ナレッジ

ダーク・アナリティクス

非構造化データに眠るビジネス機会に光をあてるために

多くの企業において、拡大し続けるデータストアは非構造化されたまま分析も手つかずとなっている。画像やオーディオ、ビデオファイル、あるいはIoTから生成されるセンサーデータ、深層ウェブに眠る莫大なローデータ等、新たな種類のデータから情報を探索することが出来ている組織はほとんど無い。ダーク・アナリティクスとは、これらのデータを探索し、従来の構造化データからでは明るみに出すことのできなかった、事業戦略やオペレーション、顧客に関する精度の高いインサイトを得ることを狙いとしている。

数歩先を行く欧米先進企業

 本章では、「ダーク・アナリティクス」と題して、当テーマに関する欧米先進企業の取組みを中心に紹介した。一言で言うと、欧米先進企業における「アナリティクス」は構造化データ(企業の顧客情報や経理データなど、コンピュータシステム上のデータベースに格納することができるタイプのデータ)のみを対象とした段階から、非構造化データ(データベースにはおさまらない、電子メールやテキストファイルなどの文書や、画像、動画といったデータ、深層ウェブに眠るローデータ)をも対象とした「ダーク・アナリティクス」の段階に移行しつつあるということだ。

 公私を問わず広範なデータソースと接続できるようになってきたことや、コンピュータビジョン(画像解析)、パターン認識、コグニティブ・アナリティクスなどの技術の発達により、「アナリティクス」から得られる知はより高度で深いものとなっており、結果として、先行する欧米先進企業では当該領域に関するノウハウの蓄積も進んでいる。

 また、デロイトが毎年実施しているGlobal CIO Survey 2016-2017の結果を見てみると、グローバルのCIOが考えるテクノロジープライオリティは、第1位が「デジタル「(モバイル、ソーシャル、Web、IoT)で67%、第2位が「アナリティクス」で59%、続いて第3位が「クラウド(46%)」、第4位が「サイバーセキュリティ(45%)」となっており、「アナリティクス」分野に対する投資優先順位が高いことがわかる。

 つまり、「アナリティクス」を活用することでいかにIT側がビジネス側に貢献していくのかという点についてCIO(IT側のリーダー)が本気で考え、投資していこうと考えているということだ。
 

日本企業の現状は?

 翻って、日本企業の現状はどうだろうか。同じくGlobal CIO Survey 2016-2017の結果を見てみると、興味深い事実が明らかになる。日本のCIOが考えるテクノロジープライオリティは、第1位が「デジタル(モバイル、ソーシャル、Web、IoT)」で70%、第2位が「サイバーセキュリティ」で62%、続いて第3位が「先端テクノロジー(AI、ロボティクス、AR/VR)」で49%、第4位が「アナリティクス」で38%となっている。グローバルのCIOと日本のCIOを比較すると、「デジタル」が第1位であることには変わりがないが、「アナリティクス」のプライオリティについては相対的に低く考えていることがわかる(グローバルの第2位に対して日本は第4位)。

 卵が先か鶏が先かの議論ではないが、「アナリティクス」に対する関心・投資マインドにおいて遅れを取っているためからか、実際の「アナリティクス」そのものにおいてもまだまだこれからという企業が多いのではないだろうか。

 なお、本章のテーマは「ダーク・アナリティクス」となっており、非構造化データの「アナリティクス」も考察の対象としているが、日本企業においては、構造化データの分析も思うようには出来ていないという企業も多いかもしれない。筆者も所謂BI (Business Intelligence)等に関連するプロジェクトに参画する機会も多いが、そもそもデータをどう収集・整理・分析するかの考えがまとめきれていない企業は少なくない。

 また、AI活用などの局面においても、本来AIの活用方法に関する仮説を立案するのが企業としての本分であるにも関わらず、AIを導入すればAIが何か素敵な提案をしてくれると考えているような企業もゼロではない。

 つまり、企業による差はあるものの、ビジネス側とIT側の両サイドが本気で連携して「アナリティクス」に取組んでいる企業は非常に少ないと感じている。
 

日本企業のチャレンジ

 前述の現状を踏まえると、「アナリティクス」の領域において日本企業が優先して取組むべき課題は、(1)「アナリティクス」を上手く機能させるための具体的な課題設定(どのような範囲で「アナリティクス」を実施する場合でもビジネス側を巻き込んだ適切な問いの設定が重要)、(2)「アナリティクス」を実施するためのデータ整備とそのためのリソース確保、(3)ビジネスとITの双方のバックグラウンドを持った人材の獲得と育成(スピード感を持って対応するためには外部ベンダの活用ばかりでなく人材の内製化も重要)、の3つであると考える。

 好む好まざるに関わらず、今後、「アナリティクス」の力を使いこなす企業とそうでない企業との間で明暗がはっきり分かれるようになるのは明らかだろう。欧米先進企業と同様に日本企業も、「アナリティクス」の力を活用して自社の将来ビジネスを切り開いていく必要性に迫られているのだ。

 「アナリティクス」に取り組んだところで結果が出るかどうかはわからないと思われる企業も多いとは思うが、自社内で眠っているデータや外部のアクセス可能なあらゆるデータを活用することで、例えば、「顧客価値の向上」、「ビジネスプロセスオートメーション」、「従業員のエンゲージメント向上」などといった分野に対して効果的な打ち手を考案できるかもしれない。

 一般に欧米先進企業に比べて日本企業は失敗を恐れる傾向が強いと言われるが、“やってみなはれ”の精神で柔軟な発想を巡らせて、取り組んでみてはいかがだろうか。いずれにしても、日本企業の「アナリティクス」への対応は待ったなしの状況にあるのだから。
 

寄稿者

デロイト トーマツ コンサルティング テクノロジー 

揚妻 泰紀 シニアマネジャー

15年以上のITコンサルティングの経験を有する。近年はグローバルM&Aに関連するtechnology advisoryサービス(M&A後のITプランニングやIT統合など)を製造業や商社を中心に専門的に提供。Deloitte中国への3年間の駐在経験も含め、クロスボーダープロジェクトの経験も豊富。

 

お役に立ちましたか?