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Tech Trends 2016 - IT導入スピードの最適化とは

スピードアップと安全運転の両立をいかに目指すか

多くのIT組織は従来型の複雑な基幹システム構築のデリバリモデルから、スピードが求められるイノベーションに即したモデルを志向し始めている。基幹業務システム導入に求められる安定性と、イノベーションに求められるスピードの両方を必要としながら、両立の困難さに直面しているIT組織もあるようだ。

IT業務スピード最適解のモデルダッシュボード

日本のコンサルタントの見解

グローバルにおける最前線の現場では、多種多様なビジネスニーズの特徴に応じた最適なIT導入スピードを、いかに見極め、対応していくかが重要経営課題の一つとして取組まれている。積極的に様々なアプローチに挑戦し、変化に対応し続けられる組織体質を創り上げているのだ。このような状況の変化はグローバルに限った話ではなく日本国内でも起きている。

しかし、ビジネスやユーザのニーズは変化し続けているものの、現場は10年前といたって変わってない、というのが現実ではないだろうか。スピードが求められていることは認識しているものの、グローバルで進む破壊的な改革は、日本企業では取り入れるのは難しいのではないか…、と早くも尻込みしている読者も少なくないのではないかと察している。

本書では、「段取り」「アーキテクチャ」「組織体制」の3つの視点から、IT導入スピードの最適化にたどり着くためのポイントを紹介しているが、ここからは日本の現場における特徴的な「組織体制」に焦点を当て、今後検討すべき点について一緒に考えていただきたい。

変化するビジネスニーズに対応し続けられる組織文化の醸成

システムは安定性第一、リスクを極力回避できる既存の手法に従い導入することが大前提、として日本の組織に深く根付いている。よって、必ずしもニーズに適したアプローチやテクノロジーを用いたシステム導入に踏み切れない傾向となっている。

例えば、開発手法においては、日本では大半のシステム導入がウォーターフォール型を採用しているが、海外では、アジャイル型、DevOpsなど、システムの性質や導入目的に応じた多様なアプローチを駆使している。

ビジネスのニーズを敏感に捉え、迅速にIT導入を推し進めるグローバル企業の勢いが加速する一方で、日本では彼らのスピードに全く追いつけていないのが実態だ。グローバル市場で戦い続けるためには、従来型から脱却し、スピードアップを図れる組織づくりが必達である。現状維持、安定性第一の日本の組織文化に、新しい価値観を取り入れ、変化に耐えられる組織体質を取り入れるべきではないか。

まずは、ビジネスへの影響範囲、影響度が小さな領域で、新しいアプローチやテクノロジーを用いたパイロット導入に挑戦し、徐々に小さな成功体験を社内で積み上げていくといった取組みが、第一ステップだろう。

ユーザ視点重視のマインドセットへの転換

日本主導のシステム導入は、高性能・多機能・高品質のシステム構築を目指すことに注力し、多大な時間、人員、投資を投入し、大規模なシステム構築に発展するケースが多い。従って、あれもこれもと優先順位付けを無視した膨大なシステム要件数、ステップの多い合意形成プロセス、仕様凍結後の仕様変更の頻発により、プロジェクト期間の長期化やリリース時期の延期につながっている。

構築メンバは完璧さを求めてしまいがちだが、ビジネスが求めているものは、完璧さではなく、利便性、スピード感であることが多いのではないか。例えば、100点満点のシステムのリリースを目指すのではなく、重要要件を満たした70~80点の状態のシステムをリリースし、改善を重ね段階リリースに持ち込む、というアプローチを経営層がトップダウンで推奨するというのも一つの手である。

さらに現場では、開発者、運用者、ユーザ側が一体となりIT導入を進めることの重要性も欠かせない。ユーザ視点で取組むことを社員が持つ共通の価値観として根付かせるため、トップダウンで社員にメッセージを発信し続けることが、地道ながらも有効なマインドセットの転換を図る胆である。

目的に適したプロジェクト体制の構築

プロジェクトのステークホルダーが多く、各個人・部門の責任と役割が不明瞭、意思決定に大幅の時間がかかる、というのも日本主導のIT導入プロジェクトによく見られる特徴である。さらに、他人任せであるがゆえ、現場では、事業部門はIT組織任せ、IT組織はベンダ任せでシステム導入が進んでしまう。

これでは、適任者が適確な判断を最良のタイミングで判断を下すことが難しい体制となってしまっている。少数精鋭のコアチームによるIT導入も一つの解となろう。加えて、「段取り」のカテゴリーでも言及されているが、ベンダマネジメントについても日本の特徴的な体制に起因する落とし穴がある。プロジェクトマネジメントから保守運用まで、ほぼ全ての業務を外部委託しているケースがよく見られる。

従って、ベンダ側の都合に大いに左右されたシステム導入となり、必ずしも自社のニーズに適した最適な手法でIT導入が行われず、プロジェクト期間の長期化および高額な投資を受け入れざるをえない状態となるのだ。

これらの罠から抜け出すには、IT導入企画時に、ビジネスニーズと目的に適した部門の参画とメンバ選出、迅速な意思決定が出来るガバナンス定義、ステークホルダーの役割と責任の明確化、ベンダに過度に依存しない体制構築をしっかり行い、従来通りの型から脱却すべきである。

「IT導入スピードの最適化」を説くには、まずは変化するニーズに常に答えられる組織体質にシフトできるかが第一ステップとしての鍵を握る。組織体制を見直せば、おのずと「段取り」「アーキテクチャ」に関する解への突破口も見えてくるだろう。

ITを現場任せではなく重要経営課題とし、経営層、事業部門、IT組織が一丸となり、共通認識の基で共にシステムを創り上げられる組織は強い。変化には時間とエネルギーが必要である。だからこそ、今こそ本腰を入れて、最適解のITを自ら導き出すことができる組織体質へのシフトに取組むべき時ではないだろうか。

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