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法人の居住性 – IRAS での更新について

17 Jan 2024

2023 年 11 月 29 日、シンガポール内国歳入庁 (IRAS) は、企業の税務上の居住地と COR/Tax Reclaim Form の申請に関する最新情報を発行しました。

在シンガポール日系企業の皆さま

Inland Revenue Authority of Singapore (IRAS: 内国歳入庁)は2023年11月29日に以下の事項に関して更新を発表しました。

• 法人の居住性
tax residency of a company

取締役会がハイブリッド/バーチャル形式で開催された場合、重要な事業判断 (strategic decisions) が下された場所はどのように判断されるか;

• 居住者証明書の申請
applying for a COR/Tax Reclaim Form

株式の過半数を外国法人/外国人が保有する外資保有 (foreign-owned)の投資資産保有会社が暦年2025年以降にシンガポール居住者証明書を申請する際の留意事項。

法人の居住性

シンガポール所得税法では、法人の税務上の居住性は、事業の管理支配 (the control and management) が行われる場所により判断されるとされています。“管理支配”は法人の経営方針の策定や戦略的な事業判断を下すプロセスと解釈されています。法人の管理支配がどこで行われているか、は実態に基づいて判断されます。
IRASでは、特定の課税年度(Year of Assessment: YA)における居住性は、その前年度において法人の管理支配がシンガポールで行われていた場合、シンガポールにある、としています。言い換えればかかる管理支配がシンガポールで行われていなかった場合、法人はシンガポール非居住者となります。税務上の居住性は永続するものではなく年度ごとに変わり得るものです。また、非居住者として認定された場合は居住法人だけを対象としている各種の優遇税制(国外配当免税など)を享受できなくなる可能性があり、ストラクチャーに影響を与え得ることは言う間でもありません。

通常、IRASは法人の取締役会開催地を法人の管理支配が行われている場所と関連付けていますが、この考え方はすべてのケースに当て嵌まるわけでもありません。

IRASは今般、取締役会がハイブリッド/バーチャル形式で開催された際に法人の居住性はどのように判断されるべきか、について見解を更新しました。

取締役会をバーチャル会議等のツールを使用して開催した法人は、次の要件を充足している場合、一般的に管理支配がシンガポールで行われているものと考えられます。
取締役会開催中、戦略的判断を下す権限を有する取締役の少なくとも半数(50%)がシンガポールに所在していた;または
取締役会議長(議長が指名されている場合)が、取締役会開催中シンガポールに所在していた。

法人の管理支配がシンガポールで行われていないと考えられる事例も紹介されました。
取締役会がシンガポールでは開催されず、書面決議が回付されたのみである;
シンガポール居住取締役は名義取締役であり、実際に事業判断を下す立場にある取締役はすべてシンガポール非居住者である;
シンガポール居住取締役は事業に関する判断を下さない;または
シンガポールには主要な従業員がいない。

法人が設立された場所は必ずしも居住性を確立するものではないことは留意が必要なポイントです。居住性の認定においては法人の管理支配地、特に事業上の戦略的、経営的な判断が下されている場所であることが重要な要素となります。

外資保有の投資資産保有会社による居住者証明書の申請

通常、IRASは外資保有の投資資産保有会社で受動的所得または国外源泉所得のみが生じる法人はシンガポール非居住者と取り扱い、居住者証明書を発行しませんが、以下の要件に該当する場合は居住者証明書が発行される可能性があります。
事業の管理支配がシンガポールで行われている;そして
シンガポールに法人を設立することの合理的な根拠がある。

さらに、居住者証明書発行のためには以下の要件も充足する必要があります。
シンガポール国内に、シンガポール居住者である、あるいはシンガポールで事業活動を行う関連会社がある;
かかるシンガポール国内の関連会社から経営支援やサービスを受けている;
名義取締役ではなく、実際に職務を遂行する居住取締役が少なくとも1名シンガポールに所在している;または
最少1名の主要従業員(CEO、CFO、COOなど)がシンガポールに所在している。

暦年2025年以降に居住者証明書を申請する場合の適格要件が改訂されました。申請者は以下を満たす必要があります:
名義取締役ではなく、実際に職務を遂行する居住取締役が少なくとも1名シンガポールに所在している(既存要件);または
最少1名の主要従業員(CEO、CFO、COOなど)がシンガポールに所在している(既存要件);または
シンガポール居住法人である関連会社により管理(Manage)されている(例:シンガポール居住法人である関連会社が、居住者証明書申請法人の事業運営に関する重大な決定に関わっている、またはかかる申請法人による投資事業のパフォーマンスを評価している、など) (修正要件)

まとめ

居住性の規定にバーチャル会議に関する細則を加えたことは、シンガポールが実務の近代化に適応していることを反映していると捉えられます。これはIRASがデジタル時代における経営・戦略判断プロセスの変化を認めていることであり極めて重要です。

戦略的判断を下す権限を有する取締役の過半数(50%以上)が バーチャル役会開催時にシンガポールに所在していればシンガポール居住法人と取り扱われることになります。従い、今後は取締役会がバーチャル形式で開催された場合は出席した各取締役の所在地を議事録に記録しておくことがいいかもしれません。

あるいは、バーチャル取締役会の開催中、取締役会議長がシンガポールに所在していればシンガポール居住法人として取り扱われます。会社法、所得税法ともに取締役会議長の役割について特定していないながら、バーチャル取締役会における議長の所在地についてIRASは重視しています。これは会社の事業判断を下すプロセスにおける議長の役割の重要性を強調するものであり、議長の経営への影響力を認知しているものと考えます。Decision-makerとしての議長の所在地が、法人の管理支配がシンガポールで行われているか否かを決める重要項目なっていることを示唆しています。

居住者証明書の取得に関する2025年以降の制度変更は、受動的国外源泉所得のみを生じる外資保有の投資資産保有会社が シンガポールに所在する主要従業員または業務執行を行う取締役を有する、あるいはかかる投資資産保有会社を管理するに足るリソースや機能を備えたシンガポール居住の関連会社を有することの必要性を強調しているものと言えます。

連絡先:

記事に関するお問い合わせは以下までご連絡ください。
五十嵐 潤 (Jun Igarashi)
Japanese Tax Services Leader
juigarashi@deloitte.com

矢部 直人(Naoto Yabe)
International Tax Senior Manager
nayabe@deloitte.com

杉山 しのぶ (Shinobu Sugiyama)
International Tax Senior Manager
ssugiyama@deloitte.com

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