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「クラウド×経営」を学ぶアカデミア「D-nnovation Online」イベントレポート
2020年5月16日開催
「D-nnovation Online」は、数百年に一度と言われる大きな時代の転換点において、多様な社会的課題を解決するために求められる変革や人材等について、デロイト トーマツ コンサルティングのプロフェッショナルとともに考え、必要なスキルセットを集中的に学ぶイベント。参加者のみならず、開催スタッフなどを含めた関係者全員が自宅からインターネット経由で参加するという画期的な試みとなった。
目次
- ポストコロナ 時代に必要とされるスキルセットを身につけるイベント
- 不確実性を低下させるために必要な「アジャイル」
- 求められる人材はPurple People
- 短時間のハンズオンで多くの気づきを得る
- 重要なのは、テクノロジーとビジネスをつなげ制約を突破すること
ポストコロナ時代に必要とされるスキルセットを身につけるイベント
昨今、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、多くのイベントが中止や延期を余儀なくされている。こうした現状を鑑みて、デロイト トーマツ コンサルティングは完全オンラインでのイベント『D-nnovation Online』を実施することを決めた。「完全オンライン」とは、イベント参加者および開催スタッフ、関係者一同全員が、自宅からインターネットを経由してイベントに臨むという試みである。
今回、イベントを開催する目的は、ポストコロナ時代に必要とされるデジタルトランスフォーメーション(dX)を牽引する次世代リーダー、「経営」と「デジタル」のスキルセットを身につけた人材の育成である。以下、当日のイベントの様子をレポートする。
不確実性を低下させるために必要な「アジャイル」
イベントの冒頭、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社の代表執行役社長 佐瀬真人が登壇。今回のイベントについて次のように説明した。
「今回のD-nnovation Onlineのテーマは『クラウド』。COVID-19の影響もあり、企業のクラウド化が加速し、働き方や仕事の進め方も変わっていく。今回のD-nnovation Onlineに参加することで、今後、ビジネス現場で必要とされるスキルを修得してほしい」。
佐瀬は、「これまでの企業はしっかりと計画を立ててPDCAを回す、いわゆる『ウォーターフォール』型で仕事を進めるケースが多かった」と説明。しかし、COVID-19のような不確実性が高まっている昨今、ウォーターフォール型で仕事を進めていくことは困難な状況となった。実際、テレワークに移行できず、課題を抱えている企業も少なくないという。
そんな中、注目されているのが『アジャイル』という手法だ。アジャイルという視点を持てば、コントロールできるものや、観測できるものを見極め、環境に適応し、効率よく不確実性を低下させることができるという。
佐瀬は、「今回のD-nnovation Onlineでは、ぜひ『アジャイル』視点での、新しい働き方を感じ取っていただきたい。このイベントが、みなさまのサポートになることを期待しています」と結んだ。
求められる人材はPurple People
次に次に登壇したのは、、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社のパートナー森亮と、パートナー森正弥。「Innovator’s Session」として、両氏による対談のダイジェストが配信された。(対談の詳細については「クラウドの変革」がもたらすインパクトと、求められる人物像を参照)
まず森正弥は、現在、クラウドという巨大なインフラをベースに、マーケットやお客様、ビジネスのニーズにあわせてアプリケーションやサービスを迅速に立ち上げていくという技術の進化が起きていると提言。
従前の多くの業務システムはオンプレミスで構築され、情報システム部門は機能の拡充や運用・保守などを繰り返し、複雑に作り込まれた重厚長大なシステムは、増え続けるデータや改善要求の増大に対応できず、管理・運用工数が増加。その結果、生産性を低下させる要因になってしまったという。
そこで登場したのが、サーバーを含めたシステム群をネットワークで接続し、集約するクラウドコンピューティングだ。クラウドを活用することで、データはクラウドに蓄積されるようになり、現在提供される高度なインターネットサービスの登場にも寄与した。
一方、森亮は「外にあるものを利用し、アセットフリー化していくことに加え、クラウドサービスプレイヤーにリスクを転嫁できるという点も重要」と指摘。現在、クラウドはビジネスと切り離すことができないものとなっていると述べた。
このような時代に求められる人物像について、両氏は「Purple People」だと口を揃える。
Purple Peopleとは、ビジネスに強い「Blue Skill」とテクノロジーに強い「Red Skill」の双方を備えた人材のこと。
森亮は 「これまでは、Blue Skillが優遇される傾向にあった。しかし現在は、それに加えてRed Skillへの理解も必須。Red Skillが不足すると、取り組みの確度やスピード、生産性に差が出てしまい、ビジネスバリューを喪失するであろう。そういう世界が、すぐそこに来ている」と述べた。
それに対し、森正弥は、「これまで、Blue SkillとRed Skillはある意味、対立関係にあった。しかし、『どうやってビジネスを育てていくのか』に注目すると、必然的に双方のスキルが必要になる。つまり、『本来、目を向けるべき顧客やビジネスパートナーの目線を持ち、クラウドを使って迅速に対処できる』人材が必要になっている」と説明。
両者の対談により、これから必要とされる人物像「Purple People」の姿が明らかになった。

対談の詳細については「クラウドの変革」がもたらすインパクトと、求められる人物像をご参照ください。

短時間のハンズオンで多くの気づきを得る
対談が終わると、いよいよ「Hands-on Learning」セッションがスタート。
「Hands-on Learning」は、Purple Peopleに必要なスキルセットを学ぶためのセッション。スタートアップ企業のCEOになってビジネスを進めていくというビジネスシミュレーションサンドボックスゲーム「Startup Company」をプレイし、そのなかでアジャイルの実践や、Blue Skill×Red Skillの重要性を体験していくというものだ。
ゲームを始める前に、まず4人一組のチームを作り、それぞれCIO(ITのリーダー)、CHRO(人事のリーダー)、CBO(ビジネスのリーダー)、COO(オペレーションのリーダー)といった役割を分担する。各チームには、ゲームのオペレーションおよびアドバイスのためにデロイト トーマツ コンサルティングのプロフェッショナルを配置。このメンバーでコミュニケーションを取りながら、限りある時間の中で仮想企業を育てていく。
コミュニケーションツールとしては、プラットフォーム「Discord」を採用。音声やテキスト、画面共有機能などを駆使しながら、メンバーと情報を共有しつつ戦略を立て、実行していく。
ゲームを始める前、各チームのコンセプトについてメンバー同士で話し合う時間が設けられた。あるチームは、「従業員の満足度を向上させる」ために売り上げを拡大し、福利厚生を充実させることを重視するとした。
また、別のチームは、「開発重視・爆速成長カンパニー」を社是とし、多くのエンジニアを抱えることに尽力するとした。
各チームはそれぞれの社是に沿ってビジネスを進めていった。あるチームは、ユニークな人材を集めるために採用に注力したが、思ったような人材が集まらなかったという。また人材獲得の際、「本当にこのスキルは現在の我が社に必要か、これだけのコストをかけていいのか」と深く検討を重ねるチームもあった。人材獲得の難しさもゲームの中で学ぶことができている。
ゲーム終了後、参加者は次のようにコメントした。
「ゲームを通じて、エンジニアやマーケター、経営者などそれぞれの視点で考えることができた。様々な視点を持ち、時間と人員の配置などのバランスを考えていかなければならないということに気づいた」
この参加者は普段エンジニアとして活躍しているが、ゲームを通してさまざまな視点を持ちビジネスをシミュレーションすることができた。短時間のセッションだったが、多くの気づきがあったようだ。

重要なのは、テクノロジーとビジネスをつなげ制約を突破すること
Wrap up Sessionでは、森正弥がゲームを終えた参加者に次のような言葉を贈った。
「時間的制約、システム的制約がある中、苦戦していたチームが多かった。実は、実際の業務でもさまざまな制約がある。スタートアップはもちろん、企業内のプロジェクトであっても、ビジネスアイデアやテクノロジーを追求するだけではなく、テクノロジーとビジネスをつなげ、さまざまな制約を突破していかなければならない。だからこそ、Purple People人材が重要になるのだ」という。
さらに森正弥は、「もう一つ、いかに差別化を図るか、という視点も重要。多くのプレイヤーが競い合うレッドオーシャンから脱するためには、加速度をつけてその引力圏内からいち早く脱する必要がある。そういったチャレンジもしてほしい」と付け加えた。
セルフドリブンな人材への期待
最後のClosing Remarks Sessionでは、再度、佐瀬が登場。今回のイベントの締めくくりとして、次のように語った。
「ポストコロナで、世界は大きく変化する。新しい世界で生き抜くには、グローバル/ビジネス/テクノロジーを兼ね備えたビジネスパーソンが必須。仕事の進め方も変わり、タスクベースではなく、ミッションベースで付加価値を提供することが求められる。つまり、自分自身で課題を設定し、それを解決し、成果を出す『セルフドリブン』な人材が求められていくだろう」。
ポストコロナやNew Normalといわれる時代がすぐ目の前に迫っている中、このイベントで学んだスキルは、即座にビジネスの場で力を発揮するだろう。次回のD-nnovation Onlineにますます期待が高まる。
