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プロフェッショナルサービスロボット

TMT Predictions 2020

高齢化が加速する中、日本をはじめ世界各国で労働人口減少が懸念されている。物流、ビルメンテナンス、清掃、警備等の労働集約型産業を中心に慢性的な人手不足、人件費上昇、現場の負担増が課題となる中、プロフェッショナルサービスロボットによる「労働力」の確保への期待が高まっている。

グローバル版:二桁成長を見込む市場

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Robots on the move: Professional service robots set for double-digit growth

プロフェッショナルサービスロボット(TMT Predictions 2020 グローバル版)【PDF, 742KB】

日本の視点:サービスロボへの期待と課題

労働人口不足解消に向けて

高齢化が加速する中、日本をはじめ世界各国で労働人口減少が懸念されている。物流、ビルメンテナンス、清掃、警備等の労働集約型産業を中心に慢性的な人手不足、人件費上昇、現場の負担増が課題となる中、プロフェッショナルサービスロボットによる「労働力」の確保への期待が高まっている。

また、現場担当者の業務アシストや自動化による業務負荷軽減に加え、接客、教育、介護・医療向けに情報発信、対話型課題解決やエンタメ・癒しを与えるコミュニケーションロボットも登場し、今後の提供価値の広がりにも期待感が膨らむ。

ヒトが当たり前にできることの難しさ

一方で、RPAやスマートスピーカーと異なり物理的作業を伴うサービスロボットは、狭い通路の移動、多種多様な物品の運搬、周辺環境の識別、ヒトとの対話など、多岐にわたるビジネス要件を満たす必要がある。

ヒトであれば難なくマルチにこなせる各種業務を、ハードウエア、センサ、ネットワーク、機器制御、アプリケーション、AI等の先端要素技術を組み合わせて実現することはテクノロジー面で実現難易度が高い。加えて、品質面(サービス品質の担保)、オペレーション面(現場への受け入れ)、経済面(利用者にとっての費用対効果、サービス提供者の事業性)、インフラ面(社会としての受け入れ)が障壁となる。

サービス品質の担保

従来の産業ロボと違い、ヒトとの協働やヒトに直接サービス提供するサービスロボットには安全性の担保が必須となる。介護・医療など人命にかかわる現場であれば要求水準はさらに高まるため、受付案内、情報提供、広告・プロモーション、バックヤードの簡易業務など不具合・ミスオペレーションに対し一定程度許容できる利用シーンでの活用が先行していくと予測される。

カジュアルな利用シーンであっても期待されるサービスレベルは低くない。不具合なく、ヒトと同等以上の品質・成果を期待される。また、利用環境が現場により大きく異なり、標準化しづらい中での実現が求められる。

また、故障時の迅速なサポート体制、設計見直しも含めたプロダクト品質の継続的改善が必要となり、サービス品質追及にかかるコストは膨らみやすい。

推進上の課題

現場への受け入れ

導入候補先のオペレーションが既に確立されている中、サービスロボットを導入し即座に成果を上げることは容易ではない。既に現場目線で効率化が徹底されていたり、長年のノウハウ・職人技が確立されているケースが多いからだ。サービスロボット活用を前提とした大規模なオペレーションの見直しや現場担当者の方々に対する直接的な提供価値が実現できなければ、継続的利用につながらない懸念がある。

また、入退室、エレベータ、パーティション、什器等、物理的制約もクリアしていく必要がある。レイアウト変更は容易ではない上に、入退室管理・エレベータシステムとの連携には技術的互換性や費用面の課題も伴う。

利用者にとっての費用対効果

B2Bの設備投資ではROIが厳しく問われる。サービスロボット導入検討の際も同様である。

しかし、サービスロボットの普及が限定的なために、成功事例など実績ベースでの裏付けが少なく、導入前に成果が得られるか確信が持ちづらい。

そのため実証実験、トライアルを経て導入判断することが多いが、思うような結果が得られず本格導入に進まないケースがある。加えて、実証実験にあたり、検証ポイントが不明確なまま実施してしまうと、投資判断に至らず先送りになりがちだ。

また、コスト削減に着目されることが多い一方で、現場負荷軽減による従業員満足度の向上、ロボット活用によるエンターテイメント性の追求、顧客満足度の向上など、提供価値の視点を広げた効果検証が今後期待される。

サービス提供者の事業性

利用シーンや環境が多岐にわたり、サービスロボットに求められる機能や品質水準も多様である。

各セグメントのニーズを丁寧に理解した上でのプロダクト企画が求められる一方で、個別の要望をくみ取りすぎると他のユースケースに適用しづらくなる。適切に顧客セグメンテーションを行った上で、最大公約数としての共通ニーズ・標準機能の見極めが事業性に大きく影響する。

また、未知の領域があまりに多いため、市場ポテンシャルや顧客ニーズを正確に把握し、期待される収益と投下可能な予算を踏まえ事業開発を確実に進めていくことが難しい。需要予測の難しさに加え、想定外の費用がかさみ収益化に至らないリスクが高く、大型の新規事業投資に踏み込みづらい。

市場の顕在化に向けて

スマートシティ、5G移行といったインフラレベルでのIoT化が実現された近未来では、受付・接客、運搬、警備、清掃、設備保全等で多種多様なサービスロボットの活用が期待されており、ポテンシャルの大きさは計り知れない。

ここまで見てきたように、サービスロボットに対する期待が高い反面、日常的に活躍する世界の到来には、各障壁を段階的にクリアしていく必要がある。

短期的な収益化を見込みづらい中、事業者は他社に先駆けサービスインし、サービスロボットへの本質的なニーズの把握やサービス提供方針、パートナーシップ・エコシステム形成、ビジネスモデルのあり方をブラッシュアップしていくことが求められる。事業者はR&Dや実証実験段階の企画から、もう一段事業開発に踏みこむべきかの投資判断を迫られることになり、その実行段階では、当初計画からの柔軟な軌道修正やサイクリックな企画推進、柔軟・俊敏な意思決定と実行、なにより経営の投資コミットメントが重要となる。今後の日系企業の投資領域に注視していきたい。

プロフェッショナルサービスロボット(TMT Predictions 2020 日本版)【PDF, 422KB】

筆者

今市 拓郎 Imaichi, Takuro

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

シニアマネジャー

主にメディア企業、通信会社、電機メーカー向けに新規事業企画、GTM、カスタマーサクセス、組織・人材マネジメント、組織再編、事業管理等のプロジェクトに従事。近年はメディア・エンタメ業界への新テクノロジー適用、デジタルトランスフォーメーション等に携わっている。

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