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Thriving in the era of pervasive AI ― AI 普及時代における競争優位構築のアプローチ

デロイト「グローバルAI活用企業動向調査2020」

人工知能(AI)が本格的な普及期に差し掛かってきた昨今、導入自体が優位性に繋がる時代は終わりを告げ、各企業のAI潜在能力を引き出す手腕が問われています。本稿ではデロイト「グローバルAI活用企業動向調査 2020」をもとに、先進プレイヤーがどのように新たなAI活用ユースケースに挑戦し、一方で潜在リスクに対しどのような対処を試みているのかを比較し、AI導入後の優位性保持に向けた示唆を考察します。

「グローバルAI活用企業動向調査」のキーポイント

※図表を含む本文詳細は、ダウンロードボタンよりPDFファイルを取得してご確認ください。

AIのユースケースは拡大を続けており、今やITインフラストラクチャーの管理と自動化、顧客に関する新たなインサイトの収集、サイバー脅威の特定と対応、医療に関する意思決定の支援や雇用プロセスの改善など様々な場面で活用されている。

また多くの国や企業でAIによる利益/恩恵が顕在化する中、競争力確保におけるAIの重要性に対する認識の向上と投資の拡大をもたらしている。

それと併せて、AIは企業にとって身近・手軽(ユビキタス)なツールとなり、結果新規参入者が相次ぎ、従来から市場に君臨するアーリーアダプターは新たな一手を投じない限り自社のアドバンテージを失うことが予期されている。

故にアーリーアダプターはイノベーティブなAI活用方法で相次ぐAI新規導入企業との差別化を図る一方、未知の活用方法に起因する想定外のリスクへの対応も並行し行わざるを得なくなっている。

本稿ではAI活用にて最先端を走り続ける「ベテラン」アーリーアダプターの動向・方針に着眼し、AI領域にて他社との差別化を図るために必要なアクションを導出した。

デロイトは「グローバルAI活用企業動向調査」を実施し、AIに関する世界的な動向を分析している。2020年発表分の調査では、日本を含む9カ国、2,737人のAI技術を採用しているITおよび関連事業会社のエグゼクティブを対象にした調査結果から次のキーポイントを導出した。

<キーポイント>

  • AI導入企業は、引き続きAI技術が価値と優位性の源泉であると自信を持っている。
  • AI導入企業の先行優位性はすぐに失われるかもしれない。
  • ほぼすべてのAI導入企業は業務効率化にAIを活用している。一部の成熟度が高い導入企業は、技術力によって他社との差別化を図っている。
  • AI導入企業は、AI技術を自社構築するよりも外部から調達することが多く、最高のAI技術を活用することが競争優位の鍵だと考えている。
  • AI導入企業はAIのリスクを認識しているものの、実際は戦略、運用、倫理の各所で􏘩想定外の課題􏘪 が発生している。
本文詳細【PDF, 1.35MB】

AI普及時代における競争優位構築のアプローチ

本調査では、今後AIがより身近になる中で、AI導入企業は競合他社の猛追をかわし優位性を保つために大きく3つのアプローチをとるべきと結論付けた。

1. 創造的アプローチを追求する

現在のAI導入傾向では業務の効率化や自動化等、既存の事業を改善することが主眼に置かれている。しかし、AIを自社競争力の源泉として位置づける場合、企業はさらに高次元の目標を設定し差別化を図ることが必要になると考えられる。AIを独創的なユースケースと掛け合わせた新製品・サービスの開発や、AIを活用した新しいインサイトの発見・新しいビジネスモデルの成立などが考えられる。

ここではAI活用の境界線を広げる、新たな付加価値を創造する、関係者の輪を拡大するというアプローチがポイントになる。

2. 賢い利用者になる

現在何千ものAIソリューションを提供する会社が存在し、複雑なベンダーランドスケープを構築する中、AIを導入する企業は自社で手の内化/内製して構築する領域と外部から調達する領域を見定めつつ、後者についてはこの玉石混在な市場から適切なAI技術/ベンダーを選択することが極めて重要になりつつある。

AI導入企業の傾向を見ると、「スターター」段階で自社開発を行う事でAIに対する知見を蓄え、成熟度が高まるにつれ外注の比率を増やしている傾向が見て取れた。

より賢いAI利用者になるためには、企業は市場の全体像を調査し、最先端のAI技術を見つけ、それらの技術を自社のインフラにどのように統合するかを精査する必要がある。併せて、クラウドとオープンソースを効果的に活用できることも重要である。

その際、多様なチームを活用し、集中型のアプローチで、統合とスケールに焦点を当てた施策が求められる。

3. 積極的なリスクへの対応

AIの市場実績が積み重なるにつれリスクに対する認識の高まり、AIのバイアス、透明性、安全性に関する議論の必要性はより一般的になりつつある。一連の原則の設定とプロセス構築を経て、AIリスクの範囲を積極的に管理して対処することは、企業内部においても、社外の顧客やパートナーとの関係性においても、信頼構築に役立つと考えられる。

具体的な施策やポイントとしては、リスク管理の取り組みの調整、ベンダーの提供するシステムを過信しすぎない、規制動向を注視する、といった点が重要になる。

AI時代の競争に勝つためには、創造的アプローチを追求する、より賢い利用者になる、積極的にリスクに対処する、の3つが肝要である
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競争優位を保つ3つのアプローチは、それぞれ3つのサブテーマに分けられます
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日本の視点(要旨)

※ PDF本文では「日本の視点」として、「2020年調査における日本企業の調査結果概要」、「日本企業のAI活用の現状と活用促進の要諦」、「創造的なアプローチを追求するためには」の3つのテーマで考察を掲載しています。

日本国内における動向を注視すると、グローバルでは全社の全体最適を志向したAI活用が主流であるのに対し、日本企業の場合、部門別に個別最適を志向したAI活用方法が目立っている。

そのため主なアプリケーションとしては省力化、業務効率化といった特定業務や既存サービスを強化する、内向きな活用方法が目立っており、グローバルで台頭しつつあるような個人の能力向上や付加価値向上といった前向きな活用は極めて限定的である。

AIの取り組み姿勢については、競争優位性の高め方に関してもAI技術のアクセスやクラウド活用ではなく自社へのAIエキスパートの採用など、社内での完全手の内化を前提とした取り組みを行う企業と、AIベンダーに「丸投げ」するケースで二極化しており、前者はスピード感、後者は理解不足による期待過多とベンダーの負荷増大につながってしまっている。

故に日本企業が今後AIを有効活用していくためには顧客/ベンダー双方の課題解決が必要になる。

  1. 顧客側の課題(AIに対する理解力の獲得)
    ・市場で不足しているAI人材の確保
    ・ビジネスの”間”を特定し解決するケイパビリティの獲得
    ・不確実性が高いAI関連プロジェクトを評価し、実行する組織的土壌の構築
  2. ベンダー側の課題(顧客課題の見極めと対策の提案力)
    ・顧客体験リデザインの提案力の獲得
    ・必要な分析モデル及びデータ収集インフラまでのデータ活用方針の具体化
    ・導入ソリューションの効果測定方法の具体化

そしてAIという個別独立テーマとして取り扱うのではなく、改めて企業のデジタルトランスフォーメーションの一要素として全体間をもって取り組む姿勢が肝要であると考えられる。

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