デロイト「グローバルAI活用企業動向調査 2021」 ブックマークが追加されました
最新動向/市場予測
デロイト「グローバルAI活用企業動向調査 2021」
Becoming an AI-fueled organization-AIを原動力とする組織になるために
2017年以降、デロイトは企業全体でのAI活用の動向調査を実施しています。過去3回の調査結果からAI導入が増加していることを明らかにしてきましたが、今回の4回目では、「今日最もAIを活用している組織は、成功を推進するために他の組織とは何の取り組みが違うのか?」という観点でAIを活用し価値を高めようとしている組織の中で起きている、より深い変革について調査を実施しました。
調査概要
2017年以降、デロイトは企業全体でのAI導入が増加していることを明らかにしてきました。 2020年発行のグローバルサーベイ第3版は、我々が“Age of Pervasive AI”(「AI普及時代」)に入ったと宣言しました。しかし、AIが普及したからといって、AIの機能が最大限に活用されているとは限りません。そこで、「グローバルAI活用企業動向調査」第4版では、AIを活用し価値を高めようとしている組織の中で起きている、より深い変革について調査を実施しました。言い換えれば、我々は、「今日最もAIを活用している組織は、成功を推進するために他の組織とは何の取り組みが違うのか?」を知りたかったのです。
AIを活用している組織は、データを資産として活用し、人間を中心とする方法によって、あらゆる種類の中核的なビジネスプロセスにAIを体系的に導入し、大規模展開を実施しています。彼らは、データに基づく迅速な意思決定によって従業員や顧客の体験を向上させ、競争優位性、そして継続的なイノベーションを実現しています。
このビジョンに向けて世界中の組織がどのように前進しているかを把握するため、デロイトは11カ国から組織内のAI戦略及び投資への権限を持つ2,875名のエグゼクティブを対象に調査を実施しました。調査では、包括的なAI戦略及びリーダーシップから、テクノロジーやデータアプローチ、さらにはAIを運用するために従業員をどのように支援しているかなど、さまざまな行動について質問を行いました。そして、どのような行動が最大の成果につながるかを理解するために、企業が本格展開したAIアプリケーションの種類の数と、高い成果を上げた取り組みの数に基づいて調査回答を分析しました。
組織のAI成熟度グループ
この分析により、4つの重要なグループが明らかになりました:
- トランスフォーマー(高い成果と高い展開率ー調査回答者の28%):変革を遂げていますが、完全には遂げていません。このグループは、最も強力なAIの成果に関連するリーディングプラクティスを特定し、幅広く採用しています。さまざまなタイプのAIアプリケーションを本格展開する可能性がある10件のうち平均5.9件、高い成果を上げる可能性がある17件のうち平均6.8件です。これらの組織は、AIを活用している組織への道を進むマーケットリーダーです。
- パスシーカー(高い成果と低い展開率ー調査回答者の26%):成功につながる機能や行動を採用していますが、取り組みの数は少ないです。このグループは動き出してはいますが、「トランスフォーマー」ほどの規模には達していません。さまざまなタイプのAIアプリケーションを本格展開する可能性がある10件のうち平均1.9件、高い成果を上げる可能性がある17件のうち平均6.2件です。
- アンダーアチーバー(低い成果と高い展開率ー調査回答者の17%):非常に多くの開発と展開が行われている点が特徴です。しかし、有意義な成果を効果的に達成するのに十分なリーディングプラクティスを採用していません。さまざまなタイプのAIアプリケーションを本格展開する可能性がある10件のうち平均5.5件、高い成果を上げる可能性がある17件のうち平均1.4件です。
- スターター(低い成果と低い展開率ー調査回答者の29%):AI機能の構築に後れを取っている点が特徴とみられ、先進的な行動を取る可能性が最も低いグループです。さまざまなタイプのAIアプリケーションを本格展開する可能性がある10件のうち平均1.6件、高い成果を上げる可能性がある17件のうち平均1.0件です。
AIを活用している組織は他の組織と何の取り組みが違うのか?
これらのグループ、特にトランスフォーマーを分析することで、強力な成果に最も関連する行動が明らかになりました。 それらは次のカテゴリに分類されます:「戦略」、「オペレーション」、「カルチャー&チェンジマネジメント」、「エコシステム」。
調査データ及びエグゼクティブインタビューの分析により、成功は、最高位のリーダーから伝達され、奨励される明確な戦略の基盤の上に成り立つことが明らかになりました。しかし、それだけでは十分ではありません。明確な戦略が策定されていれば、通常二つの相互に関連したリーディングプラクティス(「オペレーション」と「カルチャー&チェンジマネジメント」)が連携し、 AIの導入と企業全体での展開を支援します。そして最後に、強固なエコシステムを構成するパートナーのサポートが、大規模に、そして継続的にイノベーションを起こすために必要な技術的基盤と客観的視点を提供します。
分析結果からはまた、どのようなリーディングプラクティスがあるかだけでなく、それらが組織の成果にどれだけ影響を与えたかが明らかになりました:
- 戦略のリーディングプラクティス:AIを活用している組織は、AIをビジネスの差別化と成功の重要な要素と捉え、組織のトップから支持される全社的な戦略を策定しています。全社的な戦略を掲げ、大胆なビジョンを伝えるリーダーを持つ組織は、高い成果を上げる割合が1.7倍あります。
- オペレーションのリーディングプラクティス:AIを活用している組織は、新しいオペレーティングモデル及びプロセスを確立し、継続的な品質、イノベーション、そして価値創造を推進しています。MLOpsプロセスを文書化し実行する組織は、高い目標を達成する割合が約2倍あります。また、AIに関連するリスクに対して非常に備えていると報告する割合、及びAIの取り組みを信頼できる方法で展開できると確信する割合が約2倍あります。
- カルチャー&チェンジマネジメントのリーディングプラクティス:AIを活用している組織は、信頼感があり、アジャイルでデータに富んだ文化を育み、新しい働き方を支援するためのチェンジマネジメントへ投資しています。チェンジマネジメントへ多く投資をする組織は他の組織と比べ、AIへの取り組みが期待を上回ると報告する割合が1.6倍、そして、望ましい目標を達成する割合が1.5倍以上高いです。
- エコシステムのリーディングプラクティス:AIを活用している組織は、競争上の差別化を確立し保護するダイナミックなエコシステムを編成しています。全体的に、より多様なエコシステムを持つ組織は、競合他社と差別化する方法でAIを活用する割合が1.4倍高いです。
グローバルレポート(英語)へのリンクはこちら
https://www2.deloitte.com/us/en/insights/focus/cognitive-technologies/state-of-ai-and-intelligent-automation-in-business-survey.html
その他の記事
AIガバナンス サーベイ
AIの実運用とその課題認識における日本企業の概観