Digital Reality

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Digital Reality­™

技術開発から利用機会創出へ

拡張現実(AR: Augmented Reality)、バーチャルリアリティ(VR: Virtual Reality)の革命は転換点に達した。一部の企業では、新しいデザインパターンの開発やその開発に必要となる、これまでとは異なるスキルセットの育成も始めており、新たな時代への取組みを予感させる。これらのアーリーアダプターたちは、AR/VRが生み出す風に変化が起きていることを敏感に感じとっている。Digital Realityを受け容れるべき時は「今」である。

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Tech Trends 2018 | Deloitte Insights

日本のコンサルタントの見解

普及期を迎えたDigital Reality

この「Tech Trends」でも、3年続けて「Reality」に関するテーマが取り上げられている。2016年は「AR/VR」、昨年は「複合現実」、そして今年は「Digital Reality」。正直なところ、私は本年の「Digital Reality」が最もしっくりきた。「拡張(Augmented)と仮想(Virtual)の違い」や、「 現実世界との融合(Mixed)」など、無理な線引きは必要なく、純粋にデジタルコンテンツが「Reality」を持つようになったととらえれば良いのだから。

ここ数年でDigital Realityに注目が集まる中、昨年からの1年間でも状況は大きく様変わりしてきている。本論で触れたような海外の事例だけでなく、我々日本の状況にも目を向けてみよう。毎日届く一般紙を見ても、実に多くの企業が実際の業務の中にDigital Realityを取入れようという取組みを始めているではないか。テクノロジーのハイプカーブからしても、できることとできないことの見極めができ、いよいよ普及する段階に差し掛かったといえる。

過去の失敗から学ぶべきこと

ただし、我々が注意を払うべきこともある。同様の新しい取組みを行い、そしてそれが衰退・消滅していったという過去を、二つの例によって検証してみることにする。

一つ目は3DTVである。ご家庭にあるという読者の方もいるかもしれない。この機能を持つTVに加え、その表示方式に合わせたメガネを着け、対応するコンテンツを用意することで、3D映像を家庭で気軽に見ることができるというものである。韓国LG社などは、コンテンツによらず、放映される映像を3D化するといった機能を実現しているが、まれなケースである。

3DTVは、映画館での3D上映が広まったことと相まって、初期は一定の普及を見せたが、今はどうであろうか。残念ながら販売される3Dのコンテンツばかりか、3D機能を搭載したTVもほぼ皆無になってきているのが実態である。

もう一つは、一時期ブームとなった「セカンドライフ」である。これは、バーチャルな世界で、自分になり替わるキャラクター(アバター)を使い、我々が生きている現実世界とは別の、文字通り二つ目の世界を提供するというものであった。

ゲームのような色彩が強いものの、多くの企業がこのセカンドライフ内に事務所や店舗を出してマーケティング活動を行い、今に先駆けた仮想通貨のやりとりや商取引がなされていたことは、みなさんの記憶にあるのではないだろうか。ただし、残念ながらこのセカンドライフも、今や過去のものである。わずか10年程度しか経ていないにも拘らず。

この二つの事例から我々が学べるものは何であろうか。3D TVについては、デバイスとコンテンツの両方で普及を促進するという難しさがあった。加えて、コンテンツについても、単に3Dがもたらす「没入感」だけでは人の欲求を満たすことはできない。あたかもその世界に入り込み、現実と同じように人と会話したり、身の回りの状況に働きかけて反応が返ってきたりするような、「インタラクティブ感」が必要だったのではないかと考えられる。

一方、セカンドライフでは、そのインタラクティブ感があったものの、アバターを使い、ゲーム/アニメーションの世界でのやりとりに終始したことで、没入感は皆無であったと言わざるを得ない。

これらを踏まえ、私はDigital Realityを真の意味で実用段階にレベルアップするためには、「現実世界とリンクした仮想世界」を作り上げる必要があると考える。つまり、Digital Realityでなければならないという、必然性を持たせるということだ。そのためには、「没入感」と「インタラクティブ性」という二つの要素を両立させ、当事者としてその世界に入ってもらうことが不可欠となる。

ユーザレベルでも可能となるDigital Realityコンテンツの作成

では、Digital Realityの活用を目指す企業として、どのようにこの2要素を両立すればよいのだろうか。

まず、デバイスについてだが、高機能のHMDですら、大幅に価格が下がってきており、加えて手軽に入手できる簡易デバイスも増えてきている。この面での敷居はかなり低くなったといえよう。

かたや、コンテンツについてはどうであろうか。コンテンツの重要性は昨年も触れたが、内容もさることながら、いかに早くリリースしていくかも重要なポイントとなる。だが、Digital Realityコンテンツとしてのインタラクティブ性を持たせるためには、単なる3D映像では意味がない。そのため、コンテンツ内で利用者がアクションを選択したり、映像の解説などの付加的な情報を引き出せたりできるよう、設定やデータを埋め込む必要がある。初期は専用のツールを使い、専門的なスキルを持つエンジニアでなければ開発できず、しかも相当の時間を必要としていた。だが、今はこのハードルも随分と緩和されつつある。

デロイトもアルファコード社と提携し、同社が持つVRider DIRECTというコンテンツ開発・管理プラットフォームを利用し始めた。360度の動画もしくは静止画を撮れるカメラさえあれば、その映像をあたかもPowerPointのオブジェクトを配置・編集するかのように、Digital Realityコンテンツとして作成することができるのである。こうした編集作業が今やノンコーディングで、いとも簡単に実現可能になったのである。

このプラットフォームを用いて、デロイトでも実証実験を試みた。新卒採用のセミナーにおいて職場環境や仕事内容を紹介する手段の一つとして、Digital Realityコンテンツを活用するというものである。

実際に就活セミナーに持ち込んでみたところ、かなり有効であった。意外だったのは、今のDigital Nativeな世代にとっては、Digital Reality技術やコンテンツなどは身近な存在であり、決して目新しいものではないと考えていたのだが、相当に食いつきが良かったという点である。

コンサルティングのようなサービスビジネスは、いくら社員が言葉で説明しても、また資料で見せても、今一つ実感が沸きにくいものである。特に、実社会で仕事をしたことがない多くの学生にとっては、ピンとこない職種の一つではないだろうか。こうした不安感などを払拭し、実際の仕事内容や職場環境のイメージを持ってもらうという点では、かなり効果が高いといえる。まさに、「百聞は一見に如かず」である。

また企業側にとっても、優秀な人材の採用は重要な任務ではあるものの、現場の人間を大量に投入することは現実的には難しい。これをDigital Realityコンテンツでアシストできるというのは、社内調整で日々頭を悩ませている人事担当者の働き方改革にもつながるだろう。

採用活動に限らず、研究所や工場など、セキュリティ上の制約があって、容易には内部に案内できないものの、投資家や提携先などに技術力をアピールしたい、といった場面にも応用できよう。

業種を問わずDigital Realityの適用ケースが増え、かつ難点であったコンテンツ作成の敷居がぐっと下がっている今こそ、取組まない理由はない。どうしようかと手をこまねく間に、他社に優位性を奪われてしまう。今はそのような時間こそが勝敗を分ける世界である。ぜひ一つでも二つでもまずは自らがDigital Realityを提供していく側に回ろうではないか。

Digital Reality™(全文) Tech Trends 2018 〔PDF, 1.99MB〕

執筆者

箱嶋 俊哉 シニアマネジャー

金融および公共インダストリーを中心に、テクノロジーを軸としたコンサルティングサービスを担当。企業統合や基幹システム再構築などの、グローバルおよび大規模プロジェクトに従事。ITをはじめとした人材育成も得意としており、外部講演や執筆も多数手掛けている。

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