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第1章 取引実態およびリスクの正確な認定

The new transfer pricing landscape
新たな移転価格の展望(全9章)
-BEPSに伴う変化への実務ガイダンス-

全9章にわたる本稿では、それぞれ個別の移転価格に関する論点について、新ガイドラインで提言された改訂内容を概説するとともに、移転価格を取り巻く新たな環境の中で歩みを進めることとなる納税者に実務的なアドバイスを提供する内容となっている。(The new transfer pricing landscape:第1章)

はじめに

経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development:以下「OECD」)は2015年10月5日、国際課税および移転価格のルールで認知されていた隙間を塞ぐことを目的に2年前より開始された「税源浸食と利益移転」(Base Erosion and Profit Shifting:以下「BEPS」)プロジェクトの最終報告書を公表した。最終報告書は、10月8日にペルーのリマで開催されたG20財務大臣会合で提示された。最終報告書で言及された一連の勧告は、各国財務大臣による承認を受け、11月15~16日にトルコのアンタルヤで開かれたG20首脳会議にて承認された。

行動8~10を対象とする移転価格税制に関する186頁の最終報告書、および、移転価格文書化および国別報告書に関する70頁の報告書は、リスク、無形資産、契約の役割、資金提供、キャッシュボックス、そして新たな国別報告書の要請といった項目を含む、数多くの移転価格関連のトピックについて指針を示したものとなっている。最終報告書(以下「新ガイドライン」)は、OECD移転価格ガイドラインの改訂に関する提言となっている。OECDは、提言された改訂内容をいつ正式に適用するか明らかにしていないが、間もなく適用されるものとみられている。

新ガイドラインは、さまざまな場面で移転価格上の帰結を変え、多国籍企業(Multinational Enterprise:以下「MNE」)に追加的な分析と文書化を要請する大変革として歓迎されてきた。一方で、新ガイドラインは企業にどのような影響を及ぼすのだろうか。本稿はデロイトの移転価格専門家たちがそのような疑問に答えるべく、実務上の観点から見解を提供することを意図したものである。全9章にわたる本稿では、それぞれ個別の移転価格に関する論点について新ガイドラインで提言された改訂内容を概説するとともに、移転価格を取り巻く新たな環境の中で歩みを進めることとなる納税者に実務的なアドバイスを提供する内容となっている。

 

移転価格ガイドライン第1章における変更により、独立企業原則の解釈は、関連者間取引の経済的実態に係る拡張された視点および分析に基づくよう改訂された。この拡張された分析においては、「取引実態の正確な認定」のための相当に精緻な機能リスク分析を行った上で、分析対象の関連者間取引が経済的実態を有するか否かを判断することが求められる。

新ガイドラインの下では、取引実態の正確な分析を通じ、それぞれの関連者が契約によって割り当てられたリスクをコントロールし、当該リスクを負担するための財務能力を有すると判断された場合においてのみ、契約書上のリスク(および関連する期待収益)配分が尊重される。そのため、リスクとリスクのコントロール機能に関する分析は、新ガイドラインにおける拡張された機能分析の重要な要素となる。実務的な観点からいえば、今後納税者は、関連者間取引に含まれるさまざまなリスクを個別に特定し、それぞれのリスクについて実際にリスクの引受け、回避および低減に関する意思決定を行っている当事者を分析し、文書化する必要が出てくる。特に、新ガイドラインにおいては、財務リスクを事業リスクから明確に区別することが求められている。単に法人が財務リスクのコントロールを行っているという事実だけでは、当該法人が実際に事業リスクをコントロールしていない限り、事業リスクに付随するリターンを受ける権利を有しない。

取引実態の正確な認定

ガイドライン第1章の変更により、第6章 無形資産の改訂において導入された取引実態の特定に関する重要性を想起させる、「取引実態の正確な認定」という概念が確立されている。「取引実態の正確な認定」とは、取引当事者の実際の行動と、契約書上でうたわれている内容がどのように一致しているかを評価することであり、一見するとシンプルな概念である。正確な取引認定の過程を通じ移転価格実務は、価値創出に対し当事者の真の貢献度を反映していない可能性のある契約に係る価格設定ではなく、「実態としてなされている取引」に対する価格設定を重視することになる。

資金拠出リスクを事業リスクと区別するとの要件は、新ガイドラインにおいて特に重要な要素の一つとなっている。この文脈における資金拠出リスクのコントロールとは、金融資本の提供者として投資機会を評価する能力、ならびに、そうした投資決定および資金拠出リスクを直接的に緩和する戦略を構築する権限のことである。資金拠出リスクの引受けに対してはリスク調整後の財務的リターンを得るに過ぎず、事業リスクの引受けから生ずる残余収益を得るものではない。対照的に、事業リスクのコントロールとは、さまざまな事業上の決定が事業損益に与える影響を評価する能力、ならびに、事業上の決定および事業リスクを直接的に緩和する戦略を構築する権限のことである。事業リスクには残余収益が帰属する。新ガイドラインにのっとった分析では、従来多くの状況において見られたような、(取引単位営業利益法Transactional Net Margin Method:以下「TNMM」)または利益比準法(Comparable Profit Method:以下「CPM」)を用いて事業を検証し、残余利益は資本提供者に配分するという結果とは反対の結論となる。

事実関係にもよるが、外国子会社の取締役会における最高財務責任者(Chief Financial Office(CFO))というのは、開発企画の投資機会を評価することには長けている可能性があるが、開発プロジェクトの特定のポイントにおいて、特定の開発作業過程によって生じたさまざまな実験データの断片のスペクトル解析を実施するために、特定の第三者研究所との契約するべきか否かの評価を行う能力は、一般的に有していないものである。資金拠出リスクに係るコントロールの実施に対しては、リスク調整後の財リターン以上のものをもたらさないことになる。仮に、金融資本を提供している法人が資金拠出リスクを管理・コントロールしていないと考えられる場合、資金拠出に関連するリターンは、リスクフリーレート(安全利子率)に限定されることになるだろう。

取引実態の正確な認定に関する概念のより深い分析は、収益を生むいくつかの重要なリスクに関連する活動のコントロールが一つの法人の中に存在しないことが明確な状況下で、当該概念を複雑に細分化されたMNEに適用する際に、納税者が直面するであろう課題を浮き彫りにする。例えば、仮に調達活動がMNEの重要な価値を生む要素であり、調達機能のコントロールが異なる法人に所在する2名の上級管理者によって行われている場合、当該コントロール機能へのリターンは「最もコントロールを行った」法人に対して割り当てられることになる。複雑な構造のMNEにおいて、これをどのように評価するべきかについては今後相当の議論が繰り広げられることが予想され、2016年または2017年まで延期となった利益分割に関するOECDおよびG20の指針の公表を待たねばならないかもしれない。

新ガイドラインにおいて求められる、MNEに影響するすべての個別リスクの特定に関する精度は高く、多くの場合、各々が負担するリスク水準に相応する連結利益を複数の法人間で分配することになるだろう。この様なアプローチを採ることにより、納税者は、いかにリスクを評価するかという問題を解決する必要性に迫られることになるだろう。

以上を要約すると、新ガイドラインは、金融資本提供者が事業リスクの管理・コントロールも併せて行っていない限り、残余利益の獲得を主張することを禁止している。金融資本の提供者、ならびに事業リスクおよび資金拠出リスクの管理・コントロール主体が一つであり同一である時には、調整は不要である。しかしながら、そうではない場合、新ガイドラインは、誰が実質的に(i)金融資本へのアクセスを有するか、または提供しているか、(ii)事業を行っているか、(iii)これらの活動のリスクを管理・コントロールしているか、を特定することを要求している。二つ以上の当事者が利益を生み出すリスクをコントロールしている場合、いずれの当事者も、それぞれが価値創出に貢献した程度に基づき当該収益を享受する権利を有する可能性がある。

取引実態の正確な認定のためのプロセスとして、新ガイドラインでは下記の五つのステップが提示されている。当該プロセスにおいては、各取引に対する以下の点についての検討が含まれる。

  • 取引の契約条件
  • 各当事者の機能、資産、リスク、ならびにこれらがMNEにおける大きな価値創造にいかに関連するかの評価を含む
  • 取引される有形資産または提供される役務の性質
  • 取引当事者および当事者が帰属する市場の経済環境
  • 取引当事者が採用する事業戦略

当該実態を認定することによって得られた情報は、ローカルファイルの中で、対象取引ごとに文書化されることが期待されている。新ガイドラインで要求されている情報と分析の範囲は、従来よりはるかに膨大かつ複雑であるため、多くの納税者にとってコンプライアンスに係るコストを増大させることになる可能性がある。

高度に細分化されたMNEがこうした新たな環境への対応を検討する場合、その管轄地の税務当局が、新ガイドラインをどのように解釈し適用してくるかという観点から、グルーバルMNEの事業において中枢となるサービス提供者の拠点について具体的に再考する必要があるかもしれない。例えば、より少数の法人への機能の統合は、MNEによる新ガイドラインへの対応の一つの手段となるかもししれない。

リスクの役割

新ガイドラインの主たる目標は、仮に契約当事者の実際の行動が契約書の文面と一貫している場合であっても、当事者間で契約上合意されているリスクリターンの配分を否認するための強力な二層構造ツールを税務当局に与えるプロセスを導入することにある。(例えば、契約書がリスクに対する独立企業間利益配分を反映していない場合)。先のセクションで紹介した取引実態の正確な認定のプロセスにおいて特定されねばならない二つ目の要素について検討したい。新ガイドラインでは、当該要件の下でリスク分析を効果的に実施するための六つのステップのプロセスが提供されている。当該六つのステップのプロセスでは、コントロールおよび財務負担能力に関する二層構造の分析が次のステップ2および3に明記されている。

  • ステップ1:特異性があり、経済的重要性を持つリスクを特定する
  • ステップ2:契約書上の取引条件の下で、個別の経済的重要性を持つリスクが関連者によってどのように負担されているかを確認する
  • ステップ3:取引の当事者である関連者が、個別の経済的重要性を持つリスクをどのように負担および管理しているかについて機能リスク分析を通じて決定する。特に、どの当事者(単一当事者に限らない)が、コントロール機能およびリスク低減機能を担うか、リスクの顕在化による利益または損失という結果に直面するか、およびリスクを負担するための財務能力を有するかを決定する
  • ステップ4:ステップ2~3により、関連者間取引におけるリスク負担およびリスク管理に関する情報は特定されているはずである。次のステップとして、当該情報を解釈し、(i)関連者が契約条件を履行しているか否か、そして、(ii)先の(i)においてリスクを負担していると分析された当事者が、リスクをコントロールし、当該リスクを負担する財務能力を有しているか否かを分析することで、契約書上負担しているリスクが関連企業の行動およびその他の事実と整合しているか否かを決定する
  • ステップ5:ステップ1~4(i)のリスクを負担する当事者がリスクコントロールをしていない場合や、リスクを負担する財務能力を有していない場合には、リスク配分に係る指針を適用する
  • ステップ6:取引に関しすべての経済的に影響する特性の兆候を考慮し、正確に認定された実際の取引は、適正に配分されたリスク引受けによる財務上およびその他の負担、ならびに、リスク管理機能への適性な対価を考慮して、ようやく価格が設定されるべきである

このように、リスクとは契約尊重にあたっての中心的要素であることから、新ガイドラインは納税者および税務当局に対して、移転価格税制におけるリスクを定義を示している。すなわち、新ガイドラインにおいて、リスクとは、事業の目的に対する不確実性の影響として定義されている。

契約当事者が各リスクに関連する収益(収益および損失の両方)を主張する際に、税務当局が契約書の解釈の見直しやリスクの再分配を行うことを防ぐため、納税者は二つの特性が個別のリスクごとにおいて実在することを証明する必要が出てくるだろう。

  • 当事者が個別具体的なリスクを負担するための財務能力を有していること。財務能力とは、当該リスクを引受け、回避、あるいは低減するための機能を維持し、リスクが顕在化した場合に当該リスクの結果を負担するための資金拠出能力を有することであると定義される
  • 個別具体的なリスクを当事者がコントロールしていること。個別のリスクをコントロールする当事者とは、(i)リスクの引受けまたは回避、および、(ii)リスクの低減を含むリスク対応、を行うための能力を持ち、また実際に意思決定を行っている当事者として定義される。リスク低減機能については外注も可能であるが、その場合は、外注業務の目標の決定および雇用、評価、調整、外注業務の打ち切りを行う能力が伴っていることがコントロールの要件となる。要するに、リスクのコントロールには、それを行う能力とその能力を行使していることの双方が必要とされる

二層構造のテストは、グループ内で出資を受け、限定的機能を担っている当事者を対象として設計されているため、研究開発(Research and Development:以下「R&D」)サービス契約を通じて無形資産開発プロジェクトに資金を拠出する当事者を分析対象とする場合、新ガイドラインでは、開発活動への資金拠出のリスクと、R&Dサービス契約を含むその他すべての事業リスクとを分けて特定し分析することが求められる。これらの各リスクについて、財務能力およびリスクのコントロールについての分析が必要となる。仮に、資金の拠出を行う当事者が開発活動に出資するための財務能力を有していると考えられ、資金拠出リスクをコントロールしているとみなされたとしても、当該当事者が事業リスクに資金拠出する財務能力を有し、事業リスクのコントロールを行っているとみなされない限り、やはりリスク調整後の収益を超える収益を得る権利が付与されることにはならない。

資金提供者がこれら二つ要素のいずれかを満たさない場合、契約上で配分されていたそれぞれのリスクは、税務当局により、リスクを負うための財務能力を有し、リスクのコントロールを行っているとみなされる当事者へと再配分されることになるだろう。当該資金拠出者が享受する、当該資金拠出に対する収益は、安全利子率以上のものにはならない。

リスクを負担するための財務能力の評価は、そのリスクが顕在化し、必要な費用を負担する必要が生じた場合に、資金拠出者が単体として資本市場にアクセスし、第三者からの資金を獲得する能力があるかを参照することによりなされるべきである。そのため、資金拠出者の貸借対照表を確認することは必要であるが、それのみでは不十分である。

上記コントロールに関する要件を満たすため、意思決定者は、意思決定が行われる分野のリスクに関しての能力を有し、収益の帰属を主張する当事者の拠点において意思決定機能を実行しなければならない。新ガイドラインにおいては、取締役会の議事録の作成や決定事項の実施のための書類への署名を含む、拠点外で行われる単なる形式的な意思決定は、意思決定機能を立証するには不十分であるということが特に強調されている。同様に、当該リスクに関連する政策環境の整備も、意思決定を行うには不十分である。

BEPSプロジェクトに参加しているOECDおよびG20およびその他諸国は、新ガイドラインでも取り上げられているリスク/期待収益のトレードオフに関する正当性について、内部での議論を行った。しかしながら、新ガイドラインにはリスク調整後のリターンに関する明確な定義が含まれていない。これは負債に対するリターンなのか。加重平均資本コストに対するリターンなのか。どのようにリスク調整後のリターンを決定するかについての詳細な指針が欠落しているため、議論が長期化する可能性が高まっている

事例

納税者が新ガイドラインに伴って自らの組織のコンプライアンス状況を評価する際に重要な検討項目を理解しやすくするため、新ガイドラインはいくつかの事例を提示している。

事例1では、企業Aが開発活動を進めることを決定し、企業Bが企業Aに代わって実際の開発機能に従事するよう契約を締結している。当該二社間の契約は、多くのMNEにおいてよく見られる、典型的な受託開発契約である。

当該事例における議論は、上述のステップ1-3の適用に焦点を当てている。ステップ1「リスクの特定」により、開発活動が当該取引において経済的重要性のあるリスクとして特定される。ステップ2「契約上のリスク配分」により、契約上、企業Aに開発リスクが配分されていることが確認される。

ステップ3「リスクをコントロールし、リスクを負担する財務能力を有する当事者を特定する」は、契約上のリスクリターンの配分が尊重されているかどうかを判断する、極めて重要なステップである。

「企業Aは、開発リスクを引受けするか否か、また、どのように引受けするかについて、関連する多くの意思決定を行いながら、自身の能力および権限を行使することで自身の開発リスクをコントロールしている。これらには、自ら実施する開発活動の範囲の決定、専門家を探すことの決定、特定の研究者の雇用の決定、実行するべき研究分野および当該研究の目標の決定、ならびに、企業Bに割り当てる予算の決定が含まれる。企業Aは、企業Bに開発活動を外注することで自身のリスクを低減しており、企業Bは、企業Aのコントロールの下、日々の研究活動の実施に対する責任を負う。企業Bは、事前に決定された研究計画にのっとって企業Aに報告を行い、企業Aは開発の進展状況と合わせて現行の目標に沿っているかを評価し、当該評価に照らして、プロジェクトへの継続投資が正当であるかを決定する。」

企業Aは、リスクを負担する財務能力を有している。企業Bは開発リスクを評価する能力を有しておらず、企業Aの活動に対する意思決定は行わない。企業Bが負担するリスクは主に研究活動の適格な実施を確保することであり、企業Bは研究に必要なプロセス、専門性および資産に係る意思決定を行うことで、当該リスクをコントロールするための能力と権限を行使している。契約書の下、企業Bが負担するリスクは、企業Aが負担し、機能リスク分析に基づき企業Aがコントロールしていると証明された開発リスクとは異なるものである。

この事例では、企業がコントロールを決定するに当たり検討が必要となり得る、いくつかの具体的要素が記述されている。これらの要素はローカルファイルの中で検討されなければならない。以下の文章を検討したい。

「企業Bは、事前に決定された研究計画にのっとって企業Aに報告を行い、企業Aは開発の進展状況と合わせて現行の目標に沿っているかを評価し・・・」

この文章は、企業Bが定期的に企業Aに報告を行っているという証拠に基づいた結果であり、ただの一連の書類が残っているということではなく、書類にある情報を企業Aが実際に処理したということを示した結果である。同様に、企業Aが開発の進展を評価するという一文は、企業Bより入手した情報を処理した後、企業Aが企業Bに実務的に有用な評価を提供しているという証拠に基づいた結果である。上記で示唆される企業Aの活動は、単に形式的にその拠点で行われるのではなく、当該拠点において実際に行われている必要がある点に注意されたい。

実務上の示唆

新ガイドラインは広範に記載されており、すべての関連者間取引に適用される。そのため、納税者は、新ガイドラインはある法人の全体的な機能に対する分析に基づくのではなく、取引単位の分析を想定していることを認識すべきである。特に、企業がある関連者との取引におけるリスクをコントロールしているとみなされても、別の関連者との同等もしくは類似取引においてはそうではないとみなされる可能性がある。このため、MNE内における収益配分の決定においては、リスクにひも付く利益を享受する権利を有する当事者を特定するために、六つのステップのリスク検討プロセスの適用が取引ごとに必要となる。リスク配分を含めた、重要な取引に係る正確な実態認定は、ローカルファイルにおいて文書化される必要がある。

新しい第1章のガイドラインにおけるいくつかの焦点は無形資産に関するものであるが、これらは無形資産以外の取引にも適用される。ノン ルーティン利益を生むことが期待されるどの取引においても、ルーティン利益の合計を超える部分である残余利益を享受する1つまたは2つ以上の当事者が必要である。新ガイドラインでは、独立企業原則の下、どの関連者がどの程度の当該残余利益を享受する権利があるかを判断するために、納税者および課税当局が用いる分析の枠組みが提示されている。

2010年の移転価格ガイドラインに準拠して作成された既存の契約においては、当該分析の結果、リスク負担者およびその結果収益を得る当事者の再配分を行う結果となる可能性がある。新ガイドラインの複雑さと分析を行うために必要な情報の範囲を考慮すると、徹底的な事実分析、および契約書の更新を含む必要な調整の導入を行うための、十分なリードタイムが許容されるべきである。高度に複雑な複数の契約を有する企業にとって、この作業は相当の時間を要する可能性がある。

結論

取引の認定、およびリスク配分についての新しいルールは、多くのMNEに広く影響を及ぼす、独立企業原則の適用に当たっての重要な指針を提示している。資本が潤沢でも限定的な機能しか持たない拠点(キャッシュボックス)を有するMNEでは、それらの拠点への収益が大幅に減る可能性がある。しかしながら、新ガイドラインはこのような事態をもたらすだけではない。市場でルーティンを超える利益を得る活動に従事しており、TNMMまたはCPMを用いてノン ルーティン利益を配分していたMNEにとっては、新ガイドラインによってノン ルーティン利益がこれまでとは異なる当事者に配分されることになる可能性がある。

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経済の国際化に伴い国外関連者との取引はますます複雑となり、その内容も有形資産から無形資産やサービス取引へと拡大しています。また「移転価格税制」が全世界的に適用強化の傾向にある中で、デロイト トーマツ グループは企業が海外ビジネス戦略の目的を遂行しつつ、各国の移転価格税制を遵守し、移転価格更正リスクや対応コストを低減するためのコンサルティングサービスを提供します。

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