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OECD BEPSプロジェクト最終報告書を公表

Deloitte TP Alert:2015年10月号

OECDは2015年10月5日、BEPSプロジェクトの最終報告書を公表した。最終報告書は、それぞれ、2013年に公表された「行動計画」に掲げられる15の各行動に対応するもので、10月8日にペルーのリマで開催されるG20財務大臣会合で提示されることになる。(Deloitte TP Alert:2015年10月号)

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はじめに

経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development:以下「OECD」)は2015年10月5日、国際課税ルールの隙間を塞ぐことを目的に2年前より開始された「税源浸食と利益移転」(Base Erosion and Profit Shifting:以下「BEPS」)プロジェクトの最終報告書を公表した。最終報告書は、それぞれ、2013年に公表された「行動計画」に掲げられる15の各行動に対応するもので(ただし移転価格関連の行動計画は3つの行動が一つの報告書にまとめられている)、10月8日にペルーのリマで開催されるG20財務大臣会合で提示されることになる。

最終報告書における移転価格に関するキーコンセプト

移転価格税制および移転価格文書化に関する最終報告書はそれぞれ186頁・70頁におよぶものであり、数多くの移転価格関連のトピックに関する指針を含んだものとなっている。その中で特徴的と考えられるいくつかのポイントについて以下に記述する。

(1) グローバル移転価格文書化および国別報告書

予想されていたとおり、OECDはグローバル移転価格文書化および国別報告書について新たな指針を追加することなく、過去に公表してきた成果物を編集したものとなっている。

(2) 契約の役割

契約上の取決めが取引当事者間の関係を正確に把握するための出発点となるが、契約書面上に移転価格分析に必要な情報がすべて記載されているとはいえない。したがって、取引当事者の活動実態が、契約条件の明確化や補足のために使用されるべき、あるいは、取引当事者の活動実態が契約書と矛盾する場合には契約書に代わるものとして使用されるべきと考えられる。

(3) リスク

契約上リスクを負担するのであれば、リスクをコントロール(支配)する能力とリスクを負担する財務能力を有することが求められる。リスクコントロールについて明確な評価方法はないものの、考慮される要素として(a)リスクを取るか否かの意思決定に係る行動、(b)ビジネス機会に関連するリスクに対応する行動、および(c)リスク軽減のための行動が挙げられている。

指針において、日々のリスク軽減活動を外部委託することは認められているが、その場合、委託者である事業体は当該委託先をコントロールしていることが条件となる。また、指針では、リスクの負担者を決定するための6ステップからなるプロセスも提示している。

(4) 無形資産

最終報告書は、無形資産の種類、無形資産に係る移転価格算定方法、無形資産に係る重要な機能:開発・改良・維持・保護・活用(Development, Enhancement, Maintenance, Protection, Exploitationの機能:以下「DEMPE機能」)等を示す指針を提示した2014年報告書を継承したものとなっている。

指針では、無形資産に係るDEMPE機能に伴う利益の享受に関して、前述の「リスク」に関する指針から、リスクコントロールと資金提供の要件を準用している。また、予測と実績の差異による損益を引き受けるのは、その差異の要因となるリスクをコントロールする事業体としている。

(5) 資金提供とキャッシュボックス

資金提供に関連する財務リスクをコントロールしない事業体は、その資金提供についても、リスクフリーリターン(リスクがゼロもしくは極小の場合に享受すべき利益)のみを享受することとなる。一方、DEMPE機能に関連する財務リスクをコントロールする事業体は、リスクに応じた利益を享受することとなる。

(6) 再構築

指針では、独立企業間であれば合意されたであろう商業上の合理性が欠如する取引については認識しないことを認めている。しかし、独立企業間では同様の取引が見られないという事実だけでは、取引を認識しないことの十分な根拠とはなり得ないとしている。

(7) 評価困難な無形資産

納税者が、自らの価格設定が詳細かつ適切な分析に基づいていると証明できない場合、事前に行われた価格設定の妥当性の評価証拠を事後の結果に求めてよいとしている。一方で、OECDは本ルールに関して、予見不可能な事象による場合の除外規定や、事前予測と事後結果との相違について20%まで許容する5年間遡及適用ルール等を設けている。また、納税者が、事前予測と事後結果の情報を提示し、当該相違は予測不可能であったことを十分に説明する場合においては、本ルールの適用対象外となることとしている。

(8) 費用分担取極(Cost Contribution Arrangements:以下「CCA」)

最終報告書は、前述の「契約の役割」、「リスク」および「無形資産」に関する指針における変更を考慮する形で現行のガイドラインを更新するものである。指針は引き続き、当事者がCCAに対するリソースの投入を通じた貢献を事前にコミットすることに関して、その機会費用を参加者が価値評価している場合を除き、継続的な貢献については費用ではなく価値に基づいて評価することを求めている。

(9) 低付加価値グループ内役務提供

低付加価値グループ内役務提供に対するセーフハーバーの適用を受けるためには、当該役務提供にかかる費用を集計したコストプールについて文書を作成・保存し、適切な費用配賦基準を選択することが必要となる。なお、低付加価値グループ内役務提供対価が、各国が規定する閾値を超過する場合には、個別の役務提供対価に対する便益テストの実施を含む網羅的な機能分析と比較可能性分析を税務当局が要求できるものとしている。

(10) 紛争解決

条約関連の紛争を定められた期間内に解決するメカニズムとなる、義務的で拘束力のある相互協議仲裁制度を自国の租税条約に規定することを、これまでオーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国の20カ国が表明している。その他の国々は最低基準および関連する相互審査(ピア レビュー)モニタリングプロセスには合意している。

(11) 利益分割法の使用

利益分割法の使用に関する最終指針の公表は2016年・2017年に延期されている。

※移転価格税制に関する最終報告書、および、それに関連する資料はOECDのウェブサイト(英語)をご参照ください。

デロイトによる発行物

デロイトでは、全10回にわたるニュースレターを通じて、移転価格税制および移転価格文書化に関するBEPSプロジェクト最終報告書がもたらす影響について考察していきます。

本ニュースレター(英語)の配信を希望される方は、デロイトのウェブサイトThe Arm’s Length Standardよりご登録いただくか、Transfer pricingをご覧ください。
和訳版もデロイト トーマツ税理士法人のウェブサイトの「Deloitte TP Alert」に掲載予定です。

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