近増加しているCFC税制に関する判例

内国法人・居住者は、いわゆるタックスヘイブン(軽課税国)に関係会社を設立して経済活動を行い、当該会社に所得を留保することにより、我が国における租税の負担を回避することができる。そこで、このような租税回避に対処して、税負担の実質的な公平を図るために、CFC(Controlled Foreign Company)税制が導入された。具体的には、所定の要件を満たす外国の関係会社の所得を、内国法人・居住者の所得に合算して課税することとされている。外国子会社合算税制とも呼ばれている。

最近、このCFC税制に関する判例が、増加する傾向にある。CFC税制に関する公表された判例は、これまでに20件以上存在する。このうち約半分に当たる10件以上が、ここ5年ほどの間に下されている(判例1ないし21)。もっとも、税務係争事件のうち実際に裁判所で争われるケースは、氷山の一角にすぎない。CFC税制の適用をめぐる潜在的な税務係争事件は、増加の一途をたどっているといえよう。

その背景には、CFC税制が適用されるか否かで、課税金額に大きな違いが生じ得ることが挙げられる。税務当局にとっては、CFC税制の適用の可否について重点的に税務調査を行えば、大きな課税漏れの指摘につながる可能性がある。他方、大きな課税漏れを指摘された納税者としては、関係者に対する説明責任との関係で、唯々諾々と修正申告するわけにはいかないという状況に陥りがちである。このような事情が、CFC税制に関する税務係争が増加する一因となっているのであろう。

CFC税制に関する多くの判例では、外国の関係会社が経済活動基準(適用除外基準)を満たしているか否かが、主な争点となっている。そこで、本ニュースレターでは、この点に関する判例の傾向と実務上の対策について、取り上げることとする。

2. CFC税制の経済活動基準(適用除外基準)

タックスヘイブンに設立された関係会社であっても、独立企業としての実体を備え、その所在する国又は地域において事業活動を行うことにつき、十分な経済合理性がある場合もある。そのような場合にまで、経済活動の実体のある事業から生じる所得(能動的所得)を合算して課税すると、我が国の民間企業の海外における正常かつ合理的な経済活動を阻害するおそれがある。そこで、一般に、外国の関係会社が、次の四つの経済活動基準のいずれかを満たさないときに、当該関係会社の能動的所得に対する合算課税を行うこととされている(ただし、一定の例外はある)。

①   株式・債券の保有、知的財産権の提供又は船舶・航空機の貸付けを主たる事業とするものでないこと(事業基準)

②   本店所在地国においてその主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有すること(実体基準)

③   本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること(管理支配基準)

④   その主たる事業が卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は一定の物品賃貸業に該当する場合においては、その事業を主として非関連者との間で行っていること(非関連者基準)、その主たる事業がこれ以外の事業に該当する場合においては、その事業を主として本店所在地国において行っていること(所在地国基準)


なお、平成29年度税制改正において、CFC税制は抜本的に改正された。改正前は、上記の経済活動基準は、基本的には、一定の外国の関係会社がCFC税制を適用されないための基準(適用除外基準)として整理されていた。もっとも、外国の関係会社がそれぞれの基準を満たすか否かで合算課税の可否を判断するという基本的な考え方は、改正後も変わっていない。また、それぞれの基準の内容も、ほぼ同じである。そのため、改正前の適用除外基準に関する判例も、改正後の経済活動基準に関する実務について考える上で、直接に参考になろう。以下、それぞれの基準に関する判例について検討する。

3. 事業基準に関する判例の傾向と対策

一つ目の経済活動基準は、外国の関係会社が、株式・債券の保有、知的財産権の提供又は船舶・航空機の貸付けを主たる事業とするものでないことである(事業基準)。例えば、株式の保有についてみると、株式を保有又は運用することにより利益配当又は譲渡益を得るといった株式の保有に係る事業(株式保有業)は、その性質上、我が国においても十分に行うことができる。したがって、これを主たる事業とする関係会社が、我が国ではなくわざわざタックスヘイブンに所在する積極的な経済合理性は、税負担の軽減以外には見出しがたいといえる。このように、株式の保有を主たる事業とするものでないことが求められているのは、そのような場合には、能動的所得を合算しないこととする必要性を、そもそも認めることができないためである。

これまでの事業基準に関する判例は、外国の関係会社が、株式の保有を主たる事業とするものでないかどうかが争われたものが多い。そして、関係会社の「主たる事業」については、当該関係会社の当該事業年度における事業活動の具体的かつ客観的な内容から判定するほかないとされている。また、関係会社が複数の事業を営んでいるときは、そのいずれが「主たる事業」であるかに関しては、当該関係会社における、①それぞれの事業活動によって得られた収入金額又は所得金額、②それぞれの事業活動に要する使用人の数、③事務所、店舗、工場その他の固定施設の状況等の具体的かつ客観的な事業活動の内容を、総合的に勘案して判定するのが、これまでの判例の傾向といえるであろう(判例21、19、17-1、8、7、2)。

そうすると、ある関係会社が、株式保有業とその他の事業(例えば卸売業など)の二つの事業を営む場合、当該関係会社が事業基準を満たすようにするためには、実務上どのような対策を立てればよいであろうか。当該関係会社としては、まず、株式保有業とその他の事業のそれぞれに係る収入・所得金額、使用人数、固定施設の状況等を、具体的に比較検討することになろう。そして、それぞれの要素について、株式保有業に係るものよりも、その他の事業に係るもののほうが相対的に多くなるように事業計画を立案した上で、立案した計画通りに着実に事業を遂行することになるだろう。また、「主たる事業」の判定は、当該関係会社の事業年度ごとに行うこととされている。したがって、各事業年度において、その他の事業に係る要素のほうが多くなるようにするのが安全ということになる。

実務的に悩ましいのは、要素ごとにどちらの事業のほうが多いかが異なる場合である。例えば、収入・所得金額は株式保有業のほうが多いが、使用人数と固定施設の状況等はその他の事業のほうが多いことがある。特に、保有する株式を売却したことにより譲渡益が発生する場合は、一時的ではあるが、株式保有業から生じる収入・所得金額が多額となることがあり、問題となりやすい(判例19、8、7、2)。この点について明確に線引きをすることは、現時点では難しい。もっとも、当該関係会社が、その他の事業のほうを設立当初からまさに本業として実際に行ってきているような場合であれば、その他の事業に関する使用人数と固定施設の状況等が、株式保有業に関するそれを相当程度上回っていることを、具体的かつ客観的に示すことにより、事業基準を満たしていると主張する余地は小さくないものと思われる。

なお、株式保有業とその他の事業のそれぞれに係る要素について、具体的かつ客観的に分析するためには、そもそも株式保有業にはどのような業務が含まれるか、を確定させる必要がある。株式保有業に含まれる業務が広ければ広いほど、それに係る使用人数と固定施設の状況等も多くなる。他方、含まれる業務が狭ければ狭いほど、それに係る使用人数と固定施設の状況等も少なくなるからである。

この株式保有業に含まれる業務の範囲について、第一審と控訴審とで判断が分かれたケースがある(判例17-1、17-2。なお、判例21も参照)。具体的には、株式保有業に、地域統括業務などの子会社に対する広範な支配・管理業務が含まれるか否かが、争点となっている。この点については、現在、最高裁で争われており、現時点では結論が出ていない。仮に、株式保有業には子会社に対する広範な支配・管理業務は含まれず、株主としての地位に基づく権利の行使等の限定的な支配・管理業務しか含まれないとすると、株式保有業に係る使用人数と固定施設の状況等は、相当程度限られたものになるだろう。したがって、納税者としては、その他の事業のほうが「主たる事業」であって、事業基準は満たされると主張しやすくなるものと思われる。

4. 実体基準に関する判例の傾向と対策

二つ目の経済活動基準は、外国の関係会社が、その本店所在地国においてその主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していることである(実体基準)。実体基準は、物的な側面から、独立企業としての必要条件を明らかにしたものといえる。すなわち、外国の関係会社が、我が国に所在する親会社から独立した企業として実体を備えているというためには、主たる事業を行うために必要と認められる事務所、店舗その他の固定施設を有している必要があるということである。

実体基準に関する判例によれば、外国の関係会社が固定施設を有しているというためには、当該関係会社が賃借権等の正当な権原に基づき固定施設を使用していれば足り、固定施設を自ら所有している必要はないとされる。また、実体基準を満たすために必要な固定施設の規模は、当該関係会社の行う主たる事業の業種や形態により異なると考えられるため、当該関係会社が使用している固定施設が必要な規模を満たしているか否かについては、当該関係会社の行う主たる事業の業種や形態に応じて判断すべきものとされている(判例13)。

ところで、「賃借権等の正当な権原に基づき固定施設を使用している」というためには、使用することができる場所や施設が特定され、排他的かつ独占的に、その施設等を継続的に使用することができる権原を有することが必要とする考え方がある。判例上も、この考え方の適否には言及していないが、仮に、これらの要件が必要だとした上で、具体的なあてはめを行うとどうなるかを検討したものがある(判例13)。したがって、実務上の対策としては、できるかぎり、これらの要件を満たすような態様で固定施設を使用するのが安全ということになろう。

もっとも、上記のとおり、固定施設が必要な規模を満たしているか否かについては、当該関係会社の行う主たる事業の業種や形態に応じて判断すべきものとされている。例えば、受注発注の形態で行われる小規模な精密機械部品の卸売業を営んでいる場合、机一台分のレンタルオフィススペース及び役員の専用執務室と一定の倉庫スペースをもって、十分な固定施設を有していたものとされている。また、役員が他社の役員を兼務していた関係で、専用執務室が他社のためにも使用されていたとしても差し支えないとされている(判例13)。したがって、当該事業において実際に想定される具体的なオペレーションによっては、かなり限定的な固定施設であっても、実体基準を満たすために必要な規模として認められる余地はあるものと思われる。

5. 管理支配基準に関する判例の傾向と対策

三つ目の経済活動基準は、外国の関係会社が、その本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていることである(管理支配基準)。管理支配基準は、機能的な側面から、独立企業としての必要条件を明らかにしたものといえる。すなわち、外国の関係会社が、我が国に所在する親会社から独立した企業として実体を備えているというためには、事業の管理、支配及び運営という機能面から見て独立性を有している必要があるということである。

管理支配基準に関する判例によると、管理支配基準が機能的な側面から独立企業としての実体があるかどうかを判断する基準であるとすれば、前提として、事業を行うために必要な常勤役員及び従業員が存在していることが必要とされる(判例13)。加えて、外国の関係会社の業務執行に関する意思決定及びその決定に基づく具体的な業務の執行が親会社から独立して行われていると認められるか否かについては、当該関係会社の株主総会及び取締役会の開催、役員としての職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所等を総合的に勘案するのが、判例の傾向といえるであろう(判例13、3、1)。

そうすると、管理支配基準を満たすための実務上の対策としては、まず、外国の関係会社は、その本店所在地国に居住する取締役と従業員を置くことが必要となる。ただし、居住取締役が、他社の役員と兼務すること自体は禁じられていない。また、居住取締役の指揮監督を受けて、実際に日常業務を行う従業員が存在すれば足りる。当該従業員について直接雇用していることまでは必要ではなく、第三者から従業員の派遣を受けている場合を含むとされている(判例13)。

次に、当該関係会社の株主総会及び取締役会の開催、役員としての職務執行、会計帳簿の作成及び保管が行われている場所が問題となる。実務上の対策としては、できるかぎり、当該関係会社の本店所在地国において行うのが安全ということになろう。もっとも、結局のところ、これらの要素を総合的に勘案して、当該関係会社の意思決定とそれに基づく具体的な業務執行が、親会社から独立して行われているかを判断することになる。したがって、例えば、株主総会の開催が本店所在地国以外の場所で行われていたり、当該関係会社が、現地における事業計画の策定に当たり、親会社と協議し、その意見を求めていたとしても、それだけでは、管理支配基準を満たさないことにはならない。

問題となりやすいのは、居住取締役のほかに、本店所在地国に居住しない非居住取締役が存在するような場合である。非居住取締役が親会社の所在地国に居住するような場合が、典型例である。税務当局としては、実質的には、非居住取締役がすべての意思決定を行っていたのではないかという心証を抱きやすい。もっとも、そのような場合でも、管理支配基準を満たすとされたケースがある。

このケースでは、居住取締役と非居住取締役の役割分担や権限分配をあらかじめ決めておき、実際にそのとおりに役割や権限を分担・分配しながら経営に当たり、居住取締役が分担する事項については裁量権を有していた。そして、居住取締役は、法令・規制を遵守するために必要な各種届出等や税務申告を行い、経理、銀行取引及び為替管理を含む資金管理、営業担当者に対する指揮監督、売掛債権の督促・回収等の業務を行っていた。そのため、経営上重要な事項に関する意思決定及び会計帳簿書類の作成・保管を含む日常的な業務の遂行は、いずれも居住取締役と従業員により行われていたと認定されている(判例13)。

このように、管理支配基準を満たしているか否かは、当該関係会社の意思決定と業務執行の実態によるところが大きい。もっとも、外国の関係会社の実態は、外部からは見えにくいことも多い。したがって、仮に税務当局が、非居住取締役がすべてを決めていたというような指摘をしてきたとしても、その指摘は実態とは異なることもあろう。そのような場合は、納税者としては、その実態を具体的かつ客観的に明らかにして、税務当局と粘り強く協議することが大切である。

6. 非関連者基準・所在地国基準に関する判例の傾向と対策

四つ目の経済活動基準は、外国の関係会社の業種により異なる。すなわち、当該関係会社が各事業年度において行う主たる事業が、卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は一定の物品賃貸業に該当する場合と、これ以外に該当する場合とで、適用される基準が異なる。前者の場合は、その事業を主として非関連者との間で行っていることが必要である(非関連者基準)。他方、後者の場合は、その事業を主として本店所在地国において行っていることが必要となる(所在地国基準)。

その事業にとって本質的な行為の行われる場所が主としてその本店所在地国にあり、本店所在地国において資本投下を行い、その地の経済と密接に関連して事業活動を行っている場合は、当該関係会社がその地に所在する経済的合理性を推認し得る。所在地国基準が、その事業を主として本店所在地国において行っていることを要件としたのは、そのためである。他方、卸売業などの一定の事業については、その事業の性質上、事業活動の範囲が必然的に国際的にならざるを得ない。これらの事業を営む関係会社に対して、地場経済との密着性を重視する所在地国基準を適用することには無理がある。それよりも、その事業を関連者との取引に頼っているような企業は、その地に所在する経済的合理性が希薄であると考えられる。そこで、これらの事業については、その事業の大半が関連者以外の者との取引から成っているかどうかで判断する、非関連者基準を適用することとしたのである。

これまでの非関連者基準・所在地国基準に関する判例においては、外国の関係会社が、どちらの基準が適用される事業を営んでいるか、が争われたものが多い。具体的には、外国の関係会社が、卸売業と製造業のどちらを営んでいるか、が主な争点となっている。もし卸売業だとすると、非関連者基準が適用される。これに対し、製造業だとすると、所在地国基準が適用されることになる(判例20、15、14、12、11、10、9)。

この卸売業と製造業の区別の基準については、外国の関係会社が、販売する製品を自ら製造していると評価されるべきかどうかにより区別すべきとされている。そして、製造の主体性の判断の枠組みについては、工場における管理・運営についてどのような取決めがされ、組織編成や意思決定等がされているか、工場における人員の確保・管理、施設・設備の確保・管理、原材料の確保・管理、製品の品質管理、納期・工程管理、原価管理等がどのようにされているか、製造行為に基づく損益の帰属がどのようになっているのか等について、具体的に検討し、それらを総合して、当該関係会社において工場における製造行為を自らの責任と判断において主体的に行っていると評価されるべきかについて社会通念に照らし、実質的に判断すべきとするのが、最近の判例の傾向といえるであろう(判例20、15、10。なお判例14、12、11、9も参照)。

実際に問題が多発したのは、外国の関係会社が、本店所在地国以外に所在する他社の工場に製品の製造を委託していたケースである(いわゆる来料加工の事案)。多くのケースにおいて、当該関係会社自身が、当該他社の工場における製造行為を主体的に行っていると評価され、当該関係会社の主たる事業は、製造業とされた。そして、当該関係会社は、本店所在地国以外において製品の製造を行っているとして、所在地国基準を満たさないとするケースが続出した(判例20、15、14、12、11、10、9)。

もっとも、来料加工の事案でも、外国の関係会社は、本店所在地国以外に所在する他社の工場における製造行為を自らの責任と判断において主体的に行っていないと評価されるケースもあった。そのケースでは、当該関係会社の主たる事業は卸売業とされ、非関連者基準が適用された。そして、当該関係会社は非関連者基準を満たすとして、CFC税制の適用が否定されている(裁決例1)。判断の分かれ目になったのは、製造行為に係る人員の確保及び管理、原材料の確保及び管理、製品の品質管理、製品の工程及び納期の管理、原価管理を主体的に行っていたのは誰か、という点にあると考えられる。すなわち、この裁決例では、上記の多数の判例とは異なり、当該関係会社とは別の関係会社が他社の工場の所在地国に存在しており、当該別の関係会社の役職員がこれらの管理行為を主体的に行っていたと認定されている。

この点については、平成29年度税制改正により、一定の手当てがなされた。すなわち、外国の関係会社の主たる事業が製造業である場合の所在地国基準は、主として本店所在地国において、製品の製造を行っているかどうかで判断することが明確にされた。その上で、主として本店所在地国において、製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与していると認められる場合も、所在地国基準を満たすこととされた。より具体的には、外国の関係会社が、本店所在地国において行う次に掲げる業務の状況を勘案して、当該関係会社が、その本店所在地国においてこれらの業務を通じて製品の製造に主体的に関与していると認められる場合も、所在地国基準を満たすことが明らかにされた。

①  工場その他の製品の製造に係る施設又は製品の製造に係る設備の確保、整備及び管理

②  製品の製造に必要な原料又は材料の調達及び管理

③  製品の製造管理及び品質管理の実施又はこれらの業務に対する監督

④  製品の製造に必要な人員の確保、組織化、配置及び労務管理又はこれらの業務に対する監督

⑤  製品の製造に係る財務管理(損益管理、原価管理、資産管理、資金管理その他の管理を含む。)

⑥  事業計画、製品の生産計画、製品の生産設備の投資計画その他製品の製造を行うために必要な計画の策定

⑦  その他製品の製造における重要な業務


したがって、今後は、外国の関係会社が、本店所在地国以外に所在する他社工場に製品の製造を委託する場合、実務上の対策としては、当該関係会社が、できるかぎり本店所在地国において、これらの業務を行うのが安全ということになろう。なお、本店所在地国においてこれらの業務のすべてを行っていなければ、本店所在地国において主体的に関与していると認められないというものではない。当該関係会社の規模、製品の種類等によって、勘案すべき業務の内容は異なると考えられる。もっとも、当該関係会社が、基本的には当該他社の工場の所在地国においてこれらの業務を行っているということになると、平成29年度税制改正後も、所在地国基準を満たせないかもしれない。

別の実務上の対策としては、そもそも、外国の関係会社が、他社の工場における製造行為を自らの責任と判断において主体的に行っていないと評価されるようにする方法もある。例えば、上記裁決例のように、当該他社の工場の所在地国において別の関係会社を設立し、当該別の関係会社が製造行為に係る人員の確保及び管理、原材料の確保及び管理、製品の品質管理、製品の工程及び納期の管理、原価管理を主体的に行うようにすることが考えられる。そうすれば、当該関係会社自身は製造行為を自らの責任と判断において主体的に行っていないため、その主たる事業は卸売業とされ、非関連者基準が適用されることになる可能性がある。

7. おわりに

このように、外国の関係会社が経済活動基準を満たしているかどうかの判断は、当該関係会社の経済活動の実態によるところが大きい。したがって、実務上の対策としては、あらかじめ経済活動基準を満たすように事業計画を具体的に策定した上で、その計画通りに実際の業務執行を行うことがとても重要である。

なお、平成29年度税制改正前は、原則として、確定申告書に適用除外基準の適用がある旨を記載した書面を添付し、かつ、その適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存している場合に限り、適用除外基準に関する規定を適用することとされていた。実際に、確定申告書にかかる書面を添付しなかったケースにおいて、適用除外基準を満たしているかどうかの判断をするまでもなく、CFC税制が適用されるとした判例も存在する(判例16。なお判例19も参照)。

この点について、平成29年度税制改正において、適用除外基準の位置付けが、CFC税制の適用を除外するための基準から、能動的所得を合算課税の対象とする外国の関係会社を特定するための基準(経済活動基準)へと変更された。これに伴い、上記の書面添付要件や資料保存要件は、廃止された。そして、これらに代えて、引き続きCFC税制の実効性を確保する観点から、税務当局が求めた場合に、外国の関係会社が経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提示又は提出がないときには、経済活動基準を満たさないものと推定することとされた。したがって、実務上の対策としては、経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等を確実に保存しておくことが必要である。そして、その書類等の中に、上記に従い具体的に策定した外国の関係会社の事業計画や実際の業務執行の記録などを残しておくのが望ましいといえよう。

もっとも、平成29年度税制改正後も、外国の関係会社が、税務当局の求めに応じて、経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提示又は提出をしたときは、経済活動基準を満たさないことの主張立証責任は、引き続き税務当局にあると考えるべきであろう(判例13。なお判例1も参照)。すなわち、もし税務当局が、外国の関係会社が経済活動基準を満たさないことを主張・立証できなければ、当該関係会社の能動的所得を合算課税の対象とすることはできないと考えられる。

引用判例・裁決例一覧

判例1

最二小判平成4年7月17日税務訴訟資料192号98頁

判例2

最二小判平成9年9月12日税務訴訟資料228号565頁

判例3

熊本地判平成12年7月27日訟務月報47巻11号3431頁

判例4

最二小判平成19年9月28日民集61巻6号2486頁

判例5

最一小判平成21年10月29日民集63巻8号1881頁

判例6

最一小判平成21年12月3日民集63巻10号2283頁

判例7

最二小判平成21年12月4日集民232号541頁

判例8

東京高判平成22年2月17日税務訴訟資料260号11381順号

判例9

東京高判平成23年8月30日税務訴訟資料261号11739順号

判例10

大阪高判平成24年7月20日税務訴訟資料262号12006順号

判例11

東京地判平成24年7月20日訟務月報59巻9号2536頁

判例12

東京高判平成25年4月10日税務訴訟資料263号12195順号

判例13

東京高判平成25年5月29日税務訴訟資料263号12220順号

判例14

名古屋高判平成25年10月30日税務訴訟資料263号12325順号

判例15

東京高判平成26年6月18日税務訴訟資料264号12487順号

判例16

岡山地判平成26年7月16日訟務月報61巻3号702頁

判例17-1

名古屋地判平成26年9月4日訟務月報62巻11号1968頁

判例17-2

名古屋高判平成28年2月10日訟務月報62巻11号1943頁

判例18

東京高判平成27年2月25日訟務月報61巻8号1627頁

判例19

東京地判平成28年5月13日D1-Law.com判例体系

判例20

東京地判平成28年9月28日D1-Law.com判例体系

判例21

名古屋地判平成29年1月26日D1-Law.com判例体系

裁決例1

審判所裁決平成26年8月6日

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