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Future in the balance? AIの優位性を追う各国

デロイト「グローバルAI活用企業動向調査2019」

人工知能(AI)が次なる大規模な景気拡大の原動力になるとの見方が強まる中、そこから取り残されることに対する懸念も世界的に広がっています。本稿ではデロイト「グローバルAI活用企業動向調査」をもとに、オーストラリア、カナダ、中国、ドイツ、フランス、英国、米国における企業のAI導入状況とビジネスへの影響度、取り組みの進め方等について比較し、AIを活用した変革に取り組むためのアプローチの方向性を考察します。

「グローバルAI活用企業動向調査」のキーポイント

※図表を含む本文詳細は、右側のダウンロードボタンよりPDFファイルをダウンロードしてご確認ください。

人工知能(AI)が次なる大規模な景気拡大の原動力になるとの見方が強まる中、そこから取り残されることに対する懸念も世界的に広がっている。そのような中でより広い視野でAIを活用した変革に取り組み、バランスの取れた方法を採用するには、AI分野でのアーリーアダプターの取り組み状況や先行事例を学び、グローバルの潮流を把握することが重要である。

デロイトは「グローバルAI活用企業動向調査」を実施し、AIに関する世界的な動向を分析している。2019年発表分の調査では、7カ国のAIアーリーアダプターを対象にした調査結果から次の4つのキーポイントを導き出した。

<4つのキーポイント>

競争上の優位性をもたらし、仕事をより良く変革するといった観点でAIの重要性はますます高く認識されるようになっている。

調査対象である世界のAIアーリーアダプターの大多数が、AI技術が今日の自社のビジネスの成功において特に重要であると回答しており、その考えは強まっている。また対象者の多くが、競争に先んじるためにAI技術を利用しており、AIが自社の従業員に活力を与えていると答えている。

AI分野での成功は、適切な実行が可能かどうかにかかっている。

AI分野で成功を収めるためには、企業は戦略の策定、適切なユースケースの追求、データ基盤の構築、実験能力の強化など、さまざまなプラクティスにおいて卓越していなければならない場合が多い。AIの利用がさらに容易になるにつれ、競合他社との差別化の余地が狭まる可能性が高いため、これらのケイパビリティは非常に重要になっている。

各国のアーリーアダプター間でAIの成熟度に差がある。

アーリーアダプターのAIに対する熱意や経験の度合いは国により異なる。AIを積極的に推進している回答企業もあれば、慎重な企業もある。また特定のプロセスや製品を改善するためにAIを導入している場合もあれば、AIを利用して企業全体を変革しようとしている例もある。

各国におけるAIの成熟度の差異にかかわらず、アーリーアダプターのアプローチからの学びがある。

各国における課題と対処方法を分析することで、重要な先行事例を収集することができる。例えば一部の国においては、スキル不足に対処することに関心が寄せられている。AIが意思決定やサイバーセキュリティのケイパビリティを向上させる方法が注目されている場合もある。

AIを使って卓越性を示すには多くの道があるが、AI活用における成功は勝者が独り勝ちするという性質のものではない。AIアーリーアダプターをグローバルな視点で調査することで、広い視野を持つことが可能になり、AIを活用した変革を進める上で、よりバランスのとれた方法を採用することにもつながる。

レポート全文〔PDF, 2.8MB〕
国を問わず、多くのAIアーリーアダプターのAIの戦略的重要性に対する 意見は一致している―スキル不足が共通の問題となっている
出所:デロイト「グローバルAI活用企業動向調査 2019」

バランスの取れたアプローチの必要性

AI活用を推進するにあたり、バランスの取れたアプローチをとりながら独自の優位性を追求するためには、以下のような点を考慮することが望ましい。

注意と行動のバランスをとる

  • AIのリスクを考慮し、後れを取らないというだけのために誤った行動に走ることのないようにする。進み具合が遅すぎても速すぎても、どちらも危険である。自社の戦略的なビジネスの優先順位に従って進むことが求められる。
  • データ管理、実験、規律的な運用、そして人材開発を効果的に実践することで、AIが実現する未来のための強固な基盤を構築する。
  • 他の国々でAI関連の懸念にどのように対応しているかを探る。いずれの国においても、サイバーセキュリティ関連の懸念に対処し、倫理的な問題を管理し、AIシステムへの信頼を構築し、人材を開発するためのユニークなアプローチを行っている。

取り組みの規模のバランスをとる

  • 野心的になることを恐れてはいけない。巻き返しを図ろうとしている場合でも、AIの取り組みは必ずしも小規模に始める必要はない。
  • AIを使ったより斬新なアプローチを可能にするため、複数の事業機能を強化すべく、多様なプロジェクトポートフォリオを追求する。
  • 自社のみですべてを行うのではなく、スピード感をもってAIのケイパビリティを拡大する方法を探究する(例えば、クラウドベースのAIサービスやパートナーシップを利用するなど)
  • AIはそのうち、社内インフラ、データ要件、および専門知識を従前ほど必要としなくなり、より簡単に利用可能になるだろうという点を踏まえて計画を立てる。

人材に対するアプローチのバランスをとる

  • ほとんどの企業はAIの専門知識を構築するために外部市場に目を向けているが、既存の従業員を対象としたトレーニングを行うことで、その労働力を活用する機会は豊富にある。既存の開発者、ITスタッフ、およびその他の従業員の育成計画を策定することで、AI関連の取り組みを促進することができる。
  • 総合的なアプローチを採用し、テクノロジーとビジネス人材の両方を向上させることで、AI戦略をサポートする。
  • AIの役割と機能を統合するための構造化された方法を開発し、将来に向けて進化させる準備をする。自社の「拡張労働力」がどのようなものになるのかに関してビジョンを作成する。

 

日本の見解(要旨)

日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)対応の必要性が増している。

DXの本質は、単なるテクノロジーの導入ではなく、顧客との長期的リレーション強化のための顧客体験価値の向上であり、ビジネスモデルそのものの変革にある。

変革の推進にあたっては、ビッグデータの戦略的活用が必要であり、戦略的活用の先にある顧客体験価値の向上には、AI/Cognitiveを活用したデータ分析、並びにマーケティング施策立案とその実行がカギとなる。

日本企業が、今回のサーベイの結果を参考に自社の取組み状況を省察し、危機感を持って早期に実践のフェーズに移行してAI/Cognitiveの活用を通じたDXを推進し、さらなる成長を実現することを期待している。

 

備考:次回調査

次回(2019年内実施予定)のグローバル調査では、日本も調査対象国として参加する予定である。これによって日本における先進企業のAI導入状況の把握や、他国と比較した状況分析を実施し、個社のポジショニングの検討やベンチマークにより具体的に有用な調査結果を提示することを見据えている。その結果については別途次回のリリースをお待ちいただきたい。

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