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グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド 2021 スペシャルレポート

変化する労働者・雇用主の関係性:家族の様な関係でないなら、私たちの間柄は何なのでしょうか?

世界99か国の約6,000人におよぶ人事部門責任者、管理職等へのアンケートをもとに、組織の在るべき姿について解説するグローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2021のスペシャルレポートです。

不確実性に満ちた世界で、今後の労働者・雇用主の関係性はどのようになっていくのでしょうか?

COVID-19のパンデミックにより、組織と労働者の関係性は数か月の間で大きく変化しました。雇用主は、労働者の健康、生活、尊厳をこれまで以上に支援せねばならず、その動向はかつてないほど注目されるようになってきています。不確実性に満ちた世界でソーシャル・エンタープライズ*が成功するためには、労働者が不可欠であり、その関係性が多様になっていくことを理解することが重要です。今年は「グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド 2021」のレポートに加え、本スペシャルレポートにおいて、「ポストコロナの機会と課題に対応するために、労働者・雇用主の関係はどのように進化していくのか」 という重要な疑問に対する答えを探ります。

英語版レポートページはこちら(Deloitte Insight[英語]へジャンプします)

*ソーシャル・エンタープライズ:“地球環境保全やステークホルダーとの関係向上を尊重・支援する”という使命を、成長と利益の向上に結びつける企業のこと

PDF(1.6MB)

ポストコロナを見据えたこれからの組織と労働者の関係性について、「人材供給」と「政府の協力」の2軸から4つのシナリオを提示

本レポートでは、労働者と雇用主の関係性にもっとも影響を与える、「人材供給」と「政府の協力」(政策および一貫性、実行スピード、有効性)といった要素から4つのシナリオを導き出しています。またそうした未来において「生き残り」、更に「差別化」するためのヒントも掲載しています。今後の労働者・雇用主の関係のあり方は多くの可能性を秘めており、様々なアプローチや考え方を模索する必要があります。

■シナリオ1:「ファッション感覚で選ぶ」仕事(人材供給が不足していて、かつ政府の協力が限定的)

人材が不足している状況では、特に高度なスキルをもった人材にとって有利な売り手市場になります。政府が十分な福利厚生やスキルアップの機会を提供しない場合、労働者はこれらを雇用主に求めるようになるため、雇用主は労働者が示す嗜好や競合他社の動向に手を打ち続けるようになり、持続可能な人材戦略の検討は後回しになります。その結果、労働者・雇用主の関係は場当たり的なものになります。

■シナリオ2:ポジション獲得戦争(人材の供給が過多で、政府の協力が限定的)

雇用主にとって買い手市場となると、給与が高く魅力的な福利厚生があり、良好な職場環境が提供される職場は少なくなります。労働者が一部の限られた職を求め、多くのライバルと競い合う一方で、雇用主は労働者を代替可能な労働力とみなすようになります。政府の協力が限定的である場合、労働法と社会的セーフティネットは最小限となり、雇用主も労働者のリスキルに対する投資を減らすでしょう。

■シナリオ3:仕事は仕事(人材供給は不足していて、政府の協力が高い)

労働者と雇用主は、組織的な責任と個人的・社会的な満足度は基本的に別のものであると考え、労働者・雇用主の関係はあくまで「仕事上のもの」になります。事業に関連するニーズを満たす上では相互依存関係にありますが、労働者の生きがいやパーパス(存在意義)は仕事の外で見つけるものだと両者とも考えています。個人のヘルスケア、リスキル、社会課題への解決等に政府が協力的に動くことで、労働者は雇用主に対する依存をますます減らすようになります。

■シナリオ4:パーパスの追及(人材供給が高く、政府の協力も高い)

人材供給量が高いと、雇用主は人材のスキルや能力だけでなく、組織のパーパスへの共感度を見極めて人材を採用することができます。パーパスは労働者・雇用主の関係の土台となり、双方を結びつける最も強い繋がりとなります。資金や資源、その他の手段の政府の協力政府や政府とともにパーパスを推進する機会が増えることで、組織活動におけるパーパスの位置づけがさらに高くなります。

グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド 2021が掘り下げる5つのトレンド

今後、組織が「生き残りフォーカス」から「成長フォーカス」へとシフトできるか否かは、如何に組織が「人間らしい組織」となり、「人間らしく」いられるかにかかっていると私たちは考えています。今年のレポートでは、2020 デロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンドで取り上げた5つのトレンドを更に掘り下げ、組織の成長を後押しする「人間らしい」特性をどのように引き出すことができるかを考えます。
 

組織には、危機的状況をどのようにして「生き残る」のかという視点から、逆境の中でも如何に「成長」していくか、という視点へのシフトが求められています

2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大が私たちの生活や社会、経済に大きな影響をもたらし、組織にとっても新しい働き方やビジネスの在り方と向き合う一年となりました。今年のグローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンドでは、世の中がめまぐるしく変化し、多くの組織が予期せぬ危機的状況への対応を求められる中、「生き残るための改革を推進している組織が成長にフォーカスした視点を持つためには、どのようにすれば良いのか」という問いかけをしています。今年のレポートでは、2020 デロイト・グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンドで取り上げた5つのトレンドを更に深掘りし、組織が「生き残り」フォーカスから「成長」フォーカスへとシフトする上で必要な「人間らしい」特性を考察します。

英語の最新版はこちら (Deloitte Insights、外部サイト)

 

グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド 2021【PDF: 10.8MB】

ウェルビーイング:制度の充実だけでなく、組織文化としてウェルビーイングを仕事の「在り方」と融合させる

仕事の「在り方」そのものにウェルビーイングを組み込めば、従業員は仕事を離れている時だけでなく、仕事中にもウェルビーイングを実感することができます。生活の質を向上させる仕事は従業員のモチベーションを高め、パフォーマンス向上にも繋がることから、組織にとってもメリットがあります。

新しいスキルの獲得を超えて:従業員の自立性と選択権を尊重し、学習意欲、適応性、そしてやりがいを高める 

従業員が仕事の進め方や習得するスキルを自ら選べるようにすれば、一人ひとりが最もやりがいを感じることにフォーカスでき、エンゲージメント向上に繋がります。従業員の関心事と組織としてのニーズを融合させることで、従業員のモチベーションとやりがいを高めることは、組織パフォーマンスの向上にも繋がることが期待されます。

スーパーチーム:「人間らしい」働き方を強化するためにテクノロジーを活用した「スーパーチーム」を立ち上げる 

テクノロジーの可能性を解き放つことで仕事の在り方を変える一方で、従業員は人間にしかできない仕事にフォーカスすることが重要です。個人とチームを繋ぐコラボレーションツールや意思決定をサポートするAI等の活用を通して、人とテクノロジーを融合させたチームはより迅速に、かつダイナミックに成長を遂げることが可能となるでしょう。

 

人材戦略:リアルタイムデータを用いて、将来の価値創造の在り方を見据えた洞察を導き出し、組織と従業員の価値を高める

従業員の状況を正確に把握してニーズに真摯に応えていくこと、従業員が能力を高めながら組織と目指すべき方向性を合わせることが重要です。従業員が何の仕事にどのように取り組んでいるのかを組織が知ることで、一人ひとりの潜在能力を引き出すための新しい働き方のヒントが得られるのではないでしょうか。

HRへのメモ:HRの役割を制度の導入と推進に留めず、組織全体における変革を主導する役割にシフトさせていく 

組織が真に「人間らしく」あるために、HRはビジネスリーダーと誰が、何を、どのように、そしてなぜ一つ一つの仕事に向き合うのかの議論を重ねながら、仕事のあらゆる側面に人間的要素を取り込む上での主導的な役割を担うことが期待されます。

過去のグローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド

2020

新しい10年を迎えるにあたり、企業が向き合うべきなのは「テクノロジーが溢れかえる職場環境を、どのように人間的にするか」ではなく、「労働を人間的にするために、テクノロジーが創り出す環境をどのように活用すべきか」という問いです。2020年のレポートではパーパス(存在意義)、ポテンシャル(可能性)、パースペクティブ(展望)という3つの視点に沿って、「人間とテクノロジーの融合」に向けて企業が準備すべき9の人事・組織トレンドを整理しました。

グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2020を読む

 

2019

本年の調査では、今後、ソーシャル・エンタープライズの社会における役割がより重要になっていくことと、ソーシャル・エンタープライズと財務的な業績の比例関係(ソーシャル・エンタープライズとしての成熟度が高いほど、より高い成長が予測されている)が示されました。

グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2019を読む
 

2018

企業はもはや財務的なパフォーマンスといった伝統的な指標や、製品・サービスの質だけでは評価されません。企業がもたらす社会全体へのインパクトだけでなく、むしろ従業員、顧客、コミュニティとの関係性によって評価されるケースが増えています。すなわち、営利企業からソーシャル・エンタープライズへの転換です。

グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2018を読む (PDF:4.75MB)
 

2017

私たちは、2017年のレポートに「デジタル時代の新たなルール」という表題をつけました。なぜなら、この時代の特徴は、単なる変化ではなく、ビジネスとHRの新しいルールを創り出す「加速的」変化だからです。組織は、労働力や職場、そして仕事そのものの前提の大きな転換に直面しています。

グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2017を読む (PDF: 6.96MB)
 

2016

2016年度のメインテーマ「新たな組織-デザインの転換 The New Organization – Different by Design」には、本調査の主要な結果が反映されています。過去3年の調査では「従業員のエンゲージメントとリテンション」「リーダーシップ」「組織文化」が一貫したトップの課題でしたが、当年度は「組織デザイン」が最優先課題として圧倒的な票を集めました。

グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2016を読む (PDF: 5.8MB)
 

2015

人事・人材分野における2015年の課題としてデロイトが捉える「リーダーシップ開発」「グローバルな人材管理の実現」「人材育成」「IT活用」など15のトレンドについて重要度と対応度、対応の緊急性などについて回答を得ています。本報告書では、世界的に重要度の高い10+1のトレンドについて紹介します。

グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2015を読む (PDF: 1.05MB)
 

2014

世界が不況から抜け出すにつれ、労働市場はかつてないほど若く、要求が厳しく、そしてダイナミックになっており、企業はこうした新たな人材と向き合う必要に迫られています。本レポートでは、今後、企業が優先して取り組むべき人事関連の諸課題を明らかにする、12の主要なトレンドを提示しています。

グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2014を読む (PDF: 1.29MB)

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