調査レポート

急性ディスラプションの正体

新型コロナウイルス(COVID-19)前後でデジタルトランスフォーメーションに求められることは変化したか?

新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大を契機として、企業におけるデジタルトランスフォーメーションの波が加速化しました。しかし、今回のような急激な環境変化に対応するための対処療法的な取り組みは、従来の恒常的な取り組みとどのように違うのでしょうか。本稿は、今回の取り組みの特徴を明らかにし、その先にある本質的な変革に向けた次のステップを解説します。

日本語版発行に寄せて

COVID-19が引き起こした”急性ディスラプション(急激な破壊的変化)”によって、これまでの世界が一変した・しつつあるということについては、もはや異論はあまりないであろうが、デジタルトランスフォーメーションという文脈においても、その影響は計り知れないものがある。言葉だけが先行し、なかなか前に進まない、または成果が上がりきらなかった日本企業にとっても大きな転換点となる可能性がある。


本レポートは、原文タイトルが「A case of acute disruption ~Digital transformation through the lens of COVID-19~」となっているように、COVID-19によって、デジタルトランスフォーメーションの取り組みがどのように加速したか、または加速せざるをえなかったか、今後は対処療法的な取り組みの先にある原因療法的な取り組みとして何が求められていくのか、について考察している。今回のCOVID-19危機の結果の一つとして、企業におけるデジタル技術の導入が急激に進んだことにより、リスクのある対面コミュニケーションの機会は減少し、顧客と従業員の健康・ウェルビーイングを守ることにつながったのは大きな成果であったといえる。その一方で、今回の危機をwith/after COVID-19の世界に向けた企業革新の機会として認識し、前向きに更なる取り組みを進めていこうとしているかどうかについては、グローバルのみならず日本企業も対応が分かれ始めているように感じる。デジタルトランスフォーメーションを進めるにあたっての原因療法的な取り組みは、before COVID-19の世界で提言されている内容と大きくは変わらない。縦割りと硬直性を打破する組織横断型チーム+アジリティ、急激に変化する世の中への対応力を高める継続的学習の仕組み・風土醸成、多様性の維持と求心力を高めるための企業としてのビジョン・価値の訴求の3つの取り組みは、COVID-19により大きな変化が生じた世界においても、デジタルトランスフォーメーションの推進を図るうえで、むしろ以前にも増してより重要となるであろう。

残念ながら、これまで日本企業のデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みは、海外企業と比較して相対的に遅れている印象があった。その大きな要因としては、デジタル化に対する全社的な危機感の欠如、もしくは危機感の共有が不十分である点があげられる。今回のCOVID-19による大きな環境変化は、日本企業のマネジメント層に危機感を醸成し、企業内でのデジタルトランスフォーメーションの必要性の喚起や、具体的なアクションへと繋げていけるチャンスになるのではないかと考えている。読者の皆様には、本レポートも参考にしながら、今回の危機を機会と捉えて、スピード感をもって企業革新:デジタルトランスフォーメーションを進めていただきたい。

関連書籍の紹介

DX(デジタルトランスフォーメーション)経営戦略(日本語)
「デジタルトランスフォーメーションの鍵は、テクノロジーではなく、人と組織にある。」

本稿で引用されている書籍” The Technology Fallacy”の邦訳に日本における解題を付加。デロイトと米国MIT(Massachusetts Institute of
Technolog)マネジメント雑誌『MITスローン マネジメントレビュー』が1万6000人への4年間の調査、ウォルマート、グーグルなどの企業マネージャインタビュー等、豊富な実例の分析をもとに、デジタルトランスフォーメーション成功の鍵を説く。

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