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第3章 受動的関係

The new transfer pricing landscape
新たな移転価格の展望(全9章)
-BEPSに伴う変化への実務ガイダンス-

第3章は、多国籍企業(MNE)グループ内における「受動的関係(Passive Association)」および暗黙的な信用支援の問題について、特に負債による資金調達の観点から、OECDの新たな見解とともに、この点がなぜ問題となるのか、MNEにとって実際にどのような影響があるのかといったことについて解説しつつ、一定の示唆を与えるものである。(The new transfer pricing landscape:第3章)

はじめに

税法やガイダンスの変更は、たとえわずかであっても、時として納税者の実務に重大な影響を及ぼすことがある。関連会社の信用力を推定する際、独立企業原則をどのように適用するかという点に関するOECDの見解は、OECD移転価格ガイドラインの第1章への追加が見込まれる数パラグラフの中で示されることとなるが、OECDのBEPSプロジェクト全体からみれば、上記の点は必ずしも大きな論点となっているとはいえない。しかしながら、子会社が現地の市場で資金調達を行う際に親会社が保証を付与することは一般的に行われていることであり、MNEグループ内の借入による資金調達も多額に上ることから、いかなる変更も潜在的に重大な影響を及ぼす可能性がある。さらに、MNEは実務上の解釈に当たっても多くの問題に直面することになりかねず、このような不確実性は、納税者と歳入庁、そして各国歳入庁間の紛争の火種を増やすこととなる可能性をはらんでいる。

そこで本稿は、MNEグループ内における「受動的関係(Passive Association)」および暗黙的な信用支援の問題について、特に負債による資金調達の観点から、OECDの新たな見解とともに、この点がなぜ問題となるのか、MNEにとって実際にどのような影響があるのかといったことについて解説しつつ、一定の示唆を与えるものである。

OECDによる変更に伴い、今後MNEは、グローバルポリシーのレベルにおいて、取引ごとに金利や保証料を設定したり、その正当性を主張したりする場合においても、上記の点に関する立場を明らかにしておかなければならないということが明確になったといえる。さらに、今後多くの納税者は独立企業原則の解釈の基礎として新ガイドラインを参照し、税務当局からの追及に備えておく必要があるだろう。

受動的関係とは

受動的関係とは、ある法人が単にMNE内の他の法人と関係やつながりを有しているということだけで生じる付随的な便益(Incidental benefits)と定義することができる。これは、グループ内のある法人の潜在的な収益力を積極的に向上させるべく、MNEに帰属していることを能動的に活用する行為(法的拘束力を有する保証あるいは担保の提供等)と区別される。

暗黙的支援(Implicit support)とは、法的な義務(保証等)がなかったとしても、親会社の支援が期待される状況下において、事業体がその親会社またはグループと関係を有することで、親会社が提供するものと暗黙裡に期待される支援のことをいう。格付機関は、法的義務を負っていない状況下にあっても、親会社がその子会社に信用支援を提供する場合があることを認識している。

また、受動的関係や暗黙的支援は、ある事業体が単にその親会社またはより大きなグループとつながりを有することのみによって生じるあらゆる便益ととらえることもできるかもしれない。

上記の概念は、潜在的により広範な示唆を与えるものである。しかし、本稿では専ら金融取引における受動的関係と暗黙的支援について検討を行うこととする。後述のとおり、OECDの見解(およびOECD移転価格ガイドライン第1章D節に今後盛り込まれる変更事項)は、金融取引に焦点を当てたものであると思われる。ただし、MNEの一員である事業体について、その属するMNEの組織においてどのような地位を占めているかといった点を勘案しつつ、市場関係者がどのように考えるかといった観点に寄り添う形で、独立企業原則の解釈としての厳格な機能的分離企業アプローチが緩和されたことは、従来の独立企業間基準の解釈からの大きなかい離にみえるかもしれない。また、上記のような考え方は、金融取引以外の取引に係る独立企業原則の検討にも波及する可能性をはらんでいるものと考えられる。

受動的関係はなぜ重要なのか

金融市場において、借り手の信用力は、一般的に借入利率や信用保証料を大きく左右する。ある取引について受動的関係の原理を適用すべき状況にあるとすれば、債券発行者が潜在的に見込まれるMNEグループ内の法人による付随的信用支援を勘案して行う信用力の調整は、当該金融取引に適用される利率に重大な影響を及ぼすかもしれない。

図1(PDF参照)は、資金調達取引の価格設定において、信用力の問題が極めて重要であることを表している。高い信用力の借り手(例えばA格付)と低・中程度の格付(例えばBB格付)の借り手が支払う利息には、大きなクレジット スプレッドが生じ得る。したがって、受動的関係の潜在的な影響力は非常に大きい(クレジット スプレッドの水準がピークに達した2008年における同スプレッドは、500ベーシスポイント(以下:「bps」)に上った可能性がある)。また、受動的関係は、税務当局が信用支援を受けていない子会社の信用格付をその親会社の信用力に近づける調整をする際に適用する概念でもある(信用力の調整により適用利率が500bps低下した場合)。これは、10億ドルの取引であれば、支払利息が年間5,000万ドルも減額されることを意味する。この場合において、当該資金調達の期間が仮に5年間であるとすると、合計2億5,000万ドルもの影響が生じることになる。この問題は、グループ内の債務保証に係る価格設定にあっては、保証料の支払が必要かどうか、またその場合の価格設定を決定する要素となることから、より顕著な問題となる。

上記にかんがみれば、税務当局、とりわけオーストラリアやカナダをはじめとする資本輸入国の当局が、受動的関係について関心を強めているのは当然のように思われる。例えば、カナダの連邦裁判所は受動的関係に言及しているが、その他の多くの国々でも、政府および税務当局が受動的関係に関する国内法やガイダンスを導入している。

直近では、2015年10月にオーストラリアの連邦裁判所がChevron Australia Holdings Pty Ltd v Commissioner of Taxation([2015]FCA 1092)について判決を下した。当該事件ではグループ内金融取引の論点のほか、以下に詳述するような暗黙的支援の論点に関する検討が行われている。

OECD移転価格ガイドラインの改訂

独立企業原則の適用は、一般的に、関連者間取引の取引条件と独立企業間の取引条件の比較に基づいて行われる。従来、独立企業原則は、MNEグループの各関連会社を、一つの統合された事業の不可分な一部としてではなく、独立した事業体として取り扱うアプローチを採用してきている。したがって、独立企業原則を金融取引に適用する場合にも、貸手と借り手は独立した事業体の関係であると仮定される。このような原則を適用すると、MNEの子会社の信用力は子会社単体の機能および財務状況に基づくことになり、より大きなグループとしての信用力は何ら考慮されないこととなる。なお、一般的に、支店は本社と同等の信用格付を付与されている。

2015年10月5日にOECDが公表したBEPS行動8~10「移転価格の結果と価値創造の一致」の最終報告書は、OECD移転価格ガイドラインの第1章(パラグラフ1.157~1.173)に盛り込まれることとなる「グループシナジー」に関する改訂案を示している。これらの新たなセクションは、受動的関係と暗黙的支援について論ずるとともに、2010年版OECD移転価格ガイドラインのパラグラフ7.13を拡張する内容となっており、金融取引におけるMNEのグループシナジーについて二つの事例を示している。さらにOECDは、MNEにおける支払利息の損金算入について、グループ全体を対象とするテスト、あるいはその他の「的を絞った方法」によって制限する可能性を示唆している。

事例1(パラグラフ1.164~1.166)は、グループシナジーがMNEグループの一員である子会社の信用格付に与える影響について認識を示したものである。

S社の財政状態は、単体でみるとBaa格付の信用力しかない。それにもかかわらず、大手第三者の貸手は、S社がP社グループの一員であることをもって、A格付を有する第三者の借り手への適用利率と同等の利率でS社に融資を実行しようとする。

グループシナジーによる便益はMNEのメンバーによる意図的な協調行動によるものではなく、S社がグループの一員であることによって生じる便益であることから、OECDは、これについていかなる支払も比較可能性の調整も必要ないとしている。これは、積極的なプロモーション行為と区別されることから、グループ内役務提供における受動的関係の概念とも整合的であるといえる。ただし、このアプローチはあくまで「借り手」の視点に立ったものであり、親会社においては、子会社に対する付随的な信用支援の提供に費用を要している可能性があることには留意すべきであろう。

事例2でも、付随的な便益と積極的なプロモーション行為を区別するという上記と同様の原則が踏襲されている。事例2では親会社が(法的拘束力のある)保証を提供していることを想定するが、その他の事実関係(PDF、図2参照)は事例1と同様とする。新ガイドラインは、このような場合において、S社はBaaからAaaへの信用格付の引上げについてではなく、AからAaaへの信用格付の引上げについて、P社に保証料を支払う必要があるとしている。

S社の信用格付がBaaからAに引き上げられたのは、このセクションの規定の下で対価性がないとされるグループ内の受動的関係に専ら由来するグループシナジーに起因するものであるとしている。他方、S社の信用格付のAからAaaへの引上げについては、意図的な協調行動、すなわち親会社による保証の提供に基づくものであり、したがって対価の支払が必要となる(パラグラフ1.167)。

OECDの新ガイドラインは、事業体はMNEグループに所属することによって生じる付随的な便益を享受することができるとしている。金融取引における付随的な便益は、事業体の信用格付の向上として表れる。

OECDの新ガイドライン上、「大手第三者の貸手」が貸付先の事業体が企業グループに所属していなかった場合よりも低い金利を設定する場合には、ローンの価格設定に当たって暗黙的支援の存在を認識すべきであるとされている点については、留意が必要である。すなわち、OECDガイドラインは、市場において暗黙的支援の存在が認められたであろうと考えられる場合には、当該支援による経済的な影響を認識するということを示しているといえる。なお、OECDの事例は、金融サービス事業に従事する企業に関するもののみとなっている。

OECD移転価格ガイドラインに基づいて関連者間の借入ないし保証取引に係る移転価格分析を行う際には、今後上記の問題が関係するか否かについて考えなければならなくなるだろう。また、資金調達取引の価格設定に当たっては、実際に信用市場が暗黙的または法的拘束力のない信用支援の存在を勘案したかという観点からの検討が必要となる可能性もある。国内法は一般的にOECD移転価格ガイドラインに直接紐づいているわけではないため、ある税務管轄地における移転価格税制は、当然、他の税務管轄地と異なるアプローチを採用していることもあるだろう。とはいえ、ある税務管轄地の租税条約にOECDの基本的な指針を考慮するような解釈を求める特殊関連企業条項が盛り込まれている場合にあっては、上記の問題についても検討せざるを得ない状況に直面する可能性があることも否定できないのである。

具体的な国々に目を向けてみると、英国や米国はこれまでスタンドアローン格付を参照する立場をとってきたといえる。これに対して、オーストラリアやカナダの税務当局は、税法およびガイダンスを通じて、受動的関係の潜在的な影響を考慮しなければならないとの立場を示しているところであるが、受動的関係に関する具体的な調整方法については指針を示していない。なお、上記以外の多くの国々では、受動的関係はケース バイ ケースで(場合によっては一貫性に欠く形で)検討されている。

以上を要約すると、OECDの新ガイドラインは、ローンや保証のような金融取引の価格設定について分析する際に、税務当局や納税者に受動的関係や暗黙的支援について検討することを要求しているという点において、今後の対応に影響を及ぼすものであるということができる。

市場と価格設定のアプローチ

格付機関

さまざまな主体が金融取引の市場に参加している。借り手と貸手のほかに、格付機関はさまざまな借入手段についてその性質やリスクを分析し、投資家に発信する役割を果たしている。

格付機関は特定の発行体を対象に、コーポレート ファミリー レーティング(Corporate Family Rating(CFR))、短期・長期の国内外発行体の格付、また法人が発行する特定債券に係る発行ごとの格付等、さまざまな格付を行っている。発行体とその発行に係る格付との関係は、資本構成上の位置付け、保証および債務不履行時の債券の回収可能性を低下もしくは向上させるオプション(例:債権の優先劣後関係)等、債券ごとの要因によって決まる。

債券の信用力の推定は、まず発行体の格付を推定し、債券ごとの要素に基づいて(法人・発行体の格付を上下させることにより)その格付を調整することからはじまる。一般的に格付機関は、法人の格付の決定または推定に当たって、MNEグループ内において親会社なのか、持ち株会社なのか、あるいは子会社なのかといったステータスに捉われることなく、まず単体ベースで検討するスタンドアローン アプローチをとっている。その上で、関連・非関連企業によるさまざまな「支援」やそれらの法人との「関係」が法人単体のスタンドアローン信用格付に与える影響が検討されることとなる。このように、格付機関は移転価格税制の枠組みとは異なるところで格付を発行してきたといえる。

格付機関がMNEの子会社の信用評価に当たり、子会社が財政的に苦境に陥ったとしても、債権者が親会社またはその他の利害関係者に当該子会社に対する付随的財政支援を引き出すことができるとの前提を置くことが多い。このような前提は、親会社等の子会社に対する信認義務や、一般的に子会社に債務不履行が生じた際には親会社がその子会社の債務を弁済するなどして救済を行うであろうという見込みに基づいている。親会社が子会社の支援につき法的に義務を負うこととなる明示的支援とは異なり、暗黙的支援には法的な義務が伴わず、子会社の債務不履行時または債務不履行に近い状態に陥った場合には、債務不履行を回避するために、親会社が子会社に対して支援を提供するであろうという期待に依拠している。そのため、親会社は、子会社との関係あるいは親会社やグループ全体にとってのその子会社の相対的な重要性に基づいて、子会社に暗黙的支援を提供するか(親会社がその能力を持っている場合)、子会社を破産させるか選択するかもしれない。また、現実的な問題として、MNEが上記のような付随的な信用支援を提供できる余地は状況により大きく異なるものと考えられる(財政的に脆弱な親会社は子会社への支援提供能力が低くなる)。加えて、貸手による信用力の引上げ評価の程度は、クレジットサイクルによって異なり、当該債務の優先劣後関係によっても異なるだろう。

なお、各主要格付機関(Standard & Poor’s、Moody’s Investors ServicesおよびFitch Ratings)は、子会社と親会社との関係や暗黙的支援に関する一般的なフレームワークを提供している。

その他市場参加者の観点

信用格付はあくまで価格設定プロセスの一部であり、貸手が貸付を行う際のマージンを決定する唯一の要因ではない。したがって、完全な分析を実施するためには、市場参加者の実務を考慮することが必要不可欠であるといえる。

格付機関の役割は、さまざまな借入手段についてその性質やリスクを分析し、それを投資家に発信することである。しかしながら、実際に価格を設定するのは貸手と借り手である。また、投資家(例:債券投資家)は、信用リスクについて格付機関とは異なった見方をすることが多く、取引の具体的な状況に応じ、独自の基準に基づいて価格や投資に関する意思決定を行っている。どの同時期の格付についてみても、同様の債券に係る市場の設定金利に識別できる幅があることが確認されることからも、上記は明らかである。

その他にも市場参加者が存在する中で、暗黙的支援を前提に格付機関が広く発行している格付について、投資家は必ずしも同じ評価をするとは限らず、また債券の価格設定が常にその格付と整合しているということはできない。

銀行その他の貸付機関は、信用リスクに係る独自の評価方法を有し、独自のリスク選好度に従って、融資の実行や価格について意志決定を行っている。その際の重要な要素として、国際決済銀行のバーゼル銀行監督委員会の成果物に基づいて多くの国々で実施されている、ローンに係る自己資本規制が挙げられる。

かいつまんで言えば、バーゼル規制の標準的手法や内部格付手法の双方の下で、適正な自己資本の目的上、信用支援が認知されるためには、法的拘束力を有することが要件となっており、同規制の観点から見ると、暗黙的信用支援は、法的拘束力のある信用支援と同等ではないと考えられているのである。上記の結果、法的拘束力のある親会社の保証が付されていないローンに対応する自己資本として銀行に求められる額は、一般的により多額となり、このような場合におけるローンの価格(すなわち設定金利)も、親会社の信用格付に基づいて設定される場合よりも高く設定されるべきこととなる。

上記のような市場参加者の観点は、子会社の信用力が市場でどのように評価されるか見定めるためには、その事案について事実関係を慎重に評価することや、格付機関のアプローチ以外にも適切な検討方法が存在し得ることを認識することが求められることを示唆しているといえる。

今後の影響

グローバルポリシーの検討およびリスクアセスメント

グループシナジーや受動的関係に関する新たな指針が改訂OECD移転価格ガイドラインに盛り込まれた場合、グループ内で金銭貸借取引や金融保証を行うすべてのMNEにとって、OECD移転価格ガイドラインとの整合性を確保するよう、移転価格(利子率および保証料)の設定および検証に関するグローバルポリシーの検討を行うことが肝要となる。これは必ずしもスタンドアローン信用格付からの調整を意味しない。むしろ、MNEとしては、グループとして受動的関係に関するポジションを明らかにし、そのポジションをサポートする文書を準備しておく必要が生じるといえる。

スタンドアローン信用格付に対する調整の程度を見極めるために、どのような分析が必要となるかといった実務対応可能性に関する検討に当たっては、グループ内金融取引に固有の税務リスクの評価を行うことが必要となる状況も想定される。

受動的関係に対する感応度は、一般的に次の事項に影響を受けると考えられる。

  • 貸手・借り手双方の税務管轄地における規制・法令
  • グループ内資金調達の価格設定に係る納税者のグローバルレベルでのアプローチ
  • 取引の重要性
  • 親会社と子会社(スタンドアローン格付)の格付の違い
  • 取引の性質(例:短期/中期/長期支払)
  • 明らかになっている税務当局の見解

透明性が向上し、税務当局が取引の両当事者に一層の関心を寄せることとなるBEPS後の世界では、取引当事者双方の税務管轄地における厳しい調査に耐え得る方策を講じることが多くの場合に用いられるアプローチとなる。OECDは受動的関係の問題について大まかな見解を示している一方、税務当局によって見解が異なる可能性があるという点にはやはり注意が必要である。二つの税務管轄地の間で、法令やアプローチに明らかな違いがある場合において、その取引に係る税務リスクを管理するためのアプローチについてしかるべき判断を行うためには、上記の点を慎重に考慮することが重要となる。

なお、実務上は、独立企業原則にのっとった利子率はリスクの水準と整合するように決定すべきであると考えられる。

グループ内ローンにおける格付プロセスに関する実務上のアプローチ

(OECD移転価格ガイドラインがアプローチの基礎を成す状況にあることにより)暗黙的支援を考慮すべきグループ内金融取引について、借り手/債券発行者である子会社の格付を適切に行うためには、一般的には以下の情報やステップに従うこととなる。

  • 借り手となる子会社のスタンドアローン格付の決定
  • 親会社の格付の決定または入手可能な親会社の公表済み格付情報の利用:それらがない場合には親会社は格付を取得する必要がある。
  • 親会社と借り手である子会社の格付ギャップの特定
  • 金融取引の価格設定において、クレジット市場(貸手、格付機関)が親会社(または関連会社)による暗黙的支援を考慮するか否かの分析
  • 上記ステップの分析結果、暗黙的支援が勘案されると考えられる場合には、格付ギャップがどの程度解消されるか、また借り手である子会社のスタンドアローン格付がどの程度引き上げられるかについて、定量化に関する入手可能なガイダンスを考慮して分析を実施

結論

受動的関係の問題はこれといって新しい議論ではないものの、金融取引に係る独立企業原則の充足状況の分析に当たり、その重要性は増している。ローン、保証およびデリバティブ取引を含むグループ内金融取引は、MNEにとって重大な問題である。また、税務当局は金融取引について造詣を深めるとともに、金融への関心を高めており、このような傾向は世界的に、かつ大幅に高まっている。OECDが掲げるBEPSに関する議題はそうした税務当局の関心を助長するであろう。OECD移転ガイドラインの第1章の改訂案は、市場が受動的関係を認識するような場合にはその存在を認識することとなったというOECDの見解を示している。

信用格付はローンや保証における金利の設定に際して最も重要な要素の一つである。受動的関係に関する調整は移転価格、そして取引の両当事者の所在地における税務上の帰結に大きく影響を与えるだろう。

納税者としては、今後受動的関係がグループ内の金銭貸借取引に係る利子率の設定に影響を与えるかどうかを検討するために移転価格のグローバルポリシーを検討することが重要となる。そして受動的関係に対する契約関係の潜在的な感応度がどの程度かを見極めておくことは、ポリシー上、肝要なポイントとなる。

潜在的な感応度が低い場合には、例えば内容が類似したローンをグループ化する等した上で検討するといったハイレベルな分析が実務的な対応となり得るだろう。潜在的な感応度が高い場合には、借入を行う関連会社のスタンドアローン信用格付について、受動的関係を考慮して調整を行うべきか、また調整すべきなのであればどの程度の調整が必要かといった、より詳細な分析が必要となるであろう。また、どのような調整であっても、その決定に当たっては、格付機関のアプローチに従うことになると考えられるが、銀行等の他の貸付市場参加者が異なるアプローチをとる可能性がないか検討することも、場合によっては適切な対応となり得るものと考えられる。

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