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BEPSプロジェクト最終報告書 利益分割に関する指針に係る作業スコープを更新

Deloitte TP Alert:2015年10月23日号

2015年10月5日、経済協力開発機構(OECD)事務局は「税源浸食と利益移転」(BEPS)プロジェクトに関する13の報告書および合意された行動の概略を記載した説明文を、2015年10月8日にペルーのリマで開催されるG20財務大臣会合に先立ち公表した。今回公表された報告書は、2014年に開催されたG20財務大臣会合(ブリスベン サミット)で提示、歓迎された第1弾の7つの報告書も盛り込んで統合されたものである。(Deloitte TP Alert:2015年10月23日号)

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はじめに

2015年10月5日、経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development:以下「OECD」)事務局は「税源浸食と利益移転」(Base Erosion and Profit Shifting:以下「BEPS」)プロジェクトに関する13の報告書および合意された行動の概略を記載した説明文を、2015年10月8日にペルーのリマで開催されるG20財務大臣会合に先立ち公表した。今回公表された報告書は、2014年に開催されたG20財務大臣会合(ブリスベン サミット)で提示、歓迎された第1弾の7つの報告書も盛り込んで統合されたものである。

各行動項目で提言される勧告は、国内法および国際基準(モデル租税条約およびOECD移転価格ガイドライン)を含む国際課税の枠組みに対する包括的かつ首尾一貫性のあるアプローチの形成を目的としたものである。G20およびOECDは、引き続き、更なる検討が必要とされるいくつかの分野に関する作業と、2015年の残り数カ月、2016年および2017年にかけての実施スケジュールの策定を行うこととなる。

今回公表した報告書の中で、OECD事務局は、現在も継続検討中の利益分割法の使用に関する作業の進捗状況をまとめたサマリーを、OECD移転価格ガイドラインに追加される指針に先立って公表した。利益分割法の使用に関しては2016年と2017年に更なる作業が行われる予定である。

当該サマリーは利益分割法に関する指針に係る作業スコープについて記述するものである。その中でOECD事務局は、利益分割法に関する指針について、デジタルエコノミーにおいてよく見られる統合モデルの台頭、および、(a)(i)リスクの分担、(ii)(b)グループシナジー、(c)(iii)無形資産に関係する取引に係る価値評価、および(d)(iv)多国籍企業グループ内の異なる事業体が機能を果たしリスクを負った結果として構築された無形資産から生じる利益の分割等に関する追加指針を考慮したものでなければならないと認識している。

利益分割法の使用

2014年12月、OECD事務局は「グローバルバリューチェーンにおける利益分割法の使用に関するディスカッションドラフト」を公表した。これは「高度に統合された企業グループ内の価値創造をより重視」するよう移転価格ルールは改善されるべきとするBEPS行動計画の目的および利益分割法の使用は本目的達成の手段の一つとなり得るという見解に対応するものであった。

今回、G20およびOECDは、ディスカッションドラフトに対して寄せられた意見から浮かび上がった議題をまとめ、(a)どのような場合において利益分割法の適用が適切か、(b)いかにして利益分割法を信頼できるかたちで適用するかといった点に関する指針を明確化、改善、強化するために必要となる追加作業のスコープを述べている。また、利益分割法について「納税者にとって適用が容易ではなく・・・税務当局にとって評価も容易でない」可能性が認識されている点も重要である。また、特に事案の事実関係から利益分割法以外の移転価格算定方法の適用が問題をはらむ場合において、利益分割法が、独立企業原則にのっとったかたちで利益と価値創造を整合させるのに最も適した方法となり得るとしている。

本サマリーによれば、改定指針は現行指針(OECD移転価格ガイドライン第2章に規定)に依拠するものの、実務的な適用例を挙げつつ、指針を明確化し補完するものになるとされる。出発点は依然として確固たる機能分析である。最適な移転価格算定方法の選定にあたっては、経済の電子化に伴うビジネスモデルの更なる統合の結果およびそのような統合について説明する際における利益分割法の潜在的役割に着目すべきとしている。また、本取組みにおいて、比較対象企業の入手可能性が限定される場面での移転価格に対するアプローチについて検討される予定である。

(1) 最適な移転価格算定方法の選定

独立企業原則の適用においては、引き続き最適な移転価格算定方法の選定が不可欠である。利益分割法において利益や損失を分割するということは、取引当事者間の商業上の関係(特にリスク負担関係)が根本的に異なれば、それを財やサービスの対価の支払に反映させることになる。改訂指針では、利益の分割が独立企業原則に則した結果とならない場合について、利益分割法ではなく、入手可能な中での最適な比較対象企業を利用し調整する必要性が強調されるであろうが、利益分割法の不適切な適用に比べてその方がより信頼性が高くなるものと考えられる。本取組みは、比較対象企業の欠如という困難に直面する低所得国に対して提供されるツールキットに関するG20開発作業部会の取組みと関連している。

(2) 高度に統合された事業運営

どのような場合に、事業運営における重要な統合により、利益分割法が最適な移転価格算定方法となるかという点に関する検討が行われる予定である。バリューチェーン分析の妥当性に関する指針も示される予定である。こうした取組みは、グローバルバリューチェーンにおけるSequential Integration(異なる活動を行うグループ会社が、一連のバリューチェーンの中で取引を通じて結びつくような場合を指し、利益分割法が必ずしも適用されない)とParallel Integration(バリューチェーンの中で複数のグループ会社が同一の売上、費用、資産もしくはリスクに関連して類似した活動を行っている場合)の区別をするにあたって有益となるだろう。

(3) ユニークで価値のある貢献

どのような場合において利益分割法が最適となり得るかという点の検討にあたって、無形資産に関連しない「ユニークで価値のある」貢献の構成要素を明確にするための追加指針や例が公表予定である。また、無形資産の開発、改良、維持、保護、活用(Development, Enhancement, Maintenance, Protection, Exploitation)に係る重要な機能の遂行を伴うケースでどのような場合に利益分割法が最適な移転価格算定方法として選定されるべきかという点についても指針が公表される予定で、独立企業間で利益分割モデルが用いられる事例の参照も含まれる予定である。

(4) シナジーによる利益

著しいグループシナジーが生み出されるシナリオの検討について、また、利益分割法の適用が適切な場合におけるその適用方法について、追加指針が示される予定である。

(5) 利益分割ファクター

指針は、分析結果が確実に独立企業原則に則したものとなるよう、利益分割ファクターと価値創造との間の強い相関関係の必要性に焦点を当てるものになる見込みである。また、使用データを個別に検証する可能性を含め、利益分割のための様々なメカニズムの感度および実務的な適用についても指針に含まれるであろう。

(6) TNMMレンジ、ロイヤルティー料率、他の支払方法の決定に係る利益分割の使用

利益分割法が、取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method:以下「TNMM」)の適用結果のサポートやロイヤルティー料率の決定するために使用することができるか、あるいは、対価設定の簡素化を促すものになり得るかといった点の評価について指針が示される予定とされる。

(7) 今後のスケジュール

パブリックコメント募集のためのディスカッションドラフトは2016年5月に開催されるパブリックコンサルテーション前に公表され、指針は2017年6月30日までに最終化される予定である。

(8) デロイトのコメントおよび企業における次のステップ

実用的な例示を含む利益分割法に関する追加指針は、企業と税務当局双方にとって有用なものになるだろう。OECD事務局にとっての課題は、多様なバリューチェーン形態から生じ得る全シチュエーションを例示することは不可能であるという前提で、独立企業原則に則するよう考慮された明確な基準および企業と税務当局が長引く議論に巻き込まれることなく利益分割法を適用できるような実務的な指針を提示することと考えられる。しかしながら、追加指針をもってしても、潜在的に多くの国を巻き込み得る場面で利益分割法を適用すること、また、複数の国の税務当局が確実に独立企業原則にのっとった、原則に基づく合意をできるようにすることについての実務上の困難に関して、不確実性は残るものと考えられる。

デロイトによる発行物

デロイトでは、全10回にわたるニュースレターを通じて、移転価格税制および移転価格文書化に関するBEPSプロジェクト最終報告書がもたらす影響について考察していきます。

本ニュースレター(英語)の配信を希望される方は、デロイトのウェブサイトThe Arm’s Length Standardよりご登録いただくか、Transfer pricingをご覧ください。
和訳版もデロイト トーマツ税理士法人のウェブサイトの「Deloitte TP Alert」に掲載予定です。

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