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IT組織変革にはCIOの強いリーダーシップが求められている

日本のコンサルタントの見解(1)

ITがビジネスの前提となっている今、ITは情報システム部門のものだけではない。ITがビジネス推進の足枷にならないためにも、企業におけるIT部門の役割と責任を再確認し、専門組織化・肥大化したIT部門の今後の必要性を、企業価値の観点から見直す時期に来ている。CIO自らが、「破壊すべき組織」という観点で組織戦略を練ることが変革の糸口になるだろう。

IT組織変革における問題の本質

「グローバルで最適なIT組織に変⾰したい」、「システム維持・運⽤の安定化やセキュリティ対策に追われ、戦略的な投資ができない」、「事業部⾨への貢献度を高めるための⼈材配置や育成はどうすればいいのか」といったIT組織の変⾰に関する相談が多く寄せられる。

そのような相談を受け、問題の本質が何であるか議論を進めていくと、変⾰に対して障壁となる共通の前提が各企業において横たわっているケースが多いように感じている。この障壁を乗越え破壊的な取組みを断行し、変⾰を推し進めている日本企業は多くはないというのが実感である。

変⾰が思うように進まない理由を聞いてみると、⾏きつくところ、人材のスキル・マインド、あるいは組織⽂化の話に至ることが多い。これらの問題の解決を考えた場合、我々コンサルタントだけでは即効性が働きにくい状況も多く、抜本的な変⾰をすすめるには現場での改善だけでは時間がかかり実現性が高まらないといった結論に陥ってしまう。

このような障壁が過去から永続的に存在する日本企業では、これまでのCIO(あるいはそれに相当する役員等)において、IT組織変⾰に対する認識の低さ、あるいは変⾰を実現するほどの時間がない状況での頻繁な責任者の交代等が見受けられ、ITに関するトップマネジメント体制の問題がこの障壁を強固にしている主要因の一つではないかと捉えている。

海外企業におけるIT組織運営の課題感

企業やIT部⾨の組織⽂化が企業におけるデジタライゼーションの大きな障壁となっていることが、米国のレポートで挙げられている。声⾼にデジタルシフトの戦略を⽬標に掲げる企業は多いが、受け止める側の従業員にとっては⾜元の業務の中で何が変わるのか明確にイメージできていないといったケースは、日本企業だけでなく各国企業においても例外ではないようである。

グローバルのデジタライゼーションが進まない企業のIT部⾨の組織文化を見ると、官僚的でのんびり、リスク回避重視、階層的でサイロ化といったキーワードが当てはまるということであり、日本企業においても同様な状況ではないだろうか。

さらには、デジタライゼーションに成功している企業においては、外部人材の採用よりも、現有の従業員に対するトレーニングとデジタル関連プロジェクトへの配置による退職リスク低減の取組みを優先している等、特徴的なアプローチをとっている。日本のみならず各国の企業にとっては、デジタライゼーションという一つのテーマをとってみても、ITソリューションの導入のみにとどまらず、組織文化の変革や人材のモチベーション向上を図ることが欠かせない取組みの一つとして認識されている。

ただ、人材の話になると、「IT部門の人数は少なく変革を推し進めたくても実行できない」という声を多く聴く。ITサービス企業のIT人材だけでなく、企業のIT部門人材の不足も日本の企業において問題となっている。
IT人材市場の枯渇状況は日本だけではなく世界各国で起きている問題であり、IT部門の適正な要員規模を見極め、効率化を図ることを課題として挙げる企業が多くなってきている。
プロジェクト型業務や非定型業務が比較的多いIT部門において、管理職が直接管理する部下の適正な人数(管理スパン)については、明確な基準があるわけではない。

1つの事例として、ある⽶国企業の取組みを紹介する。ITヘルプデスク等は効率化を追求し管理スパンが高めになるように改善するが、アプリ開発等の業務領域については、8〜10⼈を管理スパンの基準値として組織体制をデザインしているという各社によって事情が異なるため、この基準値が全てに当てはまるわけではないが、この企業においては、業務特性、標準化の度合い、業務の複雑度、業務の独⽴性を判断軸として適正人数を見極め、経営の意思決定に活用している。

日本企業においては、情報システム子会社の有無や事業部門や外部ベンダーとの関係性に応じて大きく基準値が異なる可能性があり、IT部門が担うべき役割を再確認することから始める必要があるかもしれない。

いずれにしても、ITプロジェクトの失敗リスクを低減し、効率的な組織運営を実現するためには、業務内容の詳細把握、外部ベンダー活用方針の明確化等を行った上で、適正な要員規模を把握・管理しておくことも必要な準備の一つと考えられる。

今後の変⾰に向けて

⽇本企業においては、CIO職は馴染まない、また導⼊している企業も限定的という見方もあるが、変⾰のスピードを上げて成果を刈り取るため、CIO自らトップダウンによるリーダーシップを発揮することが強く求められる時期に来ている。

本編のCIOサーベイにおいても言及されているが、外部ベンダーの活用により組織の機敏性や柔軟性を向上させることに多くのCIOは必要性を感じていない。

自前主義や抱え込み型の文化が強い日本企業においては、更にこの点が顕著になり、従前のウォーターフォール型開発を前提とした組織体制・役割から脱却できていない企業が多く存在すると想定している。

ITがビジネスの前提となっている今、ITは情報システム部門だけのものではない。ITがビジネス推進に対する足枷にならないためにも、企業におけるIT部門の役割と責任を再確認し、歴史的に専門組織化・肥大化したIT部門の今後の必要性について、企業価値の観点から考えてみることも必要ではないだろうか。

CIO自ら、「破壊すべき組織」という観点も含めてゼロベースで組織戦略を練ることが変革への糸口になる。

寄稿者

山本 有志 シニアマネジャー

多様なインダストリーに対して、業務改革、組織改革、ITコスト削減などのアドバイザリーサービスを提供。経営、業務、ITの知見を活用し、経営層に対してコンサルティングサービスを提供している。