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IoT社会を実現するエッジ/クラウドコンピューティングのバランス

ビジネスケースに合わせたIoTのスケーリング

IoTを活用した社会システムの効率化や企業オペレーションの高度化が世界中で加速しています。一方、増加するエッジデバイスで生成される膨大なデータを全てクラウドへ送信すると、ネットワーク負荷も高く、反応速度も遅くなってしまいます。そのため、エッジデバイスに物理的に近い場所で、エッジサーバーをクラウドに組み合わせる解決法に注目が集まっています。

クラウドの爆発と応答時間の問題:エッジコンピューティングの開始

※図表を含む本文詳細は、右側のダウンロードボタンよりPDFファイルを取得してご確認ください。

この10年間にクラウドの導入が急激に拡大しました。多くの現代企業のIT機能は、クラウドにのみ存在するか、クラウドにその大部分が存在しています1

クラウドインフラストラクチャにおけるメリットは数多くあり、例えば、費用対効果、規模、セルフサービス自動化、従来のバックオフィスシステムとの相互運用性、および集中機能などがあげられます2

同時に、センサが生成するデータの量も大幅に増加しており、今後もこの傾向が継続することが予想されています3。多くの場合、本質的にデータは生成後、ミリ秒以内に価値がなくなるため、組織がデータを洞察に変換し、その後行動に変換することができる速度を担保することが一般的には不可欠と考えられています。したがって、データ生成と決定またはアクションとの間において応答時間を最小にすることは、組織の俊敏性を保つために重要です。

しかしながら、データ伝送の速度は、光の速度によって制限されるため、データの移動距離を減らさなければ、応答時間の問題を軽減または完全に回避することはできません。クラウドのみの世界では、データは数百マイル、さらには数千マイル移動することになるため、ソリューションにとって応答時間が重要である場合、エッジコンピューティングが鍵となります。

エッジ・コンピューティングは、まさにデータのソース(生成元)近くに位置する、またはデータソース上における処理および記憶装置などの分散アーキテクチャ機能です。図1は、エッジで使用される代表的な機能を示しています。

[PDF: 7.5MB]

図1 エッジ処理層におけるIoT参照アーキテクチャ

図1 エッジ処理層におけるIoT参照アーキテクチャ
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しかし一方で、エッジコンピューティングがもたらす複雑さは、規模、スピード、および障害回復力といった、目下の目的に見合うものであるべきです。一方向に行き過ぎる選択は、概して大幅に運用を複雑化し、費用負担をもたらします。

 

IoTソリューションにおけるクラウドとエッジコンピューティングのバランス

以下は、エッジとクラウドを組み合わせたIoTソリューションの例です。

スマートファクトリーにおける例

多くの製造業者は地理的に複数の工場を有し、通常それぞれが固有の特徴と機能的要件を有していることを考えると、クラウドや企業のデータセンターでのデータ分析能力を集中的に維持することが課題になります。

統合されたエッジ-クラウドアーキテクチャは、スマートファクトリーが必要とする、迅速かつほぼ妨害されることのないコネクティビティを実現すると考えられます。

図2は、エッジおよびクラウドが、一般的に製造フロア上のセンサおよびデバイスとともにどのように機能するかを示しています。

図2 製造業における典型的なクラウドおよびエッジコンピューティングスタック

図2 製造業における典型的なクラウドおよびエッジコンピューティングスタック
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スマートビルディングにおける例

スマートIoTデバイスおよびユビキタス接続の台頭は、オフィス、小売店、工場、または病院などのビルを、その居住者に対して比類のない体験を提供するための、費用効率および応答性の高い環境に変える機会を生み出しました4。スマートビルディングは、最適化されたビルディングおよび運用自動化をインテリジェントスペースマネジメントと組み合わせて、ユーザ体験を強化し、生産性を向上させ、コストを削減し、物理的およびサイバーセキュリティリスクを軽減する、デジタル的に接続された構造といえます。

図3は、スマートビルディングで利用することができる様々なタイプのセンサおよびアプリケーションを示しています。

図3 スマートビルディングのセンサおよびアプリケーション

図3 スマートビルディングのセンサおよびアプリケーション
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エッジとクラウドの両方を使用するIoTソリューションの複雑さと課題

エッジコンピューティングは、確かなメリットをもたらす一方、動作および設計の複雑さをもたらすこともあります。

エッジ処理は高度に分散されており、オフィス、プラント、キャンパス、パイプライン、および様々な遠隔現場におけるセンサ/アクチュエータおよびゲートウェイで構成され、遠方ならびにアクセスが困難な場所で利用されることが多くなります。組織は、数千のデバイスおよび数百の関連するゲートウェイを有することもあります。

これらのエッジノードはすべて、ファームウエア、オペレーティングシステム、何らかの形態の仮想化やコンテナ、およびインストールされたソフトウエアを有し、そのうちのいくつかは製造業者やソリューションプロバイダによって提供されます。これらは、エッジノードのそれぞれの所有者/管理者によって適切に管理・維持される必要があり、バックアップ、パッチング、更新、および監視などのための膨大な自動化が求められます。潜在的な問題の数は膨大であり、トラブルシューティングは、高度に分散されたモデルでは非常に困難かつ複雑になります。

ソリューションに必要のない複雑さは、多大な費用、リスク、無駄を伴う可能性があるため、IoTソリューションにエッジ処理を追加するかどうかは、リスクや利益評価に基づいて、注意深く決定される必要があります。

IoTコンテキストにおけるクラウド対エッジ評価には、単一の正解がありません。どのような状況もユニークです。しかし、クラウドとエッジコンピューティングのバランスが明日のIoTアーキテクチャを構成する可能性が高いということは明らかです。

 

エッジがレバレッジする日本の製造業の強み

クラウド領域に関してはGAFAMを中心とする巨大IT企業が覇権を握っており、キャッチアップすることはかなり難しいと考えられます。しかし、本稿でもフォーカスされているスマートファクトリーのような、ロボット・センサ等エッジコンピューティングにフォーカスされる領域は、機械と制御ソフトウエアを組み合わせる技術が非常に重要な市場であり、日本はその中でも特に、人命に関わる自動車市場、ミッションクリティカルな産業用ロボット市場において、高いシェアを持っています。加えて、歴史的にも家電・AV機器市場を席巻した経験を持つ日本企業には、優位な組み込み技術ノウハウに一日の長があります。

但し、現在のモメンタムで戦えば勝てるとか言えば、そうとは言えず、強みを基点とした、GAFAM等クラウドプレイヤーとの柔軟な提携等、戦略的オプション検討が必須なのではないでしょうか。

 

【参考資料】

1.Barb Renner, Curt Fedder, and Jagadish Upadhyaya, The adoption of disruptive technologies in the consumer products industry: Spotlight on the cloud, Deloitte Insights, April 4, 2019.

2.For more information, read Deloitte Insights’ suite of articles on Internet of Things.

3.Muhammad Syafrudin, “Performance analysis of IoT-based sensor, big data processing, and machine learning model for real-time monitoring system in automotive manufacturing,” Sensors 18, no. 9 (2018): 2964, DOI: 10.3390/s18092946.

4.Surabhi Kejriwal and Saurabh Mahajan, Smart buildings: How IoT technology aims to add value for real estate companies, Deloitte University Press, 2016; Paul Wellener et al., Smart buildings: Four considerations for creating people-centered smart, digital workplaces, Deloitte Insights, December 13, 2018.

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