デジタルは人生を変える―未経験でもDXを担うIT人材を育成 Salesforce × Deloitte「Pathfinder」プログラム

  • Digital Organization
2022/10/21

企業の競争力を確保するために不可欠なDX人材への需要は急増する一方で、こうした人材は不足し、社会課題となっています。デロイト トーマツ コンサルティングとセールスフォース・ジャパンは、こうした課題解決に貢献するため、2021年から共同でDX人材育成プログラム「Pathfinder(パスファインダー)」を無償で提供しています。

このプログラムを推進するセールスフォース・ジャパン アライアンス事業統括本部 パートナーエコシステム本部 シニアマネージャ― 詫間 智之氏とデロイト トーマツ コンサルティング Deloitte Digitalマネジャー 姜 文玉、そして本プログラムの第1期卒業生であり、卒業後デロイト トーマツ アクトに入社した関原 祐佳が「Deloitte Digital Week 2022」で、これまでの道のりや今後の展望について鼎談を行いました。モデレーターは、Deloitte Digitalマネジャーの長塚 智史が担当しました。

IT・ビジネススキルの習得から就職に向けたサポートまで無償で提供

——セールスフォース・ジャパンとデロイト トーマツ コンサルティングが協働で推進しているDX人材育成プログラム「Pathfinder」は、2021年8月から開始し、2022年2月に第1期生が卒業しました。まずは、このプログラムの概要について、教えて頂けますか。

姜:「Pathfinder」はもともと2018年にアメリカでスタートしたDX人材育成のプログラムで、セールスフォースとデロイトが協働で開発しました。現在、DX人材不足は社会課題となっています。この教育プログラムを通じて数多くのDX人材を輩出することで、こうした課題解決に貢献するとともに、社会的価値を生み出していきたいという狙いもあります。

このプログラムは、①Eラーニングとオンラインでの集合研修を組み合わせたトレーニング、②実際のケースを想定したシステム構築や営業面でのビジネススキルトレーニング、③就職に向けたサポートなどを行う無償の教育プログラムです。

つまり、CRM(Customer Relationship Management:顧客管理)のビジネススキルやSalesforceの基礎スキルを学ぶだけでなく「Salesforce認定アドミニストレーター資格」の取得や、新しいキャリア形成までサポートしています。

姜 文玉 | Wenyu Jiang

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 Deloitte Digitalマネジャー

——「Pathfinder」には、さまざまなバックグランドを持った方が参加され、第1期は30名の方が卒業されました。卒業生を送り出した今の感想をお聞かせ頂けますか。

詫間:正直なところ、第1期は手探りの状態でした。コロナ禍において、受講者の方々と運営側がどういった関係性を作ればよいか、試行錯誤しながら運営してきました。色々と不安はあったのですが、実際にふたを開けてみるとツールを使ったコミュニケーションは活発ですし、オンライン会議でも相互に会話しています。受講生に助けられることも多く、振り返ってみると、運営側と受講生が一緒になってこのプログラムを作り上げたように感じます。

詫間 智之氏 | Mr. Tomoyuki Takuma

株式会社セールスフォース・ジャパン

アライアンス事業統括本部 パートナーエコシステム本部 シニアマネージャ―

姜:半年近く、受講生の皆さんと併走しました。参加者の中には「就労経験がない」「システムの開発経験がない」「CRMの基礎知識がない」といった未経験の方も多かったのですが、最後まで勉強して卒業していただきました。卒業生の皆さんには本当に「お疲れ様でした」ということをお伝えしたいですね。また、希望していた就職先に就職できた方もいるので、とても嬉しく思っています。

——実際に第1期の受講生として参加され、就職も決まった関原さんはいかがでしたか。

関原:参加できて本当に良かったと思っています。今、お二人から「受講生から助けて頂いた」と言って頂きましたが、こちらこそ手厚くフォローしていただいたこと、本当に感謝しています。分からないことがあれば、すぐに質問会やフォローアップを開催し、私たちの進捗に合わせてサポートしてくださいました。
当初、相当高い難易度を求められるだろうと不安でしたが、丁寧にご指導いただいたおかげで、最後まで走りきることができました。需要のある技術・知識を身につけたことで、人生の幅が広がりました。本当に感謝しています。

関原 祐佳 | Yuka Sekihara

デロイト トーマツ アクト株式会社

——手厚いフォローがあったからこそ、走り切れたというお話ですが、運営側として気をつけていたことや考えていたことなどはあったのでしょうか。

詫間:オンライン上で全ての活動が行われていますので、参加者の「顔」を見ることができません。そのため、コミュニケーションする際には、人の温かみを感じられるようなニュアンスや言葉遣いといったところはかなり気にして対応してきました。

姜:私は、実践型のトレーニングを中心にフォローさせていただきましたが、初心者の方でもわかるような言葉を使うようにしました。普段の業務では当たり前に使っている言葉でも、初心者が聞いたら「?」となることが多いですからね。

デジタルは人生を変える

——運営・受講と各々の立場から「Pathfinder」のプログラム前後で気持ちや環境に変化はありましたか。

関原:プログラムに参加して、人格が変わったと思います。今までは、自分が生きるので精一杯という状況でした。しかし、このプログラムを受けて「誰かのために何かしたい」と思えるようになったんです。それが一番の収穫です。

姜:「Pathfinder」は、社会的なプログラムという側面もあります。色々なバックグラウンドを持った受講生の方々が参加していました。当初は「セカンドキャリアを作っていきたい」「DXの経験を積みたい」という方々が多いのかなと思っていたのですが、実際には「今のキャリアの中で悩みがあり、キャリアチェンジしたい」という方や、「次の就職先を探している」という方もいらっしゃいました。さまざまな方に積極的に参加してもらえるプログラムになったと思います。運営を通じて気づきもありましたし、仕事と共通している部分も多いと感じました。運営側ではあるのですが、私自身の勉強になりました。

関原:私自身、パソコンは全く触ったことがありませんでしたが、プログラムに参加して様々なことを学ぶことができました。Salesforceを使うことで企業がどう変革できるのかということを知り、どんどん妄想が広がりました。例えば、前職でSalesforceを活用していたら、こういったことができたのではないかと考えたりしました。難しいと感じたことは全くなかったですね。

姜:私も「楽しい」という要素を普段の業務に取り入れていかないといけませんね(笑)

詫間:パソコンを開くと、ツールやシステムなど、パソコン上に表示されているものに注目してしまいがちです。しかし関原さんは、クライアントやビジネスを変えていこうという視点を持っていて、まずそのことに驚きました。トレーニング終了後に就業できたのは、そういった視点や発想があったからなのかもしれませんね。

長塚 智史 | Satoshi Nagatsuka

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 Deloitte Digitalマネジャー

規模を1000名に拡大し、ひとりでも多くの「Trailblazer」輩出を目指す

——2022年8月から第2期の「Pathfinder」が開催されますが、こちらにはどのような方に参加いただきたいですか。

姜:関原さんのように、前向きに取り組んでいただける人にぜひ参加してもらいたいですね。今のキャリアに悩みがある人、キャリアチェンジしていきたいと考えている方にもぜひご参加いただければと思います。

詫間:「Pathfinder」のプログラムに興味はあっても、ITのスキルに自信がないという理由で諦める方もいるようです。しかしSalesforceはノーコードローコードと言われているように、コードを書かず主にマウス操作でシステムを構築出来るので、IT未経験者にとっても入門しやすいと思います。どなたでも気軽に参加して頂けるプログラムになっているので、多くの方にご参加いただきたいですね。

このプログラムは、就職支援まで踏み込んでいるユニークなプログラムです。ITにハードルを感じている方も、ぜひリスキリングしていただき、ITを活用して次のキャリアを見つけていただきたいですね。

関原:「Pathfinder」は、人生の選択肢を増やすことができるプログラムだと思っています。私自身ITについては本当にゼロスキルでした。前職はサービス業で、パソコンに触ったこともありません。自分自身にも自信が持てず、人生の選択をしていくということを最初から諦めていた部分がありました。

しかし、このプログラムに参加し需要のある知識・技術を身につけたことで、人生の選択ができるようになりました。そういった体験を多くの方にしてほしいと思います。

——このプログラムがキャリアチェンジやIT業界に飛び込みたいといった方々に手を差し伸べられるようなプログラムに育つと本当に嬉しいと感じました。第2期では、いくつか違いがあるというように伺っています。詳しく教えていただけますか。

詫間:まず、受講枠を拡大し1000名募集します。また、昨年は年間1サイクルでしたが、これを2サイクルに増やします。前回、タイミングが合わずに参加を諦めた方もいらっしゃるということなので、前回よりもより多くの方にDX育成プログラムに参加いただければと思っています。

姜:規模が10倍になるので、フォローアップやサポート体制の強化も含めて検討しています。参加人数が増えても、前回同様に一人ひとりきちんと最後までプログラムを終了できるようにしていきたいと思っています。

詫間:昨年は、参加者の約半数がSalesforce認定アドミニストレーターの資格を取得できました。この数字をどうやって増やしていくかということも重要だと思います。そのために何ができるのかということを、デロイトさんと毎日のようにコミュニケーションしています。

——もし500名の方が資格を取得できたら、日本のDX化にも大きく貢献できるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

姜:もしこのプログラムで達成できたとしたら、とてもすごいことだと思います。ただ、数字に囚われず、一人ひとりに集中する形でサポートしていくことが重要だと思っています。

——ありがとうございます。それでは最後に、皆さんから人第2期にむけた意気込みや今後のプログラムの展望について聞かせていただけますか。

姜:デロイト トーマツ コンサルティングとセールスフォース・ジャパンの2社が共同で運営しているので、それぞれの強みを発揮し、プログラムも育てていきたいですね。多くのDX人材を輩出できれば、社会的な貢献にも繋がると思っています。今後も続けていきたいと思っています。

詫間:セールスフォースでは、新しい道を切り開き、より良い世界を作るためにビジネスや社会を変革する人を「Trailblazer(トレイルブレイザー)」と呼んでいます。お客様のビジネスや社会を変えていくTrailblazerは、ツールをただ使いこなすのではなく、その先のビジネスを変革していきます。そういった人材を輩出していきたいと思っています。

今回、トレイルブレイザー第一期生が就職されましたが、この方々がどうなっていくのかも追いつつ、新たな受講生を増やし、新しいトレイルブレイザーを増やす好循環を作っていきたいですね。

関原:実は、私自身も今度はプログラムの参加者をサポートしたいと考えています。いつそれが叶うのかは分かりませんが、私自身が変わったように、勇気を出して参加しているみなさんの人生を変えるお手伝いをしていきたいと思っています。

——ありがとうございました。

<関連リンク>
デロイト トーマツとセールスフォース・ジャパンDX人材育成プログラム「Pathfinder」の募集規模を10倍の1000名に拡大

PROFESSIONAL

  • 長塚 智史

    デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
    Deloitte Digital マネジャー

    国内最大手文具通販会社にてコールセンター運営等に従事したのちに外資系コンサルティングファームに転職。複数のシステム導入プロジェクトを経験し、2019年より現職。
    現在は公共案件を中心にしたプロジェクトに参画し、Salesforceの導入から運用設計まで幅広くプロジェクトを担当。
    【Pathfinderプログラムでの役割】
    2020年に実施したトライアル立上時より本プログラムのメンバーとして参加し、2021年からはPathfinderプログラム全体のリーダーとして活動中。

  • 姜 文玉

    デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
    Deloitte Digitalマネジャー

    2014年 新卒で大手携帯キャリア会社へ入社。セールスSEとしてBtoBのクライアント向けのソリューション提案を担当。
    2018年 外資系総合コンサルティングファームへ入社。CS領域、SFAを中心としたSalesforce開発プロジェクトにおいて要件定義~導入まで幅広く担当。
    2020年 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社へ入社。CS領域の業務効率改善を中心としたPJに参画し、PMO支援・要件定義を担当。

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