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多機関・多職種が連携して行うヤングケアラー支援の重要性

ケアを担う子どもを地域で支えるために私たちができること

ヤングケアラーを多機関・多職種が連携して支援することが求められています。当法人は、令和3年度子ども子育て支援推進調査研究事業として「多機関連携によるヤングケアラーへの支援の在り方に関する調査研究」を実施し、多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアルを作成しました。この記事では、当該調査研究での学びをもとに、ケアを担う子どもを皆で支えるためのポイントをまとめます。

身近にいるかもしれない「ヤングケアラー」

「ヤングケアラー」という言葉を耳にする機会が増えたと感じる方も少なくないのではないでしょうか。2020年度、2021年度と続けて全国規模のヤングケアラー実態調査が実施されたこと(補足1)や、国が省庁横断でヤングケアラーを支援つなげるための方策について検討するプロジェクトチームを立ち上げたこと(補足2)など、ヤングケアラーに関連する動きがこの数年で活発になったことも関係があるかもしれません。

ヤングケアラーとは?~その捉え方について~

日本ではヤングケアラーという言葉が法令上で定義されている訳ではなく、当法人が令和3年度子ども子育て支援推進調査研究事業として実施した「多機関連携によるヤングケアラーへの支援の在り方に関する調査研究」では、「一般に、本来大人が担うと想定されているような家事や家族の世話などを日常的に行っていることで、負担を抱える、もしくは、子どもの権利が侵害されている可能性がある18歳未満の子ども」として捉えながら研究を進めました(「ヤングケアラーと関係の深い子どもの権利」や「ヤングケアラーがおかれている状況」は、この調査研究事業において作成したマニュアルに詳しく掲載されていますので、是非ご覧ください)。

定義が厳格に定められていないことで、対象を広く捉え支援から取り残されてしまう子どもを減らすというポジティブな影響もある一方で、ヤングケアラーをできる限り早期に発見し、希望や必要性に応じて支援を行なっていくことの難しさも生じます。実はこれこそが多機関・多職種連携の大切なポイントの一つなのですが、誰もが「自分の身近なところにヤングケアラーがいるかもしれない」という気持ちをもって日々の業務を行っていくことが重要であるといえます。

(補足1)令和2年度に全国の中学生や高校生を対象として実施された調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」(令和3年3月))によると、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、中学2年生が5.7%、全日制高校2年生は4.1%であり、そのうち、世話の頻度は「ほぼ毎日」と回答した者が3~6割程度、平日1日あたりで世話に費やす時間は「3時間未満」との回答が多いものの「7時間以上」と回答した者も1割程度いることが明らかになりました。また、令和3年度に全国の小学生や大学生を対象として実施された調査(株式会社日本総合研究所「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」(令和4年3月))によると、世話をしている家族が「いる」と回答した小学6年生が6.5%、そのうち、世話の頻度は「ほぼ毎日」との回答が5割超、平日1日あたりで世話に費やす時間は「1~2時間未満」との回答が多いものの「7時間以上」と回答した者も7%いることが明らかになりました。また、世話をしている家族が「いる」と回答した大学3年生は6.2%であり、「現在はいないが、過去にいた」が4.0%、ヤングケアラーに「現在あてはまる」との回答が2.9%でした。

(補足2)厚生労働省の子ども家庭局、健康局、社会・援護局、老健局、文部科学省の初等中等教育局、総合教育政策局が参加する「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」が令和3年3月に立ち上げられました。このプロジェクトチームでは、「支援を必要としているヤングケアラーを早期に発見し、必要な支援につなげるため、各地方公共団体の福祉部局、介護部局、医療部局及び教育部局がより一層連携した取組を推進するための方策」が検討され、検討した施策は「とりまとめ報告」として公表されています(その他にも、プロジェクトチームのウェブページには、ヤングケアラーに関する調査研究の結果や有識者のプレゼンテーション、各局のヤングケアラーに関連する予算編成に係る資料など様々な情報がアップされています。)

 

多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援が求められるわけ

ヤングケアラーに係る問題は、家族が抱える様々な課題が関係し合い、複合化しやすいという特徴があります。

単独の支援ではヤングケアラーへの支援の鍵が見落とされてしまう可能性も 

例えば、ある精神障害を抱える成人女性に小学校高学年の子どもがおり、よく話を聞いてみると、家庭内ではその子どもが母親である女性を支えていて、母親側の祖父母も同居しているものの介護を受けているため頼ることができない――といったケースがあるとします。このケースの場合、精神障害を抱える女性への支援を担当する障害福祉部門をはじめ、祖父母の介護を担当する高齢者福祉部門や子どもの通う学校など、様々な機関・部署が、それぞれの専門領域から関わっていくことが想像できますが、それぞれが個別に支援を行う場合に、ヤングケアラーである子どもが負担や辛さを感じていることや、その要因、負担や辛さを軽減するための取組などが不足してしまう可能性があります。

ヤングケアラーを対象とする特殊な支援と捉える必要はない

複合化した課題というと、ヤングケアラーを支援するには特別な知識やスキルが必要だと感じられるかもしれませんが、各機関・部署や担当者がそれぞれの所掌範囲から少し視野を広げ、それぞれの立場の中でできることは何かを考えてみることが大切であり、既にある支援の組み合わせが求められるからこそ、複数の関連機関による連携が重要となってきます。

 

多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援の流れ

ここで、当法人が令和3年度「多機関連携によるヤングケアラーへの支援の在り方に関する調査研究」において作成したマニュアル「多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル~ケアを担う子どもを地域で支えるために~」の内容についてもう少し紹介させていただきます。

このマニュアルは、ヤングケアラー支援に携わる可能性があるすべての方を対象として作成したものです。「ヤングケアラーである子どもやヤングケアラーがケアする対象者(保護者など)が利用しやすい支援とは何か?」を考え、支援開始から切れ目なく、また、対象者に状況確認を何度も重複して行い負担をかけてしまうことも極力減らしながら、支援が包括的に行われていくことを目指しています。

マニュアルは、ヤングケアラー支援の流れを示しながら、その流れに沿ってポイントを説明する構成としました。

 

また、マニュアルでは、ヤングケアラー支援において関わることが考えらえる機関や専門職等のマップを作り、それぞれが得意とする支援の内容をまとめています。連携して支援を行う先、つまり連携においてタッグを組む相手のことを良く知ることが重要であると考えたからです。

執筆

有限責任監査法人トーマツ
リスクアドバイザリー事業本部  ヘルスケア 

※上記の部署・内容は、掲載日時点のものとなります。2022/5

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