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飛躍的進化が期待される技術のウォッチリスト

イノベーションの兆しが見えるテクノロジー

ナノテクノロジーや高度エネルギー貯蔵技術、合成生物学や量子テクノロジーのビジネスへの応用等、本章で扱う「技術の飛躍的進歩」は、まだ兆しがわずかに表れてきているにすぎない。これらが現実のものとなるのは、今後2年~5年のことと思われる。しかし、現実となった際には、市場に与える影響はまさに飛躍的に拡大していくだろう。

CIOが一歩を踏み出せ

 本章では、「Exponentials Watch List」として、重要な投資研究分野とされている、ナノ加工素材、エネルギー貯蔵、合成生物学、および量子最適化の4分野を概要レベルと、このような「飛躍的な技術」の利用について検討する上でのリスクやプロセスについて紹介した。

 こうした「飛躍的な技術」の利用あるいはトライアルということに関して、日本企業は積極性に欠ける、と一般的には思われている。実際デロイトのCIO Survey2015の調査結果(図1)を見ても、ITにおける理想とするプライオリティは、グローバルCIOが、ビジネスイノベーションの開発、ビジネスプロセスの改善、デジタル機能の強化と続くのに対して、日本のCIOで絞り込むと、サイバーセキュリティ、ビジネスプロセスの改善、ITコスト削減となり、その次がビジネスイノベーションとなっている。決して軽視しているわけではないが、プロジェクトポートフォリオとして優先的ではない傾向が浮かんでいる。

 しかし、日本企業においても数多くの改革者、先駆者がいることは、日々のニュースからも窺い知れるし、その当時の最新技術から得られた競争優位性を活かしポジションを確立させている企業が今もなお存在していることも間違いない。

 それでは、先駆的なチャレンジしている企業とチャレンジに踏み切れない企業ではどのような差異があると考えられるだろうか。

 本章のまとめで、「技術の飛躍的進歩」の検討の“始め方”のステップを説明している。チャレンジする企業では、このイノベーションにつながるプロセスの実践を積み重ねており、イノベーションがそこから生まれる可能性を理解しているだろう。一方、チャレンジしない、あるいはできない企業は、そのプロセスに踏み出すこと自体に内外の抵抗があり、結果、プロセスやイノベーションそのものになじみがなく、それがまた抵抗感を生み出す、という悪循環に陥っているのではないだろうか。

 では、誰がそういった風土に風穴を開け、「技術の飛躍的進歩」の検討の定着化に向けた第一歩を踏み出すべきか。飛躍的技術にアンテナを張り巡らし、ビジネスへのインパクトをCxOに進言する役割を担う、CIOがまさに果たすべき第一歩なのである。

 その進め方は戦略的に行うべきだ。先駆的トライアルは、期待した効果が得られない、ということもあり得るが、そこで蓋を閉じてしまうことが本当の失敗である。期待した効果がなぜ出なかったのか、技術が未熟だったのか、プロセスが甘かったのか、トライアルの結果を冷静に分析し、得られた教訓を次のステップに活かす血肉として使い切れれば、トライアルは価値を生む。そこまで視野に入れた戦略を用いてトライアルに臨むことが、イノベーションプロセスの浸透につながるからだ。仮に「技術的に未熟であった」としても、それを知ることは、その技術の成熟を推し量り、また次の機会をいつにすべきか、知らない企業より先手を取ることにもつながるだろう。

 一方、既に先駆の試みが定着している企業はそれを停滞しないようにする必要があることはいうまでもない。先行優位性が後続に追いつかれ、追い抜かされ、陳腐化、レガシー化し、イノベーションから遠ざかり動けずに硬直化してしまう、そんな図式はIT世界では十分にあることと知られている。

 今回取り上げた4分野に限らず、チャレンジできる技術は様々あるはずだ。「飛躍的な技術」の利用をぜひプロジェクトポートフォリオにひとつ足していただきたい。先駆的プロジェクトは0のままでは、いつまでも0で増えることがない。0を1にすることで初めて1が2に、そして10と増えていくはずだ。 「飛躍的技術」を取り込む先駆者のツールのひとつとして「Exponentials WatchList」を活用いただきたい。

May Exponentials be with you.
 

図: 2015 Global CIO Surveyにおける「理想とするIT部門のプライオリティ」日本/グローバル比較調査

寄稿者

デロイト トーマツ コンサルティング テクノロジー

小川 貴弘 シニアマネジャー

流通、製造系を中心に多様なインダストリーに対して、業務プロセスと新旧テクノロジーの知見を活かし、ビジネス変革時やIT構想策定時におけるアーキテクチャー・トランスフォーメーションに関するアドバイザリーサービスを提供。

 

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