最新動向/市場予測

Tech Trends 2016 - 基幹システム再創造

ビジネス基盤のモダナイゼーション

金融業界で1970年代にカスタム開発されたシステムから、1990年代に巻き起こったBPRブームに乗って導入されたERPパッケージまで、企業の業務を総合的に支える基幹システムは複数システムの複合体として構成され、概して何十年も前に導入された年代もののシステムとなってしまっていることが多い。この「心臓部」である基幹システムの老朽化は、近年のデジタル技術を活用したビジネスイノベーションの阻害要因ともなりうるのである。

基幹システム再構築の重要度・投資・今後の展望

日本のコンサルタントの見解

日本における基幹システムの動向

昨今ではIoTやアナリティクスなど先進的なテクノロジーに注目が集まりがちだが、実際のIT投資の動向に着目すると、基幹システムは依然として主要な投資対象であり続けている。JUASの調査によると、2015年度におけるIT予算増加の主な理由のひとつとして「基幹システムやインフラなどのシステム更新」が挙げられている*。

この結果はテクノロジーの進化の状況がどうあれ、基幹システムの重要性は変わらないことを示している。基幹システムは企業の事業活動の根幹を担うものである以上、企業はその維持に一定のコストを割かなければならない。そして、ビジネス環境の変化に伴い、基幹システムもまた適応していくことが求められているのである。

特に、日本企業においては、グローバル化に伴う海外及び国内基幹システムの統合・連携などの対応が課題となっているケースが散見される。例えば、買収した海外子会社へのITガバナンスが十分に効いておらず、グローバルでの基幹システム統合への障害となってしまうケースなどが見られる。

日本における基幹システム再創造の取組み(5つの「R」)

このような状況の中で基幹システム再創造に意欲的に挑戦している日本企業もある。我々は本論で基幹システム刷新・再構築の手段として5つの「R」を提示したが、この要素を取り入れながら導入を実施している実例をいくつか紹介したい。

あるライフサイエンス企業では、ERPパッケージによる基幹システムについて、インメモリ技術を活用した新ソリューションへの置換を進めている。分析機能の拡充などに加え、インメモリ技術によるプラットフォームを将来的な拡張の基盤とすることを狙っている。(プラットフォーム刷新、ソリューション活性化)

また、ある製造業では、グローバルでのガバナンス向上を目的として、子会社の基幹システムは現状維持とし、データ連携機能の追加により本社側にグローバル統合データベースを構築している。何百もの子会社の基幹システムを含めた再構築は非常に困難であり、ソリューション導入までのスピードを重視して、現実的なアプローチを採用している。(ソリューション活性化、現状維持)

更に、あるサービス会社では、ビジネス環境の変化にスピーディに対応できる仕組みを構築するため、段階的なアプローチを採用している。初期段階として、汎用機上の基幹システムから、JAVAへのリファクタリングを実施し、プラットフォームの刷新を進めている。次の段階では、導入されたプラットフォームを活用し、バッチレス、データ一元化などの対応を進めることが計画されている。(プラットフォーム刷新、ソリューションリプレース)

いずれの企業も、基幹システム再創造の目的および戦略を明確にして、適切なアプローチを採用しているといえる。

ロードマップによるステークホルダー巻き込み

基幹システム再創造における現実的なロードマップ策定の重要性については、繰り返し語られてきたが、特に日本企業においては、早期に中長期的なロードマップを策定し、関係者間の協議の俎上に載せることが重要となる。

・意思決定に時間がかかる

グローバル企業に比して、日本企業では合意形成が重視され、意思決定に時間がかかる傾向があるといえよう。ロードマップ策定により、ステークホルダーの巻き込みを早期に行うことで、この弱みを緩和することができる。
ソリューション導入のスピードまで含めて考えた場合、アジャイル型の開発モデル、クラウドの導入などにより、基幹システムそのものの迅速性・柔軟性の向上を優先的に進めることも有効な手段となるだろう。

・先進テクノロジーに保守的である

日本企業においては実績の少ない先進テクノロジーに対して、保守的になる傾向が強い。プラットフォーム刷新に止まらず、その先にある先進テクノロジー活用を含めた将来の展開をロードマップ上に盛り込んでおくことが重要である。ただし、不確定要素の大きい部分でもあるため、ロードマップ自体の最新化を定期的に行い、関係者で共有しておくことが必要である。

意思決定の早期化と先進テクノロジーの活用により、基幹システムをいかに速く、グローバル競争に耐えうるものに変えていけるかが、日本企業が成長するための鍵となると考えられる。


* JUAS「企業IT動向調査2015」

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